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プロローグ

新しいのはじめました。

今度は、冒険者ものです。

正統派ファンタジーだといいな。

首都"エルミアラーザ"は今日も賑わっている。

買物する客、その客をひきこもうとして呼びかけたり、匂いやパフォーマンスでなんとか引き寄せようとする屋台の主人達。


祭りの時には、吟遊詩人が雇われたりしてさらに人の賑わいは大きくなる。


折りしも、秋の収穫祭が始まらんとしており、賑わいも普段よりおおきく、祭りよりは小さい規模になっている。


そんななか、買物を終えて返ろうとしている一人のお年寄りが人の波に押されて、買物袋から果実がこぼれおちる。

- ポトポトッ、バラバラ、ザザーッ -

そんな擬音が聞こえてきそうなほどだ。

坂道ということもあり、お年寄りは果実を追いかけるが、屈んだ際に再度買物袋から果実がこぼれおちる。


「あらあらあらあら、大変拾わないと。」

状況がわかっているのか、どこかおっとりした調子で落とした果実を拾いだす。

当然ながら、全部拾うのはもう無理だろう。

なんとかある程度確保できたらよいほうだろうか。


「はいはい、悪いけどみんなちょっとストップね。」

よく通る声で通りの人間に別のところから声がかかり、大半の人が思わず足をとめてしまう。


その一瞬をついて、数人の若者達が果実を()()全て回集して、お年寄りに渡す。


「あっ!」

- グシャ -

「わりぃ、踏んじまった。」

動き出した通行人の一人が果実を踏んでしまう。

良くある日常の一コマだったのだが、そのままどこかへ行こうとする通行人の肩が掴まれる。


「おいおい、君そのまま行っちゃうの?」

「あ、ああ、謝ったしいいだろ?」

声をかけた若者は、皆を止めて果実を回収した本人で、片手に果実を入れた袋をかかえている。


「いいかどうか決めるのは、君なのかな?

 少なくとも誰も何も返事返してないとおもうんだけど、自分の中で終われば終わりなのかな?」

「いや、それは、その・・・・・・。」


「いいよいいよ、落とした私が悪いんだ。

 それにあんたが拾ってくれたおかげで、殆ど無事だったんだからね。」

「ほ、ほら、落とした本人もああいってるんだし。」


若者は大きく溜息をついて、大袈裟にかぶりを振る。

「だから、それを君が言うのは間違っているって判らないのかな?」


「おいおい、それくらいでやめてやれよ。」

別の果実の入った袋をもった男が若者を制止する。


「しかしね、反省できるときに反省しないと人間成長しないよ。

 僕はもっとね。」

「ライト様のおっしゃるとおりです。

 小さな悪事も見逃していては本人の為になりません!」

若者の名前はライトというらしい。

これまた、別の果実の入った袋を持った少女がライトの言葉についづいする。


「悪事って、そんなおおげさな。」


「いや、すまない。

 彼女等も悪気があるわけではないんだ。

 少々潔癖なだけでな。」

男が二人をフォローする。


「ああ、僕も言い過ぎたようだよ。

 この方も許していることだし、今回の事はこれで終わりにしよう。

 すまないな、ちょっと熱くなってしまったようだ。」

「いや、まー、えっと、すいませんでした。」

通行人はお年寄りに深々と謝罪し、この場は納まったのだった。


---

「まったくライトはお人よしだよな。

 もうちょっと賢く生きないとやっていけないぜ。」

「レーベンさんがいい加減すぎるんです。

 悪い事は悪いとしっかり言うべきなんですよ!」

「僕もアルナの断罪した言い方はちょっとどうかとおもうよ。

 まあ、きっかけをつくった僕がいうことじゃないけど。」

男性二人は帯剣しており、女性は神官服を着ている。

その後ろに頭一つ大きな男が大剣を背中に背負い無言でついてくる。


「あ、いましたー。

 買物終わりましたよー。」

「「「走るな、ルーシー。」」」

三人の声がハモる。

ルーシーと呼ばれた女性の背負い袋には、はちきれんばかりに荷物がつめられている。

ローブ姿に杖、魔法使いなのだろうが、おそらくローブ姿で走るのは危険だ。


- バタンッ!! -


走る前に、前のめりにこけるが背負い袋は無事だ。

「だいじょうぶー。

 こんなこともあろうかと、背負い袋には保護の魔法をかけてありますー。」

「いや、そもそも転ぶなよ。

 転ばぬ先の杖なドジっ子ってなんなんだよ!」

「?

 言っている意味がわかりませんよー。」

レーベンはしまったという顔をするが、皆言っていることが不明なようで、反応が微妙だ。


「いや、ひいじいちゃんの口癖でな、転ばぬ先の杖ってのは、あらかじめ準備していることを言うんだそうだ。」

皆関心したようにへーっという顔をする。


しかし直ぐに元々の目的を思い出して、ライトは皆にむかって話し出す。

「それじゃ、まずはとにかく依頼をやっつけましょう。

 何か小民家に住み着いた魔物を退治して欲しいとかいうやつだそうで。

 被害は殆どないんですが、近所の買い物客が狙われているそうですからね。

 レイブも屋内戦闘は初めてですから、その大剣で建物を壊さないようにお願いします。」

レイブと呼ばれた大男は頷き、みなの一番後ろからゆっくりとついていき、冒険者の店でもらった依頼を完遂せんと皆目的地に向かってあるきだす。


---

SIDE ライト

依頼をこなした後の宿屋で、魔法板ボードと呼ばれるマジックアイテムに今日の事をつづる。

最近普及してきた紙に変わる情報媒体で、記述、削除、編集が出来る。

いくらでも記述可能な情報媒体なので、紙のように嵩が増えないので重宝している。

魔法板ボードを用途毎に使い分けるのが一般的だ。

そして我輩は冒険者になってから日記として使っている。


1日目

我輩達は、表向き冒険者という職業の者だ。

それだけでは良くわからないので、簡単な紹介をしよう。

【ライト・キッシュ】

各種魔法を使える剣士で貴族

【レーベン・タルト】

身体強化の魔法を主に使う剣士

【レイブ・ムース】

ライトの護衛として購入された奴隷で、元剣闘士

【アルナ・ラフティ】

太陽神に仕える神官

【ルーシー・スフレ】

錬金術も使える魔術師


きっと名を上げるであろう、我輩が選んだ仲間なのだから!

~~~

15日目

今日は、印象操作の練習をしていた。

概ね成功だといえるだろう。


実験に利用したのは、一人の通行人だ。

偶然買物をぶちまけた愚かな民衆の一人が慌てふためくので、いい人ぶって落としたものを拾ってやった。

仲間も同じように行動したのは意外だったな。

とくにレーベンは、厄介ごとに首を突っ込むなと言って来るからな。


通行人の一人が果実を潰したのをいい事に、謝っているにもかかわらず停止させる。

通行人の行動がもっと誠意のあったものなら不可能だっただろうが、そのまま立ち去ろうとしたからな、これはチャンスと思ったわけだ。


謝っている善良な無辜の民に、悪人という印象を与える。

潔癖なアルナの悪事発現で、周囲の人はぎょっとしていたな。


最後に落としどころを見つけて、分かれたわけだが。

今はこれでいい、いずれはこの世界に我輩の名を恐怖で叫ぶようにしてくれるわ!


そのためにも、今はまず気取られてはいかん。

そう、いかんのだ。


---

後に"邪悪なおひとよし"と呼ばれる、ライトの活躍劇は今始まった。

今回は三人称で行く事にしましたが、SIDEも使う事にしました。


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