子供
土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。
「子供って可愛いですね」
「急にどうしたの?」
「いやぁ、この寒いなか河川敷で野球してる子達を見ててふと思ってしまいました。子供欲しいです。作りましょう」
「そんな料理でも作るようなノリで言われても。物事には順序ってものがあるし」
「まだあなたと作るとは言ってません」
「え、独り言? あー、なんかごめんね、早とちりしちゃって。お幸せに」
「まぁあなたくらいしかいないんですけど」
「そういう冗談やめてホント。心臓に悪いから。泣きそうになったから」
「最初は女の子がいいんでしたっけ? 一姫二太郎三なすび」
「最後おかしい。それ初夢に見るといいやつ。あと一姫二太郎って、最初が男の子じゃなかったときの慰めの言葉らしいよ」
「なんですかそれ。女の子じゃ何か問題があるとでも?」
「昔は相続関係とかいろいろあったみたいだから。今はほとんど関係ない話だね」
「作るとしたら何人欲しいですか? 野球チームでトーナメントできるくらい?」
「クイーン系のモンスターか君は。野球チームが作れるくらいっていうのは聞いたことあるけど。対戦は無理だろ」
「五つ子を四回授かれば」
「冗談抜きで死ぬぞ。肉体的にも精神的にも経済的にも」
「もう少し生活に余裕が出来たらですね」
「え、それ以前に大事なイベントがあるでしょ?」
「あー結婚とかですか? あんなの市役所に書類出すだけじゃないですか」
「わぁい淡白。嬉しいとかないの?」
「結婚が幸せの絶頂だったら後は下がるだけですよ。私たちは今のままがちょうどいいんです」
「お、おう。なんか諭されてしまった。そう言われると反論できないな」
「あなたが私にこき使われるくらいがちょうどいいんです」
「反論させてもらう。ちょうどよくない」
「あなたは私と私の子供のために生きてください」
「酷い。でも本当にそうなりそう」
「私はあなたとあなたの子供のために生きます」
「落として上げるだと!? さっきからキャラ違くない? 今さら路線変更なの?」
「ところで子供ってどうやって作るんですかね?」
「さすがにそのキャラ付けをするのはもう無理だろ」
一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。




