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33/2024

早起き

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「今日は折り入ってお願いがあります」


「何? そんな改まって」


「明日は事情があって早起きしなければなりません。起こしに来てください」


「え、目覚まし掛けとけば起きられるでしょ。用事があるなら二度寝の心配もなさそうだし」


「普段は遅寝遅起きなので早起きは自信ないんです。特別に寝込みを襲ってもいいのでお願いします。あ、でも手短に」


「手短にじゃないよ。前から疑問だったんだけど、君は僕をなんだと思ってるの?」


「全自動目覚まし炊事掃除買い物洗濯おしゃべり愛玩マシン」


「そっかじゃあそこに説教も加えてもらえる?」


「冗談ですよ。マシンではなく恋人です」


「重要な部分が何一つ撤回されてないんだけど」


「はぁ、真面目な相談なのに、これじゃ埒があきませんね」


「不真面目にしてるのは間違いなく君だ」


「起こしに来るのが無理なら、何か別の案を考えてください」


「なんで僕が……。いつも何時に起きてるの?」


「9時ですかね。そんなに遅くないでしょう?」


「十分遅いよ。で、明日は何時に起きなきゃいけないの?」


「4時です」


「早っ。徹夜すればいいんじゃない? 今のうちに寝ておいてさ」


「その手がありましたか。わかりました。今夜はあなたの家に泊まります」


「えっと、何をわかればそうなるの?」


「徹夜なんてしたことないので怖いんです。もしおばけが出たらと思うと」


「昨日おばけの仮装してた人間が何言ってるんだ」


「丑三つ時まで起きてたことはありません。泊めてくれるだけでいいですから。あなたは寝てていいですから。何もしませんから」


「信用できないし、なんか立場が逆な気がする」


「先っちょだけですから」


「何の話だよ! 君最近ホントに酷いな! 無理矢理進展させようとしてない?」


「テコ入れです。キスはしちゃったんですから次はもっと過激なことをしないと。ねぇ?」


「ねぇじゃない。打算的すぎる。そういうの萎えるからやめなよ」


「むしろ勃つと思うんですが」


「何がだよ! 気分の話をしてるんだよ僕は!」


「私だってそこまで計算してやってるわけじゃないです。ほとんどその場のノリです」


「それはそれで問題だ」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。

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