53
妖精爆く誕の巻
目の前には赤い実の付いた葉っぱがあった。
赤い実を眺めて、どれが少しでも甘いのかを探していたからだ。
足元には密を吸ったフランが何個か転がっている。
肌寒さを感じて、今が真夏じゃない事を知った。
『キャア!』
『わあぁっっ!』
幼い子供の悲鳴にハッとなって立ち上がり、団子になっているのを私は立ったまま眺めている。
「ニョロニョロだぁ~!」
叫んでる声がマルクだと、当時名前もしらなかった少年が、今なら直ぐに分かった。
あの頃は走ろうとしなかったけど、今は別の意味で走らなくても直ぐに移動が出来る私は、子供達の輪の中へ転移して移動すると、地面にナイフを突き立てて戸惑ってるマルセロの姿を確認する。
前は英雄だった少年マルクは、ヤラマウトの幼体にナイフを突き立てているマルセロの姿を見て目を輝かせていた。
ヤラマウトはまだ生きてるみたいで、首元を地面に縫い付けられてる状態で、身体を激しくウネウネと動かしてマルセロの腕に巻き付いているけれど、恐らく死ぬまで時間の問題のように思われる。
フッと陰った事で視界に入った黒いズボンから、ほぼ真上を向く形で顎を上げて見上げれば、威圧の魔力に押されて転んだ何人かの子供達の頭上を通り越して迫る銀色の剣が、金色の光を放っているのを見たかと思ったら。
「リリアナ!」
『きゃあぁぁーー!』
マルセロの切羽詰まった叫びと子供達の悲鳴と、視界の景色がクルクルと回ってる中で、青い空と縦長の瞳孔が金色になったアルフィンの顔が一瞬だけ見えたから、私はハッとして目を覚ました。
ドッドッドッ⋯と常夜灯の明かりの中で、私は身動き1つとれずに固まってる。
全身から滝のような汗が噴き出してて気持ちが悪かった。
「黒ミルキー起きたのね!
え⋯どうしたの?
凄い汗をかいてるじゃない!
え?何で?!
こんなの始めて⋯むぐ!」
私は自分で自分の口を慌てて塞いでる、私の顔をした妖精をジッと観察する。
回復魔法で記憶を消したにしては、あの時何のモヤモヤも感じて無かった事を思い出す。
でもあの時はとても疲れていて、しんどかったから視野がとても狭くなってたんだと思う。
さっきのが私が見た悪夢だと言い切れないのが、ナビと自称している妖精の態度から漠然と察してしまった。
「⋯ナビ、貴方はリースリーじゃないよね?」
「そ、そんな!?
どうして?!
まだ私、何も喋って無かったのに!!!」
ぶわんと鈍い音を立てて、妖精の周りを赤い光の文字で描かれたメビウスの輪が取り囲んだかと思ったら、フッと静かになった。
またドッドッドッ⋯と嫌な感じで鼓動が走ってる。
注意深く辺りを観察するとゴクッと唾を飲み込む。
また空腹感が戻ってきてる。
まるで昼寝をする前に戻ったかのような感覚に、ドキドキして来た。
よもやとは思ったけど、まるでアニメみたいな現象を目撃した後だから、余計にそう感じるのかも知れないけど、コレって俗に言うタイムスリップとかタイムワープだかリープって奴なんじゃ無かろうか。
私の顔をした妖精が使った魔法だから、おそらく私が予想していた以上に今は危険な状態に陥ってる予感がする。
昼寝なんてしてる場合じゃ無かったのなら、少し残念な気もするけど時間が巻き戻ったのは良かったのかも知れない。
減ってるのはお腹の中だけで、身体の疲労はかなりマシになってるからだ。
新しいダイエット方法を見つけたみたいになってる。
食べた満足感や味を得られて食べる前に戻せばあら不思議。
あんなに食べたのにカロリーゼロ!って奴だ。
いやいや、今それ所じゃないんだけど思わず現実逃避しちゃったよ。
でも昼寝前ならウンザリして発狂してたかも知れないけど、一回寝れた記憶があるだけ凄くマシな気分。
深呼吸をして心を落ち着かせると、魔法の鞄から干し肉を出して噛みながら、ならばまず先に行うのは情報収集になるよねと考える。
だからこの私の魔力で覆ってる空間の中にある魔力と、魔法の鞄の中にある魔力を取り込んで、間違い探しを密かに始めてみた。
大きな差は感じられないように思えるけど、明らかに鞄の中の魔力や魔素に対してより、同じものであった筈のこの空間の魔力のほうが洗練されてる雰囲気を察する。
大きな違いが有るとするなら、ペプシとコカ・コーラの味の違いぐらい違う。
元の魔力よりも私の魔素が作った魔力は、思念を送ってからの変化が早くなっていたのに対して、新しい魔素の魔力は瞬時に行っている。
三輪車がバイクに変わった事にも驚いていたけど、今はもう新幹線になってるんだから、これはもうバレない方が可笑しい代物になってるんだよ。
しかもそれだけじゃ無くて、私の魔素と元から有る魔素には少し微妙な変化を感じられてたのに、新しい魔素にはそれが感じられ無いのがまた衝撃だった。
従来の元から有る魔力と区別が全くつかないのに、変化の仕方だけが段違いに早い事を思えば、何故そんな進化を遂げたかと言えばタイムリープが原因としか思いつかなかった。
それとは別に、私以外には何も存在しないはずの空間なのに、私をジッと見つめてる何者かの気配が痛いぐらいにビシビシと感じるのだ。
その存在を探るために、私はわざと私の作った古い魔素を増やして空間を満たしてやる。
魔素の感知は人には不可能になるけど、今は変身解除前なせいかハイパー化してるので、何故だか一粒の魔素の荒さまで感じ取れる不思議。
実際に目に見えてるんじゃないから上手く言えないけど、電子顕微鏡を素で装備してて、テレビのCMみたいな感じて掌にバイキンがウジャウジャいる!
って言うのが分かっちゃう感じみたいになってるんだよ。
だから直ぐに荒くなってない丸い場所が分かったから、そこに向かって動けばスルンとそれは移動してしまう。
それを視線で追うと。
「なっ!
なんで見えてるの?!」
何もない空間に悲鳴みたいな叫びが挙がってまた赤い光の帯の輪がグルグルと回り始めてパッと消えた。
手に持ってた筈の干し肉が無くなってたので、今食べても無駄なのが分かったから、また魔素を作って妖精を探すと。
「ヒィィィ!
何で何で何でえぇぇ!?」
赤くなったり消えたりまた赤くなったりと、点滅してるみたいになってるから、どうやら今よりも過去には戻れないのが分かってなるほどと思いながら、ヘロヘロになってるそれをムンズと掴んだ。
「ど⋯どうしてぇ〜?!」
「取り敢えず落ち着こう。」
シオシオになってグッタリとしてるソレを両手で覆うと、オエオエとえづいてるから、魔法の鞄から出した魔力草の種を出してから、砕いた物を口にいれるように伝える。
「駄目よ!
実食したらアストラル化が解けてしまうから、魔力で作ったものじゃないと食べられないのよ!」
アストラル化?とかワガママ言うから、砕いた白い粉末をコピーしてあげると、両手を伸ばしてハグハグと頬張るのを見て、何だかよう分からんけど、魔力しか食べられない事が分かった。
実食が出来ないと聞いたから、じゃあ魔力で作ればエエやんと、軽く考えたのが正解だったみたいだけど、どうやら錬成師が作った魔法生物が魔石の魔力を食べて生きるのと同じ仕組みなのが予想出来る。
そう言えば麦の水撒きは魔力が豊富なだけじゃ無くて現物の水を与えていた事を思い出す。
今なら魔力100%の魔法の水で水撒きを出来るけど、それをするとひょっとしたら枯れてしまうのだろうか?
でも錬成瓶に入れた魔法の水はずっと残ってる。
しかも魔法の水は飲めるし、喉の渇きも癒えるから、魔法の水は現存する水へと変わるのなら、いつ魔力から実体化に変化してるんだろう。
なんか頭の中がゴチャゴチャしてきたぞ?
麦を純度100%の魔法の水で育てて見なければ分からんな、とひとまず放置する。
でも直ぐに頭の中でフラッシュバックが起こった。
人工小川の穴を塞いだ時の事や、焦げ茶色の髪からカルマンさんの奥さんを再生させた時やら、石棺と骨が沢山有る裏庭の光景や、先王様を取り囲んでいた無数の黒いモヤモヤ達の映像が次々と頭に浮かんで、なるほどと納得する。
なんかこの映像が頭にドバっと来るのも久しぶりだなぁ⋯と、ズキズキする頭痛と胸のスッキリ感に小さなため息を零した。
私は正解に無自覚で辿りついていたんだよ。
実体化をさせる必要な要素は魔素と命令と記憶だったんだよね。
だからコピーしただけの物には、その状態を維持する意識の強さが足りずに実在するまでには至って無かったんじゃ無かろうか。
魔法の水は人間が水で有る事を強く望んだ魔力が作った物だから、実在するものに変化してるとすれば、納得が行くんだよね。
人工小川の穴を塞いだ時も、魔力をシッカリ込めて定着しろと命じなければ、穴はすぐに脆くなっていたのがその証明になる。
人間の身体にしたってそう。
魂を入れて本人が自分の身体を認識しなければ、そのうち魔力が無くなれば消えて無くなってしまうんじゃ無かろうか。
だから意識が戻るまで、身体を維持させる為に私は魔水を飲ませてたんじゃないの?
逆に先王様を取り囲んでたあの魂達が天に帰らずに残って居たのは、その魂の強い意識がそうせてたんだろう。
魂の維持に必要な魔力は、先王様の身体から自然に漏れてるものを利用してたんじゃない?
普通の人なら足らなくて魂があの場所に居る事や自分の形を維持出来ない事になってたか、取り憑かれてる人が魔力不足で倒れてたかも知れないけど、先王様は魔法を使うのが不器用で苦手なだけで、持ってる魔力は通常の人よりも多いから無自覚で大量の魂達を養えてた可能性が高いんだよね。
でも蘇生には死んだことを覚えてると駄目なのと、身体を再生させるには多くの魔力が必要だから、死んだ記憶がある状態だと生き返れないから、回復魔法で時間を巻き戻す事で死んだ記憶を忘れさせてるとするのなら、蘇生魔法の仕組みに辻褄が合わないだろうか。
だとしたら死体を復活させる時には、死んだ記憶を無くせと強く命令する必要が有るんじゃないかと察する。
もしくは本人が生き返ったと周りが強く思えば、言われた本人も無意識にそう思うから、それで足りるのかも知れないけどね。
だから神様が必要になるんじゃない?
自分が作った物を、その存在の維持を願う強い意志が必要で、その状態が維持されているのなら。
神様が消えた世界は魔力が消えればまた石ころに戻る可能性があるんじゃないだろうか。
でも長い長い時間をかけて産まれて来た者たちが、自分がそう言う存在だと記憶して仕舞えばどうだろう。
神様が願わなくても自分で自立が出来る状態になれば、その時始めて神様が要らなくなるのかも知れない。
つまりこの世界は魔素と言う記憶を残す媒体と魔力と言うエネルギーが作った幻想の世界なんじゃないんだろうか?
その幻の世界を実在させる為に存在しているのが、私の本体と呼んでる本物の神様の魔素を増やす力と強い望みがそうさせてるとしたら、じゃあ男神とはどういう存在になるのかな?
でも彼は言ってたじゃない。
本物の神様を慰める為の御子の様な存在だと。
一人ぼっちじゃ寂しいから、神様を維持させる機能が男神だとすれば、そりゃ女神は男神を切れない事になる。
居なくなれば女神が寂しすぎて自身の滅びを願ってしまうなら、男神を失えば世界は自立出来ない星以外は崩壊しちゃうし、魔素がこれ以上増えなければ世界は停滞するんじゃない?
男神の代わりが居ればいいけど、神様と同じ長い長い永劫の時間を生きていけるような存在が、そんなにゴロゴロいるとは思えないんだよ。
換えが効かない存在だから、何とかしようと四苦八苦してるのが今なら、辻褄が合うよね。
だから私は神様の願いから産まれた存在なのかも知れない。
困った男神から人を守る為に、自分の代わりとして世界を支える存在を欲しがったから、私が作られたとすればだけどね。
だとしたら男神からすれば私は神様の敵になるわけだ。
だから夢の中のアルフィンは私を殺したんだろう。
そりゃそうなるよね。
だって私みたいなちっぽけで未熟な存在が、大きな神様の代わりになんかなれるはずがないもん。
私が今の神様の代替わりとなれば、多くの命が支えきれずに取り零されてしまうんじゃない?
そう人間のままでいたい今の私がそうなるのならね。
「貴方が何なのかは分からないから、貴方の話を聞かせてくれるかな?」
「っっ⋯駄目よ!
そんな事をしたら上手く行かなくなっちゃうわ!
本番で失敗する訳には行かないのに、どうしてこんな事になるの?!
あれだけ試してあんなに苦労してやっと正解に辿り着いたと思ったのに、ここで失敗をしたら私は今まで何のために1人になっても生きて来たのか分からないじゃない!」
小さな妖精の瞳には絶望の色が色濃く混ざっており、顔は怯えて恐怖に歪んでいる。
掌から彼女がカタカタと小刻みに震えているのが分かるから、どれだけの辛い経験をしてきたかが察せられてしまう。
その深い悲しみと絶望と苦しみを体現している妖精の状態が、深く観察しなくても目や魔力で感じられる情報の中からシッカリと私へと伝わって来る。
「よく分からないけど、貴方の事をお話しても多分失敗した事にはならないよ。
貴方がいま此処にこうして存在してるだけで、多分成功してるんじゃないかな?
私が想像出来ないぐらいに沢山苦労して頑張ってくれたから、貴方は大成功の道を掴みかけてるんじゃないの?」
「⋯え?⋯うそ⋯どうして?」
「だって今こんな風に私と話した経験が無いから、貴方はそんなに混乱してるんじゃないの?
それは貴方が思ってる以上に、成功の印なんじゃないのかな?」
「あ⋯うそ⋯え?!
ホントに?
ホントのホント?ホントに?!
え⋯何でそうなるの?!
何で何で何で何で?!
ええええっっーーーー?!」
妖精はそう絶叫を挙げると、きゅう⋯と失神してしまった。
フリフリと揺らしてみたけど、壊れた人形みたいになってて全く反応が無かったから、私は仕方がないなと豊満な胸の谷間にソレを突っ込んでおく。
何が何だか分からないけど、恐らくこの妖精は私が失敗した未来から来た存在なのは分かった。
そして寝てる場合じゃないので、仕方無くバックアップを作る事にする。
失敗するのが分かってるなら、バックアップは重要になるからだ。
なので予定通りにリースリーを作ると、直ぐに家族の素材を集めて星から出るように伝える事を決めた。
私がこれから行動を起こした時に、この妖精から情報を得られないと失敗する事が確定してるのなら、それは必要な措置になる。
まず失敗するつもりは無いので、妖精が起きてから行動するつもりだけど、私の予想が正しければ、このバックアップを残さないと妖精が存在出来なくなる危険性が高いとこの時はそう予想していた。
この妖精の存在がキーとなるなら、これから成功への道を進むために、成功しても妖精が消えないようにするために、妖精が教えてくれた新しい魔素を使ってリースリーを作成するのだが。
でもその為には新しい魔素をコピーしただけでは魔力が無いから作れない。
どうせ妖精が寝てる事だしと、せっせと新しい魔素を解析して作ると、私が作った魔力の壁から外に追い出し、増幅するように指示を出す。
つまり今この星には本体が作った魔素と、以前の私が作った新しい魔素と、妖精が持ち込んだ技術を使った新しい魔素を作る3種類の魔素が、溢れる事になるのだけれど。
恐らく妖精のこの状態を見る限り、私の荒い魔素は本体達や男神が見抜けても、妖精が持ち込んだ未来の魔素は見抜けないだろうと察する。
自分が自由に使えない魔素を撒き散らかす私をみて、男神は恐らく警戒を強めてしまったんだと推測した。
だってマインドコントロールを私にされたら、女神を守れなくなるからだ。
そもそも男神の力を削ぐ為に作った魔素なんだから、自分の力が弱まる事を直ぐに向こうも気付いただろうし、戦闘狂の気のある男神からしたら宣戦布告にしか思えなかっただろう。
自分が望む通りに力を振るうには、既存の女神の方が都合が良いんだから、それの代替わりになる私なんて始末一択になっても可怪しく無いよね?
そしてアルフィンにしても、大多数の生命が危機になると予想すれば、正しく王としての剣を振るう事も予想出来る。
それに気が付かなかった私は、男神との骨肉の争いをやらかしてたんじゃないだろうか?
夢では私が死んだ所までしか見て無かったけれど、ヤラマウトを倒したマルセロが、私を殺した犯人に向かってナイフを向けなかったとは言い切れないからだ。
相手が例え顔見知りのアルフィンだったとしても、家族を殺されたマルセロが我を忘れてナイフを振れば、アルフィンは間違いなく返り討ちにする。
でも人間のアルフィンは自分の言葉を違えた責任を取ってその瞬間に消滅するんじゃないかな?
アルフィンはどれだけ自分が辛くても正しい判断が出来る人だし、それに対する実行力も持ってる。
でも私と交わした約束を果たせなければ、世界の理不尽さに絶望して自分の消滅を願ったとしても不思議じゃないのよ。
男神が王として生きればいいと思うんじゃないのかな?
元々疲れてクタクタになってたしね。
男神があの時居なかったのとアルフィンは寝てるせいで、若返りやらお姉ちゃんが蘇生が出来る事を知らないから、私やマルセロを殺した事で全てを諦めるだろうし、男神には私しか目に入ってなくて周りは有象無象だから、当然お姉ちゃんは放置される。
私やマルセロに記憶が残ってた理由が、私だけが使える魔素を吸い込んでるからだとすれば、タイムリープから外れたのもなんとなく説明がつくし、お姉ちゃんは間違いなく記憶が残されてるはずなんだよ。
それで慌てた子供達からの情報でお姉ちゃんが私達の所についたら、そりゃあっさりと蘇生されちゃうよね。
そうなったら私も、怒りで頭が真っ白になるから視野も狭くなるし用心深くもなるに違いないんだよ。
そして今度はタイムリープなんて反則技で産まれる前まで世界を回されたら厄介だから、水面下で行動しようとするに違いないから、そこからはお互いの生存権を巡っての骨肉の争いになるって寸法なんだね。
男神はタイムリープさせる能力を持って居る事が予想出来る。
でも私だけの魔素で作った魔力が、私やマルセロ達の記憶の保護に一役買っているのを知らなければ、あの夢の状態も説明がつくんだよね。
一気に私が生まれる前に戻して母なり父なりを殺さないのは、敵には直接手を下すのが彼のポリシーなんじゃない?
これからの行動で恐らく男神は皇帝陛下の身体で、私を倒そうとして倒し切れなかったんだと思うんだよ。
でも有効なのがそれで分かったから、タイムリープさせて私が記憶を完全に取り戻す前に私を始末したとすれば一応説明がつくんだよね。
弱腰なんだか執念深いんだか分からないけど、ちっさい男だなと考えたらため息しか出ないけど、女神を守る為の行動と普段なら見向きもしない弱者を倒さなければならない屈辱とを思えば、プライドが鬼のように高そうな男神からしたら自傷行為に等しい行いになるのかな?
そんなことを繰り返せば、そりゃ男神が女神に不信感を抱くのも当たり前になるし、強い相手と戦うのがヤツの望みなら、女神はそれを叶えようとする性質も有るから厄介なんだよ。
女神の影響を受けない場所で私はバックアップを作ってるだろうから、この後からタイムリープ合戦に入ってしまったんじゃね?
そして現在の神様達が気づけない方法でのタイムリープ技術を新しい魔素で作ったから、妖精が今度こそはと私の前に現れたとしたら、現在の状況も納得が行くんだよ。
でも私にはそんな面倒な事をする根気がないから、この妖精の顔をした何者かは、相当の根性がある人が元の魂になってる事が予想出来るんだよね。
そんな面倒な事が出来る人なんて、私の家族にはたった1人しか居ないんだよ。
女神をイメージさせて作った身体を包んでるのは闇のカーテンだから、ノーブラの胸の谷間なんかじゃ支える事なんか出来ないから、闇のカーテンを実体化させるぐらいに魔力を足して拘束してるので、今見下ろせば私の顔を上に向けて気絶した妖精が良く見えてる。
だけど多分この妖精の元の魂はきっとお姉ちゃんなんだよ。
たった1人きりになっても諦めずに家族を取り戻そうと長年戦って来た上で、勝利を掴める人なんてあの人しか私は知らないからね。
果たしてどれだけの苦労をして来たのか。
それを軽く想像しただけで胸が苦しくなって目頭や喉が熱くなって来る。
ソレだけで彼女の存在が薄くなってしまったから、慌てて私の魔力を彼女の中に送り込んだ。
なるほど。
彼女の存在が成功の鍵になるのなら、失敗の世界から来た彼女はこのまま消滅して存在が無かった事になってしまう。
だから私は新しい魔素を作るのを一旦止めると、既存の荒い魔力でリースリーを作る事にする。
デザインは私の顔をしたこの妖精。
そして魂はこの妖精のものをコピーして留めておく。
髪をプチッと抜いたら、痛い場所の所を抜いてしまったのか、アイタタタ⋯と痛みに顔を顰めながらも、素早く身体を作るとその身体にコピーした妖精の魂を入れようとしてハッとする。
これじゃ駄目かも知れない。
身体と魂が別になると上手く定着できない可能性が高くなる。
だから作業を一旦そこで止めると、妖精の髪を使って妖精そのものをコピーすることにした。
でももう殆ど薄れてしまって利用が出来ない。
ならばと鞄を漁って姉が出した魔力の水が入った月の光を浴びせた水を使用して、その魔力と魔素を使って妖精の身体を一瞬で作り上げた。
身体は全て魔力のみで構成させている。
そして妖精の記憶を全てコピーするべく魂をコピーさせると、魔力のみで作り上げたボディと融合させた。
「お姉ちゃん消えないで!」
私が強く願ったその瞬間に胸元にいた妖精はフッと存在を消滅させて、その代わりに目の前には新しく作り上げた妖精の代用品だけが遺される事になった。
「お姉ちゃんっっ⋯!」
空中に浮かんでる妖精に両手を伸ばして手で捕まえようとしたけど、触れられなかったかは、掌を魔力で覆って妖精の身体を包み込むと、胸元に押し当てて私は大量の涙を溢れさせる。
多くの苦労を重ねた健気な彼女には幸せな未来を見せてあげたかった。
でも失敗の未来で生まれた本物の彼女は、これから成功する未来では存在する事が出来なかったのだ。
直ぐにその存在が消滅せずに要られたのは、私が彼女の存在の理由に気付いたのが遅かったのと、私の与えた魔力草の種のコピーが与えた魔力のお陰と彼女の執念が放った無意識の魔法のお陰だったのかも知れない。
これまで彼女が培ってきた未来の情報のほとんどが、これから無駄になってしまうんだろう。
何故ならこれから向かう先は成功の世界になるからだ。
作りかけていた私の髪の毛を使った妖精のコピーボディは、途中で投げ出された事で元の髪の毛に戻ってしまっている。
でももう私は自分のコピーすら作る気が半ば失せてしまっていた。
だってこんなのあんまりじゃないか。
私の軽い気持ちで作られたコピー達は、どれほどの苦労をして、失意の上で消えて行ってしまったんだろうか。
今の私が知らないだけで、失敗の世界で生まれてきた生き物達が、この瞬間に全て消えてしまった事になるのかな?
私の知らない世界で、私の知らない家族達が懸命に作り上げて来た星々が、全て消えてしまったとしたら、こんなに悲しい事なんてないと思う。
でもコピーされた姉の記憶が残っていれば、それは私の知らない次元で今も辛うじて残されて居るのかも知れない。
この瞬間にこの妖精は神様へと昇格したと思うのは、そう思いたい私の欺瞞なのかな?
私がもし今バックアップを作れば、そして私がまた失敗した時には、またこの妖精のように苦労した可哀想な姉が産まれる事になる。
だから絶対に失敗は許されないけど、だからこそ失敗を前提にしたバックアップは不要だと思った。
もし私が失敗するなら、その時はもう終わりで良いと思う。
こんな可哀想な存在を絶対に量産してはいけないんだよ。
苦労を重ねたこの姉には成功の喜びを経験して欲しいけど、でもその喜びを知らずに苦労して死んで行った存在を思えば、胸が張り裂けそうなぐらいに苦しくなった。
でも私がバックアップを作らなければ、今この妖精や失敗の世界すらもどうなってしまうのか分からない。
バックアップを作るべきかそうでは無いのかと凄く迷うけど、今はまだ消えずに残ってるこの妖精を、成功した未来から来た妖精に変換させるとするなら、私は私が思った通りに素直に行動しなければならないのだろう。
だとすればバックアップを作るにしても、隠密に特化してる新しい魔素の存在が必要不可欠だ。
コレから作るバックアップは、失敗の世界を安定させる為のバックアップになる。
失敗の世界が有るからこそ、成功の世界へと辿り着いた事にしようと考えたんだよ。
だからまず先にそれを集める事を優先しなくてはならない。
量は分体を2人作る程度で良い。
空に上がれば普通の魔素や魔力が沢山有るだろうから、本体達がまだ作ってない場所を目指して飛べる、隠密特化の分体を作ってそこで隠密特化の魔素を増やすように指令を出す事にする。
たった1人きりではきっと寂しいだろうから、ナビが出来るこの妖精のコピーと分体の2体分の魔素を作り上げ、向こうで家族を作れるように素材を集めて向かわせることに決めた。
必要なものは新しい魔素と魔法の鞄が有れば済む。
妖精と同じアストラル化?した分体なら魔力でご飯を作って食べれば済むからだ。
水と月と太陽さえあれば、生命なんて作らなくても、新しい魔素を増やすだけなら充分出来るし、そこに家族の分体を作って置いておけば、寂しがらずに作業が続けられるんじゃないだろうか。
まずは新しい魔素に魔力を纏わせる必要が有るので、新しい魔素を外に出して月の光を浴びせる命令を出す。
魔力を身にまとったら、直ぐにこの場所に戻ることを命令して、分体を作るのに必要と思われる分だけの魔素を作り上げて、この場から解き放った。
この魔素たちが戻ってくるまでの時間を使って、次は家族の素材を集めてくる分体を通常の魔力を使って作り上げる。
家族の素材を集める事を知られる程度なら、バレても問題がないからだ。
これを私の荒い新しい魔素でやらせてしまえば、向こうが干渉出来ない分体の存在を知られる事になるから、余計な警戒心を煽る事になる。
だから作りかけて放置していた髪の毛を使って、元から有る魔力を使って2歳児の私そっくりの分体を作ると、魂をコピーさせてから姉や家族達の素材を集めさせることにした。
私との差別化を図る為に、アストラル化と言う物にする為に、身体の大きさは10cm程度に留めておく。
私の顔のままだと微妙なので、姉を真似て顔を姉そっくりの妖精にして背中に透明な羽を放して、この場所から自宅に転移させた。
皆の髪の毛を集めるぐらいなら、このサイズでも充分出来るだろうからね。
本人達に会わせると煩そうだから、家に落ちてるものを探させる事にしたのだ。
そしてものの10分もしないウチに戻ってきたので、遮光錬成瓶を1つ開けると、そこに髪の毛を纏めて入れて蓋をキッチリと締めてから、魔法の鞄を取り出して、中に瓶を入れておく。
この魔法の鞄は姉が好みそうな、腰に巻き付ける形の革の魔法の鞄を復活させたヤツを使った。
これまで油が無ければ出来なかったけど、アストラル化させる事を考えると、コピーしただけで魔法の鞄が復活したので、容量いっぱいに私専用の魔力を詰め込んでおいたのだ。
こうすれば本体の魔力が無い場所で使う分には問題が無いと思ったからで有る。
念の為に家族の素材を入れた錬成瓶の他にも、見本として塩漬けにして包んでおいたお土産用の角クジラ鮫の肉もいれておいた。
こうすれば塩も肉も量産出来ると考えたからだ。
妖精の身体からしたらもの凄く大きいけど、私の分体に持たせたら良いよね?
でも他にも見本になる素材があった方が良いと思ったので、妖精にそのコピーした魔法の鞄を持たせてまた実家に送り込む。
そこで必要だと思う素材を集めるように指示しておいた。
そうしてるウチに新しい魔素が作った魔力が集まって来たので、2歳児の私の分体と姉の顔に戻した妖精の分体を作り、それぞれに魂をコピーして入れた後で、種をコピーさせた物を与えておく。
向こうで使えるようにと、ピヨ子が取ってきた元気草の芽と魔力草の種の現物も用意して、物資を調達して戻ってきた妖精からアストラル化した魔法の鞄を返して貰うと、そこにコピーした遮光錬成瓶に魔力の水を入れたものに、種と芽とそれぞれ入れた物を入れておいた。
現物の遮光錬成瓶は髪の毛を入れているので、こうしておけば何時でも遮光錬成瓶が作れるし、あと透明錬成瓶は1つだけ現物だけど他の大型透明錬成瓶と錬成箱はコピーした物を入れておく。
これはちょっと現物を渡せないので、申し訳御座いません。
頑張って消える前にコピーして下さいませ。
そして分体に魔法の鞄を持たせたら、まず先に月を作るために月へ向かって素材を集めてから、一気に本体の魔素が存在しない場所まで目指すように指示しておく。
私の分体にはピースと名付け、妖精のほうはビクトリーと名付けた。
成功祈願みたいなもんだね。
そして2人を送り出したけど、今のところ失敗の世界から来た子のコピーはまだ目覚め無いみたいだ。
ビクトリーの方も記憶が全く無くなっていたので、私の試みは今の所失敗している。
でも1人きりで寂しい旅をせずに済むからと、ピースはビクトリーを大事な相棒として連れて行ってくれた。
私の記憶が有るから当たり前だよね。
現時点ではまだ私の記憶が失われてないので、例え意識が無くてもこの妖精の存在は欠かせないものになる。
この妖精の存在が私に新しい魔素とタイムリープと言う大事な情報を繋ぎ留めてくれているからだ。
他にもまだ有る。
タイムリープした先で戻った世界で、私がアルフィンに殺された情報もその1つになるよね。
あれはこの妖精が連れてきた、失敗の過去の記憶の1つなんだと思う。
この妖精の元は成功させる事だけを強く望んだ意識の塊なんだから、この記憶が成功へと繋がる大事な情報になるのは間違いないだろう。
だとしたら私は今までの行動を振り返って考察を深めて行く。
男神と対立する場合が失敗への道だとするなら、男神を懐柔する方向へと進まなければならない。
方針は決まった。
では少しロスタイムを挟んでしまったけど、これからの行動を考えて行く。
まずは教皇を迎えに行くのは必須になる。
でもそこで失敗の世界から来た妖精は、私に皇帝陛下の危険性を強く訴えていた。
あの時は回復魔法で記憶を消したように誘導していたけど、あれ以上にタイムリープ出来なかった事を考えたら、私が眠ってる間に彼女が作業を進めていた可能性が高い。
おそらくは教皇をつれて行く分体を作ったりしてたんじゃないかと思われる。
私がルドルフ大帝国に行けば、おそらく男神が乗り移った皇帝陛下がそこに居て、教皇を連れて行く時にかち合ってしまうんじゃ無かろうか。
そして私は皇帝陛下の初見殺しにハマってぎりぎりで切り抜けるかをして男神からタイムリープを食らい、過去の世界でアルフィンに殺されてしまうんだろう。
ではどうするか。
教皇をここに呼び寄せてから、現状を確認するのはどうだろう。
そうすれば今のルドルフ大帝国の現状を知る事が出来る。
その代わりに私はルドルフ大帝国の教会で奔走する事になるだろう。
でも分体を送り込めば、男神に私を殺すヒントを与える事になるんじゃ無かろうか。
恐らく教皇からの情報を知れば、私の性格的にルドルフ大帝国の教会を見捨てる事が出来なくなるだろう。
そしてルドルフ大帝国の皇帝陛下では、私を倒せないと知った男神がタイムリープをして、アルフィンを使ったと考えたらどうだろうか。
現時点で男神がタイムリープを行ってないのなら、皇帝陛下の闘気が私を倒せる実感を持てておらず、また転移の必要性に気付いてない事が予想出来る。
あの時間にタイムリープの先が決まったのは、女神の調整でも入ったんじゃね?
素直に殺されてやるつもりは無いので、技を出させる前に動きを封じる必要が有るけど、下手をすればその動きを止める事が出来なかったとしたらどうだろう。
アルフィンなら闘気を使える可能性が有れば、動きさえ封じられなければ、私を倒せると踏んだとしたらどうかな?
だとしたら呼ぶのでは教皇では無く、男神が憑依してる皇帝陛下になる。
そしてその皇帝陛下を呼ぶのに相応しい場所はあそこになるんじゃ無かろうか。
私はそう決めると南西の入り江に向かった。
そろそろ朝日が昇る頃なのか、空が随分と明るくなって来ている。
それならなるべく急がなくてはならない。
日の光に浴びせて仕舞えば素材の質が劣化する恐れが高いからだ。
錬成師さんが発狂しそう。
私は深呼吸を1つすると、皇帝陛下を魔物の遺骸が溢れている浜辺に呼び寄せた。
「ぬっ?!」
「ごきげんよう。
ルドルフ大帝国の皇帝陛下に憑依してるお爺ちゃん。」
「⋯貴様!」
私を探して振り返った皇帝陛下の瞳が金色の縦長の瞳孔になってる事を確認すると、私は剣を振るわれる前に彼の瞳から視線を魔物へと向けて話を続ける。
「見てよこの魔物たち。
これは全て私の本体であるお婆ちゃんが、お爺ちゃんの為に作った美味しくて強い魔物達だよ。
でもルドルフ大帝国の皇帝陛下は、この魔物の事を知ってるのかな?」
「ぬっ⋯」
男神は腰の剣を抜く直前で、私が視線を向けた先にある魔物の遺骸に気付き、警戒心を深めながらも自らの意思で動きを止めて、チラリと魔物の遺骸に視線を向けた。
私と皇帝陛下との距離は殆ど開いておらず、彼なら剣を抜いたその一瞬のウチに私を切り捨てる事が出来ると思ったからだろう。
「しかもね!ものすっごく美味しいんだよ?
干物を作ったんだけど、食べてみる?」
私は魔法の鞄から干物を取り出すと、自分の口に入れてモッチャモッチャと咀嚼をしてから、はい!と食べかけの干物を男神が憑依してる皇帝陛下へと差し出す。
でも男神はそれに嫌そうな顔をしてから、食べかけの干物をジッと見つめていた。
「毒入りの食い物など誰が食うか。」
「毒なんて入ってないよ。
私がこうして食べてるじゃん。」
「そもそも貴様は毒の魔力が豊富なこの場所に、世を呼び寄せた事も気付いておらんのか。」
「あ!毒ってひょっとして私が作った魔素の事を言ってるの?
これは私が魔法を使うのに魔素を増やしたら、環境破壊になるからわざとこうしてるんだけど、それで勘違いさせちゃったの?」
「嘘をつくでない!
精神に影響を及ぼすような呪いが込められておるではないか!」
「あー!
なるほど、これをそんな風に勘違いして怒ってたんだね?
そっかそっか。
それじゃあどうしようか。
取り敢えずこの星の私用の魔素を全て呼び寄せて消費したら、お爺ちゃんは少しでも安心出来るのかな?」
そう言いながら増殖するように命じていた全ての魔素に増殖を止めるように命令を出す。
「今増えるのを止めるように指示したから、次は消費させようと考えてるんだけどさ。
せっかくだからルドルフ大帝国の東に向かった先にある島まで行ける小島みたいなのを作って行く?
あそこにこの魔物が居るかは分からないけど、他の美味しい魔物が採れるようになるかも知れないよ?」
「⋯ふん。
世を籠絡するつもりであろうが、その様な手には容易く乗らんぞ!」
「まぁまぁ。
だって記憶が無いんだから仕方が無かったんだよ。
アレコレ情報を集めてツギハギしながら考えてたから、誤解しちゃったんじゃない。
そもそもお爺ちゃんが星を砕くとか言うから悪かったんじゃん。
そんな事を言われたら誰だって誤解するよね?
そもそもお爺ちゃんと会ったのはアレが初対面なんだしさ。」
「その方が世から逃げようとするのがそもそも間違っておったのだ!」
「それも記憶が無かったせいじゃん。
お婆ちゃんはお爺ちゃんを喜ばせようとして、私に仕事をしろって命令してたんだから、お婆ちゃんが悪いんであって私のせいじゃなくない?
それをお父さんが知らなくてこんな問題になったから、お爺ちゃんが出て来る羽目になったんでしょう?」
「むうぅ⋯。
そもそもこんな遠い星で魔物を作った所で、世が食える理由が無かろうが!」
「お爺ちゃんの本体ってそんなに遠くにいるの?
もしこの星に直接来ようと思ったら、どれぐらいの年月が必要になるのかな?」
「知らん!
だが恐らくは1000年では足りんだろうな。」
「転移魔法を使ってソレなの?」
「ぬ⋯」
「だって私が見つけた技術を使えば、魔力を沢山増やせるから、転移魔法で此処まで来れるよね?」
「なに?!」
「お爺ちゃんはアルフィンが転移魔法を使うから、その身体じゃ無理でも本体の方ならもう転移ができるんじゃない?」
「っっ⋯」
瞳孔が縦長になった皇帝陛下が、私に視線を向けて愕然としている。
「でもコレから私がまだ勉強して行けば、もっと楽な移動手段が取れるようになるかも⋯」
「おい!この魔物を直接食えるだと?!
少し味をみさせてみろ!」
「干し肉食べればいいじゃん。」
「そんなものでは味など伝わらん!
余計なものなど入れずに、素の肉を食わせろ!」
「じゃあそこに凍らせておいたのがあるから、自分で切って食べればいいじゃん。」
私は半身になった食べかけの魔物を指さしてそう言えば、皇帝陛下が剣を振り抜いてあっという間に切り身を作ると、ボリボリムシャムシャと凍った場所ごと噛み砕いて生の肉を食べ始めた。
「おおっっ⋯これは中々に美味では無いか!!!
これを直接食えるだと?!
本当に魔力は足りるのか?!」
「自分の魔力で足らない時は周りから魔力を摂るための練習をアルフィンがしてたでしょう?
お爺ちゃんなら普通に使えるんじゃないの?
そこら辺がどうかは知らないけど、そのための練習をしてるんだから出来なかったら覚えたら良いじゃん。
こうやってお婆ちゃんは新しい技術を増やす為に、転生を繰り返してるんだよ?
魔物が美味しいモノが多いのだって、少しでもお爺ちゃんに美味しいご飯を味わって欲しいからなんじゃないの?」
「⋯そうか。
世が不要になったから捨てると言うのはあれはどういうことなのだ。」
「お婆ちゃんは全くそんな事を考えてないかもだけど、お婆ちゃんからの仕事を邪魔するお父さんが不要だってお母さんは思ってるんじゃない?
私はそう予想して言ってたんだけど、あくまでも私の予想だったからお爺ちゃんのほうが色んな人に話を聞けるんじゃないのかな?」
「⋯では何故貴様はその答えに行き着いた。
先ほどまでは敵対する行動をとっておったではないか。」
「そもそも私は2人の関係を良くしようと考えてたのに、ちょいちょい行動が違うのは、お母さんか別の何かの変な電波みたいなのが、私の行動を操作をしようとしてたりしてないのかな?
お爺ちゃんが星を砕くって言うから勘違いしてたのも有るけどさ。
お爺ちゃんが強い敵を望んでたからそんな風になるように誘導されてなかったのかな?」
「⋯だから貴様は自分の意思で動くための魔力を増やしておるのか。
⋯ううむ。」
私は干し肉を、お爺ちゃんは生の肉をお互いモッチャモッチャしながら、ジッとお互いの目を凝視していたけれどフッと縦長の瞳孔が消えると、元の皇帝陛下の色なのか青い人間の瞳に戻ったので、私は直ぐに教皇の場所へと転移する。
もちろん皇帝陛下も一緒に連れてきているよ。
だって要らないもん。
そしたらそろそろ日暮れを迎える前だったのか、でもまだ夕方になる前の明るさを保った広場に出ると、私の目の前には斧を構えて止まっている兵士と、高台に膝をつかされて首元を晒している教皇らしきお爺さんの姿が目の上にあったから、ビックリする。
「なっ⋯」
そして横にいた皇帝陛下が食べかけの肉を落とすのと、愕然として一歩後ろに下がったのが殆ど同時に起こった。
皇帝陛下が剣の柄を握るのと、私が壇上に上がって教皇の真横に立つのがほぼ同時に起こる。
そして兵士や皇帝陛下や他の周りに居る人達全員の動きを魔力で止めると、小刻みに身体を震わせている教皇を魔力の手でゆっくりと起こす。
「お⋯おお⋯神よ⋯」
まだ両手を後手に括り付けられた状態だったけれど、私が纏う魔力の大きさや人間離れしている容姿にか、教皇がシワの多い顔を更に皺くちゃにさせながら、水色の瞳から大量の涙を溢れさせ始めた。
広場は血の匂いが大量に充満していたし、広場の凄惨な現場から遠巻きに此方を見ていたこの国の平民達が、水を打ったかの様に静かにしているのは、私の魔力が兵士を抑えているのと同時に、平民達の動きも全て封じているからだろう。
高台の下には粗末な木箱が置いてあって複数の頭が落ちてるし、なんなら教会関係者達が着てる服を着た首のない胴体が、端っこの荷車に沢山積み上げられていた。
だから干し肉を食べ続ける気分でも無くなったので、でも勿体ないから魔法の鞄に収納すると、全ての頭と身体に回復魔法をかけたら、面白いぐらいに頭と身体が勝手に呼びあって空中で合体して行く。
しかも死にたてホヤホヤだったから、魂に手を付け加えなくても回復魔法だけで蘇生までがあっという間に完了した。
教皇を拘束してた物はそれだけを転移させて下にガチャンと落とす。
木と金属を使って作った拘束の道具みたいだったから、思った以上に重かったのか大きい音がしたけどスルーする。
「なんと言う⋯」
「教会関係者はこれで全員なのかな?
まだ残ってる人は他にもいたりする?」
「⋯ええ⋯ええ⋯教会にまだ下の者が大勢残っております。」
「そ。
それじゃあ用意が出来るまでは教会に居て貰って、準備が出来たら一度この国を引き払ってしまった方が良さそうだね。
殺された所で復活は出来るけど面倒臭いし、そもそもそんな思いをさせらる人達が可哀想だからね。」
それだけを言うと、復活させたばかりの教会関係者達や教皇を連れて、ここからでも尖塔が突出してる教会まで一気に向かった。
兵士と争ったのか大量に転がってる人達を見て時間がかかりそうだなと思った私は、直ぐにリーツーを呼び寄せてから、彼女と別れてから今までの記憶を、魔法で頭に直接叩き込んでおく。
「はー、これはまた面倒な。」
「うん。だから頼むよリーツー。
こっちの準備が整ったら迎えに来るから、余計な人達は敷地内立ち入り禁止で宜しくね。」
「私1人じゃ無理くね?
分体を増やして良いならするけどさぁ。」
「それはそっちに任せるよ。
私が作った初期の魔素の魔力を使って良いよ。
でも闘気には気をつけてね。」
「それな。
騎士の鎧をコピーして取ってきても駄目なのかなぁ?」
「コピーは意味が無いから、その辺の土を使った方がまだマシなんじゃない?
でも五右衛門さんは鉄も切ってたからどーだろね?」
「そっかそっか。
流石黒ミルキー。
間合いに入れば終わりってことね。」
「まだそっちは記憶の整理が出来てないだけでしょう?」
「さぁどうだろうね?
コピーだから元祖よりかは少し能力が落ちてんじゃねぇの?
まぁ良いや。
この人達は任せといてよ。
でも魔力草だけ何個か置いて行ってくれる?」
「はい、どうぞ。」
黒いカーテンで覆いながら魔法の鞄から錬成瓶を幾つか取り出して、壊された教会の扉の奥にある礼拝堂の日の当たらない場所に運びこんだ。
まさか魔力草の栽培量を増やしたのはこの為だったんだろうか。
明日大量に使う事を思えば、これでもまだ足りないぐらいだけど、種をコピーすればイケるのかな?
とか考えて、搬出をストップする。
「リーツー使う時はコピーでよろ。」
「魔法の鞄よろ。」
「お姫様仕様のでオケ?」
「現物プリーズ♪」
「へいへい。
しゃーねぇなぁ⋯特別やで!」
「あいよ!おーきに!」
ポーチ式の魔法の鞄を投げ渡せば、リーツーはニヤリと笑って片手でキャッチする。
「あの⋯神よ。
この御方は⋯」
「あぁアレは私の魂を複製して作った分体よ。
あと私は神の御使いみたいなもんだけど、神様じゃ無くてまだ神様ごっこをしてるだけの偽神ね。
私の本体は人間だから本物の神様になるには、人の世界で修行をしなくちゃいけないのよ。
だから不老にはなれるけど、不死じゃないのよね。
それと神と言っても貴方の言うこの星の神様じゃ無くて、その上の上司の神様にあたる存在からの指示だから、そこの所は宜しくね?」
「な⋯なんと?!」
「そこら辺は後で説明するわ。
早く蘇生してあげないと可哀想だし、蘇生したばかりの人達もこのままじゃまた亡くなってしまうと困るでしょう?
それに守りも固めないと兵士に入ってこられたら面倒じゃない。
だからそのうち教えてあげるから、少しの間その疑問はしばらく黙ってて貰えるかしら?」
「は、はい!大変失礼を致しましたっっ⋯どうぞ、よしなに!」
「では生き残りの教会関係者がいたらリーツーを紹介して貰えるかしら。
そしたら貴方に次の仕事をお願いしなくちゃいけないから、なるべく急いでね!」
「は、はいぃっっ!」
ワタワタと歩き出す教皇の身体だけを20年巻き戻しておいた。
虹色に光った身体に気付いた教皇がハッとして私を振り返るから。
「20年分だけ身体を若返らせただけよ。
これから忙しくなるから体力が必要でしょう?
顔は別人だと思われると困るから元のままだけど、状況が落ち着いてから身体と合わせるわね。」
「なんと?!」
「感謝なんてするだけ無駄だから気にしないでね。
必要だからそうするダケなの。
理由ならこの後説明するわ。
リーツーに貴方の側近を最低2名教えておいて頂戴。
その2人は大至急回復させてねリーツー。
私は物理的に教会を隔離しとくわ。
貧民の移動が必要なら、それは後日準備が調ってから行えば良いわよ。」
「黒ミルキー顔がこっわ!」
「フフン。
貴方なら理由が分かるわよね?
分からないのなら作り直すわよ?」
「ごめんて〜!
作り直しは勘弁してつかーさい!
私はまだ産まれたてのホヤホヤなんだから、ちったぁ甘やかしてくれてもええんやで?」
「ちっとも面白くなんてないわよ。
魔力測定眼鏡を作ったオジサンに弟子入りして来なさい。」
「へいへい。
作業はよはよ!
ほらお爺ちゃんは向こうへ行こうかぁ。
黒ミルキーのご機嫌最悪だから、八つ当たりで巻き込まれたら洒落にならんしな!」
リーツーは教会前の広場で倒れている無数の教会関係者を回収すると、空中に浮かせて運びながら、萎縮している教皇の背中をバンバン叩いて教会の講堂内に入るように促して階段を上って行く。
私は野次馬たちが押し寄せて来るのを阻みながら上空に飛び上がると、路地を利用して10mの壁に必要な土を手に入れる為に、20mの深さになる堀を作り、教会側に10mの壁を作り上げた。
土って押し固めると容量が小さくなるから仕方がないよね。
落ちて死なれても困るから、堀の反対側にも1mの高さの壁は築いているよ。
下水でも壊したのか汚れた水が流れてきてるし、路地が狭くなってて獣車が通れないぐらいの細道になってるから、お店の人には大迷惑かな。
ちなみにコレはトラップだからな?
どうせ10mぐらいの壁なんざ軽く越えて来やがるだろうから、教会側の方は5m幅の堀を作って同じく10mぐらいの壁をシッカリと作ったよ。
壁を飛び越えた先で落ちるマヌケがいたら面白いでしょう?
上手く行かなくても壊されでもしない限り、簡単に出入りは出来ないだろうよ。
何せ壁には不壊の念を込めた私専用の魔素をギッシリと詰め込んでるからね。
夜に成れば自力で魔力を回復させるだろうから、半端な魔法なんかじゃ簡単には壊せないよ。
壁の上には格子鉄線をイメージしたトゲトゲも沢山ある。
教会側の堀には私専用の魔力で魔法の水で満たしたし、堀の底にもギッシリと浄化を刻んだ魔素を敷き詰めてるから、堀と堀りの間の水は汚水になることは無いんじゃ無かろうか。
無理かな?
まぁ実験実験。
何事もやってみなけりゃ分からないしね!
脳筋だから道具を使えば簡単に攻略しそうだけど、リーツーの分体が居るなら何とかなるんじゃね?
堀に落ちても死人が出る前につまみ出すだろうし、死んでも蘇生させるからリアルサスケで存分に遊んでくれたまえよ。
完成した満足感に浸ってたけど、匂いが上に登ってくると何かそれがムカついて来た。
チョッと汚水が溜まるとご近所迷惑が過ぎるから、外の堀の底やら底の方の壁を少し削って私の魔素をギチギチに詰め込んで浄化機能をつけ足しておく。
随分とイライラしてたけど、工作してたらチョッとスッキリしたかも。
人の迷惑はやっぱりダメよね。
反省反省。
はー忙し忙し。
リーツーの所に飛んだら準備が出来てたみたいなので、教皇と2人の側近をつれて司教さんの所に向かう。
そして司教さんに説明して貰うように伝えておいてから、今度は泣きながら縋ってくる枢機卿らしきお爺ちゃんを連れて、先に破門したオジサンを目掛けてジャンプした。
そしたらブツブツと路地裏で恨み言を言ってたから、呆れた気持ちになりつつも、人気の無い街の外までジャンプする。
そしたらオジサンが失禁しながら怯えて謝って来たので、浄化したついでに2人に選択を伝えた。
選択肢として1つ目は15歳まで若返って商人として人生をやり直すか、遊んで暮らせるだけのお金を持って外国に行くかの2択になる。
商人をするなら似たような状況になる教会関係者の援助を匿名で行わせる事になるので偽名を名乗って貰う必要があるのよね。
ソレって法律上は宜しく無いだろうから、代理を立てて貰う必要が有るから貧民なんかを雇って貰わないといけなくなるし、楽な人生にはならないけど。
王侯貴族からの反感を思えば、大っぴらに救えない事を認識して貰った。
その為の資金として若返りを選択したらお金と魔法の鞄は渡す事を伝えたら、2人共揃って若返りの方を選択してくれたんだよね。
そもそもお金稼ぎの才能がある人達だから、あの立場まで上り詰めてたんだし、2人共揃って目をギラギラとさせて興奮に頬を紅潮させてた。
そりゃお金があっても今まで自分の為に使えなかったんだから、若くなればお嫁さんも貰えると思えば、若返りの方を選ぶ気持ちも分からなく無いかな。
お金が沢山あっても一人ぼっちはやっぱり寂しいもんね。
だから記憶が無くなる危険性が有る事を伝えて、2人には自分に向けた手紙を書いて貰う事にした。
直ぐには書けないだろうから、革の小袋の魔法の鞄をそれぞれ渡してから、そこに4級から6級の魔石を渡しておく。
換金は若くなる前に済ませて置くことを伝えた。
そのお金を持って宿屋に泊まれば、後で時間が作れたら若くする為の魔法を使うからそれまでに自分に伝えたい言葉を綴った手紙を準備する事を約束させる。
そしたら空高くまで2人を連れて行くと戦士ギルトの場所を教えて貰ってその近くの人気のない路地に降ろして、鼻息の荒い彼等とは一旦お別れをした。
次はキリンシュお爺ちゃんの所にジャンプすると、参加者を連れて西の辺境の街へとジャンプする。
そこでセタを含めた40代のキリンシュお爺ちゃんの後継者と、その部下たちを残して次に行くんだけど、その前に用事が終われば教会にくれば王都まで返すことを伝えておく。
思い出したら40代のオジサンに会いに来るけど、そっちに何か用事があれば教会には何度か足を運ぶからと言えば、伝令を残す手筈にして置くとの事になった。
じゃあ伝令役はセタでと指定したら、本人を含めた全員からすこぶる嫌そうな顔をされたから超ウケる。
セタからしたら災厄でしかないし、他の人達からしたら自分よりも下の存在のクセに神様のお気に入りかよ!と思えば、セタが羨ましくなったのかな?
さぞかし針の筵になりそうな雰囲気がしたから、セタがもの凄く拒否ってたけどニンマリと笑ってスルーする。
だって死なないよって約束してたから、死んでたら蘇生しなきゃじゃないと言ったら頭を抱えて「俺のバカー!」って、絶叫してたね。
どう見ても不幸でしかないセタの雰囲気で溜飲が下がったらしく、表向きには嫉妬や妬みの雰囲気は和らいでた。
ヤレヤレだよ。
最後に裏庭に飛んだらお姉ちゃんが石棺から死体を取り出す為に、骨山や石棺を置いた状態で魔法の水を満たしてる所だった。
他の人達は段差を登った所でその作業をジッと固唾を飲んで見守っている。
そしてお嬢さんさんやら錬成師やギルバートさんやジョルノフが難しい顔で魔石を握り締めてて、錬成瓶の中には砕けたら魔石が魔法の水の中に浸かってるのが見えて吹くかと思った。
何故なら墓守と呼ばれてた危なそうな青年が辿々しくもを全員にやり方の説明をしてたからだ。
お姉ちゃん、やりおる。
自分は作業が有るから適正が1番無さそうで有る人選をして、無自覚ザマァ状態に持って行ってた。
そりゃ魔力が足らないから雑魚扱いされて嫌な仕事をさせられてるけど、魔石から魔力を引き出せたら途端に有能な人材になるよね。
ビーストテイマーは伊達じゃないわ。
ビーストの才能を見抜く目や指導力が半端ない。
流石産まれて半年ぐらいしか経って無い赤ちゃんの私に自分でオムツを替えさせるべく指導を始めた鬼軍曹。
そりゃウェスタリアは当たり前のように魔法をバンバン使う民族だから、そこで仕事をしようと思えば少ない魔力をやりくりするのを頑張るようになるよね。
だから魔力操作で下剋上が成立しちゃったのか。
しかもお姉ちゃんはあんまり1級や2級の魔石を持ってないから、さっきメロンを採る時に狩った虫の魔石を売ってあげたのかな?
ケチだからタダで渡してるとは思えないんだよね。
プライドが高そうな面々の歪む表情と、魔石を親の仇みたいに睨んでる鋭い視線が超ウケる。
そして指導者の墓守の腰の低いこと低いこと。
完全に兄弟弟子たちの獰猛な雰囲気にビビり捲ってる。
熱狂的な危ない人になりかけてたのに、今じゃ猛獣に怯えてるハムスターにしか見えない不思議。
お姉ちゃんの補助につけた教会関係者が、魔石にヒビが入る度に「ヒィ!」って悲鳴を挙げるもんだから、ジョルノフの心が折れそうになってる。
それはそう。
1級の魔石でも銀貨1枚だけど、2級だと銀貨10枚するからね。
お姉ちゃんがそれを説明してないはずが無いから、金銭感覚の違いがモロに出てるんだよ。
「ジョルノフに悪い影響が出そうだから、しばらく彼は引き取ってから集中的に修行させなくちゃ駄目そうだね。」
「墓守してたのを使うんじゃ駄目なの?」
「そしたら貴族から入って来た人達の立場が更にヤバくなりそうじゃない?」
「どっちみちそうなって行くんじゃないかしら?
ジョルノフでアレなら他の人達も同じよね?
そしたら練習なんて出来ないじゃない。」
「それもそっか。
他の適性を見て考えなきゃ駄目かぁ。
墓守の人を上に上げてその補佐に回した方が良さそうかな?」
「そのほうが彼の精神的にもマシなんじゃないかしら?」
「ふむ。
それならアルフィンと私の役に回せば良いかな?
お互いがお互いの足りない所を教え合って、支え合って貰う形になれば理想かな?」
「あぁ、それが良いんじゃないかしら?
私達だって生活があるから、そんなに長く一緒には居られないもの。」
「と言う事でどうだろう?
墓守さんだけでは今の教会だと利用されてロクな目に遭わなさそうだから秘匿する形にして貰って、ジョルノフさんの補助するような立場で居て貰えばジョルノフさんなら難しい仕事を代理で出来るよね?
墓守さんもジョルノフさんが魔法を使うフリをするのに合わせて魔法を使えば、難しい仕事をせずに済むし直接厄介な人に狙われるのも防げるから今までよりも過ごしやすくならないかな?
もちろんジョルノフさんは墓守さんからコツを教えて貰って個人的に練習を続ける必要はあるし、私がその物資をたまに届けてあげるよ。
墓守さんもジョルノフさんの立ち振る舞いを近くで見せてもらって勉強すれば、そのうちお互いが独り立ち出来るようにならないかな?
ここにいる教会の人達は、ジョルノフさんと墓守さんを守ってあげて欲しいんだよね。
その代わりに優先して墓守さんから魔力操作を教わるのはどうかな?
皆それぞれ利点が有ると思うから、足を引っ張り合うんじゃ無くて全員がそれぞれ協力してお互いを励まして、高みを目指す形にするのはどう思う?」
「神の思し召しとあらば謹んで御意向に従いたく存じ上げます。」
『私達で宜しければ喜んで従わせて頂きたく存じ上げます。』
「えっと⋯???」
まずジョルノフさんがそう告げて礼を取ると、お姉ちゃんの補佐をお願いした人達も彼に習って礼を取った。
でも全員から視線を向けられた墓守はビクッと身体を小さく窄めて、姉に縋るような視線を向けている。
「全くしょうが無いわね!
良い?
これからアンタはジョルノフさんの言う事をちゃんと聞くのよ?
それと魔法の使い方や魔石から魔力を引き出す技をこの3人に他の人達には秘密で教えてあげるの。
じゃないとアンタが出来るって変な人にバレたら酷い目に遭わされるから、絶対にバレないように気をつけなさい!
分かった?」
「は、はい⋯」
「この3人は貴方を大切に守ってくれる人達だから、ちゃんと言う事を聞くのよ?
もし意地悪されたらこの娘に言いなさい!
私達が叱ってあげるからね!」
「はいっっ!!!」
不安そうだった墓守の顔がパアッと明るくなった。
益々姉を見る目がウットリとしててヤバげな雰囲気がしてるけど、まぁそこはスルーしとく。
「かなり理解力が低いみたいで苦労しそうだから、この人が言う事を聞かないのなら無理をせずにジョルノフさん達も私に言ってね?」
「承知致しました。」
「ヒッ⋯」
「ちゃんと言いつけを守ってればアンタも叱られないわよ。
だからうまくやんなさいよ?」
「は、はい⋯」
「だったらあの人達に自分からお願いしなさい。
宜しくお願いしますって言うのよ!」
「は、はい!
あの⋯その⋯よ、よよよよろしく、おおお願いします⋯。」
「此方こそ、宜しく頼む。
私の専属として配置を司教様に伝えておくから、そう気を張らずにいてくれたら良いですよ。」
「は、はいぃぃ!」
腰が低いと言うよりも対人恐怖症になってる墓守に、扱いが大変そうだなとジョルノフさんに視線を向けたらとても嬉しそうにしてたから、つい苦笑を浮かべてしまう。
教会の為の供物にされたのに、必死に民衆の命を守ろうと平民の子供に頭を下げるような人だから、本物の人格者なんだろう。
だから異常なのがよく分かる。
そこまで献身的にならなければ、彼は今まで生き残れなかったのではないだろうか。
今の教会は金に狂った亡者か、精神的な異常者の集まりで構成されているんだろう。
枢機卿や大司教もそうだけど、抑圧されていれば人間の精神なんて歪んで当たり前なんだよ。
あの2人にしてもお金への執着より、人のためになる方法を迷わず選んだ所が聖職者らしいなと、考えさせられてしまった。
私には無い考え方だけど、それでも共感が出来てしまうのは、私もきっと異常だからなのかも知れないね。
それでもそれが人の幸せに繋がって、巡り巡って自分の幸せに繋がってくれたら、それはそれで良いんじゃ無かろうか。
小学校に突っ込んで行ったり、大勢の人を巻き込んで自殺するような人よりかは、よっぽど生産的な異常者なんじゃない?
この世界にはこの世界なりの悪い所や良い所があって、前世であんなに異世界の話で盛り上がって溢れてたのは、そんな人情味のある世界や自分の知らない新しい世界への冒険に、憧れる気持ちがあったからじゃないのかな?
現世で冒険する勇気も無ければ、人との関わりに疲れた人達の心の栄養になるし、今の文化の良さを見直せるのって悪いことじゃないもんね。
私は何故だかこんな事になっちゃってるから、どうしても故郷を懐かしんで帰りたい気持ちも持っているけど、それでも今の生活が楽しくない訳じゃないから、わりと大変な目にあってるけど。
そこはもう自業自得で自分が選んだ道だと思えば、諦めににた気持ちも有るわけで。
だから魔力でしか触れられない存在に触れるために、胸元を押さえてしまう。
私は彼女の願いを叶えなければならない。
彼女やその仲間達が必死に目指した結末を迎えた時、ようやく彼女達がして来た事が実を結ぶ事になるのなら、私のワガママで産まれて苦しめて来た存在に、私は最高の敬意を払い。
そして最大限の努力で応える義務が産まれてしまったのだ。
何故ならそんな世界を願って、彼女達を途方もない苦難の旅に送り込んだ張本人が、他のだれでも無い。
家族を守りたかった私本人だからだよ。
お嬢さん達がぐぬぬぬしてる姿や、ジョルノフさんにペコペコしてる墓守に生暖かい眼差しを向けてる3人の教会関係者やら、それを呆れた視線を向けてる姉のツムジや、周りに警戒心剥き出しで気を張ってるギルド長やオマールさん他戦士の人達や、私達の成り行きを見て家政婦は見た!状態でドキドキしてる主婦達の気配がプツリと途絶えた。
私は今何もない真っ白の世界に突然放り出されたらしく、地面も天井も真っ白な空間にポツリと浮かんでいる。
一体何が起きたのかが理解出来なくて反射的に新しい魔素が魔力を放出して、白い空間に満たされてる完全に異質な魔力に似た強いエネルギーを持つ素体の分析を始めた所でまたプツリと感覚が戻って来た。
草の匂いやら真夏の日差しに、ワイワイしてる大勢の気配に、さっきまで見ていた光景が戻ったから、全身から汗がドバっと噴き出して、ドッドッドッ⋯と鼓動が走り出す。
え⋯と⋯今のはなに?
掌には魔力でしか触れられない妖精の感覚は残ってるし、タイムリープの記憶も新しい魔素の記憶もちゃんと失わずに済んでる。
でも代わりに得体の知れない新しいエネルギーの素体の記憶が有るもんで、さっきの真っ白な空間が此処とは別の魔力に溢れた違う世界だった事が、分からないなりに何となく察せられるから、ドッドッドッ⋯と心臓が走っているのだ。
なんか⋯よーわからんもんに、呼び出しを食らった挙句に慌てて放り出された気がしないでも無い。
思い当たる節が有るとすれば、私の魔力で覆ってる妖精が生み出したifの世界に関する何かだったんだろうか?
他にあんな超越したような感覚になるような場所へと連れて行かれるような理由が思い当たら無いんじゃが。
そんな事を混乱気味に考えてたら、解析結果を理解する前に分析用に捕獲してた向こうの素体がすうっ⋯と妖精の中に入り込んで溶けてしまった。
ええっ?!と、ビックリしてたらぶわりと妖精を中心に、新しい魔素が噴き出したもんだから、慌てて止まって!と、心の中で絶叫する。
そしたらピタリと魔力が止まったから、ホーーーッと大きなため息を肩ごと落としてついた。
「⋯今のなんなの?」
「⋯さぁ?」
姉が顔を強張らせて私を見上げるから、私も正直に答えるしかないわけで。
「さぁ⋯て、アンタ!
また変なコトをやらかしてるんじゃないの?!
今のって魔力よね?
しかももの凄く強い力のある魔力じゃ無かった?!」
「いや、ホント。
私もよく分かんないから、なんと説明して良いのやら⋯」
「何よソレ!」
「ホント、なんなんだろ?
でもお姉ちゃんがした事が原因だと思うから、私だけのせいじゃないと思うんだけど⋯」
「はぁ?!」
面倒臭いから頭ん中に妖精が来てからの事を映像をつけて叩き込んでおいた。
「うっ⋯」
「世の中は不思議で溢れてるって事なんじゃないの?
全部が全部、人間なんかに解明出来るようなもんじゃないと思うんだよ。」
「⋯それで済ませて良いものなの?これ⋯」
「さぁ〜?」
「さぁってアンタね?!」
「だって私から向こうに連絡の取りようが無いし、まぁあそこにまた行こうと思えば行けるっちゃあ行けるけど、今は他にやること沢山あるしさぁ。
意思の疎通が出来る相手かも分かんないし、迂闊に飛び込んで戻って来られなくなっても困るしさ?
向こうが何か行動を起こすまでは、取り敢えず何か変なのが居た!
って思ってるぐらいで良いんじゃない?
向こうも同じような警戒してるかもだから、下手に手出ししないでこっちの足場を固めた方が良いと思うんだよ。」
「⋯何だかよく分かんないからモヤモヤするけど、まぁ⋯そうね。
先にこっちを済ませてしまいましょう。
もう私も疲れてクタクタなのよね!」
「同じ同じ!
もうお腹いっぱい。
本物のお腹はペコペコなのに、お腹いっぱいとはこれいかに?」
「変なコトを言ってないでサクッとやっちゃいましょう!」
「サクッと終わるもんなのかなぁ?
まぁ良いや。
それじゃ必要なのは蘇生させた人に飲ませる魔水だけど、これは魔法の水に私が魔力をぶち込めばいいとして、蘇生させたら裸ん坊になるから着替えの服とか寝かせるベッドが必要になるかな?
直ぐに起きてテクテク歩けるかは分からないんだよね。
後は遺体とその魂をくっつけてる家族と〜⋯」
「チョッとそれを先に言って起きなさいよ!
ぜんぜん準備が足らないじゃない!」
「でっしょー!
だから取り敢えず一旦解散して、着替えとか持ってきてくれないかな?
あと魂がついてそうな家族とかも思い当たる人を連れて来てくれない?
皆もお昼ご飯食べたいだろうから、順番は初めから5人目までの人は3時間ぐらいしたら此処に集合ね!
他の人達はそれ以降に来てくれたら良いよ。
教会の人は蘇生させた人が休憩出来る場所を準備してくれたら有難いかな。
それと錬成師さん!
ゴロゴロドンって何時も雲の中に居るから日陰に無いと素材が劣化しちゃうんだけど、どうしたら良いの?!
そろそろ向こうも夜が明けちゃうんだよ。」
「な、なにい?!」
錬成師が持ってる魔石がパキン!と鳴ったから、お兄さんはぐぬぬぬと悔しそうにしながらも魔石をポイっと錬成瓶に入れるとワタワタとしながらこっちに向かって来る。
お嬢さんはゴロゴロドン?
って、顔をしてたけど錬成師が血相を変えてるのを見てただ事では無いと察したらしく、魔石を魔法の鞄に入れて同じくこっちに向かって走ってくる。
護衛のギルバートさんやもう1人の騎士も同じくそこについて来た。
「じゃあ取り敢えず現場に飛ぶよ!」
そう言って錬成師とお嬢さんと騎士の2人を連れて南西の浜辺に到着したら、空が随分と明るくなってる所だった。
そして大隊長も召喚すると、またか!見たいな顔をしてこっちにを睨んでたけど、お嬢さんとかも居るから何も言えずにムッツリとした顔をしてる。
そういやこの人の事をすっかり忘れてたから、何処にいたかも覚えて無かったりするんだよ。
でも多分王城かな?
確認する気もないけどね!
「レジャーポットですって?!」
「くそ!もう日があんなに高く!
こんなものこんな鞄じゃ2体も収納出来ないでは無いか!
何故早くそれをいわん!
魔石で練習などしてる場合では無かったでは無いか!」
「こっちも色々と大変だったんだよ。
それよりも転移で運べるから、日陰になるような場所って何処なのかな?」
「これほど巨体な物を入れられる家屋など戦士ギルドですら無いのではないのか?!」
「じゃあ解体しちゃうから、入れられる分だけ魔法の鞄に入れちゃえばどうかな?
領主さんは角クジラ鮫と素材の残りを渡すから、欲しい分は2人で取っとけば良くない?」
『くれるの(か)?!』
「だって私には使い道なんて無いし、その代わりこっちの仕事を手伝ってよ。
大雑把だけどね?」
「では私は目と舌を貰うわ!」
「ぬっ⋯では俺は心臓や皮を頂くが宜しいか?!」
「こっちも皮は貰うわよ!
そんなに沢山入らないでしょう?!」
「ぬう!では内臓を全て頂くからな!」
「それって欲張り過ぎじゃないかしら?!」
「どうでも良いけど夜が明けちゃうよ〜?」
「お願い!魔法の鞄に入れるから顔を切って頂戴!」
「こっちは内臓⋯いや皮が先だ!
日の当たる皮を先に切ってくれ!」
「はーい!
適当にするから欲しい所があったら言ってね!」
まずは最初に倒して魔石を抜いてあった方のゴロゴロドンの頭を切り落として、お嬢さんに渡そうとしたらそれじゃ無理!
と言われたから、更に3等分するとカメレオンみたいな舌がデロンと転がって来た。
なるほど、奴は雷で倒して空の上から舌で巻き取って食べてたのかと納得する。
お嬢さんが舌と目の部分を魔法の鞄に入れて分解させてから大型遮光錬成瓶に入れてるのを横目で見ながら、反面づつ皮をべり!とはいでいく。
カワハギみたいで思ってたよりも簡単だったけど、尻尾の部分で切ればペラペラだからクルクルと絨毯みたいに巻いたら収納が楽なので2人の錬成師と見習いは飛び上がって喜んでた。
片面づつ仲良く分けた後は、半身を慎重に切って肺以外の内臓の場所を確認したら、全て上のほうにしか無くて、身体の上の1/5ぐらいの場所に収まってた。
それを錬成師がグフグフと気持ちの悪い笑みを零しながら、大型遮光錬成瓶に全て回収して行く。
お嬢さんはゴロゴロドンの舌が思ってた以上に長くて巻いてたけど一巻が直径5m越えてたから、内臓を入れるスペースが足りなかったらしくて、もの凄く悔しがってた。
内臓も1つ1つが大きいんだよ。
心臓だけで8mあったしな。
その代わりに消化器が紐みたいに細くて、身体を膨らませる事に使ってるのか、伸縮素材のデッカイ風船みたいな肺があった。
肺が巨大化してる雰囲気のそれが萎んでる状態でも片方だけで10mぐらいあるんだよ。
身体の空間がほぼ肺。
なんじゃそりゃ!
って思うけど、空を浮くための工夫なんだろうか?
ホント不思議な生き物だよね。
それにしても何に使えるか全然分からんもんなのに、何をそんなに興奮してるのやらと呆れた気持ちになったけど、まぁ良いや。
ゴロゴロドンは魔力にしか興味がないのか、歯が無かったので2人の騎士には頭蓋骨を切って渡しておいた。
長剣にでも加工して記念に持ってたら?と、言ったら凄く喜んでた。
そのうち溢れそうだけど、今ならタダだから良いんじゃね?
良いものかどうかは分からないけど、頭はかなり硬そうだったから、加工出来るならそれなりの剣にはなりそうである。
私は魔力に分かれるように指示して切りたい所で切ってるから、切れるけど。
普通の人がどうやって切ってるかは知らないんだよね。
長剣を意識して2mぐらいの長さに沿って頭の骨の部分を切り取ったから少し婉曲してる分、幅を広めで1mとってある。
剣にするなら20cmもあれば充分だろうから、好きに加工すれば良いんじゃね?
骨の厚みも1mは有るから一体剣が何本取れるかは知らん。
要らんのは売れば良いよね!
その代わり私は肉を貰っておいたよ。
貰うと言うのも変だけど、味見をしたらもの凄く美味しかったから、私のもの!って言ったら全員がどーぞどーぞとダ◯ョウ倶楽部みたいになった。
魔法の鞄をコピーしてつめるだけ詰め込んでたら、何じゃそり?!って全員からもの凄く驚かれた。
それもそう。
だって魔法の鞄が魔力でコピー出来たらそれに入れて持っていけるんだよ。
でも問題が1つあって、維持するのにべらぼうに魔素を消費するから、操るのに魔力操作が必要になるんだよね。
魔導師の勉強するか、魔石の魔力操作の二段階目に入れたら自分で作れるようになるよと説明したら修行を頑張る!
と、血涙を流すみたいな感じで錬成師の2人がぐぬぬぬってなった。
魔導師の勉強ってそんなヤバいん?
チョッと不安になった一幕だった。
そういやあの妖精が使ってたタイムリープの魔法、魔法陣の帯バージョンを何度も見たけどなんも分からんかったと思えば納得してしまう。
どうかお姉ちゃん、頑張って欲しい。
姉なら出来る!
何年かかったかは知らないけど、妖精は出来てたしな!
「あの⋯ウチにトレジャーポットの素材を渡すとか言って居られませんでしたか?」
大隊長が話が違わない?みたいな微妙な雰囲気を放ちながら、形だけ下手に出て来た。
お嬢さん達も気になるけど、私達は平民だからどんな態度を取ればいいやらよく分からなくなってるんじゃないのかな?
平民だと横柄にしなくちゃいけないけど、神様みたいなことしてるから、下手な事をしたらヤバいよね?
だから混乱してこんな中途半端な態度になってるんだと思うんだよね。
「明日復活祭りしてたら大人のゴロゴロドンが来るだろうから、それで良いかなと思ってさ。」
「さ、左様で⋯あの、それはもの凄く危険なのでは御座いませんか?」
「川が有るから平気平気!
楽勝で倒せるんじゃないかな?」
「アンタ。
蘇生魔法を使ってるのに、そんな余裕が有るのかしら?」
「分体が居るから大丈夫だよ。
そうで無くてもやり方を教えたらお父さんなら倒せるんじゃない?」
「分体?って何よソレ!」
「自分の髪の毛を素材にして魔力で身体を作ってそこに魂を魔力で移して作るんだよ。」
「ねぇソレってホントに大丈夫なの?!」
「魔力がないと消えるけど、大丈夫じゃない?
似せてるだけの偽物だからね。」
「なら良いけど⋯アンタ、段々とやることが神様みたいになって来てるんじゃない?」
「だから神様ごっこしてるんだよ。
生きてる間はどれだけ神様みたいな事をしてもしょせんは偽物の神様だからね。
本物には死んだあとで神様が認めたらなれるんじゃない?
神様なんて魔力の扱いが上手くても、なろうと思ってなれるもんじゃないからさ。」
「そんなものなの?」
「そりゃそうだよ。
そうじゃ無いとただの人間がそんなに長い間生きていられるはずが無いでしょう?」
「ふぅん?
でも私の分体は神様になっちゃったのよね?
それってどうなの?」
「だからさっきみたいな事になったんじゃ無い?
1つの世界を作った功績だけじゃ無くて、目的を諦めずに最後までやり遂げる事が出来たから、他の神様がおや?って興味を持って調べて見ようと思ったんじゃないかな?」
「あー、アレはそう言う事なのね?」
「いや知らないよ?
私は神様なんかじゃないんだもん。
でもそうなのかな?って予想してるだけだから、新しい情報が入ったらまた予想が変わるかも知れないよ?
それが確実に立証出来ない間は、全部妄想みたいなもんだからね。
神様本人から話を聞ける訳じゃないからそうなるよね?」
「むう⋯何だかモヤモヤするわね!」
「お姉ちゃんが神様になれたら、きっと答えが分かるんじゃない?」
「やめとくわ。
話を聞いてるだけでも大変そうだもの。」
「私もそう思う。
だから神様ごっこで遊んでるぐらいで丁度良いんだよ。
人のためになることなら、神様も笑って見ててくれるんじゃない?」
「もー、アンタってばお気楽なんだから⋯付き合わされるこっちの身にもなりなさい!
お昼ご飯も食べずに、もうしんどいったらありゃしないわよ。」
「そろそろ村に帰って休憩しようか?
準備が出来たら復活前夜祭って事にしようよ?」
「そうね。
そうして欲しい所ね!」
「じゃあ大隊長さん、街まで送るから、この角クジラ鮫丸ごと一匹と半分を置ける場所を作ってよ。
ゴロゴロドンを置ける場所が無さそうだかは、これは王都のほうへ街からの貢物として届けておくからさ!」
「う⋯そんな勝手な⋯だがそうなるでしょうな。
領主様にはその様に上申しておきます。
神のなされる事に文句も何も無いでしょうからな。
その代わり明日のトレジャーポットは本物にお願いしますね?
被害が出ないように頼みますよ?」
「ウンウン。
街の人達にも宣伝しといてね?
あ!塩はどうしたらいい?」
「頂けるのでしたら喜んで受け取らせて下さい。
入れ物もあるだけ準備をさせて頂きます。」
「塩を運ぶ商人さんとの兼ね合いはどうかな?」
「塩は保存が効きますので、問題は無いかと思われます。
そもそもその魔物の肉を保存するのに、大量の塩を使うでしょうしね。」
「うん。私もそれが有るから言ってるんだけど、商人さんとの兼ね合いを無視して恨まれるのは困るからね。
そこは宜しくお願いしますと領主さんに伝えておいてくれるかな?
それと魔物の移動が出来るようになったら、教会に伝えに来てくれると助かるよ。
私達は昼食後に少し休憩したいから、コレから3時間後ぐらいで裏庭で作業してると思うけどね?」
「承知致しました。
では街までお連れ頂けますでしょうか?」
「それじゃ教会前まで飛ばすよ?」
「はい。宜しくお願いします。」
大隊長さんを街の教会前に飛ばした後は、錬成師と騎士もお昼の休憩が終わったら、初級回復薬を持って裏庭集合と伝えておく。
1人につき一本使うと言っておいた。
「初級で良いのか?」
「私達は魔法で身体を治してるからね。
回復薬は生気を取り戻させるのと、アストラル化してる身体の実体化が目的になるかな。」
「あしゅとらる化?」
「アストラル化。
アストラルが霊体とか幻想とかの精神的な存在で、化はその状態を示す意味だね。」
「なるほど、アストラル化⋯か。」
「これは私が作った言葉じゃ無くて、他の人の言葉を分析してそう受け取ってるだけなんだけど、これは多分ハズレて無いと思うんだよ。
魔法の水になる前の魔力の塊だと考えて貰えたら分かりやいかな?」
「ふむ。実態が無い状態を示すのだな。
錬成師界では霊幻と呼ばれる状態と同じだろう。」
「れいげん⋯霊と幻ね。
うん、まさにそんな感じだね。」
お嬢さんとギルバートさんには、ゴロゴロドンの受け入れをどうするかキリンシュのお爺ちゃんに聞いて貰うようにお願いして、キリンシュお爺ちゃんの所に飛ばしておいた。
一応角クジラ鮫とゴロゴロドンの周りには闇のカーテンを張っておく。
私が昼寝をしたら消えるかも知れないから、何とも言い難いけど、少しぐらいは劣化の延命になるんじゃ無かろうか。
「それじゃお姉ちゃん。
お父さん達の所にいこう!」
「そうね!戻りましょう!」
私はお土産で朝食の時の残った角クジラ鮫の肉と一緒に、姉と手を繋いで教会にいる母達の所に向かって飛んだ。
午前中だけで散々な日だったけど、これから夜までまた大変な事になりそうな予感がする。
だから元気を出す為にも、お昼ご飯と昼寝は必要だよね!
お昼は教会の人達が用意してくれてたけど、麦粥に卵と野菜が入ってるものだった。
卵がついてるだけ贅沢品らしい。
後は差し入れに渡した角クジラ鮫のお肉をブロックにして炒めたサイコロステーキと、野菜のスープになる。
それでもコレから食事を作る事を思えば有難い心遣いだから、家族皆がそろって美味しく頂きました。
すっごく薄味だったけど、それは仕方が無いよね。
だから差し入れに大きな水瓶1つ分の塩と、ゴロゴロドンのお肉と油と、角クジラ鮫のお肉と油も渡しておいたよ。
ゴロゴロドンの油は肉に1〜2cmぐらいしかついてないから、肉と比べたら量は少ないけど、臭みが無いのと蜂蜜かゼリーみたいな感じで甘くて魔力がもの凄く多く含まれてるから、食べる魔水みたいにすれば、本来の魔水の代用品に出来るんじゃないかな?
お肉も見た目は鶏肉のササミみたいなのに、甘いから頭がバグるんだよね。
熱したら直ぐ気体になるもんで、半生にして口に入れたら綿菓子みたいに溶けて消えるから、砂糖代わりに使えば良いんじゃね?
でも油も肉も魔力が多く含まれてるから、食べすぎたら墓守さんみたいな元から魔力が少ない人達には、毒みたいになりかねないからそこは気をつけるように伝えておく。
とは言ってもゴロゴロドンボディが大き過ぎて、容れ物不足で半分も渡せなかったんだけどね。
入れ物を他に用意出来たら塩はもっと沢山渡せるから、戦士ギルドで解体してる魔物のお金が入ったら買うように指示しといた。
昼食後にはお婆ちゃん達を全員自宅に返す事を伝えて、保護して貰ったお礼を伝えてからお暇させて頂く。
午後からは姉と私と父と兄達が、また来る事を伝えておいた。
村に帰ってからジギタス叔父さんの所に飛んで、もう自宅に戻れる事を伝えたけど、せっかくだから1泊してから帰ると言うのでそうする事になった。
人数が多いから宿屋で言うスイートルームを取ってたから、調度品やベッドも良さそうだったから、寝るのを楽しみにしてたのと、このまま帰るとしても部屋代が戻らないから勿体ないってさ。
それはそう。
一応全員に浄化してから家に帰ると、ピヨ子に突撃されてしまい。
宥めるのにもの凄く苦労した。
トホホ⋯。
でも疲れて眠気がマックスだったから、ぴぅいぴぅいと鳴くピヨ子を抱いて寝てしまった。
面白いことに姿が2歳児じゃないのに、ピヨ子には私が分かるみたいで、それは昼寝が終わって裸ん坊で妖精とピヨ子と寝てたのに気付いた時に、ようやくそれに思い至ったんだけどホント不思議だよね。
世界は不思議で溢れてる。
私からしたら世界の謎もピヨ子の生態も同じレベルの不思議なんだよ。
こんな謎を解明して成長を続けるのはとても大変な事だと思う。
私の人間での人生を一生分使っても、きっと沢山あるうちの少ししか謎が見つけられないだろうし、解明するなんて夢のまた夢みたいな事なんじゃないかな。
だって魔力草にしたってあんなに深いんだもん。
解明したと思ったそばから新しい疑問が出てくるんだから、キリが無いよね。
文明はその謎を大勢の人達が1つ1つ丁寧に解き明かして作るものだから、神様が1人でワチャワチャするよりも、もの凄く効率が良いんじゃないかな?
だから神様は文明を作ってくれる人間が欲しかったんだろうか。
それなのに伴侶として人間じゃない人を選んでる所を見れば、よく分かってんなぁって思うんだよ。
人間は寿命が短いから、次の世代に託す為に知恵を残す生態だから、長期的に生きるには向いてない種族なんだと思う。
だから女神の分体は小刻みに生まれ変わる必要が有るから、そうしてるんだろうね。
それが長期的に生きる生態の男神には噛み合わ無いから、こんな問題が起きちゃったんじゃない?
そのために父母レベルの神様が居るんだと思うけど、男神のシステムが分体じゃ無くてアバターなのがそもそも駄目なんじゃね?
アバターしてる時は人間の方はその時の記憶が無さそうだから、一応は改良してるみたいだけど、魔素が記憶しちゃう機能を持ってるせいで微妙なバグになってるのかな?
もしくは男神の元からの性格や習性の問題かも知れないけどね。
男神の暴走を防ぐには、私もアルフィンを切れない事になる。
だから従兄弟や友達のお父さんぐらいの距離感が欲しいんだけど、向こうの価値観が夫婦で固定されてるから問題になってんのよ。
となると夫婦として見れなくなる身体になればエエやん!
と、考えて爺ちゃんと孫みたいな年齢差になってるんだろうけど、向こうはそれすら無視してるから。
コレはもうヤッパ男装しかないんじゃね?
本物の男にしたら殺すぞ宣言されてるから、それは出来ないけど。
見る限り男!にしか見えないボディにしたら、嫁にしようなんて思えなくなるんじゃ無かろうか。
一応清純派がアイツの好みっぽいから、ダイナマイトバディにしてみたけど、これすると有象無象が寄ってきそうで面倒なんだよね。
うーん⋯そういやグラドルみたいに見惚れられてはいるけど、今の所を近寄ってくる男性は居ないかも知れない。
案外このイケイケバディは男受けが悪いんだろうか?
見るには良いけどお近づきにはなりたくない感じ?
そういや貞操観念が硬い価値観が有るから、ひょっとしたらアルフィンからは嫌悪の対象として見え貰えるのでは?
よし!
試してみて駄目ならジギタス叔父さんモデルで変身してみようかな?
あ、自分で言っておいて何だけど、アレはやっぱり無しの方向で!
王城行ったら周りからの視線が痛くなりそうなんだよね。
それなら少年か青年スタイルならどうかな?
カルマンさんの息子達みたいな容姿になれば、なんかイケる気がする!
ダイナマイトバディだと奥さん達が意識しちゃうとアレだから、神様ごっこするときはダイナマイトバディの女神路線に変身して、アルフィンと接する時は愛嬌のある少年風にしちゃえばどーだろう?
家族といる時は何時もの2歳児で過ごせば問題ないかな?
魔法少女で青年男性になるのは見たことないけど、腐女子の居ないこの世界ならイケる気がするんだよね!
前世でそれしちゃうと腐ったお姉様方からネタにされちゃうから、使えない手段になるけど、こっちにはおネエも見たことないから案外面白いかも知れない。
フフフ⋯よしよし。
明日の復活祭にはアルフィンを起こさないと、後から拗ねて面倒になりそうだから、コレでアルフィン対策はバッチリだね!
男神を警戒する必要が無くなったから、そしたら起こさないと逆に今後が面倒になるから、明日の朝か今夜辺りにはコッソリと魔力をぶち込んで起こしてやろう。
てか眠れん。
いや寝てるよ?
身体は寝てるけど意識が完全に落ちてくれないんだよ。
暇だからアレコレ考えてるんだけど、だから余計な頭の真が冴えて眠れなくなっちゃってるんだよ。
お昼寝の時間は短いんだから、少しでも寝なくちゃと思うし、疲れてたから身体は寝てるんだけどね?
さっき寝た記憶が有るせいなのかなぁ⋯?
寝なきゃ後がキツイと焦るから、余計に眠れなくてイライラするヤツ。
寝愚図りすると子供みたいだから、我慢してるけど精神的に良くないと思う。
かと言って身体には睡眠が必要だし、動いたらピヨ子に気付かれてまた煩くなりそう。
困ったなぁ⋯。
精神の私だけコッソリと抜け出せないかな?
あー⋯駄目じゃん。
休まないと後がキツイんだってば。
でもそこは眠たくなった時に分体に任せて寝るのも手じゃない?
それもそっか。
ソレじゃぁピヨ子に気付かれないように、魂をコピーして本体の中に残して⋯あれ?妖精が胸にくっついてる?!
この妖精って私の魂とくっついてんの?
でも取った妖精が消えて失敗の世界の記憶が無くなるとマズイよね?
こうやって妖精を私の魂に繋いで保護してたのか。
ふむふむ⋯、なんじゃそりゃ。
人間の身体にコピーした私の魂を残して身体から精神だけ抜け出したら、2歳児の私の胸元に私の顔をしてる妖精も引っいて来たんだよ。
だから寝てる2歳児の私の身体には、妖精が居なくなってるんだよね。
でもピヨ子はコピーの魂に騙されてるのか、一瞬ピクリと目を開けた瞬間に私の精神体が逃げたから、不思議そうにキョロキョロしてたけど、また肉体に目を閉じて寄り添ってるんだよね。
実際に見てる訳じゃないけど、肉体がそこに有るから目を閉じててもピヨ子の動きが分かるのよ。
これまた不思議な感覚で面白い。
精神体だから身体の感覚は寝てる本体のものなんだよね。
でも魂をむき出しにすると空に戻りたくなるから、妖精から出てくる魔力を使って、女神ボディで覆うとその気持ちが収まってホッとする。
危ない。
危うく死ぬ所だった。
このまま素直にお空に昇ってたら、身体も死んでたのかな?
魂のコピーがあるから、そうはならなかったかもだけど私は間違いなく肉体に戻れなくなってた気がする。
そしたら私としては死ぬこと同じ事だよ。
まだ人間で居たいんだもん。
ヤバヤバ。
気をつけなくちゃ⋯。
不安になったから戻れるのか確認したくなって、ピヨ子の隙を見つつ身体に入ると、今度は肉体の方のコピーを精神体の方に移せば問題なく戻れる事が確認出来た。
一度肉体を起こして手をグーパーしてみたり、薄目を開けてみたらピヨ子が「ぴ?!」って鳴いたから慌ててまた肉体を眠らせる。
よしよし。
これは新しい技を開発しちゃったやも知れん。
秘技!幽体離脱と名付けておこう。
むふふ⋯そしたら後1時間半ぐらいなら遊べるよね?
男神が古い魔素を嫌がってたし、もう私にアレは必要がないから全部回収して使っちゃおうかな。
今はまだやらないけど、ルドルフ大帝国が落ち着いたら平民を逃がす場所を作っておいたら、アルフィンが後から人材を補充したい時に丁度良いんじゃない?
男神との約束も有るから、東の入江を作った小島と、イスガルド大陸の間にデッカイ島でも作って置こうかな。
街ぐらいの大きさが有れば、避難させた人達が生活出来るぐらいの場所は出来るでしょ。
水なら自分で出しても良いし、何なら人工の泉を作って置いてそこに水を溜めて海に流せば良くない?
細かい事は私じゃ出来ないから、アルフィンが起きたらやって貰っても良いよね!
ううん。
アルフィンなんかに頼らなくたってルドルフ大帝国の平民達にさせたら良いんだよ。
滅亡の瀬戸際なんだから自分達で頑張るでしょ。
教会から長い橋をかけて海の上を歩いて行けるようにしたら、歩いて逃げられるしね!
まぁ距離がアホほど遠いから、獣車が通れるぐらいの大きな橋にしなきゃだけどさ。
って事で転移!
目的地はピヨ子モドキの石像!
そこから空を飛んで移動してルドルフ大帝国の場所を探さなくちゃ!
精神体だから移動がもっそいスムーズだわ。
肉体が無いから重力が関係無いのがデカいな。
でも時間は少ないし、大きな島と泉を作らなくちゃだから、急いで場所を確認しなきゃ!
はー忙し忙し!
頑張れ私〜!
こうして私は肉体が起こされるまでの時間で作業をせこせこ励むのだった。
うん、砂遊びみたいで楽しかったよ!
海の底の土地を持ち上げて島を作るのが、砂場で山を作ってる感覚かな。
年相応ですね!
プレートは触ってないから大丈夫!
その代わり海がちょっと深くなっただけ!
困惑する魔物&魚達。
相変わらず環境破壊してます。




