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37/2024

洗濯物

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「洗濯物がぜんぜん乾きません」


「寒くなってきたからね。洗濯機に乾燥機能とかついてないの?」


「そういうのを買っておけばよかったんですけど、あいにくです」


「コインランドリーとか近くにないの?」


「洗濯物わざわざ持っていくなんて面倒です」


「なんでも面倒くさがる君が何より面倒だよ」


「今の時期、休日はどこのコインランドリーもいっぱいじゃないですか。それに乾燥機は服の傷みが早まるのであまり使いたくないんです」


「除湿機の風を当てるとかは?」


「そんなものを買うお金はありません。これからは空気が乾燥する季節ですし。なのに服は乾燥しないとか詐欺ですよね」


「ドライヤーは?」


「洗濯物に向かってかけ続けるんですか? 疲れます」


「そこまで言うならいっそ濡れたまま着ればいいだろ」


「本気で言ってますか?」


「いや、さすがに冗談だ。何言っても否定されるからつい」


「濡れたまま着たらまた風邪ひいちゃいますよ。だから今日は一日ノーパンでした」


「何してんだ馬鹿。追加で買うなりなんなり対策しろよ。それこそドライヤーですぐ乾くだろ」


「縮んでティーバックになってしまいます」


「なるか馬鹿。それでも穿いてないよりマシだろ」


「縮んでティーバッグになってしまいます」


「どんだけ縮むんだ。しかも君のパンツは乾かすとお茶っ葉のつまった袋になるのか、って話を逸らすな。ホントに穿いてないの?」


「そんなにノーパンが気になるんですか?」


「気になるよ。僕の彼女が変態かそうでないかの分水嶺だぞ」


「そんなにノーパソが気になるんですか?」


「そうそう、最近動き悪くてねー。メモリ増設しても全く改善しないから、新しいやつ買っちゃおうかなーなんて……だから話を逸らすな」


「今のノリツッコミはちょっとテンポが悪かったです」


「ダメ出ししなくていいから。それより変な格好してて誰かに見られたらどうするんだ」


「大丈夫です。もしそうなっても『こ、これは彼に言われて仕方なく……』って」


「濡れ衣だ!」


「おお、洗濯物の話題に戻りましたね」


「戻ってない! 結局どっちなんだよ……」


「さあ、どちらでしょう? 実際に見てみなければわかりません。私の下半身は今、穿いている状態と穿いていない状態が重ね合わさっているのです。題してシュレーディンガーのーパン」


「シュレーディンガーに謝れ」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。

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