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神様なんですか!?  作者: ぱぴぽ
第二章 新天地にて
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第九話 勉強の苦痛

「ってあれ? もう寝てしまいましたか」


カレッドさんは語り尽くしたのかどこかから持ってきたティーカップで一息ついている。


俺はもちろん寝てはいない。寝たふりだ。


神様が語らせるだけなんて有り得ないだろ。


でもまあ村を滅ぼされたなんて大変なことがあったもんだな。

俺はその場にいたわけじゃないから同情とかは出来ないけどね。


寝返りをうつ。


自分で言うのもなんだが、寝返りはとても上手だ。


にしてもどんな経緯でお父様とお母様に会ったんだよ。そこの辺りは端折り過ぎて分からなかった。

今度聞くか。


「ふぁあ、私も眠いしそろそろ帰りますね。それでは寝たふりローラン様、おやすみなさい」


そう言って俺の部屋のランプを消してドアを閉めた。



寝たふりがバレただと!!




朝。この世界に来て初めての朝だ。


「おはようございます。きのうはおたのしみでしたね」


カレッドさんが鼻歌を歌いながら入ってくる。


きのうはおたのしみでしたねって誰とですかね。


「おはようございます。何かいい事でも有ったのですか?」


俺は伸びをしながら言う。ふぁあ。


「ふふっ、今日から合法的にローラン様をボコボコに出来るので楽しみなんですよ」


「勘弁してください。あんまり酷いとお父様に言いますよ」


俺もにこやかに返答する。


「楽しみに待っていてくださいね」


はいはい。



朝は血圧が低いのか朝ごはんはあまり食べる気が起こらない。

だから、夕食より食べるスピードが遅かった。


クリスは奇異なものを見る目を向けられた。

感情をそのまま表に出すのはどうかと思う。


低血圧を理解できないらしいので説明はしない。

神だった頃はこんな事無かったのにな。



一応食べ終え部屋へ帰る。


辛いわ。


「こんにちわ! ローラン様。今日の魔法のお勉強始めますよ」


Vサインをしだしそうな勢いでドアを開くカレッドさん。


空気を読んでください。辛いわ。


「はい、始めましょうか」


意図的に辛そうな顔をしながら魔法の本を取り出す。


「辛そうな顔したって無駄です。嘘は泥棒の始まりというではないですか」


指をポキポキ鳴らして、本を受け取る。


「じゃあまずは無難に水属性の初位魔法から行きましょうか」



「水流、ですか?」


「ええ、水流、水壁の二つが水属性の初位魔法ですね」


本を指し示すが、読めないよ。


「では、私がやってみますね」


そう言ってから俺を外へ連れていく。

まあ水属性というし、中が水浸しになってしまうからかな。



「行きますよー!」


カレッドさんは両手を前に突き出して呪文を唱える。


「水の精よ、水の流れを示したまえ。水流ブラーゼ


カレッドさんの両手から水が吹き出る。


おお、別に凄い魔法ではないが別世界で見るので感動するな。


「凄いですね! 僕も出来るかな」


「私も二週目位でできたので出来ますよ」


俺も両手を前に突き出して呪文を唱える。


「水の精よ、水の流れを示したまえ。水流ブラーゼ


俺の両手からも水が吹き出る。


おお、体の力がごっそり持ってかれたような気がする。

まさかこれが噂の魔力枯渇?

いやでも枯渇するほど使ってないよ。


カレッドさんは呆然としている。

目に涙が溜まっているような気がしたのは多分気のせいだ。


「す、凄いですね。魔術師になれますよ。これ」


「え、有難うございます」


そんな顔をされると俺も戸惑ってしまう。


「もう一回やってみて下さい」


「水流……」


生前に平然とやっていた無動作魔法をやってみる。

出来るかな。


出来るだけ力を抜いて、魔力を手のひらだけに集中させる。

魔力切れる……


気付いたら手のひらから水が吹き出ていた。

しかし、魔力切れで力が出なくなってしまった。


へたり込んだ俺にカレッドさんは、


「ノーモーションマジックですか!」


座り込んでしまっているのにカレッドさんはもう一度やれとうるさい。


「いや、もうできません。今日は魔力切れです」


「ふむ、仕方が無いですね。じゃあ剣の訓練でも受けてみますか?」


疲れてるのになあ。


「呼んだ? カレッドさん、ローラン」


また木の下で剣を振っていたクリスが駆けてくる。


地獄耳か、このお兄さんは。


「はい。ローラン様は少し体力不足なんで、鍛えてあげてください」


「はあ、メイドなのに多才なこと。分かった。じゃ、走り込みからかな」


クリスはっとこちらも良い笑顔だ。


「走る!?」


あまりの驚きに敬語モードオフだ。


クリスも俺の普段の様子とあまりに違うので驚きの表情。


「あ、ああ。そうだけど」


クソっ、走るのは苦手だってのに……


「大丈夫。僕も走ってやるから」


俺の頭をポンポン撫でる。

全然大丈夫ではない。


「行ってらっしゃいませー」


門を出るまでカレッドさんは手を振っていた。

止めてください。やめてください。




「おーい、ローラン? まだ全然走ってないぞ?」


そんな声を受けるが俺は一応まだ二歳児だよ?

そんな何キロも走れる訳無いじゃないか。


「おぇっ、吐きそう」


本音が口から零れる。

イメージダウンか?


「え、吐かないでよ? ここ街中だから」


クリスが焦った顔で手を振る。


「あ、大丈夫です。冗談です」


口を押えながら言う。


「ああ、もう屋敷へ帰ろうか。ほら」


クリスの背中に乗せてもらう。ごめんなさい。

迷惑をかけてしまった。うっぷ。



「おかえりなさ……ってローラン様? 大丈夫ですか?」


俺の顔を見てカレッドさんは駆け寄ってくる。

相当顔色が悪かったのだろう。


「ごめん、歳を考えずに走らせすぎた」


「そうですか……聖なる命の礎よ、彼の者の傷を和らげよ。治癒ヒール


カレッドさんが治癒魔法をかける。手が淡い白色に光る。しかし全く効果がないようだ。


「カレッド、病気系には治癒魔法はあまり効かない」


キレッドさんが何かの瓶を持ってやってくる。


「これは薬。酔い覚ましです。ローラン様」


「キレッドさん、有難うございます」


うう、ぎもぢわるっ。

手渡された瓶には青い液体が入っていた。

薬の癖に随分やばい色をしているもんだ。

一応飲む。


「大丈夫か?」


クリスも責任を感じているのか心配そうに俺の顔を覗き込む。


神の時から弱体化し過ぎでしょ。

涙が出るほど弱くなってる。


そういえば薬のおかげか吐き気が引いている。


「すごい、すごい効きます。この薬」


「王都で買ったものですし、効力が高いのでしょう」


そう言ってキレッドさんは空の瓶と共に屋敷へ戻って行った。


「よかった、吐かれたらどうしようかと思った」


「ですよね。魔法が効かなくて焦りましたよ」


「いや、だって初位魔法じゃないか」


クリスが痛い所を突く。


「う、うるさいですよ。そういうこともあります」


「はあ、取りあえず今日は練習とか訓練とかはおしまいな」


クリスは俺に部屋へ帰るように言った。


「明日はもっと扱きますからね」


悔しそうにカレッドさんはこっちを見ていた。


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