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58/2024

いい風呂

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「今日はいい風呂の日ですね」


「十一月ってなにかしら記念日が作れるよね。『いい』で始められるからだろうけど。いい夫婦だとかいい風呂だとかいい肉だとか」


「残念ながらいい夫婦の日は逃してしまいました」


「そもそも夫婦じゃないし」


「まだ夫婦じゃないことが驚きですよ。思えばあの日に入籍しておけば良かったんです」


「急展開……でもない気がするのが恐ろしい。なんだこの外堀を埋める早さ」


「さぁ、そのぶん今日はいい風呂の日を満喫しましょう。というわけで、一緒に入浴しませんか?」


「そうくると思った。二人で入ったら狭くなっていい風呂にならないからヤダ。一人で入れ」


「狭いのがいいんじゃないですか。意図せず密着してしまう感じが」


「明確な意図が見えるよ。僕はもっとゆったり入りたいの。それじゃ疲れが取れないだろ」


「むしろ疲れますかね。明日は腰痛で起きられないかも」


「風呂に入るだけが目的じゃないよね、君」


「そりゃあ若い男女が一緒に入浴してなにもないわけないでしょう。水の掛け合いに始まり、ふざけあっている内にだんだんエスカレートしていくのです」


「妙に生々しい妄想やめろ」


「洗いっこしている内にエスカレートしていくパターンがいいですか?」


「一人ずつ入浴してエスカレートしていかないパターンがいい。いい風呂の日だから。風呂が主役だから」


「いい風呂の日? 違いますよ。今日はいいセカンドシックスの日、略して」


「略すな。セカンドは序数詞だ」


「いつも通りのノリの悪さですね。すぐそこに未開拓の女体があるというのに」


「未開拓とか言うんじゃない耳年増」


「風呂だけにフロンティアって」


「やかましい。二日連続で似たような話の運び方するとネタ切れだと思われるよ」


「私は別にジャングルじゃないです。花園くらい」


「だからってすぐ下ネタに持ってくのやめろよ! 知ってるよ!」


「おいでよ私の花園」


「最低だ。法務部に訴えられる。勝てない」


「とびだせあなたの森」


「この部屋から飛び出したい」




 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。

 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。

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