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18/2024

レジ袋

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。

 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。




「いやぁ助かりました。スーパーの特売日ってついつい買いすぎちゃうんですよね」


「買いすぎだよ。荷物持ちさせられる身にもなってほしい」


「このまま家まで持ってくれたら、特別にこのレジ袋をあげましょう」


「いらない。体よくゴミ処理させるな。エコバッグとか使いなよ」


「む、レジ袋はゴミじゃありませんよ。いろいろ使えて便利なんですから」


「部屋のゴミ箱に被せるとか? うち、指定ゴミ袋に直接捨ててるからいらないよ」


「顔を拭けば油がよく取れます」


「伊東家の食卓に出てきそうな裏技だな。タオルで拭こうよ」


「まだあります。三ヶ所に穴を空けて覆面代わりに」


「何がしたいんだ。小学生か」


「それと持ち歩けばどこでも用を足せます」


「やってみろ」


「え? そういう趣味あったんですか?」


「君はたまに殴りたくなるような話の運び方をするよね」


「どこまで小馬鹿にして大丈夫か、あなたの愛を試してるんです。アイタッ」


「ここまでだよ。他には?」


「えっと……細切れにしてご飯に混ぜると美味しいですよきっと」


「見え見えの嘘を教えるなよ! たぶん味とかないしまた体壊すだろ!」


「食べ物のことになるとツッコミが激しいですね。じゃあ車酔いしても安心、とか」


「エチケット袋? それはありかもしれないけど、僕、元々酔いにくい体質だし」


「私が車酔いした場合です。『使えよ』って言ってさっと出せば惚れ直してしまいますよ。キスしてしまうかもしれません」


「リバース間際でそれはやめろ。しかも結局、僕が袋をもらう意味ないだろ」


「私たちの間で物事の貸し借りなんて不毛ってことですね。既に互いが互いを助けあう仲じゃないですか」


「君に助けてもらったことなんてあったっけ」


「そんなに見返りが欲しいんですか」


「そうじゃないけど」


「では貸し借りなしで家までお願いします」


「……なんか釈然としない」




 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。

 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。

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