うたた寝
コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「この時期になると、コタツでうたた寝したくなります」
「うん、気持ちはわかるけど首まで浸りきるのはやめようか。僕が入る余地ないから」
「コタツからこれ以上出られません。私とコタツは今シンクロしているのです。二つで一つなのです。梵我一如なのです」
「何言ってんだコイツ」
「スンクロしているのです」
「なんで東北風。とにかく、僕も暖まりたいからせめて腰までにしてよ。このままだと風邪ひいちゃう」
「あなたお風呂とかまだでしょう? 入ってきたらどうですか? 私はさっき入ったので大丈夫です」
「何? もしかしてコタツの中になんか隠してる?」
「そんなことありません。早くお風呂にキャァァァァァ! なんでコタツ持ち上げるんですか! 変態!」
「変態は君だろ。なんで全裸なんだよ」
「うぅ、むりやり服を脱がされました」
「コタツは服じゃない」
「数年後トレンドファッションになるかも……」
「先取りし過ぎだ」
「勘違いしないでください。別に変態的な趣味に目覚めたわけじゃないです。お風呂から上がった後、寒くて思わず全裸のままコタツに浸ってたら、思いのほか素肌に毛布の感触が気持ちよくて、そのままうたた寝してたらあなたが帰ってきてしまったというわけです」
「説明はいいから服を着ろ。だいたいそんなこと今さら恥ずかしがるな」
「コタツの中で全裸はさすがに変態過ぎて引かれるかな、と」
「自覚あるんじゃないか。安心しろ。君の普段の言動に比べれば引くほどじゃないから」
「それって安心していいんですかね?」
「そういう疑問が持てる程度にはまだまともなんだね。安心したよ」
「ところでうたた寝してるうちに湯冷めしてしまったんですが、一緒にお風呂――」
「早く入り直してこい」
日は山に隠れ、星々が輝き出しました。
月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。




