三年後の未来
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「前回のあらすじ。未来の二人は未だ土手にいるのか、それとももう破局しているのか。気になった私たちは未来に行ってみることにしたのです」
「わあ酷い構成。ちょっといい加減すぎるんじゃないかな。タイムマシンとかタイムリープとか、最小限のギミックがあるべきなんじゃないかな」
「細かいこと言わないでください。元よりこんなセリフだけの手抜き作品にそんなディテールを求めている人なんていないんです」
「それ自分で言ってて悲しくならないか?」
「ナンヤカンヤで三年後の未来です」
「なんかそういう名前の乗り物で来たみたいに言うなよ。過去に戻るときもナンヤカンヤ?」
「戻るときはドウニカコウニカです」
「なんでちょっと苦労してる感じなんだ」
「過去に戻るほうが大変なんですいろいろと。それよりほら、ちゃんといますよ二人とも」
「あ、ホントだ。なんかホッとしたよ。三年後も今と変わってないってなんかいいよね」
「それは人によりますけどね」
「さりげなく毒を吐かないで」
「この位置からだと背中しか見えませんね」
「でもさすがに前に回り込んで見るのはまずいでしょ」
「変装すれば大丈夫ですよ」
「軽く言うけども」
「グリーンベレーごっこをするふりをして匍匐前進で回り込みましょう」
「たまに君の頭の中を覗いてみたくなるときがあるよ。どんな発想だ」
「仕方ないですね。このサングラスを掛けましょう。ついでにアゴをシャクっておけば完璧です」
「確かにバレなさそうだけど……笑うよ」
「お互いの顔はあまり見ないようにしましょう。さあ行きますよ、匍匐前進で」
「その必要はない」
「――さて、真っ正面まで来てみたわけですが」
「うわぁ、ホントに自分がもう一人いる。鏡で見るのとは違って怖いな」
「でもあなた、思ったより老けて見えますね。ヒゲのせいですか」
「うっさい。君はちょっと太ってるんじゃないか?」
「……いえ、あれは太ってるんじゃないと思います」
「いや、太ってるよ。お腹回りとか見ればわかるだろ」
「……そうですね。きっと太ってるんです。それか食べ過ぎです。そうに違いありません」
「あれ? 否定しないなんて珍しいね。どうしたの?」
「わざと言ってるとしたら殴りますよ。あと今あまりこっちを見ないでください」
「え、なんで赤くなるの? サングラスにシャクれ顔で赤面ってグハッ」
「早く過去に帰りましょう」
「……うん」
一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。