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第十三話 変わっていくヤルケノ村

チグサ 16歳 この世界に転移して来た普通の女子高生。

       転移特典で得た「反射」の呪文を使う。

マイラ 16歳 ダルーガ教と対立する、フーラ教徒が住むヤルケノ村の少女。

ボルク 23歳 マイラの兄 ヤルケノ村・防備隊長


ズバルト  56歳 聖都ゴンゴザ大教会の特別矯正官。最高指導者。

ガルビエス 37歳 ズバルト直属の矯正官補佐。呪術を使う。

         『冷徹な死刑執行人』の異名を持つ。

バシュラム 41歳 東方辺境部連隊長。ズバルトを恐れる野心家。

         ガルビエスには対抗心を持つ。

「チグサが嫌がってたオークの衣だけど、最近は村の中でもみんな着て歩いてるね」


 窓の外を見ながらマイラが言った。


 確かに、村の女たちは家の外に出るとき、ほとんどがオークの衣をかぶるようになっていた。


「ダルーガたちがもう何も言ってこなくなったのに、皮肉だよね」

 私は苦笑した。


 もともとヤルケノの女たちは、ナラヤの宗教警察を恐れて、村の外ではオークの衣を着ていた。


 村の中ではフーラ伝統のムームーで過ごしていたのに……。


 ところがダルーガ救済隊を撃退したあの夜からしばらく経った今では、村の中でもオークの衣が普通の服になりつつある。


「そりゃあこんなに観光客が押し寄せてちゃね」


「観光客の男たち、みんな目つきがいやらしいんだもんね」

 マイラが相槌を打った。


 大きな町では服装規制が厳しかったせいで、、そこから来る観光客にとっては、私の制服どころかムームーでさえ刺激が強いらしい。


「なんかねウワサじゃ、『白衣の天使』様を見る目的もそういうもんらしいよ」

 などと言われて私は鳥肌が立った。


 そういえば妙彩学園にいた頃、生徒指導の先生から『川瀬、おまえ校則をちゃんと読んでるか? スカートは膝上じゃなくて、膝下15センチと書かれているだろうが!』と怒られたことがあったっけ……。


 日本じゃ誰でもやってる(まあ家がうるさい子はやってないけど)なんてことないオシャレだと思ってたけど、こんな世界に転生するなら守っときゃ良かった。


 私はそんなことを思い出していた。


 それはともかくオークの衣には二つの側面がある。


 誰が誰だか分らないので、極端な話あの宗教警察の隊長みたいに、男がかぶっている可能性もある。

それは主にテロを目的とする場合だ。


 つまり誰かを狙った敵がこれを被って侵入した場合、その誰かを守るのは容易ではない。


 ただし、私を狙うことはできない。


 それは敵意を持って近づいてもその目的を達せないからだ。


 もう一つの良い側面。

 

 それは観光客に気づかれずに、丸木小屋を自由に出入りできるということだ。


 私はオークの衣をかぶって、お盆を持った給仕女に化け、マイラと共に外に出た。

(脱出作戦大成功!)


 観光客が大勢集まる広場付近を抜けて、城壁内でも北側の辺りは静かで、果樹園が点在していたはず……、


 そこは私のお気に入りの場所だった。


 オークの衣を脱いでお尻に引き、ムームー一枚になって木陰で休む。


 この世界にラノベがあったら、それを開いて読書したいところだ。


 どこかのラノベみたいに本が一切ない世界ではないが、一番お金持ちの村長の本棚にさえ宗教書と、どこで買ってきたのかは知らないが、『観光産業であなたの村を元気に!』『訪問者がお金を落とす仕組み』といった類のノウハウ本が5冊ほど並んでいるだけだった。


 これはまあ、男でさえ識字率が低く、女に至っては文字を覚えることが悪いというような、ダルーガのおバカな道徳観が災いしているためだろう。


 それはともかくついこの間まであった果樹園が無い!

 なんとその場所が池に変わっていたのだ。


 近づいてみると、池の中からピチピチ、ピチピチと気味の悪い音がする。


「マイラ、これは何?」

 と聞くと――、


「チグサのホヤ焼きが大好評でパルポが不足したので、村長が大増産を命令したの」

 と肩をすくめて言った。


 どうやらこの世界のヌタウナギは淡水生のようだ。


 ちなみにホヤ焼きのトッピングはケチャップ味、蜂蜜味、塩味と三種類。


 この世界には歌がないようだし、ホヤ焼きのCMソングでも作ってみようか……。

 

 

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