戦いの終わりに
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「いやぁ魔神ロミアスは強敵でしたね」
「おい」
「それにしても戦いの後に夕日を見ながら、土手で黄昏るというのもまた味があります」
「何してるの? 何これ? え、却下だって言ったよね?」
「似合ってますよ。テペヨロトルの鎧」
「着てないからそんなよろよろしてそうな装備。あとなんだタイトルも『土手−ONLINE−』って。清々しいくらいオフラインだよ」
「ここは仮想世界ユウグレイの土手――」
「君の勝手なイメージを押し付けるな! ねぇ、そこまでしてアクセス数伸ばして何がしたいの? アクセス乞食のヒロインなんて聞いたことないよ?」
「目的はもちろんランキングに載るためです。私の出てる作品がこんなレベルなんてありえません」
「ありえないのは君のプライドの高さだろ。そもそもこの作品、ポイント評価受けつけてないからランキングとか多分無理だよ」
「……は? なぜ?」
「見ての通り文章は会話しかないし、ストーリー性に至っては皆無じゃないか。評価できないから受けつけても意味ないでしょ」
「な、なんということを!」
私は思わず立ち上がって叫んだ。
「いきなり地の文を入れるな」
彼が冷静に突っ込む。
しかし私は穏やかでいられない。
今まで費やしてきた数々の努力や工夫は、一体なんだったというのか。これではただの道化。アクセス数という偽りの黄金を掴まされ一喜一憂していた己が、なんとも浅ましく恥ずかしい。
「い、いえ、まだ手はあります。あなたが異世界にトリップするか、仮想世界に閉じ込められればいいんです」
「ここまできて超展開過ぎる。僕、戦うとか無理だし」
「大丈夫です。異世界でのあなたは無敵の主人公。さぁ、チート的な能力を駆使して敵を薙ぎ倒し、読者のカタルシスを満たすのです」
「読んでる作品が偏りすぎだろ。トリップものでも十二国記とか凄い悲惨だぞ」
「なんでもいいので早く死んでください」
「転生ものなの? ねぇちょっとやめて。そんなおっきい石振り上げたら危ないから」
「実はこの世界は夢の中で、死ぬことによってあなたは覚醒し、本当の世界の姿を知ることになるのです」
「もう君が書けよ」
一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。