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23/2024

傘パク

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「朝方、傘を盗まれました」


「ああ、安物の傘使ってると日常茶飯事だ。災難だったね」


「コンビニで買い物するほんのちょっとの間で……信じられません。いくら雨が降ってるからって他人のものパクりますか? 犯罪ですよ犯罪」


「よくないよね。それで、君はどうしたの?」


「もちろん傘なしで帰りましたよ。悪の連鎖は誰かが断ち切らねばなりません」


「そこまで大袈裟な話じゃないけど、まあ偉い偉い」


「なんとかして予防できませんかね、傘パク。畳んだ傘に胡椒を詰めておくとか」


「自分が差せないだろ」


「決まった手順で差さないと爆発するとか」


「危ないよ。逮捕されるぞ、君が」


「パスワード付きにしておくとか」


「効果的かもしれないけど、逆に珍しくて盗まれそう」


「じゃあ盗みたくないほど悪趣味にすれば! 豹柄とか金ぴかとかキャラものとか」


「君がいいならそれでいいんじゃないかな。ただ僕の横は歩かないでくれ」


「あ、単純にあなたが一緒にいて、私が買い物してる間持っててくれればいいんですよ」


「さりげなく傘立てになれと言われた気がする」


「いえ、傘立てではなく傘そのものになれと言ったんです」


「なお悪い」


「なんかプロポーズの言葉みたいですね。『私の傘になってください』きゃー」


「きゃーじゃないよ。雨の日しか役立たないところに凄まじい都合の良さを感じるよ」


「傘のような男性こそ女性は必要としているんです」


「なんか横からパクられそうな関係だね」


「あなたなら大丈夫です」


「え、どういうこと? 盗みたくないくらい悪趣味ってこと?」


「盗むと爆発するので」


「それはそれで怖いよ! あと予防になってないからそれ!」


「私が目を光らせてればふぇ……ふぇ……ぶぇっくしょいチクショウ!」


「大丈夫? あと女の子にあるまじきくしゃみやめてくれないかな」


「なんか頭がボーッとして気持ち悪いです。これが悪阻ですか?」


「ただの風邪だ早く帰れ」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。


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