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神様なんですか!?  作者: ぱぴぽ
第二章 新天地にて
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第八話 カレッドさんの過去

体の周りから安心感の元である温もりが消え、鋭い朝の冷えが全身を突き刺す。

これは……


「ほら、カレッド起きなさい」


キレッドは私がまぶたを開いたことに気づくと、叩くのをやめ、私から奪い取った毛布を自慢げに掲げる。

私はそれを一瞥したあと再度目を閉じ、キレッドに重要なことを教えてあげる。


「姉さん、まだ太陽出てないじゃない。まだ寝れるんだけど……」


私は寒さに屈さず、妖怪布団はがしの驚異に怯えながらも体を丸め、二度寝の体勢に入る。

外見てから起こしに来てください。

まだ夜ですよーだ。


「ココン村の朝は太陽より早いんだよ。二度寝なんてしてたら置いてかれるでしょう? 早起きは三文の得だしね」


そう言ってキレッドはカーテンを開くが太陽は出ていない。

当たり前だね。


しかし外はもう朝の気配に満ちている。

少しずつ東の空がオレンジに染まり、外も人の声がポツポツ聞こえるようになってくる。

朝の仕事をするためだ。


「ほら、水汲みに行ってきて」


ベッドの横に置いてある木のバケツを手渡してくる。

朝の水汲みは私の仕事なので、私の部屋にはバケツが置いてあるのだ。


「はいはい、着替えたら行くから部屋出てて」


私は二度寝の体勢を解除してキレッドの手からバケツを取り返し、そのへんに投げ捨ててから追い出す。


「ええ、まいいか。さっさと行っちゃいなさいよ」


キレッドは私がしっかり起きたことで一応は満足したらしく、足音は遠ざかっていく。

私もタンスを開き適当な服に着替える。

着替えることすら寒いもんだな。


「うし、おっけいかな」


鏡の前で服装を整え、バケツを持って外へ出る。

顔洗いも歯を磨くのもこのバケツの水無しでは出来ない。

故に私は急いで水をくんでこないといけないのだ。


「うう、寒い。流石明け方だね」


少し日は出てきているが、まだまだ朝の空気が体温を奪っていく。

自分で自分の体を抱きながら広場の井戸へ向かう。


「お、カレッドじゃん。おっはよー」


村の長につかえているメイドのリリーが駆けてくる。


リリーもバケツを持っている。

額には汗が浮かんでいる。

メイドは大変なんだなと改めて思う。


いつも水汲みの時間にかち合うので仲良くなったのだ。


「あ、リリーか。おはよう。水汲み面倒くさいね」


私はリリーに手を振りながら、横に並ぶ。


「そうだねぇ、本当に面倒なんだけど、私いい方法見つけちゃったんだ。にひひ」


「え? いい方法って面倒くさくないの」


「もちろん。私も最近知ったんだけどね。みたい?」


リリーはどうする? どうする? と楽しそうに尋ねてくる。

こういう事は人に教えたくなってしまうものだ。


「見たい!」


私は答える。

楽できるならそれに越したことはない。


「りょーかい! ちょっとこっち来て」


リリーは私の手を引き、中央の通りから少し外れた、朝は誰も通らない所へ行く。


「むむ? 何やるのかな」


「それは見てからのお楽しみ、よっと」


リリーはバケツを地面に置く。

どちらかといえはポンと音スって感じか。

その上に手をかざし、目を閉じる。


「水の精よ、水の流れを示したまえ。水流ブラーゼ


リリーが何かを唱える。

その間リリーの手からなにか禍々しいモノを感じた。

しかしそれは気のせいだったのか、気付いた時にはリリーの手が淡い青の光を発し、リリーの手からは水が放出される。

その水は手の下に置いてあったバケツに溜まっていく。


これはなんだっけ、お母さんが小さな頃話してくれたような……


「あ! それって悪魔の仕業?」


思い出した、悪魔の仕業だ。

禍々しい力を用いて法則に則らないものを作り出すこと!


「いいや、魔法だよ。本で覚えたんだ。すごいでしょ」


リリーは自慢げに胸を張りながら私のバケツにも水を注いでくれる。


「あ、ありがとう! やった、少し楽できたね」


悪魔の仕業じゃないなら凄い便利な物だ。

魔法ってものが良く分からないけど、なんだか楽しそう!


「ねえ、私もやりたい!」


私がピョンピョン跳ねるとバケツからも水が溢れる。

やべっ。


「うーん。私は魔法の本に書いてある魔法は大体使えるから本かしてあげようか?」


リリーは少しの間悩むように首を傾げたが、やがて頷き言った。


「いいの?」


「もちろん」


リリーはにこやかに笑った。


「ありがとう!」


私はバケツを地面に置き、頭を下げる。

ありがたや。


「じゃあ、太陽が真ん中に来たらここで待ち合わせね。ああ、そろそろ帰らないと村長様に怒られちゃう」


リリーは空を見上げて口を押さえる。

空がだいぶ明るくなってきている。


「分かった。じゃあね」


水の入ったバケツを振り回しながらリリーは去って行った。

私はその後ろ姿に手を振る。

気付いてもらえるからさておきね。


あれ、でもなんでリリーは魔法を使えるのに広場の近くまで来たんだろう。

悪魔の仕業に酷似してるし、見られたら困るのだろうと、自己解決する。


私も寒いしさっさと家に帰ろ。

はあ、と白い息を吐いてバケツを持つ。



「おかえり、カレッド。ずいぶん早く帰ってきたわね」


お母さんは朝ごはんのパンを焼きながら、ベーコンエッグを用意している。

ベーコンがカリッと焼けた様子を想像するとお腹が鳴るな。


「ただいま、お母さん、姉さん。また寝ていいかな」


あくびをしながら自室のドアノブに手を掛ける。

もうダメ、ねむすぎるわ。


「駄目! ずるいぞーカレッド」


カラフルな洗濯物を物干し竿の上に掛けていたキレッドは目を鬼にする。

なんだなんだ? 羨ましいのかい? 早く仕事が終わること、羨ましいのかい?

私はキレッドに微笑みかける。


まだ太陽はすこし山の間から出ている程度だ。

空はまだまだ昼には程遠い。


「私が洗濯をしているんだから手伝いなさいよ。そうじゃないとお父さんが帰ってきたときに怒られるよ」


私のお父さんは冒険家なので家に帰って来る事は少ないのだ。


でも少なくとも私はちゃんと自分の仕事やってるから怒られないもん。

キレッドこそ、やらないと怒られるのではないか? と睨む。


「やったらベーコンエッグ分けたげる」


キレッドは優しい笑みをたたえながらそう提案してくる。

姉の方が一枚上手だ。


「はいはい。分かりましたぁ、やりゃいいんでしょ」


私はあっさり折れ、洗濯物の入ったカゴに手を伸ばす。


「はいは一回」


キレッドは洗濯物を干しながら文句を言う。

本当に細かい奴だな、やらないよ?


そう思いつつもベーコンエッグは欲しかったので渋々といった体で冷たい洗濯物のシワを伸ばす。



「カレッド、キレッド、ご飯が出来たわよ」


最後の一着を干している時にお母さんが呼びかけて来る。

太陽はようやく普通に見えるようになった。

まだまだ予定よりは早そうだ。


「いやぁ働いた後のご飯は格別だよね」


キレッドはスープの入った器を運ぶ。

私はパンの入ったバスケットを運ぶ。


「働かなくてよければ良いのになー」


「カレッドがそんな事してたら家追い出すから」


そんな事をキレッドは笑って言う。

なんだと、私の価値は働くことだけなのか。


「近頃は物騒だからね。追い出されたら最後ね」


お母さんもクスクス笑う。

THE ENDだったら笑ってられないよ、そんな余裕皆無だよ。


準備が終わり、皆が食卓につく。


「「「いただきます!」」」


その後、食事開始だ。


「でも現時点では働いているのだからダメだよ」


パンをスープにつけて食べる。

今日のスープはコーンスープだ。

パンにいい感じに絡まり、パンをふやけさせてくれるので食べやすいです。


「文句タラタラだけどね」


そう言ってキレッドはベーコンエッグを半分に切って寄越す。

おお、ありがたや。

いやいや、正当な報酬だね。


「はーい。ありがとさん」


半熟タマゴが最高だね。

塩コショウの軽くかかった白身は少し塩辛くておいしい。


「モノで釣れるなんて、単純だなぁ」


キレッドは小さくため息をつく。


「ごちそうさま」


私はキレッドの言葉を無視してさっさと食べて食器を片付ける。


早く魔法を習いたいの、まあ、キレッドの言葉に少しムカついたというのも大きいけど。


「今日はお代わり要らないの?」


お母さんが食べながら尋ねる。


「うん。用事が有るから」


そう言って、適当に荷物を揃え、靴を履き、家を後にする。


太陽はだいぶ登ってきていた。




「おお、早いね」


私は早く来たつもりだったがリリーはもっと早く来ていた。

片手には本を持ち、逆の手を振っていた。


「魔法って言われると気になるからね」


ずいっとリリーの方へ身を乗り出す。


「へぇ、そうなんだ。これがその本ね」


リリーは軽く引いていたが、本は手渡される。


ずいぶん表紙が劣化している。

それに分厚いな、重いって事だ。


「それ、読めないと思うから教えてあげるよ。カレッドさぁ、文字習ってないでしょう?」


「え、そうだけど。そんなにいろいろしてもらっていいのかな」


私は少し申し訳なく、こんないいチャンスで迷っていた。

でも、文字読めないと宝の持ち腐れになっちゃうのか。


「友達だもの。でもこのことは誰にも言っちゃ駄目だよ。二人の秘密だから」


リリーはそれが守れるなら魔法を教えてくれるといった。


「分かった。誰にも言わない。だから教えてください!」


即座に土下座のスタンバイに移行する。


「す、スライディング土下座要らないから!」


「ああ、うん。分かった」


私は立ち上がって頷く。

確かにやり過ぎだろうね、うん。


「とりあえず今日は一番簡単な水属性の魔法と行きましょうか」


リリーは本を開いて、授業を始めた。




そうして半年後には全属性の初位魔法が使えるようにはなった。




「ふう。これで初位魔法はオッケイかな」


リリーは苦笑いで告げる。


リリー曰く普通の人間でも初位魔法を覚えるのは三か月くらいで出来るとか。

要するに私には才能がないのだ。

リリーも直接は言わなかったが。


というか申し訳ない、リリーの本業の時間を削ったのにこの有様だし。


「えっと、メイドの修行つけてあげようか? お姉さんもやっているみたいだし」


そういえばリリーは一人前のメイドか。

メイドは仕事として使える。


「うん、魔法は初位が使えれば全く問題ないんだもんね」


「もちろんだよ。メイドは何が起こっても使える仕事だと思うからやってみる価値有ると思うよ」


今度はメイドのいろはを習うことになった。



二年後、私は十歳になった。


毎日初位魔法とメイドのいろいろを練習してきたのでそれなりに出来るようになってきた。

魔法は時々やらないと出来なくなってしまうからね。

楽器と同じだ。


それはさておきここ一週間くらいリリーを見かけない。

私は毎日表通りから外れた待ち合わせ場所には行っているのだが来ない。

リリーが勤めてる村長の家にもいないのだとか。

いったいリリーはどこへ行ったのだろうか。


「お母さん、リリーどこにいるか知らない?」


ソファーに座って本を片手に一服していたお母さんにたずねる。


「え? リリーちゃん? キレッドは知らない?」


お母さんはキレッドにも話を振るが、返答は芳しくない。


「知らないよ。村長さんの家に居なかったの?」


「村長さんも突然居なくなったって言っていたんだよ」


村のみなにも聞いたが誰一人リリーの消息を知らないらしい。

変な様子もなかったと聞く。

私から見てもおかしなところはなかったんだけどな。


どこにいるのだろう。

突然消えるなんてらしくない。


その気持ちのもと、私は毎日リリーを探してまわった。




ある日私は裏の山を探しに行った。


少し危ないからと探すのを後回しにしていたが、他に探す場所もないので意を決して行ったのだ。

魔物が出ても初位魔法だけで何とか倒せるものばかりだった。

初めこそ魔物が怖くて足がすくんだりしたが、慣れてくるとバンバン倒せた。


そんな魔物が出る、村人さえ入らない山奥でリリーらしき人物を見つけた。


この辺は魔物も中々強く、初位魔法では手こずる相手ばかりだ。

こんな所にいるはずないか、そう思って帰ろうとした時、空色が目に入る。

リリーの髪の色と同じ色、もしかして。


「おーい、り」


言いかけて口を塞ぐ。

呼吸すら止めようと意識を集中させる。

音を立てないよう茂みに体を埋める。


リリーそばには知らない男がいたのだ。


長身で銀髪。

顔は端正だが話しかけてはいけない雰囲気を放っている。

端的に言うと危険。


「リリー、それでこの村のやつらは魔法をよく知らないんだな」


男が口を開く。

俗にいうイケボな声だったが人差し指には火が灯っている。

禍々しい力、とても濃い魔力を放っている。

そして、リリーらしき人物はやはりリリーだったらしい。


「はい、調べた限りでは。ここに敵は紛れているのですか?」


リリーの声音はいつもより固い。

心なしか肩も強張っているように見える。

緊張しているのかなんなのか。


「まあ、俺は断定できないが彼がいそうだと言ったのだからいるに違いない。俺はただただ仕事を遂行するだけだ」


男は小さく笑い、そうだろう? とリリーに同意を求める。


「そうですね。疑った訳ではないよ……じゃなくてないです」


リリーも強ばる肩が少し緩み、普段に近い笑顔を浮かべる。


「ああ、いままで村長から色々聞き出してくれて助かった。これで俺も余計なことをしないで済む……誰だ!!」


体勢を変えようとした時草がガサっと音を立て、男は話を切り即座に私の方を振り向く。

リリーも焦ったように振り返る。


「え、カレッド!?」


リリーの驚く顔が見えたか見えないうちに男性は私に向けて炎属性の魔法を放ってくる。


リリーや私が使う魔法とは格が違う。

初位魔法でないこと以外何もわからないレベルの炎が私の背中に向けて打ちだされる。

私がよけた炎は周りの木に当たり、一瞬で燃え上がる。


それでも男性は炎を出し続ける。


「知られてはまずいことを聞かれてしまった。殺したいのだがちょこまか動くから外れてしまう。どうせならこの村もそのまま勢いでやってしまおうか。どうしようか」


男は嬉しそうで声が弾んでいる。

説明口調で、暗にお前が大人しく殺されれば村には手は出さないと言っているのだ。

顔は振り向くことが危険なので見えないが歓喜に満ちているだろう。


つまり追う側である男は余裕綽々なのだ。




そんな無茶な炎から命からがら逃れきり、私は家へ転がり込んだ。

男性が手加減していたのかは知らないが、結果オーライ。

しかし、あの男がこの程度で手を引くとは思えない。

リリーとの関係も気になるし。


しかし山はもう火の海だ。

戻ることなどできない。

ならば急いでお母さんに知らせなくては。


「ど、どうしたの? 服が焦げているじゃない」


お母さんが出てきて少し驚いたような声で言う。

窓の外はまだ青い空が見える。

煙に汚れた空でない


「お、お母さん。町がやられる。男が炎を出しながら来たんだ」


火傷したところを治癒魔法で直そうとするが男性が放った炎が強力だったからか、全く効果がない。

焦っているせいで発する言葉は支離滅裂になる。


お母さんは心当たりがあるのか考える顔をしていた。

そして私の焦げ具合を見て冗談ではない事を悟り、頷く。


「それは、魔法ね?」


お母さんは私に本来知らない筈である単語を訊ねる。

それはここでは悪魔の仕業だと思われているはずでは、と思うが、確かにあれは魔法だったので頷く。


ここでは余計な事情、理由を聞いている暇はない。


「そう。分かった」


外からキレッドが息を切らせながら駆けてくる。


「悪魔の仕業だ! 村が火に!」


キレッドも所々焦げている。

言葉が成っていないのも同じだ。


しかし私はそんな事は放って耳を疑う。

もう村が燃えているだって?


あまりの男性の仕事の速さに吐き気がする。

冗談だって言ってよ。


「逃げる人たちに向けて炎を放っている男性がいたんだよ。ほとんど焼かれてた。炎に包まれていたんだ!!」


キレッドは半泣きだ。

それは仕方が無い、私も半泣きだ。


窓から外を見るとキレッドの言った通り火の海になっている。

人々が逃げ惑って、転けて、その背後から火が飛んでくる。

外は逃げようとする人々の叫びで満ちている。


「もうすぐこの家にも奴が来てしまうよ、どうしよう! お母さん」


キレッドは頭を抱える。

声は震えている。


お母さんは寂しそうに俯いてから覚悟を決めた目でわたし達を見る。


「とりあえず、裏口の方へ行って」


そして、決意を固めた様子で言う。

要は逃げろという事だ。


「お母さんは逃げないの?」


「そうだよ、逃げようよ」


焦げたわたし達は母に哀願した。

一緒に逃げようと。


「彼が狙っているのは恐らく私。私がおとなしくしていればこの村から去ってくれる。むしろ私が抵抗を続けると貴女たちにまで危害が及ぶ」


そんな風に言い合っていると、あの男の声が聞こえてくる。

鳥肌がたち、寒気すらする透き通った声。


「ここが最後の家だろうか。やっと仕事完了か。本当に手間が掛かる」


「早く行きなさい! 行け!」


お母さんが私たちを押して叫ぶ。

もう、逃げるための最後のチャンスだ、そう言っているのだ。

今を逃せばもう後はない。


「行くよ、カレッド!」


キレッドは口をキッと噤み、私の手を握る。

その表情からはキレッドもお母さんと共に行きたいという意思が見て取れた。

私も軽く泣きながら頷く。


「お母さん!!」




私たちが家から出る瞬間、家は男の炎で真っ赤に染まった。

焦げる木の匂いとあたりに響く男の笑い声から私達は必死に逃げた。


振り返ると、何も私たちの後ろにはなかった。


卑しい笑い声をあげる男も燃える家もリリーも村も。

村だったものはただの平地になっていた。

男の炎はすべてを焼き尽くしたのだ。


「あ、あは。有り得ないね。村、無いよ」


キレッドは笑いながら涙を流す。

それを拭う物はなく、ただただ流れ続ける。


「ほ、本当だ。お母さんも焼かれたのかな」


「そうじゃない? 私はもう……もう。何が何なのかわからないよ」


「姉さん……私らももういいのかもしれないね」


涙が枯れ、なおも笑い続ける私たちに手が差し伸べられる。


「何がいいのかね? 君たち格好を見るにメイドみたいだけど、働かないか?」


「そうね! 可愛いメイドさんたちだし。今仕事がないならどう?」


二人組の男女が道路に座り込んだ私たちに声をかけた。

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