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カガミ装飾店

結果から書くと結構たいへんだねぇ。

ここはカガミ装飾店。


そこで店主は青い顔をして、ライトは楽しげに薄っすらと笑っていた。


目の前には一枚の用紙と、魔法板ボードの二つ。


「・・・・・・判った、言うとおりにしよう。」

震える声を抑えながらも、しっかりとライトに回答を返す。


「一人でも漏らしたら、どうなるか理解していてくださいね。」

ライトは用紙を筒にいれて足取りかるくカガミ装飾店から出ていく。


後に残ったのは、震えを抑えようと拳を握りこむ店主が一人たたずむだけであった。

握り込んだ拳からは、血が数滴こぼれていた。


---

・・・少し前。

話が終わってすぐに、ライトは足取りも軽く拠点の倉庫に向かっていた。


様々な素材や、はてはガラクタまで雑多に積み上げられている。

ルーシー特性の防腐魔法で中のものは腐らない。


時として醗酵や腐敗が必要な素材もあるが、そういうのは別途保存している。


そうして引っ張りだしてきたのは、一枚の絵画だった。

見た感じ時代は古いものだろう、書かれているのは肖像画で着ている服からみるに高貴な生まれだとおもわれる。


そしてもうひとつ、絵葉書サイズの絵・・・・・・と一緒に保管されていた封書から紙を取り出す。


小一時間程度経過した後、ライトは一枚の絵画を持ってカガミ装飾店へと出向いていく。


---

「キッシュ家のライトです。

 色々とお話を持ってきました。」


「キッシュ家の・・・・・・。

 ぉおどうぞどうぞ、もう一般のお客も来ない時間ですので貸切で対応できまずぞ。

 キミ、お茶とお茶菓子の用意をしないか!

 すいませんな、とろい使用人ばかりで。」


偶然にも店主がいたようで、店を締め切るように従業員に指示をだし、ライトに席をすすめる。


「いえいえ、僕としても急な事で申し訳ない。

 しかし事は一刻を争うと考えてのことなのでご容赦願いたい。

 それに、このような無作法な人間の対応に従業員や使用人がお叱りをうけるのは申し訳ないとも・・・・・。」


ライトが素直に謝罪して、勧められた席に座り絵画を椅子に立てかけるように置く。


「いえいえ、このような事日常茶飯事ですからな。

 申し訳ないなどと、こちらのが申し訳ないことですぞ。」


店主はもみ手をしながら立てかけられていた絵画に意識がとられているようで、そちらに視線が自然と動く。


「ありがとうございます。

 不躾ついでで申し訳ないのですが、まずこの鑑定書から見ていただけますか?」


「ほう、これはうちの鑑定書ですな。

 はあはあ、3年前の日付ですが、間違いありませんな。

 サインの癖も書式もうちのものです。」


店主はためらいもなく鑑定書が本物であることを認める。

内心は『ああ、ボッチャンが金ほしさに実家のものでも売りに来たかな、買った元なら確実だろうと考えたんだろうが、これをネタに大騎士のキッシュ家に縁を作る事も、借りにすることもできるな』といったことを考えていた。


ライト自身は無名ではないものの、ちょっと有名という程度で、流石に大騎士の名には大きく劣る。

そして、一代で成り上がった者の息子であるなら、こういう内心も判らないでもない。


しかし、ライトに対してあっさり認めてしまうのは、余りにも悪手であった。


「なるほど。

 では、これはこの絵画の保証書なんですね?」


「ええと、ああ確かにそうなっておりますな。

 絵画の紙の年代も古いようですし、タッチも当時の画家"ゴルッホ"のものと同じですし。

 ぱっと見では判断できませんが、鑑定書もあるならば間違いないと判断しますぞ。

 それで、目的はその絵画の買取りという事でしょうか?」


それを聞いてライトは深く深く溜息をついて大仰に頭を片手で覆う。

椅子から急に立ち上がり、店主に指を突きつける。


「認めたね。

 この絵画は、とある僕の友人が書いたものだ。

 それを、キッシュ家に売りつけた!

 僕の友人、そして我がキッシュ家を侮辱した罪はとても許されざるものと知れ!」

ライトは激昂した声で店主を断罪する。

いきなり豹変したライトに店主はあわてたように鑑定書を食い入るように再度見直す。


「自らが発した言葉を翻すつもりか!」


「・・・・・・ところで、ライト様はお一人で?」

ライトの追加の言葉に、あわてることを止め落ち着いた声で問いを発する。


「そうだけど、そうだとしたら僕をどうするつもりかな?」


「そうさのう、偽者の絵画を売りつけようとして、ケチを付けられた馬鹿な成り上がり騎士の息子が無茶をやって取り押さえられた。

 暴れるのでもみ合いになり、不幸な事故が起こったというのはよさげではないかな?」

確かにライトは丸腰、武器の類は携帯せずにいる。

服も普段着の状態でいるところ、奥から警備の人間らしい男が6人程現れる。


店主がなんらかの合図を送っていたのだろう。

短剣を持った戦士風の男が3人。

軽装で短い杖をもった魔術師風の男が2人。


短剣や短い杖なのは、店内ということを考えての装備なのだろう。

そして、感じ取れる実力から推測するに、戦士達は2人ででもライトの剣術では対抗できず、魔術師は1人でもライトの魔術で対抗できないと判断できた。


ライトは、冒険者としての剣術・魔術は、全て中級程度で停滞している。

器用といえばいいのだが、一芸に秀でているものには敵わない。


「おー、最近噂のライトさんじゃないですか。

 いやー、あんたを懲らしめたとあれば俺らも名が上がるってもんだ。」

どうやら、ライトの事を知っていたらしい戦士の男は冒険者でもあるようだ。


「なんだこいつはキッシュ家の息子というだけじゃないのか。

 下手に有名なやつならやっかいだぞ。」


「あー、大丈夫ですよ。

 こいつ程度ならゴロゴロしてる世界ですんで問題ないですよ。」

敢えて、ライトの仲間については言及せずに店主に言葉を返しつつ、5人で陣形を組んで近づいていく。


「しょうがないな、出し惜しみなしで行くよ。

 "-式神- 人形兵生成"」

どこかからか5枚の紙を出し、投げ放つと掌に載りそうな人形が5体現れる。

その姿は、敢えて例えるのなら、飛騨のサルボボが近いだろうか。


その人形は紙だけあって軽いのか、飛び上がって顔辺りに向かって空中を突進する。

本人は、椅子からは既に立ち上がっていて大きく距離をとる。


「どこぞの別系統の魔法か!

 しゃらくせい!!」

見たこともない魔法にあわてて短剣を大振りに振るとあっさりと弾き返される。


「あぁ、なめてんのか!?」

弾かれた人形はなおも一生懸命男達に向かっていくものの、あっさりはたきおとされる。

しつこくうっとうしく突進してくる。

しつこいかいあって、何度か顔にへばりつくものの、ただそれだけだ。


「ったく、邪魔だぁ!」

丁度となりの男にへばりついていた人形が飛んできたので、その人形を切り裂こうと短剣を振り回す。


「"-呪術式のろいじゅつしき- 共鳴"」

人形の首が飛ぶと同時に、隣の戦士の男が急に倒れる。


「さてと、成功したようだよ。

 いやー、ぶっつけ本番は緊張するね。

 僕も流石に人体実験するのは気が引けるからさ、実践でためさせてもらったよ。」


残りの4人の視線は、ライトと人形の間を行き来する。


「それじゃ僕も大分余裕ができたから説明してあげよう。

 まず大事なことだけど、その人形が壊れたら、君達死ぬから。」


身代わり人形(スケープドール)か・・・・・・。」

魔術師の男が呟く。


「やっぱり魔術師なら知ってるね。

 けどちょっと別物、別に君達が傷を負っても人形はなんもならないから。

 人形兵は符術という系統で、初級の本で勉強して会得した。

 この国には誰も使い手がいなくて使えるようになるまで一ヶ月以上かかったよ。」

普通なら、使えるようになるだけで年単位の修行が必要で、そういった意味でも教える師のいないこの国では広がらなかった背景がある。


「もう一つは、けっこうメジャーだよ。

 呪いで、人形の形をしたものに相手の髪とか爪とか入れて人形を傷つけて害を成すものだし。」

こちらは使えるものはいるものの、元々後ろ暗い人間がつかう怪しい呪術なので、教えるものも少ない。

皆無ではないので、師事することで覚える事は可能だ。


副業で占い師などをしてる人が多いのが特徴だろうか。


「そして、その二つを組み合わせて人形兵で相手につっこんでいって、髪でも唾液でも汗でも皮脂でも取得して、その後に呪いを起動するというものなんだけど、案外うまくいくもんだね。」


人形兵生成は符術で初期の技術だし、媒体を必要とするような呪いも初心者の域をでない。


熟練の符術師なら式神一枚で一個小隊と戦えるし、呪術師も熟練者ならば態々顔をみる必要すらない。


しかし、それらを合成して利用することにより、ライトは自らの足りないところを自らの力で補う。

おそらく、こういった副次的な利用法を活用できるのはパーティーの中でライトだけだろう。


「は、はは!

 おめぇを殺せば同じだろうが!!」

勢いよく向かってくる戦士の前に一体の人形が立ちふさがり、避けようとするも勢いがとめられず人形を弾き飛ばしてしまう。


「ぐぁ、やめろ!

 それに呪いは術者をころしても解けん!

 ・・・・・・ここは話を聞こう。

 まだ殺していないということは、何か要求があるのだろう。」

人形に対応していたのは魔術師だったのか、胸を押さえて戦士を必死に止める。


「ん?

 ないよ、ただ出来たことを語りたかっただけだし。

 ・・・・・・ああそうだ、この魔法板ボードに名前書いといて。

 呪いは明日にでも解いておくから。

 あと店主。」

ライトの要求にしたがい4人は魔法板ボードに名前を書き、呼ばれた店主は汗顔とはこういう状態をいうのだろうかというほど顔から汗をかいている。


「こちらにサインをお願いできますか?

 何、大したことではないですから。」

懐から一枚の紙をだしてサインを促す。

今までの事を考えても、ただの紙ということはないだろう。


「い、いやですなライト殿。

 え、えーとですな。」


「うん、サインしないならそれでもいいよ。

 僕はなにも心が痛まないからね。

 ただ、明日から貴方はどこのだれにも見られない事になるのかもね。」


「・・・・・・わかりましたサインしましょう。」

観念したようにサインをする。

それをつまらなそうに見て、もう一枚紙を出す。


「偽名は駄目ですよ。

 ちゃんと本人の名前でないと。

 あ、魔法板ボードは偽名でも大丈夫だから。」


最初の紙よりもずいぶんと書き込みの多い紙のようだ。

それを覗いた魔術師は目をそらしつつ小声で「えげつな」と呟く。


一枚目は、呪いの人形と似た様な効果で、主となるものが任意に激痛を与えることが出来る。

二枚目はさらに、サインをした者とその血縁1人に対してのみ、同様の効果を与えることが出来る。


「ああ面倒くさいな。

 もう名前はいいや。

 ちょっと手を借りるね。」

ライトは言うが早いか店主の手をとって、掌にナイフで一文字の傷をつけて紙に押し付ける。


「はい、おしまい。

 それじゃ、あの魔法板ボードに従業員全員の名前を書かせておいて。

 そうそう、ちなみに"地図"は僕らが手に入れたから。」


そして、冒頭に戻る。



今回のパターンは服従ということで。


ライトに何やらかさせるか悩んだ。

盗賊、狩人、道具利用とか考えたけど、東洋系魔術におちつきました。


次で一度決着つけてから、日記回かなぁ。

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