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59/2024

賞味期限

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「今日の晩御飯はツナマヨにしましょう。無性に食べたくなりました」


「たまには手抜きでもいいか。じゃ、ツナ取って」


「はーい。あ、この缶詰、賞味期限切れてます」


「それは多分、昔実家から送ってもらったやつだ。どのくらい前?」


「えーっと、だいたい七百七十七万秒」


「なんで秒単位なんだ。何ヵ月前?」


「三ヶ月です」


「オーケー、そのくらいなら許容範囲。缶詰なんて開けてみて匂わなければ問題ないよ」


「そんなものですか。食べ物の賞味期限って、切れた後いつまで大丈夫なんですかね」


「消『費』期限なら切れた時点でダメなんだろうけど、賞味期限だと物によるよね。卵とか牛乳は一週間もしたらヤバい気がする」


「人にもよりますよね。一週間くらい大丈夫って人もいれば、一日越えたら使えない人もいますし。生鮮食品に限れば私は後者です」


「潔癖だな。でも君の場合は賞味期限切れてようが切れてまいが関係ないだろ。どうせ食べられなくなるし」


「そう言いつつも、ちゃんと食べてくれるあなたが好きですよ」


「もったいないから。別に君が作ったからだとかそういうのはない」


「ツンデレですね」


「デレてない」


「ところで、あなたの賞味期限はあと五年ほどですかね」


「ところでじゃないよ。いきなり何を言い出す。そして地味に短くてリアル」


「まあ何年過ぎても食べてあげますから、安心してください」


「良いこと言ってる風だけど最低だ。そういう君の賞味期限はあと何年?」


「今日です」


「短っ! え、それでいいの?」


「毎日劣化する一方ですよ。だから早く覚悟を決めてください。まあ腐っても鯛という言葉もありますが」


「それはただの腐った鯛じゃないかと前々から思ってる」


「腐っても美少女、と言い換えればあら不思議」


「僕はゾンビ趣味ないから」


「でも例えばですよ? 私が死んで、お墓から甦って、あなたに性行為を迫れば」


「いつもの君じゃないか」




 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。

 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。

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