表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/2024

キャッチー②

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「タイトルを変更した結果、アクセス数が四倍になりました」


「…………」


「やっぱり『彼と彼女の千文字会話』なんていう地味でショボいタイトルじゃウケないんですよ。これからは『夕暮れの土手でツンデレな彼が私にズコバコ突っ込んでくるのらめぇ!』にしましょう」


「認めないぞ僕は……! そんな不埒であからさまなタイトル詐欺」


「それでもアクセス数増えてるんですけどね」


「世の中が間違ってる」


「気持ちはわかりますが、これが人間です。あなたは単純じゃないなどと言いましたが、実際単純なんですよ。間違っているのはあなたのほうです」


「いや、それ以前にダメだろう、こんなの。ただの釣りじゃないか」


「フィィィィッシュ!」


「グランダー武蔵やめろ」


「この業界、釣ってナンボですよ。こうでもしなければ莫大な文章の海に飲み込まれてしまいます」


「……僕はもっとこう、夕暮れの土手で二人がほのぼの語り合うノスタルジックなのがやりたかったのに」


「なんでそれがズコバコ突っ込んでくるのらめぇ!になってるんでしょうね」


「君のせいだよ百パーセント! メタネタが入るようになってからおかしくなったもの!」


「いや、こういうのを連載初期にやっておくことで作品に柔軟性ができるんですよ」


「そんな柔軟性はいらない」


「人間というのはですね、周りの環境に合わせて自分を変えていくものなんです。作品だって同じですよ。需要に合わせて供給せねば」


「なんで僕が諭されてる風なんだ」


「じゃあこれからもこのタイトルで続けるということで」


「続けないよ!」


「えー」


「地味なタイトルでも地道にやってればそのうち人気は出てくる。中身で勝負さ」


「中身なんてどれも似たり寄ったりです。きっとまたアクセス数減っちゃいますよ?」


「そんなもの気にする必要はない。っていうかなんなんだよ君は。誰かの心の中の悪魔か何かか。それにアクセス数の上昇なんて一時期だけだよ。内容はタイトルに全く関係ないんだから」


「なんでしたらいっそR15指定にしてエロ展開を入れたっていいじゃないですか。私は対応できます」


「しなくていい」


「ある程度ハードな要求でも承諾」


「しなくていい」


「勢い余ってノクターンへ移籍」


「しなくていい」


「なんでそんなにツンツン賢者なんですか。ほらほら『ま、まぁ君がそこまで言うならこのタイトルも悪くないかな』って言っちゃってくださいよ。こういうときのためのデレでしょう?」


「それはただ誘惑に負けてるだけだ!」


「じゃあこうしましょう。タイトルは戻します。代わりにこの会話は仮想世界の土手で行われているということにして、登録キーワードにVRMMOと」


「却下」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ