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第15話 勝った方の勝ち!

「俺も試合に参加させてもらおう。……俺が君に勝ったら、この護符は俺のものだ」



レオンハルトの言葉を、オヴェリアは信じられない思いで聞いていた。



(レオン様がエルと試合!? そんなの、エルが勝てるはずないわ……!)



レオンハルトは、グランドール王国一との呼び声も高い剣士だ。


27歳の若さで近衛騎士団長に就任しているのも、もちろん名門アシュフォード侯爵家出身だからと言うのもあるが、その剣の腕を買われたのが大きいとの噂だった。



そんな剣士が14歳の少年と試合をするというのは……もはやいじめに近い気すらする。



「レオン様! エルの非礼は私がお詫びしますから、そんな無茶なことは──」


「──わかった」



オヴェリアの言葉を遮って、エルが低い声で答えた。



「さっさと済ますぞ。誰かこいつに練習用の剣を──」



エルはエルで、高位貴族相手に敬語を使わないどころか、こいつ呼ばわりしている。



「エル! いくらあなたが14歳にしては強いといっても、レオン様に勝てるはず──」


「──練習用の剣? そんなものを使っていたら何の訓練にもならない。……だれか真剣を持ってきてくれ。俺は自分の剣を持っているから、この子供に貸してやれ」



レオンハルトも、オヴェリアを無視して話を進めている。


その上、「刃を潰した練習用の剣ではなく、真剣を使う」等と言い出しているのだ。



「レオン様、何を言って……! いくら何でも、真剣なんて無茶な──」


「エル、君は真剣を使ったことがないのか? そんなことで何かあった時に主人を……オヴェリアを守れるとでも?」



そう言いながら、挑発するようにオヴェリアの肩を抱き寄せる。



「貴様……オヴェリア様に触れるな!!」



自分を無視して進められる男二人の喧嘩に、さすがのオヴェリアもイライラしてきた。



(もう! エルは無鉄砲すぎるし、レオン様は大人げなさすぎる……!)



オヴェリアは腹いっぱいに息を吸うと、



「…………二人とも、いい加減にしなさいっ!!!」



訓練場に響き渡るオヴェリアの大声に、先ほどから彼女を無視して睨み合っていたエルとレオンハルトも、さすがにビクリと肩を震わせた。


二人は一瞬困ったような顔になって、ちらりとオヴェリアを見たが……。



「オヴェリア様、お許しください。すぐに終わらせますから」


「オヴェリア、大丈夫だよ。ちゃんと手加減するし、子供にケガさせたりしないからね」



二人はそれぞれ言いたいことを言うと、二の句が継げずに呆然としているオヴェリアから離れ、訓練場の中にある円形の試合エリアへと入って行ってしまう。


そうして、レオンハルトは腰に帯びていた剣を構え、エルは練習用の剣を腰から外して、代わりに警備兵のひとりが持ってきた真剣を構えた。




***




(……こいつ、確かに警備兵たちとは全然違う……)



エルはレオンハルトと向き合いながら、これまでに感じたことのない圧力を感じていた。


向き合っているだけで、押しつぶされそうなプレッシャーがある。



一方、レオンハルトは余裕の笑みを浮かべて、どこからでも打って来いとでも言うように軽く剣を構えていた。



(……だが、これはまたとない機会だ。こいつがオヴェリア様との復縁を目論んでいたとしても、ここで醜態をさらせば諦めて逃げ出すだろう)



そのためには、なんとしてでもこの男に圧勝しなければならない。


エルは一度深く息を吸ってから、大きく踏み込んでレオンハルトに斬り込んだ。



レオンハルトはまだ口元に笑みを浮かべながら、エルの剣を軽く受け流し、反対に斬り込んでくる。


今度はエルがその剣を受け、何とかはじき返すが──。



(──重い……!)



普段試合をしている警備兵たちとは比べ物にならない、重い斬撃だった。


あっという間に手がしびれて来るのを感じながら、エルは何とか剣を握り直して斬り返す。



斬り合いながら、レオンハルトが笑う。



「へえ、子供にしては剣が上手いな? 頑張って練習しているじゃないか!」



言外に子供のお遊びだと匂わせながら、レオンハルトはエルをもてあそぶように決定打を避けて斬り合いを楽しんでいる。



(クソッ、こんな奴に……!)



レオンハルトの剣技は、エルのそれとは明らかに比べ物にならなかった。


そもそも体格にも筋力にも格差があったが、技術においても圧倒的な差があることを突き付けられる。



敗北感に唇をかみしめながら、エルはそれでも何とか喰らいついていた。



(……せめて、一撃だけでも……!)



一撃も与えられずに敗北するわけにはいかないと、エルはまた大きく踏み込んだ。


完全にレオンハルトの間合いの中にいるので、反撃されれば大怪我をするだろう。



(たとえ深手を負っても、こいつにも同じだけの傷を負わせてやる……!)



そう思ってエルが振り抜いた剣を、レオンハルトは自らの剣で受けようとしたが……一瞬、逡巡するような表情を浮かべてから、剣を持った腕を下げた。



(…………!?)



レオンハルトにはじき返されるはずだったエルの剣先が、そのままレオンハルトの胸に届き、その肉を切り裂く感触が手に伝わって来る。



(こいつ、今、わざと斬らせた……!?)



驚くエルの耳に、オヴェリアの悲鳴が聞こえてきた。



「──いや! レオン様!!」



悲鳴に続いて、レオンハルトが剣を取り落とし、地面に当たる重い音が響く。


レオンハルトは胸に大きな傷を負い、破れた服の奥に見える傷からは血が溢れ出している。



「……結構、やるじゃ、ないか……。子供にしては、上出来──」



そこまで言った時、口からゴボリと血が溢れて、レオンハルトは地面に倒れ込んだ。


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