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81/2024

オムレツ

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「昨日のお鍋はなかなか美味でした」


「少し味が濃かったけどね。醤油入れすぎなんだよ」


「もしあなたの実家で台所に立つことがあっても、これで大丈夫ですね」


「食材煮るだけの料理できてもなぁ。今日は少し難易度上げて、オムレツを作ってみよう」


「フライパン使う料理なんて人生で初めてです」


「……頭痛くなってきた。まずは卵割ろうか。Lサイズを4つね」


「卵割ったらひよこさんが死んじゃうじゃないですかあ」


「女子力発揮しなくていいから早く割れ」


「力加減が難しいんですよね、これ。死ねっ! 死ねっ!」


「人道を外れろとまでは言ってない。力み過ぎだって。適当なもののカドに軽く当てればヒビ入るよ」


「あ、ホントですね。上手くいきました」


「卵割るのに水道の蛇口使うやつ初めてみた。別にいいけどなぜそこを選んだのか凄く気になる」


「かき混ぜたらいよいよフライパンに投入ですか」


「その前に、今回はプレーンオムレツじゃなくて具入りのオムレツにするから、ひき肉と刻んだ玉ねぎを炒める」


「玉ねぎのみじん切りは苦手です」


「前にも言ってたっけ」


「しかしこんなこともあろうかと、対玉ねぎ専用必殺技を考えておきました」


「へえ、どんなの?」


「目隠し切り」


「バカな真似やめろ。それに玉ねぎの成分って鼻から入ってくるから意味ないぞ。玉ねぎのみじん切りは端っこを少し残して切って、そのあと90度回転させて切るといい」


「おお、確かにこれならすぐ切れます」


「それじゃ、フライパンに少しだけ油をしいて、熱したら玉ねぎとひき肉投入ね」


「グアアッ! 油が腕にぃ!」


「ダメージ受けてないでかき混ぜろ」


「炒まりました」


「その日本語は正しいのか気になるけど、一旦皿に取って次はいよいよ卵を焼くよ。最初はゆっくり混ぜて、ある程度焼きかたまってきたら全体に広げて具をのせて包む」


「これで後はひっくり返すわけですか」


「下手なことしなくていいからね。転がせば大丈夫だから」


「いえ、一度あの投げてキャッチするのやってみたいんです。ほりゃ! あ」


「いらんことするな! 卵が裂けただろうが!」


「でもひっくり返りましたよ。お皿に移して、ケチャップであなたの顔でも描いておきますか」


「グロッ。僕の顔破れて中から肉飛び出してるんだけど」


「あべしと書けば完成です」


「予定調和を装うんじゃない」




 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。

 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。

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