大掃除
「掃除というやつは昔から苦手でしてね」
「うまいこと言って逃げようとしても無駄だからな」
「どうやら私、他人が汚いと思うようなことでもそんなに気にならないみたいなんです」
「ふーん」
「そこで逆に考えてみましょう。部屋が汚れてるんじゃありません。汚れていると思うからそう見えるだけなんです。汚れという概念が認識されなければ」
「屁理屈こねてないで今日という今日は掃除するぞ。まずはいらないものの処分から」
「この世界にいらないものなんてありません。みな必要とされたから存在しているのです」
「そして不要になったから消えてくんだよ。似非博愛主義はいいから手を動かせ」
「ひゅんひゅんひゅんひゅん」
「仕事しろ。動かせばいいわけじゃないんだよ小学生か」
「あ、懐かしいものが出てきました」
「思い出関連はカサ張らなければ取っておいてもいいけど、極力捨てようね。キリがないから」
「マフラーにしようとした便座カバー」
「捨てろ」
「いやぁ思い出しますねぇ。あの頃はまだ土手でワイワイやってましたっけ」
「そんなに昔の話でもないっていうか一、二ヶ月前の話だろそれ。懐かしくもなんともないよ」
「まだいろいろありますね。あなたと一緒に読もうとしてたエロ本」
「捨てなさい」
「ハロウィンのとき被ってたカボチャ」
「割れてるじゃないか」
「停電のとき使わなかったロウソク」
「SMプレイ用のやつだろ。いらない」
「こうしてみると、いらないものって結構あるものです」
「むしろいらないものしかない……。こんなゴミよく今まで取っておいたね」
「これでだいぶすっきりしましたね。あ、冒頭の紹介文とか締めの文章もいらなそうだったので捨てときました」
「おい! メタ発言はまだしも勝手に捨てるなよ!」
「状況説明のために入れてましたけど、ぶっちゃけいらなくないですかアレ?」
「そんなことないよ! どこで会話してるかって大事だよ」
「<アパート>とか<土手>とか書いておけばいいじゃないですか」
「あっさりー。いやそうだけどさ、なんかこうお約束みたいな文句があると作品に味が出るじゃん?」
「ウンチに味がついたところでウンチです」
「こらっ、なんてこと言うんだ! 品位や体裁を保とうという姿勢が大事なんだよ! 社会を見てれば分かるだろ」
「ですからウンチならウンチらしく立派なウンチであるべきです。ギャグが思い付かなくなったからと言って綺麗に終わらせるような半端ものでは、この先生きのこっていけませんよ」
「それはクリスマスのことを言ってるのか」
「不要なものはまだありますよ。キーワードの土手、夕暮れ、ほのぼの」
「作品の初期イメージまで手放したら、下ネタとメタネタだけになっちゃうだろ!」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
「君だよォ!」




