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73/2024

ジョギング

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「趣味探し、まずはジョギングから試してみようということで、昨日ひとっぱしり行ってきました。五キロ」


「健康には良さそうだね。でも初めから走りすぎじゃない? あんまり無理すると続かないぞ?」


「筋肉痛すごいです。死にそう」


「死にはしないだろ。でもやっぱりか」


「うぎー、じっとしてても足がジンジンします。ちょっとマッサージお願いしていいですか?」


「仕方ないな……。やる気になるのはいいけど、のっけからそんなに頑張るもんじゃないよ」


「オリンピックに出ようと思ったので」


「目標がジョギングの域じゃない。そこで見栄はってどうする」


「どうせやるなら一番になりたいじゃないですか」


「その真剣さは別の場面で発揮しろよ。息抜きでも気分転換でもなくなるから」


「あ、太ももの内側のほうお願いします。ふくらはぎも」


「はいはい」


「もっといやらしくこねくりまわしてください」


「なんだその言い方。こう?」


「ああ、そうです。でももうちょっと右……あ、行き過ぎです……ああ、そこっ……あんっ……あんっ……ああん!」


「変な声出すな!」


「いやぁ気持ちよくって。あなたマッサージのセンスありますね。趣味にマッサージなんてどうですか?」


「百パーセント君の都合じゃないか。僕に何の利益もない」


「女性の体を思う存分触れることが利益ではないと? 今だって別に関係ないとこ揉んでもいいんですよ?」


「……確かにこれ、精神の鍛練にはなるかも」


「カーマ・スートラとか読んで勉強したらいいと思います。たぶんもっと気持ちよくなれるので」


「それマッサージの本じゃない気がする。で、今日は何キロ走るの?」


「この筋肉痛で走ったりしたら足が千切れ飛びます」


「オーバーにもほどがある。まあ今日は休めば? 夕飯にするから運ぶの手伝って」


「うぐぅっ……一歩も動けません」


「おい。五キロ走ったくらいでそこまで酷いわけないだろ」


「この分だと一人でお風呂に入るのも無理そうです。あとで一緒に入ってください」


「じゃあもう今日は風呂に入るな」


「これで筋肉痛が治ったらまた五キロですねー。一日おきに動けない日がくるわけですかー。大変ですねー」


「……もうジョギングするな」


「あなたが言うなら仕方ありません。他の趣味を探しましょう」


「僕をギブアップの口実にするな」




 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。

 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。

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