聖夜の更新2012 シャンパン
「去年のクリスマスって何してました?」
「うーん、よく覚えてないな。とりあえず一人だった気がする。君は?」
「私も一人でした。ですから、今一人でクリスマスを過ごしてる人も、希望を捨ててはいけないんです」
「それを僕らが言ったところで何の説得力もない気がする。なぜかはわからないけど」
「でもクリスマスを一人で過ごしてる人って、そんなに少なくないと思いますよ? 普通にお店で働いてる人だっているわけですし」
「稼ぎ時だからね。ケーキ屋もオモチャ屋も外食産業も大忙しだ」
「ホテルも」
「そうだね。わざわざ付け足さなくていいよ」
「みんな一人です。人間は所詮孤独なんです。今付き合ってる恋人たちはそれに気づいていないだけ……」
「いきなり厭世的になるな。なんかとり憑いてるみたいで怖いから」
「一人だって脳内恋人を作ればいくらでもクリスマスを楽しめます……。むしろそのほうが楽しいじゃないですか」
「君もう寝たほうがいいんじゃないか? だいぶ疲れてるだろ」
「いえ、三時までやると言った以上、私は寝ません。あなたが一緒に寝てくれるなら別ですが」
「……そういえばシャンパン買ったきり開けてなかったな。飲む?」
「いいですね。二人で飲酒するのって、そういえば初めてです。あなたはお酒強いんですか?」
「あんまり飲む機会もないから把握してないけど、あんまり強くないと思う」
「じゃあ記憶が無くなるほど飲みましょう。目が覚めたら二人で抱き合って寝てた、くらいの勢いで」
「大人として節度は守ろうね」
「詮開けてみたいです」
「できるの? じゃあ蛍光灯とか割らないように気をつけて」
「掛け声はどうしましょう? やっぱり『リア充爆発しろ』?」
「ただの嫌味だそれは。なんでもいいから早く開けて」
「レッドアウトゴールデンマキシマムバーニング!」
「なんだその掛け声。いい音したけどさ」
「それじゃカンパーイ!」
「乾杯っておい、そんなに一気に飲むなよ。こんな日に救急車なんて呼びたくないぞ」
「もし酔っぱらってあなたに襲いかかっても許してください。私の意思じゃないので」
「こんな日に警察なんて呼びたくないぞ」




