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星空の下の宴会 光源はランプです。


「トモダチ?貴方が。はぁ?」

「うん。友達。友人のことだよ。」


戸惑うお姉さんにクスリと苦笑を浮かべて返す。


「えーと私、貴方よりいくつ年上だと思っていて?学友⋯とは言わなくても先達では無いのかしら?」

「いーじゃん、年下の友達がいたって。」

「貴方と私とでは身分が⋯あー、貴方の場合は関係無いわね。希望ならどこでも行けるし、何処にも行けないけれど。」

「嫌なら良いけど。」

「嫌と言う訳では⋯。ただ⋯私の場合、同じ学び舎で共に学問を修めたり、侍女などの側近になる者をそう例えますけれど。

貴方はそのどれにも当てはまりませんので。」

「何だ『類友』かー。」

「う、ういとも?

ういともとは何なのかしら?」

「んー、自分と似てる者が集まって友人になるって意味かなぁ?」

「似てる?貴方と私が?」

「だってお姉さん。私の他に友達いないでしょう。」

「はい?!あの、友人とは学友と言った存在ですわよね?」

「表面だけなら、私にだって子供のお友達は沢山いるよ。

お姉さんの言う学友と同じ存在だね。

私が言うのは、心から同じものを好きで、遠慮なくお話出来て、お互いに好意を持つの友人が友達だよ。

だから友達には年齢も性別も関係無いのが基本だけど、まぁ性別が違うと、年齢が適齢期になったらダメになるかも。

仲の良い友達は恋人になりやすいだろうから。」

「な⋯なるほど。

友達とは貴方の考える友人と言う事ですわね。」

「えん。友達って作るもんじゃ無くて、勝手になるもんだと思ってるの。

例え片方がなりたいって思っててもなれない関係だけど、気が付いたら仲良しなのが本物の友人だよね。」

「私は貴方とは別に友人になりたいとは思っておりませんでしたわ。でもそう言われてしまえば、私達の関係は友人ですわね。利害関係では有りませんもの。

全く無いとは申しませんが、身の危険を思えば、理性では関係を深めない方が良いと思うのに、私は感情のまま貴方を守るべき存在だと思っていますもの。

確かに学友には無い感覚ですわね。身分の壁は学友では越えられませんわ。

貴方の身の危険を思えば、公に公平な友人とは示せませんが、心はやはり公平さを求めてしまいます。それを思えば貴方は紛れもなく、私の唯一の友人でしてよ。」

「そこまでにして(いただ)く。

私は職務の都合上、その関係性は看過出来ません。」


人形の様な平坦さで告げる無表情のギルバートさんに私は肩を竦めた。

お嬢さんもお嬢様にあるまじき、もの凄いふくれっ面で唇を尖らせている。


「そりゃそーだ。

ギルバートさんはお姉さんを守る騎士なだけで、お姉さんの騎士では無いんだもんね。

考える力の無い人なら黒魔石を叩き壊してるだろうけれど、ギルバートさんはそうじゃ無い。

でも個人で判断する『裁量』えーと枠組み?を超えている。

騎士は『軍人』つまり武力。

好き放題されたら迷惑なので、仕えてる主人の指示に従うのも仕事の1つ。

だから、主人に報告して私達の関係性を認めるのか聞かなくちゃいけない。

すると私の事を秘密に出来なくなる。

それは私に都合が悪いよね?って、教えてくれたんだよね。

ギルバートさんは私達の関係を壊したく無いと思ってくれたから。」

「あー、もう!

融通が効かないったら!」

「そんな無能をつける訳無いじゃん。それだけお姉さんの身内はお姉さんを大事にしてくれてるんだよ。」

「貴方どちらの味方なの?!」

「見える事実を言ってるだけだよ。でも少なくても私はお姉さんの味方かな。

お姉さんは私の味方だから。」

「それなら宜しくてよ。」


プンプンしてるお嬢さんに、無表情だったギルバートさんが、ヤレヤレと言わんばかりにため息を零す。


「とまぁ、お姉さんと私は両思いだけど、今の所は赤の他人です。」

「いや友人は赤の他人がなるもんだろう。」

「性別が一緒で良かったよねー。」

「私は流石にここまで年下の恋人は嫌だわ。」

『アハハハ!』


思わずと言った形でジギタス叔父さんがボヤけば、訳が分からないなりにやり取りが面白かったのか、卓を囲んだ皆が笑ってくれた。

エリザベスお祖母ちゃんもほー、と心から安堵してるから寿命を縮めさせたかも知れん。


「それじゃ、そろそろマゼランお祖父ちゃんの料理を食べたいんだけど、最後にどうしても知らせておきたい話があるから、先にそれをして良いかな?

お祖父ちゃんはその話が終わったら、最後の仕上げをして欲しいの。大変だと思うけど⋯」

「何だか恐ろしいぞ。」

「何を言い出すつもりだ?」


苦味走ったマゼランお祖父ちゃんが嫌な予感がすると言わんばかりに呟けば、お父さんも似たよな予感を察したのか、胃が痛いと言わんばかりに青ざめている。


母は皆に背中を向けて授乳中なので、マリア婆ちゃんの為に、お父さんが自分の椅子を私の斜め後ろに持って来た。

何も言って無いけれど、マリア婆ちゃんは元の席に戻るつもりは無いらしく。

雰囲気的に察したお父さんが動き、それを見たジギタス叔父さんがマリア婆ちゃんの座っていた椅子を持って来る。

けれど先にタルクス叔父さんが自分の椅子をお父さんの場所へ持って行ったので、ジギタス叔父さんはタルクス叔父の所に、自分が持って来た椅子を置いた。

説明したら長いが、もうパッパとあっという間に済んだ。


「それでね。

マリア婆ちゃんから聞いた話なんだけど、子供を産んだ後に飲む回復薬は初級の回復薬を使ってるんだって。」

「そうなのよ。

でも産後は中級の回復薬で無くてはいけないと知っていたから私はそれを使っていたわ。」

「エリザベスお祖母ちゃんは、何処でその知識を知ったの?」

「街の学校で習ったのよ。

ウチでは初級を使うと母に言われて驚いたのを覚えているわ。でも私は直ぐに仕事に戻りたくて中級を使っていたの。」

「それじゃこの村独自の習慣だったんだね。お姉さんはどう思う?」

「そうね⋯錬成師の相談して貰えていれば中級を進めていたはずなの。

でも恐らく勧めても買えないか、相談することも無く常備している初級で済ませて補充していたのかも知れないわね。」

「私もそんな気がするよ。

多分ここがまだ開拓村とかで貧乏だった頃から、初級の回復薬で凌いでたのが習慣になって今まで伝わってたのかも知れないね。

きっと高いんでしょ?

中級回復薬の値段。」


エリザベスお祖母ちゃんがうんと頷く。


「銀貨50枚って高いのかしら?」

「うん。高いと思う。

それなら初級を飲んで休んだ方がマシだと思っても仕方が無いかも知れないね。」


金持ちなお嬢さんが小首を傾げると、騎士以外から苦笑が零れた。


「私は一応アマーリエが嫁ぐ時に、産後は中級回復薬を使うように言い聞かせていたのよ。

もし金銭で渡すのが問題なら、直接中級のお薬を渡すから取りに来るように伝えたのだけれど⋯」

「あれ?ならお母さん。

何で貰いに行かなかったの?」

「え?そうだったかしら〜?」

「毎回産んでから連絡して来るし、平気そうにしてたのと。

他のご家庭では初級が普通と聞けば、嫁ぎ先だから強くも言えず。⋯でも恐らく問題があったのね?」

「うん。そうなの。

お母さん、張り切り過ぎちゃったらしいの。

マリア婆ちゃんから聞いたら、産後の翌日から休まずに動いてたんだって。」

「まあ!なんてこと!?」


ふぇぇ?!ヤバい???

みたいな顔をして、お母さんはジーニスに授乳してる事を口実に、背中を丸めて身を縮めている。


「それでもまだ3人産むまでは耐えてたみたいなの。

でもそれからが問題で、まだカタリナお姉ちゃんも5歳ぐらいで小さいし、ロベルトお兄ちゃんは3歳でしょ。マルセロお兄ちゃんは1歳前後で、家の事も育児も全部お母さん1人で頑張ったから、子供が2回も流れてしまったんだって。

多分ここに嫁ぎに来て、お母さんは沢山失敗してたんだと思うの。でもここの家族は優しいから、失敗しても叱らないし。

大事にしてくれてるから、焦ったんじゃ無いかな?

嫌われたくなくて限界よりも頑張ってたんだと思う。

マリア婆ちゃんが心配しても、大丈夫って笑って沢山働いたんだよ。

なのに2回も子供が流れて、また失敗したと思ったお母さんはとても落ち込んでしまったの。

それで悪阻もあってご飯が食べられ無くなって、寝たり起きたりの生活してたら。

それまで元気だったから、お父さんはとても不安だったんだと思うの。

その時のこと、お父さんに話して欲しいの。お母さんにアレを食べさせるまでのお話を、私や皆に聞かせて欲しい。

どうして?って思うかもだけど、お話してくれたら理由を伝えるよ。」


マリア婆ちゃんの手を握ってそう言えば、父は組んでいた腕を解き。背中を丸めて吐息を漏らした。


「アマーリエが寝込んでしまった時、上の兄が金で出来た果実が有ると言い出した。

高価な品で高値で売れると。

それを売ってアマーリエが食べられる高値で美味い果実や良い薬を買って、与えれば良いのでは無いかと言うのだ。

だが俺は不思議だった。

そんな話は聞いた事が無いと言えば、狩人だけに伝わる話だと言う。

そこで嫌な予感がした。

上の兄は少し無謀な所があったし、高価な品は森の奥に行かなければ手に入れられないと考えたからだ。

兄には一度話を置いて、下の兄に話を聞きに行った。

思った通り、金の果実は森の奥にあると言われた。

だから無謀な事はやめろと忠告されたんだ。

兄の言う通りだと理解はした。

だが俺は欲に溺れてしまった。

眉唾だと思っていたものが有ると知ったからだ。

アマーリエが酷く弱っていたので何とかしたかった。

あのまま死んでしまうかと思えば、冷静に考えられて無かったと今なら分かる。

だからタル兄に頼み込んで協力をして貰った。

それとなく俺は戦士ギルドで情報を探り、タル兄は狩人仲間からの情報を集めて貰った。

でも戦士ギルドでは、精霊実と言う名の丸い果実の絵が有るだけで、詳しい情報が書かれて無かったんだ。

だから今度は錬成師の店に向かった。

精霊実を取りに行きたいと言えば、森の奥に稀に見つかると行った情報しか持ってなかった。

だが帰り際に、もし手に入れられたら、戦士ギルドより高値で買うから、直接持ち込んで欲しいと言われて茶色の瓶を貰った。

見つけられないかもと言って遠慮したが、構わないと言うので有り難く受けとった。

あと魔力が漏れるので、果実に傷をつけてはいけないと注意され、瓶に入れて持ち帰れとも指示をされた。

それでつい好奇心で、精霊実は美味いのかと聞いてしまった。

そしたら食べられるかどうかと言えば、毒性は無いが魔力を多く含んでいるので、多少の魔力は回復するだろうが、回復が過ぎると危険なので食べるには向かないと言われた。

それに食べたものを知らないので、味は分からないし。

精霊実はとても高価な良い薬になるので、錬成師で食べる愚か者はいないと笑われた。

良い薬と聞いて気になったが、どんな薬が出来るかは聞いても教えてくれなかった。

それから家に帰ったら、ジギタス兄がいなくなっていた。

直ぐに森に行ったのだと気付いて、慌ててタル兄と合流した。

森は広く1人を探すのは不可能だと分かっていたが、タル兄は精霊実が有る場所を知っていた。

実は昔見かけた事があったんだそうだ。

その時にジギタス兄もいたらしく、だから知っていたのだと分かった。

取らなかったのは、師匠に止められたからと。

昔あの果実を戦士ギルドに売って、村はお祭り騒ぎになり、関わった狩人達が莫大な金を稼いだは良いが、分配を受けた狩人の家に強盗が押し入り、狩人以外の家族が全員殺されて金も奪われたそうだ。

だから家族の命が惜しいなら、決して手を出してはいけないと。

そんな場所にどうしてたった1人でジギ兄が向かったのか。

無謀としか考えて無かったが、理由があったんだな。」


父はゆるゆるとお皿から視線をあげて、俯くジギタス叔父さんに苦笑を浮かべた。


「俺達はなるべく魔物に見つからない様に、慎重に目的の場所へ向かった。

ジギ兄を見つけたのは、かなり奥に進み目的の精霊実が見える様な場所だった。

走れば直ぐ手が届きそうな場所に、金色をした精霊実が実っていた。

でもその前に7級の魔物がいて、近づけずに足止めをくらってるジギ兄と合流した。

声を出すのも躊躇われる距離で、でも無理だとひと目見て分かったから、ジギ兄を無言で下げようと近付いたが。

「逃げろ」と、ジギ兄が叫んだ時には、もう魔物が眼の前にいて、俺はとっさに水を出し、壁にして逃げる時間を稼ごうとしたんだが、何の意味も無く。

矢を継がえたジギ兄を魔物が弾き飛ばした。

死んだと。

次に死ぬのは俺だと思ったのに、死んだのは魔物だった。」

『はぁ?!』


お姉さん、騎士2人、私が叫べばお父さんは楽しそうにクククと笑い。

ジギタス叔父さんは、ソッポを向いて鼻の横を掻いた。


「え?待って、7級?

え?それって本当に7級だったのかしら?」

「後日になるが、角だけ持ち帰っていたので戦士ギルドで確認している。バストゥークと言う雷を纏った馬形の魔物だ。」

「どうやって?!

どうやって倒したのですか?!

弓で倒せるものなのですか?!」


動揺が隠し切れないお嬢さんの質問に、お父さんが静かに答えれば、ギルバートさんが壊れた。

まぁ、うん。

さっき言ってたよね?

アレは多分ギルバートさんの脳ミソがバグってる。


「熟練の技か。だがバストゥークの動きを捉えられたのは奇跡としか言えないな。」

「目にも留まらぬ速さと。

俺達が見た時もその通りでした。

ジギ兄が警戒してかなり距離をとっていたのに、合流目前でジギ兄を角で薙ぎ払おうとした寸前でした。

あの状態で弓を継がえたことすら、俺には理解が難しい。」

「良く言うぜ。お前が出した水がヤツの邪魔をしたから、矢が間に合ったんだ。」

「俺には2人がスゴいとしか思えず、今でも真似出来るとは思えん。ジギ兄は弓の天才だと思うが、狩人には向かんとも思う。」

「超至近距離からの弓って弓の意味が無くない?」

「そうでもない。魔物は大きく顔は高い場所にある。

目は小さいので、槍では難しいが、剣は短い。

たが防御も出来んから、相打ちか外して死ぬか。無傷で勝つのはかなり難しい。」

「ジギ兄が辛うじて生きて居たのは、矢を放つ時には横に身体を逃がしてたからだ。

姿勢を崩しても当てるのは至難の技だが、それが出来るからジギ兄は今も生きている。」

「凄すぎない?!」

「褒めてはいかん。コイツは直ぐ調子に乗る。しかもしょっちゅう怪我をする。数は倒せん。狩人の狩り方では無い。」

「分かってるよ!

師匠から散々言われてきたんだ、今更文句言うなよ。」

「だが分からん!何故バストゥークは雷で攻撃せず角を使った?!何故刺突では無く薙ぎ払った。何故水壁が間に合う?!分からん。何故だ?!」


動揺しまくりのギルバートさんの叫びに、フラッシュの様に父の言葉が頭の中で映像になる。


「近くには精霊実。

バストゥークは侵入者に気付いて隙を見ていた。

雷を使えば精霊実を傷つけるかも知れないから。

ジギタス叔父さんはまだ魔物が自分に気が付いて無いと思っていた。

森の奥を見たこと無いから、当てずっぽうだけど。

森と言うには背の高い木が沢山生えてる。

その代わり草は少ない。

でもバストゥークが突っ込めたと言うことは、精霊実のある場所は開けていた。

なら高さの低い茂みが生えてて、そこにジギタス叔父さんはしゃがんで隠れてた?

距離は近い。

弓で仕留める自信はある。

でも隙がない。

敵は7級。

確実に仕留めるにはもう少し近付きたい。

なら叔父さんは手に矢をつがえて何時でも引ける状態で隙を見ていた。

そんな後ろ姿にお父さんとタルクス叔父さんが気付いた。

精霊実は見えてたけど、バストゥークはよく見えて無かった。

でもジギタス叔父さんは弓を手に持ってる。魔物が居ると直ぐに分かった。

声はかけられないから、2人で引きずって離れようと思った。お父さんは逃げるつもりだったので、元々水壁をいつでも出せるようにしてた。

姿が見えた時、本当なら角の先でジギタス叔父さんは刺されていた。

でも叔父さんは後ろに兄弟かは分からないけど、何かが来た気配がしたから、頭を動かしてしまった。

しゃがんでる。

身体の位置は低い。

バストゥークが狙ったのはジギタス叔父さんの頭。

一撃目はそれでハズレたから、お父さんはバストゥークが見えた?

水壁を出すのと、薙ぎ払いう為に首を振る動作で時間を稼いでジギタス叔父さんは横に飛びながら弓を放った?

逃げろと叫びながら。

お父さんの出した水壁は、バストゥークの動きを少しは鈍らせたかもだけど、その点ではあまり効果は無かった。

でもバストゥークが一瞬で移動したと言うなら、風とかからジギタス叔父さんを守った?

ちょっとこの辺りは自信ないけど、どうだろう。


ギルバートさんの質問に答えて見たけど、あってる?」

「かー⋯オマエ、すっげぇな。オレなんか何か来た!って思って飛んだ時には取り敢えず矢を打ち込んだだけだぞ。目は狙ったけど何も考えて無かった。」

「そうか。精霊実⋯」


ジギタス叔父さんは勘だけで動く人。

まさに天才の所業。

ギルバートさんは真似が出来ない事を知ってあからさまに肩を落とした。


「でもそれでジギ兄は重傷を負った。意識は無かったし、広範囲に火傷もあった。」

「そっか。雷で『感電』して⋯」

「かんでむ?」

「えーと雷で痺れて気絶した?火傷は雷でなった?」

「何故そう思うんだ?」

「だって焦げた木があって、何で?って聞いたら。

雷が落ちたって。雷って火みたいに熱いんだなって思ったの。」

「あー、なるほど。」


お父さんはそれで納得した。

そんな物は見たことないが、有る事なんだろう。平地だし、ひろいから。

突っ込まれずに済んでニッコリだ。


「それからどうしたの?」

「あぁ、下級回復薬を使ったが出血は止まっても火傷は残ったままで、意識も戻らず。

バストゥークを解体して血の匂いでまた強い魔物が出たら困るから、魔石は採れ無かった。ジギ兄を運ばなければならないから、本体も運べ無かった。まぁ元から3人では森の半ばならともかく、奥地では無理だ。なので角だけタル兄が切った。

俺は精霊実を取ったが、頭の中で錬成師の言葉が巡っていた。薬に使うと言っていた。

金にかえれば目的はかなうが、おれの目にはジギ兄が今にも死にそうに見えた。

タル兄の言葉も頭を過った。

強盗は困る。

高いものを買うには街に行かねば難しい。

高い物を農民が買えば不審に思われる。

危険だと感じて売るのは諦めた。

だから俺は精霊実を少し切って毒味をしてみた。

甘くて美味いと思った。

それに身体に力が満ちて行くのも分かった。

少量ならイケると感じてジギ兄にも食わせた。

そしたらあっという間に火傷が治って驚いた。

錬成師が嘘を言うとは思わないが、そもそも食わないと言っていたので、こんな効果を知らなかったのでは無いかと考えた。」

「ちょーーっっ!

え?精霊実って回復効果を持ってるの?!

いいえ、違うかも知れないわ。下級回復薬を使った直後なのよね?飲ませたでしょう。」

「肌にかけたし、飲ませもしたが⋯」

「それが原因よ。精霊実は調合時に効果を高めてくれる素材なの。

だから初級回復薬の効果を高めたから、火傷が治癒したんだわ。恐らく回復薬を飲ませず単独で使用すれば回復して無かったはずよ。」

「そうなのか?!

いや⋯そうなんだろうな。

だが俺はそれで誤解した。

弱ったアマーリエも回復するかも知れないと。

量を食わせてやりたかったが、精霊実は1つしか無い。

瓶は使わなかった。

味も良かったし、魔力を少しでも流せばアマーリエが食える量を増やせると思ったからだ。

あとはジギ兄をタル兄と担いで帰還した。途中でジギ兄が目を覚ましてそこからは早かった。 家に帰ったらまた少し精霊実を味見した。しばらく待ったが、特に問題を感じ無かったので、アマーリエに食わせた。

そしたらアマーリエがカタリナの口に欠片を入れてしまった。俺は慌てたが、特にカタリナも何も問題は無かったので、少しならと。ロベルトも食べた。

アマーリエがとても元気になったので、成功したと思っていた。

翌朝⋯アマーリエが起きなくなるまでは。

カタリナもロベルトも俺も何も問題無かったのに、アマーリエが起きなくなったんだ。

俺は慌てて母を呼んだ。

そしたら母が日の光を当てろと。藁を運んでシーツをかけて、訳も分からずにアマーリエを運んで太陽の下で寝かせた。祈りを神に捧げたら、昼過ぎにはアマーリエが目を覚ましたんだ。かなり気分が悪そうだったが、それからは良くなって行った。

だから解決したと思った。

でも違うんだろう?」


突然カルマンさんが立ち上がった。

愕然とした顔をしており、今にも倒れそうなぐらい身体が揺れている。


「カルマン?」


ギルバートさんが眉間にシワを寄せた。

カルマンさんは瞳を揺らして私の顔をジッと見つめる。

口を小さくパクパクと小刻みに開けたり閉じたりした後。

ギュッと強く瞳を閉じた。


その異様な雰囲気に誰もが無言で眺めていたが、静かに瞳を開いた彼の目から涙がドッと溢れ落ちたので、皆ギョッとする。


1歩、2歩とヨロヨロと歩き、私の隣に来ると、膝をついて頭を深く下げる。


「どうか⋯どうか、俺の。

俺の息子を助けて欲しい⋯」


うん。

ちょっと意味が分かんない。

2mを越えた巨体を折り曲げて、大の大男が声を押し殺して泣いている。

予想はつく。

ついてしまった。

このタイミングでコレってひょっとしてとは思うが⋯。

えー⋯マジっすか。


「うーん⋯情報が欲しい。

お父さんの話を聞いてこうなったとしたら⋯スゴク聞き難いんだけど。

カルマンの奥さんの死因て、ウチのお母さんの状態と同じだった⋯のかな?

お父さんは精霊実を食べさせたけど、カルマンさんは魔力の高い回復薬を飲ませちゃった⋯とか?」


カルマンさんが土下座の様に地面に頭を叩きつけた。

皆が『あー⋯』みたいな顔になり、私も言葉を失った。

もー、うそん。て、感じ。

シーンとなった。

けど息子が、と言うとコレは本格的に厳しいかも知れない。

つい遠い目になる。


「私のギフトは正しい情報が無いとハズレるの。

助けて欲しいだけじゃ、何も分からないよ。

もし情報が貰えても、私に良い考えが浮かぶかは分からないけれど⋯。」

「魔力過多症よ。

カルマンの奥様を私は知らないけれど、息子さんはそうなの。


体内に大量の魔力が有るのに、外に出せないのよ。

身体強化みたいな内に使う事は出来るけれど、放出系と違って消費は少ないから、どうしても体内に魔力が溜まって体調不良になるの。

彼の場合10歳までは問題無かったみたいだけど、成長期を迎えて魔力が増えたせいで不調と回復を繰り返してるのだけど⋯。

貴方どう思う?」

「それは治療法ってこと?

もしお母さんみたいな薬や食べ物で一次的な理由なら、今回の対策で良さそうだけど、生まれ持った性質なら根本的に治療するのは難しいよね。」

「そうよ。実は貴族で魔力過多症になる人は少なくないの。

今なら分かるけれど、貴族はあまり屋外で活動しないし、体調が悪くなれば尚更よね。

対症療法として魔法を使わせるしか無いの。

でもカルマンの息子の場合は、それが難しい。

身体強化も強化が過ぎれば骨や筋肉が破壊されてしまうのよ。

治療に魔法薬が使えないから、どうしても消費が足らないの。何とかならないかしら。」

「お姉さんが魔法を使う時に使ってる棒はだめなの?」

「体内から外に魔力が出せないのが問題なの。あれも体内の魔力が伝わって効果を出すものだから⋯」


カルマンさんはまだ無言で頭を地面に擦り付けて泣き続けている。

ムッチャ気まずい。

多分奥さんを助けようと思って殺してしまったと考えてるんだろう。

まぁ多分実際にそうなんだろうけど。


「つまり日に当たれば少しは回復するけど、それ以上に体内の魔力を外に出させたいんだね?」

「そうなの。」

「うーん⋯簡単に言えば、飲水は日に当てて魔力を消して飲む。食べ物は調理後に日に当てたら、別の意味で身体に悪そうだから調理前に当ててなるべく魔力を減らす。

薄着で日の光を浴びる。

これはお母さんも寝巻きで外に出されただろうから、薄着だったと思うの。

最後に、やってみないと分からないけれど、掌に傷をつけてお姉さんが持ってた棒の、魔石のついてないのを持たせてみたら?」

「⋯なるほど。精霊実や魔力草を傷つけてはいけない理由を利用するのね?」

「怪我は回復薬を飲んでも問題無いぐらい魔法を使った後なら⋯」

「感謝する!!!

貴方に出会えた奇跡を神に⋯感謝を⋯」


血を吐くような声で言われてむず痒くなった。

まぁうん。そうだよね。

フリーでやってける様な人が、紐付きになるには理由があったんだろう。

気まずいのは私だけじゃ無くて、全体的に皆がソワソワしてる。


「今は夜だけど、息子さんの所に行ってあげた方が⋯」


カルマンさんは大きく息を吸い込んで、深く吐き出した。


「急ぎたいのは山々だが、恩人に恩を仇で返す真似は出来ない⋯」


そしてスッと上体を起こし、無念そうに地面を睨見つけて絞り出す様に呟いた。


「お姉さん⋯」

「カルマンの息子に処置を施せば、今治療に当たっている錬成師にバレるわね。

貴方が見つけた秘密の情報を開示したら、カルマンは貴方との関係を疑われるわ。」

「恩を仇で返すってそう言う⋯なら、その治療に当たってる錬成師を巻き込もう。

日の光の実験に携わってる錬成師見習いを巻き込んだ様に出来ないかな?」

「そうしましょう。

師匠に接触して貰う様に伝えるわ。貴方が考えた治療方法と一緒に伝えましょう。」

「時間かかりそうだね⋯」

「でもまぁ間に合うと思うわ。状態が良ければ授業を受けてるみたいなの。」

「深刻じゃ無いけど、時間の問題だったのかな?」

「そうよ。かなりギリギリね。あと1年もしたら寝たきりになってそのまま⋯」

「それはもう良いです。

間に合うなら良かったね。

まぁそれも実際にやってみないと分からないけど。」

「でも今より確実に効果は出そうよ。」

「だからカルマンさん。

私には今はこれが限界だけど、元気に行こう。

過去はどうしたって変えられないから苦しいだろうけど、⋯負けないでね。」

「⋯⋯」


何度も頷いて、涙を落としながら拳をきつく握りしめてる姿に、お父さんが深く吐息を漏らしてた。


「俺も母さんが居なければ、貴方と同じ目にあっていた。

それも理由も分からずに⋯。

何と声をかければいいか分からないが⋯余り自分を責めない様にしてくれればと⋯思う。」


そして立ち上がってカルマンさんの横で片膝を地面につけて座り、彼の背中を鎧の上からポンポンと叩きながらそう言った。


「あぁ⋯感謝する。

偉大なる貴方の娘をこの世に授けてくれた貴方にも、私は神に感謝を授けよう。」

「⋯ありがとう。

褒められたものでは無いが⋯、俺も貴方に救われた思いだよ。」

「情けなくも非力な身ではあるが⋯私は私の出来る限り。

貴方方が平穏に暮らせる助力を惜しまない事を約束する。」

「よし!マゼランお祖父ちゃん、アレをお願いします!

皆で食べて元気を出そう!」


マゼランお祖父ちゃんはスッと立ちあがると、スタスタと仕上げに向かって行った。


「なんかもー他にも話したいことあったんだけど、取り敢えずご馳走食べよう!

冷えちゃってるけど、良いかな?」

「ええ、構わなくてよ。」

「では味見をさせて頂きます。」


澄ました顔でギルバートさんが、お嬢さんの前に置いてあったサラダが入ってる皿から、ウチの木製のスプーンとフォークで適当に摘んで、自分の空き皿に乗せて行く。

他にもエリザベスお祖母ちゃんや、マリア婆ちゃんが給仕を始め、タルクス叔父さんにジーニスを渡したお母さんも、それぞれの皿に料理を盛り付けだした。

タルクス叔父さん、少しだけえ?俺?!って顔してたけど、子持ちだから普通に片腕でジーニスを抱っこしてる姿がサマになってる。

テーブルはサラダの他に芋とベーコンの和え物とか、ガーリック(?)パンとか、蒸し鶏のクリーム和えやら、川海老の酒蒸しや卵と野菜のキッシュみたいなのがあって、冷えてても美味しそうで、マゼランお祖父ちゃん毎日ウチに来て欲しいなぁと、こっそりと思う。


だってお母さんの料理にレパーリーが少ないのって、そもそもマリア婆ちゃんのレパーリーが少ないからだ。

多分それが農家の普通なんだと思う。


「酒いるやつー!」

「私、ジュース!」

「あら〜私もジュースにしましょう。お姉さんはどうします?」

「私は貴方より年下なのだけれど⋯そうね。私もジュースでお願いするわ。ギルバートもそれで宜しくて?」

「⋯私は水か茶が⋯」

「何だよ、酒飲めねぇのかよ。ウチの仕込んだヤツだぞ。」

「ギルタス叔父さん、ギルバートさんは仕事中だから、お酒は飲ませたらダメなんだよ。

叔父さんも鳥の世話しながら、お酒飲まないよね。」

「あー、そっか。勿体ねぇな。」

「その代わりカルマンさんにお酒飲ませちゃお。良いよね?ギルバートさん。」

「良くないですが⋯まぁ良いでしょう。」


メッチャ不本意そうだけど、お父さんに付き添われてエグエグしてるカルマンさんを嫌そうに見下ろして、ふぅ⋯と諦めた様だ。

もうね。

うん。

仕方が無いよね。


ウチは(アムル)の農家だし、エールみたいなの樽であるから、まぁ沢山飲めば良いと思う。

美味しいかどうかは知らないけれどね。




飲めば良いと思うよ。

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