別種族
初めての人族以外の人型種族です。
クッキーを食べているその姿は歳相応のようではあるが、目つきや雰囲気はまるで別物となっていた浮浪児にライト達の視線が動く。
「なんかぁ、ここでいろいろするにわぁ、あんたらに取り入ったほぅが良さそうなんでねぇ。
挨拶がてらぁ、もどってきたってぇわけだ。」
最初に発していた子供独特の甲高い声ではなく、渋い大人の声で話す。
「・・・・・・なるほど、貴方は"小人族"かな?
僕も文献で読んだだけですが、たしか器用ですばしっこく手癖が悪いとか。」
ライトが少し考えて浮浪児の正体を推測するが、その話をきいて小人族の男は不快な顔をする。
「言っておくがぁ、俺みたいなのはぁ、旅している奴等だけだからなぁ。
里では皆真面目に生きているんだぁからなぁ。」
小人族の男の話では、これは仕方なく身に着けた特技らしい。
小人族は見た目が完全に子供と変わらないので、仕事を得るのが難しかったのが大元の原因らしい。
子供の手伝い程度の仕事しか割り振られないので、稼ぎも大したものにはならない。
そこで彼等が取った手段は、子供のような外見を利用して油断を誘い懐を狙うというものになっていった。
そして、彼等は彼等でコミュニティがあり、そういった情報を共有していって今に至る。
今では、外に出た小人族は、生粋の盗賊になっていくのが通例になっている。
全員合わせても万に至らない希少性も、彼等への偏見を後押ししている原因でもある。
「すいません、少々言葉が過ぎたようだね。
ただ、僕としてはあなたとゆっくりはなしてみたい。
アルナはちょっと潔癖症の気があるので、いつ戻ってくるか判らない今ここでゆっくり話をするのはちょっと危険だから。
そうだね、後で冒険者ギルドで。
酒場とも思ったのですが、ちょっと難しそうだから。」
「あぁ、そぅしよぅ。
日が落ちるころになぁ!」
小人族の男は、あっというまに消えてしまっていた。
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冒険者ギルドの一室で、ライトと小人族の男が話し込んでいる。
あれから、皆バラバラと帰途につき、ライトは拠点には戻らずにそのまま冒険者ギルドに行き、早い目に交渉などが行われる一室を借りる事にした。
小人族の男は、多少訝しむも酒が飲めると囁かれて、嬉々としてライトといっしょに部屋に入って、今に至る。
「おぉ、ワィンなんてひさびさだぁ。
このナリしてっとぉ、飲酒してっととめられるんだよなぁ。」
「そうだと思ったよ。
ま、いっぱいどうぞ。」
ライトは小人族の男と、自分のグラスにワインを注ぎ、自分が先に飲んで何も入っていないことを示す。
「へへ、そんなきぃつかわなくてもいいぜぇ。
何が入っていても、大体分かるしそこそこ抗体もあぁっからなぁ。」
「それはどうも。
それにしても、何故僕らに取り入ろうと?
貴方みたいな方は、地方の裏組織みたいな人に身を寄せるかと思っていたんだけどね?」
「そうだなぁ。
あぁ、忘れていたよぅ。
名前はレットだ。
そう呼んでくれぇ。
そんでぇ、その理由なんだがぁ、単純だ。
組織がつぶれてぇいたんだなぁ。」
詳しく聞くと、このエルミアラーザにも裏組織、犯罪組織といったものは存在していた。
大きな街でもあるし、そうそうそういった組織が無くなることもない。
しかし、今はその中核である人物が捕まり処刑され、どこに身を寄せるにしても抗争に巻き込まれてしまいそうで仕方がないというのが現在の事情らしい。
それなら、多少制限はされてもこの街で有力冒険者となっている奴に取り入って、合法な仕事がないか相談するのも一つの選択肢としていいのではないかと考えた訳だったりする。
「なるほど、その中核の人物ってのは誰か判っている?」
「あぁ、悪徳な商人として有名だったぁ、タルバン・アルバンだよ。」
「あ~、そういえば奴隷商人狩りで捕らえられてたね。
中々証拠が出てこなかったらしいけど、実際に売られた奴が訴えたことからトドメになったね。
そうなったら、調査/押収の繰り返しで、結構な証拠も出てきたらしいよ。」
レットはその話を聞いて、赤ら顔で少々考え込む。
「それってぇ、国が調査/押収したんだよなぁ。」
「ああ、そう聞いている。
ただ、あまりにも者が多くて、荷運びの仕事とか来ていたから、多少は冒険者も手伝っているとおもうけど。
それなりに、日が経ってるからもう何もないけどね。」
「そんじゃぁ、決まりだ。
今晩、その家にしのびこんでくらぁ。
あんたは何かあったときの後見人になってくれればぁ、文句はないぜぇ。」
なかなか自分の分を弁えた、しかし明確な犯罪宣言だが、ライトはこれに異を唱える。
「だめだな、レットよ。
我輩も連れて行け!」
次回、盗賊のターンです。




