毎年更新
雲一つない静かな夜。無数に輝く街の光にまた一つ、小さな明かりが混じります。
そのささやかな灯の中で、二つの影が揺らいでいました。
「長引いた風邪がだいぶ治ってきましたが、こうなると暇ですね」
「そうは言ってもまだ熱はあるし咳も出るんだから、寝てなよ」
「文ちゃんの世話や家事もできず、ただただお布団の中で春を待つ日々」
「文章にすると凄まじく贅沢というか、堕落の窮みだな。いやいいんだけどさ」
「これだけ暇な上に動けないとなると、身体中のムダ毛を一本一本丹念に抜いていくくらいしかすることがありません」
「小説書けよ。動けなくてもできるだろ」
「ムダ毛ってホントにムダですよね。なによりもムダ毛の処理に使うお金と時間がムダ」
「スルーすんな」
「もちろん仕事のほうは進めてますが、趣味で書いているほうは苦しくなってきましたね」
「ああ、風邪の間に更新が途切れたか」
「毎日更新と銘打つのも難しくなってしまいました。少しここいらで進め方を考えたほうがいいかもしれません」
「まぁ無理に続けて自分で面白くなくなるのも趣味とは言い難いもんね。いいと思うよ」
「ではこれからは毎年更新ということで」
「いきなり更新頻度低いな! 確実に忘れられるぞ!」
「年に一回という意味ではありません。そのくらいの気構えでということです」
「気構えって言葉が使えるのか? その消極的な姿勢に対して」
「毎日更新しなければという強迫観念に囚われず、のびのび気軽に続けようということですよ」
「不定期更新だな、つまりは」
「気が向けばまた毎日更新に戻ることもあるでしょう」
「君、そう言って気が向いたこと今までそんなにないよね」
「暇ができればまた毎日更新に戻ります」
「いつ暇になる予定なの?」
「老後とか」
「何十年先の話なんだ」
「子供が大きくなって、仕事をしなくてもいいくらい貯金が貯まったらですね。どちらにせよ永遠に続くものというのは存在しませんから、結局はどこかで一区切りつけなければならないのです」
「適当な理由付けだな」
「これからは量より質を重視しましょう。いい加減に毎日更新するよりも、真剣に毎年更新します」
「適当な目的設定だ」
「ふぅ、ムダ毛抜きすぎて疲れました。そういうことで、私は少し眠ります。次の作品の構想を練りつつ」
「おやすみ。後のことは僕に任せてくれ」
「ありがとうございます。おやすみなさい」




