初回の依頼1
本編始まりました。
ペースは適当です。
書いたら当日の22時投稿な感じです。
22時越えて書いてたら、翌日の22時になります。
廃墟になっている小民家で、5人の駆け出し冒険者が緊張を持って佇んでいた。
「おいおい、こいつげんきだなぁ。」
「かわいらしいですー。」
「俺は猫派だが、かわいいものはかわいいな、うん。」
「病魔退散もしておりますし、後は少々お待ちを。
虫下しを調合いたします。」
「・・・・・・。」
改めて、5人の駆け出し冒険者が和気藹々と和んでいる。
真ん中には、茶色い子犬が一匹コテンという感じで座っている。
ライトが見つけて、構いにいったのだが、アルナに止められアルナは病魔退散をかけて、手足や口内などの状態を見てOKを出してから皆がかまっている。
狂犬病等の対策はばっちりだ。
何故か大男のレイブだけが引き気味に距離をとっているのだが・・・・・・。
「しっかし、それらしい魔物いないな。」
「どこかに隠れてるやもしれません、油断は禁物です。」
真面目に小民家の中を探索しはじめたレーベンとアルナ、ライトは子犬をだっこして持ってきている。
「それより、そろそろ虫下しできたんじゃないかな?
最後に魔力を注ぐって、変なレシピだけどだいじょうぶ?」
「ライト様とはいえ、暴言は許しませんよ!
太陽神の魔力を注ぐ事で、体内から浄化されるのです!」
腹の中に灼熱の太陽が発生するのを想像し、ライト、レーベンは左右に頭を振る。
考えない方がよさそうだ、薬として効果があればいいのだから。
「では、ライト様、子犬の口をあけさせてくださいな。」
「ああ、これでいいか。」
小さい黄色い丸薬が犬の口内に放り込まれる。
ケヘン、ケヘン
子犬が少し苦しそうに席をして、ライトの手から離れて小さく跳ね回る。
「おいおい、大丈夫か?」
レーベンが心配そうに、何かあったら動けるように油断なく構える。
当然、魔物に対してではなく、子犬に対してだ。
「しかし、何故魔法に虫下しがないんでしょうか?」
「あー、それはー、生物っておおかれすくなかれ共生してるからですよー。
もし、そんな魔法を開発したらー、即死魔法と変わらないですよー。」
ルーシーは魔術師であり、錬金術師でもあるから、知識は色々あるようだ。
しかし、薬を作るのはここは錬金術師の出番だったような気がしないでもない。
「ちなみに、私がつくる薬を場合は、まず胃薬から作るのでー、時間がかかりますー。」
誰に向かって言ってるのか、ルーシーが補足する。
「ところで、ルーシー、依頼書に魔物の特徴とか書いてないのかな?」
「えー"ヘルハウンド"ですね、別名"黒妖犬"ですねー。」
思わず、皆は子犬の方をいっせいに見る。
つやつやの茶色い毛並み、愛らしい体躯、即座に否定する。
「柴犬だしな・・・・・・。」
レーベンの呟きには、誰にも聞こえていなかった。
子犬は飲み込んだ丸薬を吐き出そうと、懸命に吐き出していたが、丸薬は出てこずに炎が口から発せられたのが同時だったのだ。
「・・・・・・退治する魔物、こいつだ。
ゆくぞ。」
レイブが一番に躊躇なく、背の大剣を抜こうとして天井に柄がぶつかる。
この小民家は天井が低いのだ。
レイブの獲物はあまりにも大きすぎる。
「あー、このこでしたねー。
多分、覚醒進化というやつだとおもいますよー。」
覚醒進化というのは、隔世遺伝の一種で、祖先のどれかにヘルハウンド等の同系統の遺伝子を持つ魔物と動物の混血の果てに生まれる。
ちなみに、どれだけ強くなっても犬がヘルハウンドになったり、コボルトになったりすることはない。
「レイブ、無意味な殺生はやめないと。
それより、駆け出しの僕等が割りのいい依頼を振られた訳がわかったよ。
これは、こいつをこのまま討伐するのは悪手だとおもう。」
「ライト様、魔物相手に慈悲の心は禁物です。
・・・・・・・・・・・・卑怯です!」
ライトは子犬を持ち上げて、アルナの前に無言でもっていき、子犬も止めとばかりに小首を傾げる。
「まあ、ライトはこういう奴だとわかってるだろ。
今後の事をここでかんがえようぜ。」
「それに、この子が近隣住民にどれくらい迷惑をかけてるのか調べてからでもおそくないんじゃないかとおもうからね。
多分だけど、襲われたのは極々一部だとおもうよ。」
5人は廃墟となった小民家で頭をつき合わせて、ああでもないこうでもないと話し合う事になる。
ひとり、レイブだけは、輪の外に佇んでいた。
レイブは犬が怖いです。
トラウマなのです。