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26/2024

暖房

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「寒くなってきたせいで、朝、布団からでるのが億劫です」


「分かる分かる。早く起きても二度寝しちゃうよね」


「昨夜とうとう毛布を出したんですが、失敗でした。毛布の吸引力は半端ないです」


「より出にくくなっちゃったか」


「かと言ってストーブをつけるほど寒くもない。節約のためならまだ我慢できる微妙な気温」


「もうストーブ出しちゃえば?」


「石油代がバカにならないんですよねぇ。ガスストーブよりかは安いんですけど」


「ケチケチしてるとまた風邪ひくよ。薬代とか診察代がかかるよりマシじゃないかな?」


「それはまぁ。でも何より腹立たしいのが……暖かい空気って上にいくでしょう? つまり、私のストーブが出した熱が上の階を意図せず暖めていることになるんです!」


「ケチ過ぎる。それくらい別にいいだろ」


「私の部屋の熱を勝手に盗んでるようなものですよ? 受熱料を払っていただきたい」


「国営放送じゃないんだから……。窓から逃げる熱のほうが大きいよ絶対」


「窓には発泡スチロールを貼っておくので問題ありません」


「怖っ。外から見たら何事かと思うだろ」


「こうなったら壁も床も天井も全て発泡スチロールの板で覆ってしまいましょうか。熱の逃げ道を完全シャットアウトです」


「一酸化炭素の逃げ道も完全シャットアウトするから死ぬぞ。絶対やっちゃダメだからね」


「じゃあもっといい方法を教えてください。暖まってお金がかからなくて、かつ他人に得させない方法を」


「最後のは許容しろよ。えっと、重ね着するとか」


「顔が寒いですし動きづらいです。お風呂入るときとか寒そう」


「じゃあ運動すれば?」


「条件はクリアしてますけど、めんどくさいし疲れます」


「軽くだよ軽く。スクワット三十回もすれば暖まるでしょ? それも嫌ならもう湯タンポでも抱えて生きろ」


「あれはわりとすぐ冷めちゃうじゃないですか。あ、そうです! あなたが私を抱えて生きれば! 暖かいしお金かからないしいろいろお得です」


「重いよ、いろんな意味で」


「これまでの話を総合すると、抱き合って運動すればいいんですね」


「素直に厚着しとけ」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。

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