初回の依頼2
うーん、案外すすまない。
今度はキャラが多いからなぁ。
さっそく皆で近隣に聞き込みを始めようとするが、ライトが引きとめる。
「ちょっと待て、まずはこの廃墟を一通り調べてからのがいいんじゃないかな?」
「確かに、本命が他にいる可能性もあるからな。」
レーベンが同意し、率先して調査をする。
しかし、それは少し前にやっていた慎重な調査ではなく、残りの部屋を確認するだけの大雑把なものだ。
「えーっとだ、餌皿、食べ残しのような鳥の骨らしきもの、干し肉の欠片らしきもの・・・・・・。
近隣住民への聞き込みは必要か?」
レーベンは明らかにここで飼われていたかのような様子を彷彿とさせる物品にあきれている。
「僕は必要だとおもうんだ。
餌をあげていたにしても年齢が若いかもしれないし、ある程度の年齢なら逆に何故自宅で飼おうとしないかとか気になるからね。」
「確かにそうです。
きっとやむにやまれぬ事情があったに違いありません。
私だって、犬を飼いたかったんですが、両親が動物苦手で・・・・・・」
アルナの個人事情はおいといて、何にしても聞き込みしてみないと判らないのは確かだ。
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「・・・・・・ぃってらっしゃい。」
レイブが憮然として -普段から同じ調子なので判らないが- 残りの皆を送り出す。
聞き込み二班、留守番一人という形で別れた。
ライトは貴族という事で、色々立場のある位置で探れる。
アルナは神官なので、貴族を警戒しているかもしれない住民の緩衝材になる。
レーベンはしっかりしており、ルーシーは一人にするのは逆に怖いから、しっかりしたレーベンがフォローしつつ、ほのぼのした雰囲気で聞き込みにプラスになると判断しての事だ。
レイブは聞き込みでは、喋らない、威圧的、でかいと三重苦が揃ってしまい、犬がどっかいかないように、また四人がいない間に誰かきたら引きとめるようにということで残っている。
レイブと子犬の距離は、妙に遠い。
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「レイブ犬苦手みたいだったけど、大丈夫かな?」
「えっ! そうだったんですか、それは悪い事をしました。
しかし、それならば苦手を克服するいい機会だと思います。」
「確かにね、それにこれからの行動しだいでは・・・・・・。」
ライトとアルナは雑談しながら、近隣のちょっとした広場になっているところを目指している。
ライトが何かを言いかけたときに、丁度井戸端会議をしているおばさんたちが目に入る。
「あ、あそこの人たちに聞いてみよう。
ちょっとすいませーん。」
「あら、どうしましたか?
何かありました?
あらあら、かわいらしいカップルだこと。」
「カップルなんて、そんな。」
アルナが顔を真っ赤にして黙り込む。
「すいません、えーっとちょっと聞きたいことがありまして。
あの廃墟に住み着いてる犬なのですが・・・・・・。」
ライトはスルーして聞き込みをはじめる。
「あら、その事ね。
それなら聞いてくださいな。
この辺りの有力者なんですが、犬を毛嫌いしていて私たちも犬を飼えないんですのよ。
下手に飼っていたら、色々な嫌がらせを受けて犬を手放すかこの辺りから引越すしかなくなってしまうの。
まったく、先代や先々代は逆に大の犬好きで、世界中から変わった犬を集めてたりしてたのに。
誰に似たんでしょうね、あの人は。」
それからは、マシンガンのようにその有力者の愚痴・不満・不平が放たれる。
全て話を聞いた頃には、既に二時間程経過していた。
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レーベンとルーシーは逆に周囲の家を一軒一軒地道にまわっていた。
色々な年代の人間からの意見が聞けていた。
「さてと、ここは子供がいるみたいだな。」
「えー、なんでわかるんですかー、超能力ですかー?」
「魔法は超能力みたいなもんじゃないのか?
まあ、判るのは子供用の服とかが干してあるからだよ。」
「なるほどー。」
ひとしきり話を終えると、レーベンはノッカーを叩く。
「すいませーん、ちょっとお話いいですか?」
ガチャっと音を立てて玄関が開かれ、そこには子供が居る。
レーベンの予想通り子供が居たわけだが、大人は居ないのだろうか?
少々無用心な気がしないでもない。
「おとうちゃんとおかあちゃんは、今日は居ないからおひきとり下さい。」
「あー、きみたちでもーいいのー。
あの廃墟にいる犬コロって知っているかなー?」
躊躇するレーベンを尻目に、ルーシーがあっさりこどもに犬の事を聞く。
「あっ、あの子は僕がかうの!
今、おとうちゃんとおかあちゃんをせっとくしてるんだから。」
「そっかー。
がんばってねー。
それじゃ、おねいちゃんいくねー。」
それだけ聞ければ十分とばかりに、玄関を閉めて次の家に聞き込みにいく。
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暫く、遠巻きにレイブは子犬をみていた。
そして、レイブの威容が怖いのか、子犬に餌をあげに来たと思われる人は、そそくさと去っていく。
数時間後、お腹が減ったのか、レイブに近づいていく。
「・・・・・・くるな。」
そして数時間後
「・・・・・・食え。」
レイブが離れたところから、干し肉をちぎって子犬に渡す。
こうすれば、近づかないということを学習する。
しかし干し肉を食べきると次を催促するために近づく。
結局、レイブの干し肉、一食分使い切ってしまった。
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「レイブおなか減っていない?
ごはん買ってきたよ。
今日は、この廃墟に泊まって色々相談しよう。」
街中ということもあり、あちこちにお店が出ており、ライトは夕飯になりそうなものを見繕って買ってきている。
宿屋にとまってもいいのだが、この子犬の事をそのままにしておくのも憚られたし、宿賃の節約にもなるし、なによりこの子犬と遊べるのだ。
誰も反対せず、この廃墟に泊まることとなった。
レイブと子犬の距離は少し縮まっていた。
次で一区切りするかな。
依頼主の人物像次第だけど、うーん、碌な人間でないような。
そんなこんなで、まだ考え中です。