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第27話 どうした? はやくしろ。

「駄目だ!! ──オヴェリア──!!!」



エルの叫び声を遠くに聞きながら、オヴェリアが意識を手放そうとした時。


エルの身体から青い光が生じて、それがオヴェリアを包み込んだ。



次の瞬間、その光は破裂するように部屋中に広がり、王宮全体を包み込み──はじけて、王都中に降り注いだ。



夜の帳が降りていた王都は、キラキラとしたその青い光に包まれて、一瞬まるで昼間のように明るくなり──。


降り注ぐその青い光に触れた者は、皆一様に動きを……時間そのものを止めた。





そうして、青い光が溶けるように消えてなくなった時……王都でまだ動いている人間は、エルひとりだった。




「……っはあ、はっ、はぁっ……はっ……!」



薄れそうになる意識をなんとか保とうと、エルは荒い呼吸を繰り返す。



(なんだ、今のは……? 俺がやったのか!?)



オヴェリアがその命を手放そうとしているのを見た時……胸の中で何かが弾けた。


ただオヴェリアの命を失いたくない、留めておきたいと、それだけ願っていた気がする。



(それで、俺は……魔法を発動したのか!?)



初めて魔法を発動した衝撃が体の中からやっと抜けて……エルは改めて、部屋の中を見回した。


やはり部屋の中で動いているのはエルひとりで、王も王太子も、エルの背中にのしかかったままのマリウスも……そしてオヴェリアも、微動だにしなかった。



「……オヴェリア様ッ!!」



床に倒れているオヴェリアを見て、エルはマリウスの身体を乱暴に跳ね除けて起き上がった。


オヴェリアの元へ走り寄ると、急いでその身体を抱き起こす。



「オヴェリア様! オヴェリアッ!!」



その身体を腕の中に掻き抱いて、何度も名前を呼ぶ。


オヴェリアの身体はひやりとして、目も閉じられ、身体も少しも動かなかったけれど……それでもどうしてか、命は失われていないのが感じられた。



「──っ! ああ、良かった! オヴェリア様……!!」



エルの魔法は死の淵にあるオヴェリアの時間を止めて、彼女の命をギリギリのところで押しとどめているらしい。


エルはオヴェリアの頬を撫でてから、もう一度その身体を強く抱きしめた。




──その時、部屋の隅から微かなうめき声がした。



「…………う…………」



声のした方を振り向くと……レオンハルトが意識を取り戻し、驚愕に目を見開いてこちらを見ている。



「なんだ、今のは……!? エル、お前がやったのか!?」


(こいつ……どうしてもう動けるんだ?)



部屋の中にいる他の人間は相変わらず硬直したままだというのに、レオンハルトだけが完全に意識を取り戻している。



(そういえば帝国で魔法についての講義を受けた時に、「戦闘力の高い人間は、魔法に対する抵抗力も高い」と聞いたが……)



腐っても王国一の剣士であるレオンハルトは、やはり魔法への抵抗力が他の人間より高いのだろう。


レオンハルトはゆっくりと体を起こし、部屋の中を見回しながら呟いた。



「……麻痺? いや違う、これは……時魔法か!?」



そうして、エルを見据えながら続ける。



「時魔法が使えるのは、クロノス帝国の王族だけ。その中でもごく一部の者のみのはずだ。エル、お前はまさか……!」



話しながら、レオンハルトは腰に帯びていた剣に手をかける。



「エル、オヴェリアを放してこちらへ来い。……お前が帝国の王族なら、逃がすわけにはいかない」



グランドール王国とクロノス帝国は、もう数十年にわたって一触即発の状態だ。


グランドールの近衛騎士団長としては、クロノス帝国の王族を逃すわけにはいかないのだろう。



エルはレオンハルトを見据えながら、抱きしめていたオヴェリアの身体をそっとベッドの隅に横たえた。


そうしてから、レオンハルトと向き合う。



「頭の後ろで手を組んで、ひざまずけ。……どうした、早くしろ!」



エルがなかなか従わないことに焦れたレオンハルトは、剣を抜き、エルに向けて構えた。



「俺とやり合って勝てるはずがないことぐらい、わかっているだろう!? 従わないなら……お前を生かしておくことはできない」



こちらを睨みながらそう言うレオンハルトに、エルは挑発するように言い返す。



「……どうだかな。お前はこの間、俺に斬られて死にかけたじゃないか?」



薄く笑いを浮かべながらそう言うと、レオンハルトはわかりやすく激昂する。



「オヴェリアの魔法の強さを確かめるために、わざと斬られたに決まっているだろうっ!! ……このクソガキがぁ! そんなに死にたいなら、殺してやるよ!!」



元々、エルを生かしておくつもりなど毛頭なかったのだろう。


レオンハルトはあっさりと本性をむき出して、エルに斬りかかって来た。



が、エルがレオンハルトに向けて手を上げると……またエルから青い光が生じて、レオンハルトは剣を振りかぶった状態のまま硬直した。



(……! 一か八かだったが、また魔法を発動できた……!)



しかし魔法への抵抗力の高いレオンハルトを、いつまで止めておけるかわからない。


エルはすぐさまマリウスの方へ走り、彼の手から離れて床に転がっていた剣を拾い上げる。



──エルが剣を握った瞬間、レオンハルトにかかっていた魔法が解けた。



「……っこのクソガキ!! また魔法を……! 今度こそ死ね!!!」



そう言いながらもう一度斬りかかって来たレオンハルトに、エルは振り向きざまに剣を振り抜いた。



レオンハルトの剣がエルに届く一瞬前に、エルの剣がレオンハルトの右腕を斬り裂く。



「……っぐぅ……っ!!」




鮮血が飛び散って、レオンハルトが剣を取り落とした。


斬られた右腕を抑え、床に膝をついて呻くレオンハルトの喉元に剣を突き付けながら、エルは先ほど彼から告げられた言葉を、そのまま返す。



「……頭の後ろで手を組んでひざまずけ。どうした? 早くしろ」


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