エロ本
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「はい、買ってきましたよエロ本」
「買ってきましたじゃないよ。なんで肌色だらけの雑誌をおもむろに取り出してるの?」
「昨日プレゼントするって言ったじゃないですか。せっかくなので二人で読もうかと思いまして」
「土手でエロ本読み耽る男女とか世も末だな。この辺り子供も歩いてるんだからダメだよ」
「えー、せっかく二人で読めそうな本探してきたのに」
「二人で読めそうなエロ本ってどんなだ。っていうか、探したの? どこで?」
「インターネットで情報収集した後、エロ本コーナーのある本屋さんを渡り歩きました。おかげでいろいろ知識が身につきましたよ」
「花も恥じらう女の子が何してるの? 危ないことやめて頼むから」
「ただ男性器を女性器にズガガガガするだけじゃないんですね」
「ちゃんと消せよ! ルビふってどうすんだ!」
「興味深い内容の本がたくさんありました。あなたはどんなのが好きなんですか? 素人? 痴女? SM? 女教師? 人妻? ロリ? 二次元? 『検閲削除』? 『自主規制』? 『見せられないよ!』? 『人類には早すぎる』?」
「詳しくなりすぎだ。僕は買ったことも読んだこともないからわからん」
「はっ、硬派気取りですか。まぁ本性はそのうち現してもらいましょう。なんにせよ、これで私たちの性活にも彩りが生まれます」
「字がおかしいしそんな彩りは必要ない」
「彩りより潤いのほうが正しいですかね」
「ねぇ、一応この作品全年齢対象なんだからさ。そろそろ自重しよ?」
「なぜ性行為に対してそこまで気を使うんですか? 子孫を残すためには大切なことですよ?」
「わざわざここで話題にしなくても」
「そうです! いっそのこと性教育小説に路線変更しましょう! エロの力でアクセス数もガッポガッポです」
「欲に駆られて変な気を起こすな。運営様から怒られるぞ」
「性教育ですから問題ありません。だいたい昨今は性知識の欠如している大人が多すぎます」
「さっき知識を得たばかりの人間が頭に乗るな」
「そんな時代の流れに終止符を打つべく、立ち上がった二人の男女。いろいろなプレイを実戦し、その危険性や有用性を子供たちに伝えるのです」
「間違いなく削除されるな。僕は協力しないよ」
「生物として大切なことを否定なんてさせません。力づくでも協力してもらいます」
「力づくの時点で性教育として間違ってるから」
「第一回は浣腸プレイについて勉強しましょう」
「子孫関係ないだろそれ!」
一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。




