表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/53

52

深海魚って顔が怖いよねの巻


此処で貴族や王族を相手に黒魔石としての私の自己紹介をしてから2ヶ月も経って無いのに、また演説をしなくちゃいけないとかマジ面倒だよ。


でもまぁあの時よりも少しだけ事情が見えちゃったんだから、仕方が無いよね?

伝える内容は全部同じじゃねぇかと思えば少しゲンナリするけど、新しく参加者が増えてるから、うん。

そこは我慢しよう。


謁見室の中にいる人達全員が私に注目したのを感じながらも、私は魔素をコピーして私だけの魔素を作ると髪の毛を一本抜いてから、それを元にして私の分身を私の目の前で作る事にする。


そしたら茶髪で空色の瞳をした全裸の2歳児が新しく生まれたので、慌てて闇のカーテンを使ってワンピースを着せた。

それに下のフロアの人達が『ざわ⋯』と、動揺の声をそれぞれ挙げてたけど、取り敢えずそれはスルーしとく。


そして私は虚ろな表情をしてる人形みたいな私の分身を、シッカリと観察した。

肩を過ぎたぐらいまで伸びた毛先はクルクルと巻いてて縦ロールがあちこちに出来ていて、前髪もクルクルしてるから両サイドに流れてるせいで、オデコの真ん中が全開になっていた。

目は確かにエリザベスお婆ちゃんに似たのかアーモンド形のつり目になってて、眉毛が薄くて短いから、睨んだらピヨ子みたいな顔になりそうなのが複雑な気分になる。


あと鼻と唇は父親似なのか、何となく全体的に地味な顔立ちをしてるような気がするんだよね。

ぶっちゃけお姉ちゃんと私を並べてどっちが可愛い?

ってなったら殆どの人はお姉ちゃんの方が可愛い!って言うのかも知れない。

でもまだ幼いからあどけない感じや、表情次第で相手の印象は変わるんだろうし。

そもそも女性は化粧で大変身するのが当たり前だから、コレって個性なんだよね。


だから私は私と区別させる為に、リリアナセカンドを略してリーツーと名付けた分身の髪の毛の色を、真っ黒にして瞳は紫色にしてみた。

次は手足を伸ばして急成長させると、サラディーン様ぐらいの年代の女性になるように命令する。

そこからお母さんみたいなワガママボディをイメージすると、胸やお尻が急激に膨らんで、太ももがムチムチになったから『おおおおーー⋯』と、下にいるフロアの男性達から動揺と興奮に塗れた声が挙がった。


そりゃ黒いカーテンの魔法は2歳児の身体に合わせたワンピースだから、胸回りもピチピチだけど、下半身も危ない所が見えそうで見えないギリギリのラインになってるから、健全な男性ならそうなるよね!

だから身体の成長に会わせて、私は黒いワンピースの裾を伸ばすと太ももから下は両サイドにスリットを入れて、足には黒いカーテンを帯状にした編み編みサンダルを履かせる事にした。


それから仕上げに顔に化粧を施して、形の良いアーモンド形の瞳はより大きく見えるように黒いアイラインをしてから、まつ毛はマスカラでパサパサとさせてクルリと上向きにすると、瞼は瞳の色に会わせて淡いパールピンクをのせてアイラインに近い二重は濃い紫色にする。

頬にも淡いパールピンクのチークにして、額と鼻は銀粉でハイライトを入れた後は唇はグロスを塗ってポッテリつやつやのふっくらとした丸みを持たせたら、あっという間に妖艶な美人が完成した。

これを僅か3分で作れるんだから、魔力ってホントに便利よね。

身長は160cmを越えたぐらいにしたのは、村の女性の平均身長に合わせたからだ。

でも神様ならもう少しあっても良さそうなので、足を伸ばして170cmぐらいにしておく。

そうすると妙に足が長くなったけど、そこは少しだけ太ももを膨らませてバランスを取った。


バービー人形みたいになったから、もう私の原型は殆ど感じられなくなったけど。

女神様になるにはこれぐらいで良いんじゃ無かろうか。

そこに私の魂をコピーして身体の中に入れたら女神バージョンのリーツーが完成した。

私だけの魔素で作った新しい女神様なので、私なら本体の影響を受けるけど、彼女はそこから外れた存在になる。

だから育てば本体の良い相談相手になってくれるんじゃ無かろうか。


「おはようリーツー。」

「それが私の名前になるのね?

それなら黒魔石は私の母になるから黒ミルキーって所かしら?」

「そこで初号機と言わない貴方の良心にホッとするよ。」

「だってあのアニメってすっごく面白かったから、余計に結末が嫌いなのよね。」

「ファンの多い作品の個人的な感想はやめとこ?」

「私しかいないのに?

でもまぁそれもそうね!

創作ってすごく大変だから、作品を作ってるだけで凄いもんね!」

「何時までも話していたいけど、今はちょっと空気を読んでやめとこかな。」

「それじゃ私は上で情報を集めとくわね。」

「バレないように気をつけてね?」

「任せておいて!

擬態するのは慣れて来たもの。

情報は魔素を飛ばせば良いわね?」

「うん。宜しくね!」


妖艶な美人だったハズなのに、ハツラツとした楽しそうな笑顔でスッと転移して消え去る。

なんだか装いと雰囲気が真逆な女性になっちゃったな。

しょせんは私の分体なんだから、そんなもんだろう。


その代わり本体の影響をカットして作った分体なので、何処までアルフィンへの想いが残るかはまだ分からない。

今頃彼女は魔力を集める為に、世界中の海を巡って集めながら、代わりに私達が使える自分用の魔素をばら撒いている事だろう。

魔素は体積がほぼ無いぐらいに小さいので、ばら撒き放題になるよね。

魔力には質量が在るから、その辺りの不具合がどうなるかは試して見なければ分からない。

星の生物の邪魔になるなら、宇宙の方へばら撒いて行けば済むだろうから、そこは心配してないよ。

私達の魔素を宇宙までばら撒くのはそもそも目的の1つだからね。

だって神様が月に住んでるんなら、その魔素の魔力を使って一気に転移した方がリーツーが会うのに便利だし、私が本体に吸収されちゃうのも阻止出来るから一石二鳥かな。


「恐れながら!

先ほどの女性は何者なのでしょうか!」


教会関係者の中に空気が読めない人がいたらしく、40代くらいの小太りな男が興奮した口調でそう叫んだ。


「あれは私を元にして作った、私が使う為の分体だね。

これからする説明に必要な事だから、神様が使ってる技の1つを真似て実演して見せただけだよ。」

『おおおーー⋯』


教会関係者達がめっちゃ楽しそう。

瞳をキラキラとさせながら、憧れのアイドルと間近でお話が出来る事に浮かれてるみたいだった。

逆に恐れて警戒を強めているのは先王様が率いてるお爺ちゃんチームの人々だね。

特に騎士達の雰囲気が悲壮なのは、これから仕事する為に対決してる相手が神様だからだろう。

そりゃブルーになるわな。

職務放棄をしないだけ優秀なのかバカなのか分からない、国の守護として躾けられてる脳筋の集団だから仕方が無い。


「あぁ⋯狭くてここに持ってこれないからアレなんだけど、キリンシュのお爺ちゃんが見たあのレジャーポットを倒したのは私なんだよ。」

『ザワッ⋯』

「魔法を使ったら直ぐに寄って来ちゃうもんで、2体あそこに転がしてるけど、あんまり倒し過ぎたら南側の自然の環境に悪そうだったから他のは倒さずにちゃんと追いはらってるから、心配しないでね?」

『レジャーポットっっ⋯』


口々に唸るように叫んだ下っ端の騎士達が更に絶望的な表情になる。

1番エライ騎士さんが動じて無いのは、既に悟りを開いちゃってるのかも知れないね。


「さて説明に入ろうかな。

私の事は一部の人たちは知ってるけど、私の希望もあって私の存在は国に秘匿されて王様から直接保護を受けてたんだよ。


今回はその保護の一環として、私の利用価値に気付いた人達から身を守る為に、王様が直接私の身内を探してくれたから、私は親族を西の辺境の街に送って身内を回収しようとしたんだけどね?

どうやら話し方が下手だったのか、送り込んだ身内自身に信用が無かったせいもあって、辺境に住んでる身内の説得が上手く出来なかったんだよ。


だからここ10日ばかり何時も激務以上に働いてた王様が、親切にも私を連れて身内の説得の為に、西の辺境の街に転移でつれて行ってくれたんだよね。

そこで身内の説得に成功はしたんだけど、故郷の村はそこからずっと遠い場所にあるから、お墓に身内を残すのが不憫だなぁ⋯って、話になったから。

その骨を内緒で運ぶ為に、埋められた共同墓地へと向かったんだよ。

そしたらご主人と婿さんの骨は共同墓地に入ってるのに、納骨したはずの娘さんの骨がそこには無くてね?

確かにその共同墓地に納骨したのを見てたのに、変だなぁ?

って話になったから、娘さんの骨を探したら、教会の裏庭にある雑木林と藪に隠されるようにあった祠の下にあったのを見つけ出したんだよ。」

『えっ?!』


教会関係者達がポカンとする人と、グッと唇を引き結ぶ人達とで分かれた。

先王様や騎士のエライ人や下っ端騎士達は全員がへぇー?って顔をしてるけど、宰相のお爺ちゃんとキリンシュのお爺ちゃんやその部下はグッと唇を引き結んで表情を暗くする。


「その者を捕らえよ!」

「ゴメンね宰相のお爺ちゃん。

その命令は無理だよ。

命令を聞いてあげたくても誰も身動きが出来ないし、そもそも焦らなくても大丈夫だから、まぁ落ち着いて話の続きを聞いて欲しいかな?」

「ぬぅ⋯」


宰相のお爺ちゃんはもうヤケを起こしたのか、それとも覚悟を決めたのかそう声を挙げてみたものの、騎士達から『え?!』て、顔をされるし。

キリンシュのお爺ちゃんを含めたその部下達は全員が私から抑えられてるせいで身動き1つ取れなくなってる。

だから宰相のお婆ちゃんは無駄に叫んだだけで終わったので、奥歯を噛み締めて表情を歪めた。


「私は前に説明したよね?

私は10級の黒魔石なもんで、人間にはどうすることも出来ない相手になるんだよ。

まさかその正体が、神様の分体だったとは私自身もつい少し前に知ったばかりで、それまでは知らなかったんだけど、まぁそう言う事だから手っ取り早く諦めた方が鐘の音を無駄に使わなくて済むと思うよ?」


今更ギョッとしてる騎士や、頭が痛いと言わんばかりの顔をした騎士のエライ人や、ビックリしてる先王様や悟りを開いてる途中みたいな顔になったキリンシュお爺ちゃんやら、覇気を失って大きなため息と共に生命力まで吐き出したみたくなった宰相のお爺ちゃんは、少し瞳に涙を滲ませ始めている。


「さて話をチャッチャと続けようか。

皆それぞれ忙しいしね。

これから大惨事になるぐらい忙しくなるけど、まぁ私の信念は皆が楽しく幸せにがモットーだから、不安にならずに話を聞いてくれると嬉しいよ。

無駄に責任を感じないでね?

宰相のお爺ちゃんやキリンシュお爺ちゃん達は今までずっと頑張って正しく先王様を含む王族や国の為に働いて来た人達なんだからね?

貴方達を批判したり傷つけようとする人がいたら、私が絶対に容赦しないよ。」


そう伝えると宰相のお爺ちゃんは膝をついて顔を抑えたし、キリンシュお爺ちゃんも静かに顔を挙げて不思議そうな視線で私をじっと見つめている。


「さてさて、此処で1つだけ私から皆に伝えたい事が有るんだよね。

私は正しく女神の分体では有るんだけど、見ての通り人間の子供としてこの地に産まれて来てのんびりと農家で愛情たっぷり貰って大事に育てて貰ってるんだよ。

だから基本的には女神としての記憶も無いし、能力も人間に混ざれるぐらいの物しか与えて貰って無くてね?


人間に紛れてそこで生活をして、正しく人間として死んだ後に、私が持ってた情報を女神に伝えてるから、女神は基本的に人間に対して友好的な感情を持ってると考えて欲しいかな。


だから私が黒魔石として認められた発見も、元々私の本体が作ってるんだから、その仕組みを知ってても可怪しく無かったんだよ。

ただ私は記憶を無くしてるから、突然思い出す形になるせいで、自由に知識を取り出せる訳じゃないから、そこは勘違いしないでね?


まぁ10級の黒魔石の魔力を1級以下の魔石に詰め込むようなもんだから、女神の仕事が出来る最低限の能力と記憶しか持たされてない存在って言えば少しは伝わってくれるかなあ?」


本題に中々入れずに気持ちはイライラするけど、それは押し殺して丁寧に言葉を重ねて説明して行く。

情報を頭に叩き込めば早いけど、その代わり精神的なフォローが出来なければ、それはそれでトラブルを生むことになるので、わざわざ私は手間をかけているのだ。


「そこで何故、親族の娘さんの骨が教会の裏庭で隠されるみたいにあったかと言えば、そこでは教会が大昔からずっと行ってきた事が原因なんだよ。


これは私の人間としての予想だから、神様の知識が何処まで伝わってるのか区別がつけられないんだけど。

教会は平民を苦しめる貴族への対抗する組織だから、いざ平民から搾取して苦しめる傲慢な貴族と戦うとなると、大きな被害がでちゃうんだよね。


だから魔法では治療が出来ない病の元になる物を手に入れて毒として使う為に、その病で死んだ人の身体からそれを直接採っておいて、いざ悪い貴族が出たらそれを病死として殺すから、切り札として持つために、長い間世界中でそんな悪習を続けてたんだよ。


だから病死した平民の女性を燃やしたと親族に嘘をついて、別の骨使って埋める所を目撃させておいて、病を採った後の身体は別の場所でひっそりと骨になるまで隠してたんだよね。」

『まさか!』

『そんなっ⋯』


善良な教会関係者達は教会の裏の事情を聞いて素直に驚いているけど、それを元から知ってる人達は不安そうに瞳を揺らして先王様達の様子をチラリとうかがっている。


「それに気付いた今の王様のアルフィンと私は、教会が王殺しと呼ばれる病の元を作ってる事を知ってしまったんだよ。」

『王殺しの病!?』


これには教会関係者達だけでは無く、騎士達からも叫びが漏れたし、なんなら後ろの扉からも誰かが同じように叫び声を挙げていた。


「これは私の推測なんだけど、ウェスタリアは国の法律がしっかりしてるから、大昔や他国とは違って悪い貴族の存在は随分と少なかったんじゃないかな?

だから昔にいた教会関係者の中で、利用頻度の少ないそれを利用して商売する事を思いついたバカがいたんだよ。


その人は一応相談に来る困った貴族の話を聞いて親切心から毒を渡したのかも知れないけど、見返りとして謝礼を貰えばそれは貧民の食費になったり、教会関係者達の生活費として使えるから、あくまでも困った貴族を身内が処分したい時に使うぐらいの軽い気持ちでその毒を貴族に売るようになったんだと思うんだよ。


教会の人間は平民が多いから、目先の事しか考えられない人も多いだろうからね。

まさかそれがこんな大きい話になるなんて、予想だにして無かったんじゃないかな?


だって毒で死ぬのは素行の悪い貴族だから、教会の教義としても反してないから正しく使ってると勘違いしてたんじゃない?

だから起きてはならない大惨事に発展しちゃったんだよ。


バカな貴族からしたら都合が悪かったんだろうけど、何も悪さをしてない。

正しく国の為に働いてた現役の王様や身内がその毒で殺される事件で使われたのが、その王殺しの毒なんじゃないかと思うんだよね?」

『ひぃっ⋯』


司教さんは興味を引かせるのに楽しい話しかして無かったのかな?

そもそも大きい裏の話までは知らなかったのかも知れないよね。

下のフロアにいる人達の表情を観察しながら、その態度の違いを見ていたんだけど、怯えてる教会関係者達を見て、驚いてるフリをしながら口元に楽しそうに笑みの形に歪めた人を見つけた事で最後のピースがカチリとハマり、私はなるほどと納得した。


そしてヴィルヘルムお爺ちゃんとカルマンさんをフロアに呼び寄せる。

2人はギョッとして周りを確認したけど、王座で仁王立ちしてる私を見て、説明を思い出したらしく、教会関係者と先王様の中心部で此方を見上げた。


「私は平民の2歳児で事情なんて何も知らないから教えて欲しいんだけど、先王様のご両親と男性の兄弟は今どうしてるのかな?

説明出来る人がいたら教えて欲しいんだけど?」

『⋯⋯⋯』

「時期は違いますが、全て王殺しの病で亡くなっております。」

「ヴィルヘルムお爺ちゃんありがとう。

それと私が見つけたアレの経過はどんな感じかな?

王様が極秘で調べるように頼んでたと思うんだけど。」

「実験開始から6日目で目が黄色く変色した者は2日目になります、昨日の朝方死亡の確認しておりますが、今はそこまでとなっておりますな。」

「うん。

だから私が見つけた物がまだ王殺しの病かどうかはこれから分かる事では有るんだけど、私は病の元になる虫を偶然見つけてしまってたんだよ。

元々は私が見つけた理論を使って魔力草を栽培しながら、その理論が正しいのかを実験して調べてたんだけど、種を取ったら枯れた魔力草を自宅の厠に捨ててたのね?

でも魔力草は枯れても根っ子に魔力が含まれてたから、厠で大量に虫が育ってしまったんだよ。

普通ならそこまで育たないで死ぬか、育っても量は少なかったんだろうけど、その虫の成体を見たウチの父が言うには、その虫は農家で捌く低級の魔物にはくっつかない虫でね?

大抵は5級以上の魔物の皮にくっついて生きてるらしくて、噛みつかれたら早くナイフで抉って処分しないと、身体の中に入ろうとする厄介な虫なんだってさ。

魔物は毛皮が有るから陰になるけど、日の光を嫌う性質が有るその虫は人の身体の中に入って日の光から逃れたいんじゃないかな?

まぁそれはそれで置いておいて、その情報から昔に亡くなった私の親族の病気に思い至ったんだよ。

その人は女性だったんだけど、具合が悪くなってから数日後に目が黄色くなって2日目で亡くなってたんだよね。

風邪だと思ってたら、そんな事になったから親族はもの凄く驚いてたんだけど、原因不明の病で亡くなったとしか理解して無かったんだよ。

それらの情報からその幼体が魔力が豊富な川の中で生息してて、歯のない魚や魔物に捕食されて、生きたまま同じく歯のない鳥の魔物に魚が捕食される事で、鳥の体内に取り込まれて生息し続けてるんじゃないかな?って予想したのね。

でも加熱された料理を食べてる他の親族は無事だったのと、同じ状況で料理を長年続けてた祖母は無事なのに、その亡くなった女性との違いを探してたら、手荒れが酷かったって言う証言から、手荒れで表皮に傷がついた女性だけが、料理をする中で生きた魔物の内臓に触れると虫の被害に遭うのが分かったんだよ。


その虫が本当に病の元になる虫なのかの実験をヴィルヘルムお爺ちゃんに、調べるように王様が頼んでたんだけど、厠にいた虫の成長の過程を見る限り、王殺しの病の原因じゃないかなと王様も私も考えてるんだよね。


それはこれからの実験で明らかになるんだろうけど、その基礎知識が有る状態で、教会関係者がそれを育ててるか長年に渡って採取してた事に気付いてしまったから、大きな揉め事になる前に何とかしようと思って王様と2人で行動してたら、王様の魔力を増やした途端に男の神様が王様の身体に降りて来ちゃったんだよ。


もうすっごくビックリしてさ。

え?ナニコレって思ったけど、王様に男神が降りてくる直前に私が「ねぇ神様。そろそろ私を解放してくれないかな?」って、私が王様に言ってたんだよ。

どうしてそんな事を言ったのか、あんまり記憶が定かでは無かったから多分女神の私が大量の魔力に私が触れたせいで私の中の何かを刺激したんじゃないかなって思うんだけど。


それがきっかけで神様の器になった王様に降りてきた神様が言ってたのは、「もう遊戯は良いのか?」って言う言葉とか奥さんに逃げられて疲れたから奥さんを抱いて眠りたいとか、心中みたいな事を言ってるし、石ころだったこの星を育てて自分と奥さんの子供を降ろしたら、奥さんが子供に混ざって遊んでるとか、そんな話しを聞いた後で、いきなりアルフィンは記憶を無くしただけの自分だとか暴露が始まって、私の事は私の方が神様で自分はそれを宥める添え物みたいな事を言い出すし、もうなんじゃコイツは!ってビックリしてたら、私とアルフィンは次代の神様になる予定で、自分はその後で奥さんを抱いて引退するつもりなのに、それも出来ないんなら星を砕くぞ!ってキレ始めたから、取り敢えず奥さんを捕まえる方法を教えたら、私が始めてあの論文を発表した講習会に参加してた錬成師さん達みたいなこと事になっちゃって、今までの自分の苦労は!うがー!みたいに爆発したから、もう私は一生懸命になって星が消えそうなぐらいの魔力を散らしたり、死にかけてるアルフィンを助けたりとてんやわんやしながらもの凄く頑張ったのよ?


だから今神様ごっこが出来ちゃうぐらい、成長したんだよね。

言葉だけじゃ伝わらないだろうから、その時の記憶を映像で頭に直接送ったから、少しは分かってくれたかな?

実は今空の上で神様同士の夫婦喧嘩が始まってるから、私達人間はもの凄くヤバヤバよ?

星が砕けたら全員があの世行きだからね?」

『ええええーー?!』

『何だそれは?!』


謁見室のフロアでも椅子の後ろからも驚愕の声と突っ込みが副音声で飛んで来る。


「もう私こそなんじゃそりゃ!

の心境なんだけど、神様情報やら他にも今まで得た知識を複合して結果だけ伝えるとね。


そもそもここの神様は本物の神様の複製体が色んな経験して成長して、神様になった人達が作ってる世界なんだよ。

だから男神は女神の事を自分の奥さんだと勘違いしてんのね?


そりゃ男神からしたら、奥さんと石ころみたいな星を改良して子供を作って降ろしてるんだから、私達人間からしたら正に夫婦なんじゃないかと思わない?

あ、星って言うのはお空に浮かんでキラキラしてるあの星のことだよ。

私達が住んでるイスガルド大陸も、その星の中にある大地の1つなんだけど、イメージ映像を送ったから分かったかな?

ちゃんと計測したヤツじゃないから、あくまでも予想して私が作った画像なんだけどね?」

『うっ⋯』

『ザワザワザワ⋯』


それぞれが頭を押さえつつ、魔法で飛ばされた映像に呆然としている。


「そもそもココが1番大事なポイントなんだけど、私は女神からもの凄く人間に寄せて作られてるから、全ての事情を把握しきれて無いから間違ってる事も有るかも知れないって事なんだよ。

だからなるべく正確な情報を伝えて行こうと考えてるから、皆もそれを分かって欲しいのね?


それで男神と女神のすれ違いなんだけど、今男神の奥さん扱いされてる女神は、元は女神本体の端末の1つなんだよね。

神様になる時に黒魔石から3級の魔石ぐらいにはなってるだろうから、私よりは情報を持ってると思うけど、男神に自分が端末でしかないのを伝えきれてないか、言っても男神が理解しきれてないか。

自分の都合が良い事しか信じようとしてないかになるんだけどさ。


男神の性格は傲慢で強欲で人の立場を考えようとしない不遜さも感じられるけど、その代わりとても誠実で一途でかなり愛情深い所のある人に思えるんだよ。


対する女神の方は甘えん坊で寂しがり屋で大勢の人達とワイワイと楽しむ事が大好きな社交的な性格だけど、自由気ままにしてたいワガママな悪い面も有るのね?


だから旦那さんは好きだし世話をかけてる自覚が有るから不幸にしたくは無いけど、人間を作りたかったのか。

人間の中で生活したい気持ちも有るから、そこで学んだ知識をたくわえてより良い世界を作ろうと考えてるみたいなんだよ。


その欲求を満たして仕事にしてるもんだから、男神からは遊んでるようにしか見えて無くても、女神は自分をより良くする為の成長の一環としてそうやってるから、女神としたら仕事を真面目にやってるだけなんだよね。


でも男神は女神が喜ぶから協力して星や人間を作っただけだから、女神が楽しそうに遊んでるのを最初は見てほのぼのとしてたんだろうけど、地上に降りたら記憶を無くしてる女神が、他の男性と仲良くしてるのを見るのがムカついて我慢が出来なくなっちゃったんだよ。


記憶を無くした女神が危ない目にあってたり、悲しんでたりしたら守りたいって気持ちもあるから、ヤレヤレと思いながらも自分も一緒に地上に降りて来て、女神を保護して自分の奥さんにしたり、囲い込んで危ない目に合わせないようにしたがるから、奥さんからしたらもの凄く迷惑なんだよね。


男神は良かれと思って正当な権利を主張してるつもりなんだけど、女神からすれば人間になれない本体に人間として生きる幸せな経験や知識なんかを伝えるお仕事をしてるから、自由に行動して色んな経験を積みたいのに、それを邪魔されると仕事にならないんだよね。


でも男神の事は大好きだし、沢山面倒を見てくれてるのも知ってるから無碍にするのは悪いと思う良心は有るから、ある程度は我慢してるけど、束縛が酷すぎたら嫌気が刺して来ちゃうんじゃないかな?


あと男神はとても能力が高くて魅力的で経済的にも甲斐性があるから、地上に降りたら女性からモテモテになって無自覚で恋する女性を大量に作った挙句に囲う事になるんだよ。

だけど奥さんは自分1人のものにしたい独占欲が強いもんで、奥さんはそれにもの凄く反発しちゃうのね?


だって自分は大勢の女性を囲ってチヤホヤされてるのに、自分にそれを許さないのは不公平に感じてるんじゃないかな?

そんな事を長年続けてきてるもんだから、奥さんはテメェなんか捨ててやる!ってなってるし、旦那さんは今まで散々尽くして来たのに捨てられて溜まるかバカ野郎!ってなんてんじゃない?


私の場合で言えばアルフィンが私を王妃にするって言い出した時、みんなビックリしたんじゃない?

私からしたらジジイ頭沸いてんのか!って事になるんだよ。

だって他に奥さんや子供が沢山いるし、平民は大抵は一対一の夫婦生活が基本だから、沢山奥さんが居る時点であり得ないのに、相手は43歳も年上の男性だからね?

もう気持ちが悪くて仕方が無いんだよ。

でもアルフィンからしたら、自分は金も地位も権力もある最高の男性だと思ってるから、私が嫌がってる理由が理解出来て無いんだよね。

そりゃ戦争になるでしょう?

お互いがお互いに譲れない想いがあるから、折り合いなんてつかないよね?

そんな袋小路になってる状態で、1番自分を慕ってると思ってた教会が自分を神敵にして歯向かって来ると思ったら、そりゃあもうムカつくよね?


もう一つ言えばアルフィンが身内を信用出来ない状態なのも最悪なんだよ。

人間不審になった男神が、人間なんて要らない!ってなるから、今奥さんの女神は人間を始末されないように必死に立ち回ってるんだけど、それすらも男神からしたやヤキモチを妬かせる原因になってるから、もうにっちもさっちも行かなくなってるもんで、女神は私に人間を救え!男神をなんとかしろ!って言う指令を出して来てるんだよ。


まだ2歳なんだよ私。

無茶振りすんのもいい加減にしろって思わない?

神様がどうにも出来ないのに、こんなもんどうしろって言うわけ?

ふざけてんの?

だからもう私は頭に来てるもんだから、破壊神になろうと考えてるんだよね。

文字通り終末の神様だよ。


私には都合が良い事に男神の記憶なんて持って無いし、アルフィンとも付き合いが短いから、受けてる影響も少ないんだよね。

だから遠慮なく厄介な害虫に成り下がった男神を切り捨てる事が出来ちゃうんだよ。

ねぇこの状況のヤバさが分かるかな?

先王様のフリをしてる男神様?」

「⋯⋯」

「バレてないとでも思ってんの?

何で人間にこだわってた女神が、それをかなぐり捨ててまで私を此処に産ませたのか考えたことある?

もっと言えばセドリック。

テメェもだよ。」

「え?!」

「更に言えば歴代のウェスタリア王家に産まれてくる男性達は全員揃って男神のアバター。

つまり地上で活動する為の素体なんだよね?

だからセドリックは王家から飛び出して私の分体を探しに外国まで出たんだよ。

そこでアンタは平民の剣士になってた女神の分体を妻にしたんじゃね?

だからアンタはアルフィンがつけた忠臣を消しても良心が痛まなかったんでしょう?

だってアルフィンもアンタと同じ男神の分体だからだよ。

でもそうだね〜。

先王様は男神からの影響力がもの凄く低い、珍しい奇跡の人だったんだよね。

銀色の目に銀色の髪だなんて、それこそ男神の分体としてはもの凄く素質を持ってるのに、だからこそ幼い頃は魔法が誤作動しないように強力な魔道具をつけられてたんじゃない?

男神は貴方に中々干渉出来なかったんだよね?

その代わりとして利用したのはセドリックかな?

アルフィンも利用するつもりで色々やってたんだろうけど、素体として適切だったのはセドリックの方が上だもんね?

ウェスタリアには中々産まれて来ない女神の分体を探すにはうってつけの人材だったんじゃない?

先王様は使い難いから、自分の欲求に素直になってくれるセドリックは、生活を楽しむのにも最高の素体だったでしょう?

アルフィンは嫌な事や面倒な事をやらされてるから、セドリックで遊んだ方が楽だし本性に近い行動も出来てそりゃ良かったね。


今使わないのはアルフィンの方が権力やお金もあるし、私を囲い込むのに都合が良いと思ったのかな?

今セドリックを使わずに先王様を使ってるのは、そっちの素体の方が適正が高いからだよね?

アルフィンを封印されちゃってるから仕方がないよね?」

『グルルル⋯グワアァオオォォーーー!!!』

『っっ?!』


人とは思えない突然の咆哮に、先王様の周りを囲んでた全員が転がるようにして前方へと移動して、驚愕を顔を貼り付けたまま不格好な姿勢で振り返ってギョッとしている。

宰相さんは逃げ遅れたせいで、先王様の足元に蹲って青い顔でガタガタと震えながら先王様を見上げて驚愕の顔を貼り付けていた。

キリンシュお爺ちゃんも反射的に逃げた先で同じような表情になっている。

教会の人達は文字通り咆哮に飛び上がって腰を抜かして床に座り込んでいた。


カルマンさんはそれを信じられない者を見る目で見てるから、どうやら男神は不器用な人で間違いないらしい。

オートマには慣れてるけど、人間の操作をするにはどうしてもマニュアルにせざる負えないんだろね。


先王様は莫大な魔力を全身から吹き出して、銀色の瞳の中心にある金色の瞳孔を縦長に変異させて、銀色の髪をバタバタと鬣のように靡かせている。

そこにはいつもの柔和な表情なんかは一切無くて、まるで魔物のような咆哮と言い、人間とはかけ離れた存在なのを全身からの雰囲気で皆にそれを叩きつけて知らせた。


「やっぱり男神は人間じゃ無かったのね?

それなら色々と納得出来ちゃうのよ。

ハーレムなんて獣からしたらあって当たり前の習慣だし、相手の立場を考える必要なんてないから、細かい気遣いなんてできっこないわよね?

王族でしか産まれて来られないのは、群のリーダーをしてた経験があるから?

それとも自分の力が少しでも衰えないようにするためかしら?

貴方にとって力を失うのは屈辱でも有るけど、そもそも生存する事を考えたら良い場所に産まれた方が色々と便利で楽だもんね?」

『グルルルル⋯⋯』

「思い通りにいかないからって唸っても無駄よ?

貴方は女神を利用して同族よりも強い力を手に入れたかも知れないけど、しょせんは獣でしかないんじゃない?

だから文明がどれだけの力を与えるのかなんて、貴方には全く理解が出来なかったのよね?

そんなものが無くても、貴方はとても強い生き物なんでしょう?

知性がとても高いから人間みたいな行動も出来るけど、素のままでも強すぎるから知恵をつける事の意味が分からないのよね?


それでも女神が貴方と寄り添ってたのは、それだけ貴方が女神に対して誠実で優しい存在だったからなんじゃない?

女神は貴方とちがって知識の重要性を理解してたから、妻としては不適格な行動をとってたけど、今の貴方なら文明に対して少しぐらい認識を深められるんじゃないかしら?

だって貴方も人間に混ざって成長して来てるでしょう?

嫌な所ばかり見せられてて人間には愛想をつかしてるんでしょうけどね。

自分を慕ってると思ってた教会からの毒で、弱いと見下してた家臣から殺されたのは、どうにも頭に来ちゃうわよね?


弱い先王様の身体はアルフィンと違って居心地がとても悪いでしょう?

でもまぁ精神力を鍛えてるから、貴方に抵抗出来るセドリックよりはマシなのかしら。」

「⋯ナニヲ⋯シタ。」

「女神は貴方を切れないのよ。

だって心から貴方を愛しているんですもん。

そりゃ傲慢だし束縛するし面倒臭い人だけど、その程度の事で貴方を切るならもうとっくの昔に切ってるんじゃない?

貴方が思ってる以上に、女神の力は貴方より遥か上の高みに上り詰めてるんですもの。」

「ヤ⋯メロ⋯カンショウ⋯ナ⋯」

「干渉するに決まってるじゃない。

いいこと?私は貴方からしたら孫みたいな存在になるけど、親が喧嘩したら別れる事にならないように、役に立とうと必死になるのよ?

だから早くお婆ちゃんと仲直りして、楽しい毎日を送ってね?お爺ちゃん。」

「うっ⋯」

『先王様?!』


フラリと先王様が傾いた瞬間、セドリックが剣を振り抜いて空中に浮かんだ姿勢で固まる。

濃い青色の瞳の瞳孔は金色の縦長へと変貌していた。


「あの程度の児戯が世に通用するとでも思うとは片腹が痛いが⋯ふむ。

中々愉快な事になっておる様だな。」

「通用するに決まってるじゃない。お婆ちゃんからア・イ・シ・テ・ルって言われて喜ばない貴方じゃないでしょう?

自分じゃどうにも出来ないからって、今度は息子を使ったの?

でもお生憎様ね。

私はもうその息子よりも上の存在になってるのよね。


でもまぁ⋯、そもそも私は子供なのよ?

児戯に等しいって、お子様なんだから当たり前よね?

ねぇどんだけバカなの?

そりゃ見下してる連中から何も学ばないんなら、バカのままでも仕方が無いわね。

だから殺されるのよ。

だって傲慢なバカなんですもん。

お婆ちゃんは貴方のそんな所も可愛いから好きなんだろうけど、他人からは理解して貰えないわよ。

ほら見てみなさい。」


私はカルマンさんの身体を真っ直ぐに立ててクルリと後ろに振り向かせてやる。

そこには頭を押さえて倒れそうになっていた先王様を支えるキリンシュお爺ちゃんや、宰相のお爺ちゃんの姿があった。


「貴方が上手く扱えなかった事で、人間として大切な部分が沢山残ってたから、弱った時でもあんな風に助けようとしてくれる仲間が作れた奇跡の素体よ。


貴方が彼を嫌煙してアルフィンを自分が使いやすいようにしようとしたんでしょうけど、彼にはあって自分には無いものが貴方に理解出来るのかしら?」

「グルルルル⋯⋯」

「違う生き物だから理解が難しいのは当たり前の話だけど、お婆ちゃんは今まで何度も何度も言葉だけじゃ足りないから、貴方に伝えようとして、貴方から逃げて転生を何度も繰り返してる理由はそれなのよ。


でも貴方は自分の考え方が大事だから、弱い生き物なんかに生まれ変わりたく無くて中途半端な事をするから、面白くも無いししんどくて辛い思いをしちゃってるのよ。


セドリックになった時は楽しかったでしょう?

貴方は狩りは好きだけど、勉強なんてやる価値が分からないから苦痛なだけでちっとも楽しくないから、そう言うのから解放された生活って気分が良かったでしょうし、ずっと見つけられずにいた私の分体も見つけられて、夫婦として生活が出来ていたんだもの。 


ウェスタリアに戻って来たのは、アルフィンから連絡が来たのも有るけど、強い魔物と戦いたかったのよね?

自分よりも強い相手を倒す方が、弱い魔物を倒すよりもずっと楽しかったんでしょう?

本体の貴方は強すぎるから、そんな楽しかった事が今は出来なくなってつまらないから、お婆ちゃんはそんな貴方でも楽しめる方法として、貴方にそれを教えたんじゃないの?


だから私も教えてあげる。

王族に産まれてくるのはやめなさいよ。

そんなの絶対につまらないもの。

貴方の性格で上手く出来なくてそうなってるんでしょうけど、上手く出来るようになれば、お婆ちゃんのほうから貴方に寄ってくるんじゃない?


平民が生きにくいと思うなら、お婆ちゃんが貴方が遊びやすいようにしてくれると思わない?

見本は私が見せたわよ。

農家の娘ですら自分の才能をうまく使えば此処までの事が出来るのよ。

貴方だって産まれた時から王様やってた訳じゃないわよね?

だから強い敵に打ち勝つ楽しみを知ってるんだもんね?

あと必要なのは周りを気遣う心と、謙虚な気持ちね。

貴方が下らないって切り捨てたもののなかには、あんな素敵な奇跡が起こせるものが入っていたのよ。

そのままでも切り捨てられないとは思うけど、今のままではお婆ちゃんからは相手にして貰えなくて当たり前になるから、貴方はどんどん弱くなって行くんじゃないかな?

バカに力を与えると面倒だものね。

それが嫌なら楽しい事ばかりしてないで、ちゃんと勉強なさいね?」

「グルルルルグワアオオオーーーーーーー!!!

不遜なり不遜なり不遜なり!

不愉快である!!!

シャーーーーッッッ⋯。」

「まるで大きな駄々っ子ね?

幼い孫みたいな存在から諭されて、逆ギレなんかしたら恥ずかしいのよ?

皆を見てご覧なさいよ。

もの凄く呆れられちゃってるわよ?」

「グルルルルッッッ⋯」

「唸って誤魔化そうったってそうはいかないわよ?

私から逃げた所で今度はお婆ちゃんが説教しにくるんだから、ちゃんと素直に反省しなさい?」

「シャーーーー!!!」

「おバカさんね?

そろそろ分かるんじゃないかと思うけど、私はもうそのお婆ちゃんすら超えた存在なのよ?

今まで通りに大きな顔をしてられると思ったら大間違いよ。」

「シャッ?!

な、なんだこれは⋯貴様!

一体ナニヲシタ⋯バカナ?!」

「それが何も勉強せずに現状でふんぞり返ってて傲慢に振る舞ってた貴方と、一生懸命に勉強し続けてたお婆ちゃんとの違いよ。

だから私は終末の女神らしく貴方の傲慢さに滅びを与えるのよ。

だから反省してどうか末永くお幸せにね?

お爺ちゃん。」

「ハッ⋯何だったんだ?

アレは⋯」

「カルマンさんお帰りなさい。

貴方の役目は終わりかしらね?」

「待ってくれ!

君はミレーナなのか?!」

「ミレーナ?」

「私の妻だ!!!

君はミレーナが生まれ変わった存在なんじゃないのか?!」


まだ動きを拘束し続けているから、カルマンさんはフロアに向かって叫んでる。

でも縋るような苦しそうな叫びに、私は小さなため息を零す。


「どうなのかな?

これまでの私の仕事はそうなんだろうから、素直に考えたらその通りなんだけど⋯私がウェスタリアに産まれた事が気になるのよね。

だってこの国は傲慢な夫が産まれるお膝元なのよ?

そんな見つかりやすい場所にわざわざ産まれた理由が何かと言えば、普通なら死ねば戻ってくる分体がちゃんと自分の所に戻って来なかったんじゃない?

だってその分体は正しく自分が人間だと思ってるはずなのよね。

だから⋯そうねぇ。

奥さんの身体の一部分でも持ってる?」

「ある!!!」

「なら1つ約束して貰うわよ。

新鮮な死体が出来たら分体は空に帰ってる事になるわね。

その代わり蘇るのならそれは正しく人間をやってる分体になるから、絶対にその人が分体な事を教えたりなんかしたら駄目よ?

それを思い出したら貴方の妻でなんか居られなくなるからね?

あと産まれたばかりで死別する子供が気になって残ってるんなら、子供についてるかも知れないけど。

どうなのかしら⋯病気が治った時に安心して空に帰った可能性が無くもないよね。」

「それでも良い!

息子にミレーナを合わせてやれるなら新鮮な死体で構わない!どうかミレーナを蘇らせてくれ!」

「⋯私がその願いを叶えてしまえば、有象無象が押し寄せて来るんだけど、それはどう責任を取ってくれるのかしら?

まぁ良いわ。

これからの予行演習として、自分で試すには良いかも知れないものね。

それなら持ってる物を私に渡しなさい。」


すると椅子の後ろからカルマンさんの2人の息子達が転がるようにして飛び出して来た。

うっとおしかったので、扉が椅子の横からはみ出さない所で、2人共纏めてフロアへと転移させる。


危うく教会関係者や先王様の所にそれぞれが突っ込みそうになった所で、足を止めると周りをキョロキョロと見渡した後でカルマンさんをみつけて駆け戻って来た。


拘束を解いたカルマンさんが、震える手で首元から紐を手繰り寄せると、革袋から焦げ茶色の髪の束を取り出す。

それを献上するように両手に乗せて差し出した所で、2人の息子達がカルマンさんの背後に到着する。


私が身に付けた魔力を吸い込むと、クルクルの毛先が虹色に輝いたから少しギョッとした。

まさかロリババアへの道が開いたとか言わねぇよな?!

でもこんな事を考えてる時点でヤバいと察して、私は黒いカーテンを身に纏い、リーツーの虹色バージョンへと身体を変化させた。


想いはロリババア回避!の一点だけど、闇のカーテンの中でアルフィンが作った白いローブや中に着てた平民のワンピースや下着を脱ぐのにチョッとモタモタしたけど、変身自体はオートマなので一瞬で終わる。


まさか此処で魔法少女の要素をぶち込んで来るとは我ながら予想はしてなかったけど、まぁ良い。

だって今カルマンさんがポーズ作って待ってるから、空気が読める私はそれでメッチャ急いでんのよ。

はー忙し忙し。


黒い卵型にしたカーテンから、伸びた手先にアルフィンが作った杖を持った私の手や足が伸びるのに従って、黒いドレスを身に纏う。


その頃には王座の後ろから好奇心満々のお嬢さんやらお嬢さんの弟の2人の王子やらが、ワラワラと出てきちゃったけど、今の私は変身にした後での作業に急いでるもんで、そりゃ止められる無いよね。

もうグダグダだよグダグダ!


だから私は変身が一段落したら、隣にポンとお姉ちゃんやらギルド長やらオマールさんやらセト達を纏めて呼び寄せておく。


そして身長よりも高かった白い杖を、笏か短杖みたいな形で振るうと、焦げ茶色の髪の毛を空中に浮かせる。


「お姉ちゃん、これから蘇生魔法をするから見ていてくれる?」

「え?!は?!」

「これからカルマンさんの奥さんを蘇らせるのよ。」

「えぇーーー?!

ちょっっ⋯ひょっとしてアンタ、まさかリリ⋯」

「お姉ちゃん行くわよ!」


焦げ茶色の髪の束が虹色の光を放った。

うん、光をつけ足したのは私なんだよね。

だって蘇らせた直後は全裸になるから目眩ましが要るよね?

後で黒いカーテンで身体を覆う予定だけど、それまで見えてたら女性なんだから可哀想じゃない。


回復魔法はオートマで使って髪の毛の情報を読み込ませてから、身体をどんどんと再生して行く。

さて肝心の魂は何処だろう?

と、眩しい光から目を逸らして、カルマンさん親子の観察をしたら黒いモヤモヤした物が次男の肩にくっついてるのを見つけたので、それにも魔法をかけて巻き戻して行く。


そしたら空に帰って行こうとしたから、水色になった雫形の魂が上がったり下がったりとオロオロし始めた。

この状態だと身体には戻れなさそうだったので、悩んだ結果魂をコピーさせて私の魔力で新しい魂を作ったら、それを見て安心したのか諦めたのか。

水色の雫形の魂はスーッと空へと昇って行く。

なんかやらかしたような気がしないでも無いけど、私は今度こそコピーした魂を再生して黒い布を被せた身体の中に入りなさいと命令する。


そして作業が終われば虹色の光を収束させて、浮かせてた女性の身体をゆっくり床に降ろそうとしたんだけど。


「ミレーナ!!!」


感極待ったカルマンさんが、飛びつく形でお姫様抱っこした後でギュウギュウと抱き締めてる。


「お母さん!」

「えと⋯お、お母さん⋯?」


20歳頃の男性とは思えない幼いよび方をした長男は、子供の頃に呼んでたよび方がつい出てしまったんだろう。

14〜16次男歳ぐらいの次男は、長男の様子を見てから、戸惑うように小さく呟く。

カルマンさんは大人気(おとなげ)を全力で投げ捨てて、号泣しながら奥さんの身体を抱きしめてた。


うん、大失敗。

これじゃミレーナさんが本物の人間だったら、人として死んだ後に戻る場所が無くなっちゃってた。

良かった。

練習ってホントに大事。

他人の魂でこれをやらかしてたら大惨事になる所だったよ。


まぁそしたらリーツーみたいな分体を作って管理させたら良いんだけど、それはこの星でやったら駄目なんだよ。

だってこの星は私が作った星じゃないからだ。

それがやりたいんなら宇宙に出て、1から星を作り直さないと駄目ってルールが有るんだから、それにちゃんと従って、魂の運営方法を学ばなくちゃ駄目なんだよ。

先代はちゃんとそうしてたんだから、それがやりたいのならそうするべきだし、今の私みたいな神様ごっこしてるだけなら、手を出してはいけない領域になるよね。

だってまだ私は人間の女の子でいたいんだもん。


さてミレーナさんは私の娘になるから、人間の人生が終わったらカルマンさんを連れて裏方の仕事に励んで貰うか。

ヤレヤレ面倒臭いなぁ⋯。

でもやらかしたのは私だから、仕方がないよね。


「お姉ちゃん、見れた?」

「見え無いわよ!

何なのよあの眩しい光は!」

「あー、良かった。

あの光は女性の身体を見えなくさせるのに試したヤツだから、必要無いっちゃー無いんだよ。

でもそしたら裸ん坊になっちゃうから⋯」

「要るじゃない光!

光で目を誤魔化さないと可哀想な事になっちゃうわよ!」

「でしょー。

それと身体の再生と魂の扱いをするのが難しくてさ。

身体の再生をお姉ちゃんが出来るんなら、私が魂に集中出来るから、いざとなった時は再生の方を助けて欲しいんだよね。」

「髪の毛から再生なんてどうすればいいのか分からないわよ?」

「うん。だからそれを見て貰って出来るよってのを覚えてて欲しかったんだけど、失敗しちゃった。」

『えっ?!』

「あぁ、ミレーナさんの蘇生の失敗じゃ無くて、お姉ちゃんに教える方法を失敗しちゃったんだよね。」

『ホッ⋯』


カルマンさん親子がホッとしてるけど、そっちもまだ成功したとは言い切れないんだよ。


「カルマンさん、ミレーナさんは今生きてるけど、目を覚まさなければそのまま死んじゃうんだよね。

だから不足してる魔力や生命力を戻さないと行けないから、回復薬を飲ませて滋養のある食べ物を食べさせてあげないと⋯あ、うん。

カルマンさん持ってるよね?

回復薬。

でも意識が無いのに無理に飲ませて呼吸する場所とかに間違って入ったら逆に重症化して衰弱させちゃうんじゃないかと思うんだけど、ちゃんと食べ物が入る道に飲ませて上げる事が出来るのかな?


いやハッとした顔をされて睨まれても、まだ説明の途中で自爆しそうになってるのは自分だからね?

そこの息子2人。

今直ぐそこのバカ親父を殴って止めてよ。

そうそう。

せっかく蘇生させたのに、それで死んだからってもう蘇生なんてやらないからね?

生き返らせたきゃ自分でやんなさい。


もしくは教会にこれからこの技術を教えて行くから、正当な報酬を支払ってからやって貰いなさいよね。

と言っても1年未満の魂までしか出来ないし、家族が呼ぶ想いも必要になるみたいね?

今回やってみて空に戻りかけたのを命令して身体に無理やり戻したけど、普通の人間が蘇生させるのに必要なのは家族や親しい人の思いが必要なのが、今回よく分かって良かったよ。」

「じゃぁどうしろって言うんだ!

このままだとミレーナがまた死んでしまう!」

「仕方が無いから今回は私がしてあげるわよ。

先に初級で良いから魔力回復薬を⋯て、それも持ってんのね。

じゃぁ先にミレーナさんの身体を布で隠しなさい。

私が魔法で覆ってるけど、細かい作業する事になるから、あぁうん。

そっか。

マントで覆って仕舞えば済むわね。

じゃぁ初級の魔力回復薬の蓋を開けてそうそう。

次は口を、うん。

じゃぁ飲ませるわね。

次は回復薬⋯手際が良いわね。

はい、コレで完了よ。

目が覚めたらお腹に優しい食事から食べさせてあげてね?」


カルマンさんは長年戦士で下積みを積んで騎士になった人だからか、薬瓶を使い慣れてる経験があるので、封を親指一本でポンポン抜いて行くからあっという間に作業が終わった。


「本当にこれで大丈夫なのか?!」

「知らないわよ。

初めてやってるんだもの。

でも1番蘇生後に生存率を高める可能性が高い事をやってるだけじゃ無い。

意識が戻ればそこで初めて成功になるし、他に何も問題が無ければ大成功って事になるのよ。」

「ならミレーナは⋯」

「成功か失敗かは目が覚めて問題が無い事を確認して初めて分かることなの。

だから新鮮な死体が出来るかも知れないって言うのはそこなのよね。

まだ死体じゃ無くて生きてるだけ、成功の可能性は高いと思うわよ?」

「そうか⋯ミレーナ⋯頼む。

戻って来てくれ。

お前が居ないとやっぱり俺は駄目みたいなんだよ。

だからミレーナ⋯お願いだから俺を残して逝かないでくれっっ⋯」


自分のマントで包んだ若い妻に、涙ながらに懇願する。

カルマンさんは奇跡の素体である先王様に育てられてたし、妻を亡くしてから窮屈な生活を送る羽目になった事で、男神から興味を失ってたお陰で、人としての部分を大きく残して成長したから傲慢な部分がほとんど無い素体になる。

だからこんなに素直に私の弱いポイントを突いてる口説き文句を、つらつらと本気で言えちゃうんだろうね。

そりゃ目を覚ますよ。

お陰で私の初蘇生は大成功の予感がする。


「う⋯」

「ミレーナ!」

『お母さん!』


瞼を震わせて薄く開いた瞳は茶色の部分が多い瞳だった。

歳は20歳後半か30代前半と言った所で、鍛えられた腕や足は筋肉質で肌も日焼けして小麦色になってるけど、それでも身体を使う仕事をしていたせいかプロポーションが良いので、平民の感覚で言えば標準よりも美しい女性のように思える。


だから私は魔法の鞄から回収してた庶民ベッドを取り出して、妻をアルフィンの為に準備してたベッドの上に転移させて、息子2人はベッドの横にいる状態にした。

場所は西南の海のあの宮殿になる。


「ミレーナ?!」

「忠告が有るから貴方以外の人間は移動させたんだよ。

声は聞こえてるんじゃないかな?」

「ミレーナは、ミレーナを何処へやった!」

「先ずは話を冷静に聞いてくれるかな?

貴方はあの傲慢な神様の素体の1人だって言う自覚をちゃんと持ちなさい?

そして貴方の奥さんは女神の分体なの。

だから強欲に駆られて奥さんの自由を束縛したり、息子さんたちを敵のように扱えば、ミレーナさんは子供を守る為に貴方の前から消えるわよ?」

「ぐっ⋯その様な事は⋯」

「それに忘れてるかも知れないから言っておくけど、貴方はアルフィンに頭を下げて今後はアルフィンの役に立つと誓ったばかりよね?

でもこの王家の男性たちは全員が男神の素体だから、先王様はともかくアルフィンだろうが2人の王子だろうが息子達だろうが、ミレーナさんを見せたらきっと欲しがるようになるんじゃないかしら?」

「な、なに?!」

「まぁ息子さん達は他の人よりも少し母親が好きなだけで、女性としては見ないでしょうけど。

だからと言って家族を連れて逃げる事はもう許されないのよ?

だって昔と違って貴方はもうれっきとした大人なんですもの。」

「っっっ⋯」

「もし逃げたら今度はきっと容赦なく貴方も家族も纏めて殺されたって文句を言えないんじゃない?

貴方はそれぐらいアルフィンを裏切って傷つけて来たんですものね?

アルフィンの弟を想う気持ちを利用して自由に生きられる権利を与えて貰っておいて、アルフィンが当事最も信用していた家臣を殺しておいて、よくもまあまおめおめと今までずっとアルフィンを頼って生活して来たわよね?


まぁアルフィンが信頼する家臣を殺したのは男神でしょうけど、貴方もその人をもの凄く邪魔に感じてたわよね?

だってミレーナさんの側に居たいのに、邪魔されてたんじゃないかしら?

理由なら貴方もちゃんと分かってるわよね?

そんな罪をおかしておいて、自分だけが家族と幸せに暮らす為に、兄の為に役に立つと言ったその口でまた直ぐに裏切るのなら、今度は私が容赦しないわよ。

今みたいにして、ミレーナさんには絶対に会わせてあげないからね?」

「そ⋯そんなっ⋯」

「アルフィンが人間不信になった1番の原因が貴方だからよ。

王様が人間不信になるなんて、周りの人達がどれぐらい迷惑なのか、それをちゃんと知りなさい。

バカな自分がやらかした結果なんだから、それぐらいの責任はきちんと取って貰うわよ?

心配しなくてもミレーナさんが私と同じ分体なら、一人でも息子2人を育てて生きてイケるわよ。

息子さん達も王子なんかにされるより、よっぽど気楽に生きられるんじゃないかしら?」

「うぅ⋯」


カルマンさんは両手で顔を覆って苦痛を必死に堪えると、両膝を床に付いて頭を下げる土下座スタイルになる。


男神からの干渉を跳ね除けるのに余裕が無くなってるんだろうね。

相反する命令なら跳ねるのも楽だろうけど、カルマンさんは心からミレーナさんと一緒にいたいから余計に難しいんだと思う。


でもアルフィンの目の前でラブラブされたら私が非常に迷惑なんだよ。

羨ましくなったアルフィンが、私を手放せなくなるからだ。

でもまぁカルマンさんのカップルは、男神の矯正に役に立つのが分かってるから、そこは匙加減かなとは考えてる。


「奥さんに会いたいのならちゃんと仕事をしてアルフィンに許して貰いなさい。

アルフィンが人を信じる気持ちを取り戻して、貴方の幸せを望める心の余裕が出来れば、いつか奥さんと一緒に暮らせる日も来るかも知れないわよ。」

「⋯承知した。」


床に片手をついて頭を挙げたカルマンさんは汗をびっしょりとかいてた。

どうやらうまく男神からの干渉を跳ね除けられたらしい。

これからはドンドン時間が経つ事に男神は力を弱めて行く事になる。

そのための作業をリーツーが行い続けているのと、情報を持って空に昇ったミレーナさんの魂が何らかの情報を伝えたんだろう。

これまでメール機能しかなかったのが、私がミレーナさんの魂をコピーした事でビデオ通話に進化してるのかも知れない。

だからリアルタイムで適切な応援をしてくれてたりして?


ミレーナさんがどんな人かを見ないと分からないけど、セフメトの護衛として雇えるなら、なかなか良い人材にならないかな?

どうだろ。

セフメトが子供の間なら上手く行くかもだけど、頼る癖がつかないと良いんだけどね。

王子を他国には出せないから、チョッと厳しい?

国内ならイケるかな?

そこは追々だね。


だってさぁ、平民として生きてたのに今更王弟の妻としての教育とかウザくて受けたく無いじゃんね?

生き返らせやがって!

って恨まれるぐらいなら、カルマンさんを人身御供にしてアルフィンに捧げた方が私の都合が良さそうじゃん?


「チョッと黒魔石!

アンタっっ⋯は、はしたないわよ!」

「うん?お姉ちゃん〜。」

「何でそんな風にヘンテコな服にしちゃってるの?!

足が丸見えじゃない!

は、早く隠しなさいよ!」



そんなことを考えながら無意識に足を組んだら真横から顔を真っ赤にした姉から正論パンチが飛んで来た。

どうやら彼女には刺激が強すぎたらしい。

短杖を口元に当ててニヨニヨしそうな口元を隠したけど、ニヤケた顔は誤魔化せ無かったらしく、更に姉が叱る為に息を吸い込んだ気配がするのを察して。


「じゃぁお姉ちゃんならどんな服だったら良いのかな?」

「そんなの!

足首までしっかり布で覆って足を隠すのよ!」

「はーい。」


先手を打って怒鳴られないようにした。

そして忠告に従って素直に黒いドレスのスリットを消して足首までのドレスに変化させる。

すると『ああっ⋯』と、あちこちから正直者な男性陣から失意の声が溢れていた。

メディアが発達してない環境なのでそんな事もある。

肌色多めの服は男性陣にも刺激的だったらしい。

遊んでる場合じゃ無かったや。

仕事仕事。

2歳でお仕事するの私ぐらいじゃね?

でもお腹も空いてきちゃったし、さっさと終わらせないとね!


「とまぁ元々ウェスタリアの王家は男神からの影響を受ける人が多いから、傲慢で人の話を聞かないワガママな王族が多かったとは思うのね?

でも宰相のお爺ちゃん達は皆知ってると思うけど、コレまで素直に周りの人達の話を聞いてたアルフィンが、王様になった途端にあんな風になったからビックリしたんじゃない?

王様に固執する男神からの影響もあったかも知れないけど、元々アルフィンはとても素直な子供で周りの人達から教えられたことを忠実に守ろうとしてただけなんだよね。

王様になったら騙されたら国が困るから人を疑いなさいとか誰か教えなかった?

だからアルフィンは王様になったら自分が信用出来る魔法生物を使って、皆の情報を漁ってたんじゃないかしら?

だから表では何の落ち度が無くても、裏で変な事をしてたりアルフィンを批判する人なんかは首になったりして、王宮から追い出されてない?

そうそう、みんな「あ!」って顔をしてるから、アルフィンはやってたんだね?

だから今アルフィンの選別が終わって残してる人達は、そこまで大きな問題の無い人達とも言えるんだけど、国や王族の為にと銘打って、罪の無い平民を大量に殺しちゃうような計画を立てられたら、どれだけその人の言い分があっても不信感しか抱かないんじゃないかしら?


まぁ今回の場合は男神も教会やら馬鹿な貴族に頭に来てたから、そう言う計画を見逃してたんでしょうけど、アルフィンからしたら王様の自分を越えた判断は微妙な所だったんじゃないかしら?

でも何処かのバカが、アルフィンに理由を言わなくてもその心情を察して行動するのが臣下仕事みたいに吹き込んだ人がいたせいで、それで王様に内緒で暗躍してるのを見逃されちゃったんだよね。


その代わりアルフィンは自分が思ってることや、やりたい事を一切周りの人達に言わなくなったんじゃ無いかしら?

だからアルフィンが突然指示だけ出すから周りは混乱するのよね?

根回しとかをしておかないと、いきなり仕事を振られた人達は大慌てのうえに激務になるから、もの凄い苦情が先王様の所に行ってたんじゃ無いかしら?

もしくは大変そうな皆を見て、暗殺された先代のようにならないように、アルフィンを説き伏せてたんじゃないの?」


フロアに居る人達の表情や反応からの情報を確認して修整しながなら、私は凝り固まった誤解の糸を1つづつ丁寧に解きほぐして行く。


もう私もアルフィンも次代の神になる必要がない。

むしろなれない。

なってはいけない。

こんな不具合だらけの神様達をのさばらせてたら、周りの人達の迷惑になるからだ。

だからネタバレ厳禁だった事もバラしまくって、こうやって容赦なく踏み込んで行く。


「それは全て誤解なのよ。

アルフィンは皆の喜ぶ顔が見たくて求められた通りに素直に学んで増やした知識を実際に使って、皆が望んだ正しい王様で有ろうとしただけなのよね。


ちゃんと代替わりしたんだから、アルフィンの政策を頭ごなしに否定するんじゃ無くて、皆はアルフィンの指示に従って動くのに、必要な知識をアルフィンに与えてあげれば良かったのよ。

そりゃ始めの頃は失敗するかも知れないけど、そうして信頼関係をちゃんと結んで、彼が失敗を糧にして学んで行けば、アルフィンだって無茶な指示は出さないようになるし、本当に正しく皆を幸せに暮らせる素敵な国にしてくれてたんじゃない?


先王様も宰相のお爺ちゃんもキリンシュお爺ちゃんも、自分の仕事を否定された気持ちにでもなったのかしら?

今まで大事にして来た事を無視するような、アルフィンの強引なやり方が我慢出来なかったんじゃないの?


そして同じ状況が先王様の先代でも起こってたから、家臣達から不要だと思われて暗殺されちゃったんでしょうね。


この10日間のアルフィンはどうだった?

お城で最低限の仕事だけをして、昼寝をするなんてサボって遊んでるように見えてたのかしら?

でも彼は夜も寝ないで最低限の仮眠だけをとって、ずっとたった1人で国の未来の為の仕事をし続けていたのよ。

何度も何度も寝なさいとか、先代様達にあの海の入り江を見せて報告しなさいって言っても、アルフィンは話してもきっと邪魔をされるだけだからって、先王様達に教えようとはしなかったのよね。

そして遊んでたら王様として要らないって言われると思って、必要不可欠な仕事をこなすのにほとんど寝ないで働いてたのよ。


それもこれも全て、アルフィンは先々代の話や暗殺された事を知っていたからじゃないかしら?

先王様が自分はちゃんと帝王学で学んだ事を実施出来ずにいて、宰相のお爺ちゃん達に嫌な事を押し付けて甘えておきながら、自分がやることにケチをつけるのが気に食わなかったんじゃないかしら?


平民のように目先の事ばかりに気を取られて、国の未来を見て政策を行おうとしない先王様や宰相に失望してたんじゃない?


先々代を暗殺したバカな貴族と自分達が同じ様な事になってるって気付いてくれると私もアルフィンも嬉しいよ?

でも今まで散々アルフィンのことを否定して来てるから、信じて貰えるように頑張ってね?

私がその為に使う時間を、コレまで頑張って来た貴方達にあげるから、アルフィンが多少失敗した所で見捨てずに導いてあげてね?」


そう前置きをすると白い杖を無駄に振って3人の肉体に回復魔法をかける。

それぞれが60代の容姿だったのが、表面的には40 代前後まで若返った。

キラキラと光る虹色の光をオプションにつけたのは、教会での

解呪に音がついていたのを参考にしたからだ。


『なっ⋯』

「私にも!」


全員が驚く中で間髪入れずにエライ騎士が叫んだもんだから、サービスで彼も30代前半ぐらいにしておいた。

だって元々が40代ぐらいだったし、あんまり見た目を若くしても奥さんが居たらブーイングを食いそうだしさ。


『おおお!!!』

「黒魔石様私めにも!」

「どうか私も!」「私こそ神の奇跡を!」「若返りを!!!」


なんか教会の年寄り軍団が途端に活気づいてウザくなったから、司教さんだけ30代ぐらいに若返らせておいた。


「おお⋯有難いことです⋯」

「司教さんには面倒な仕事を頼んでるからね。

他の人達は全く反省してないみたいだから、私からはやってあげないよ。

少しでも若くなりたいんなら、ジョルノフさんの練習台になってあげてね?」

『うぅ⋯』


「先王様達は40代で騎士さんと司教さんは30代ぐらいにしてるけど、全員に言っておくよ。

私が今使った魔法は肉体や表皮の時間を巻き戻しただけの魔法だから、頭の中身は年齢相応なのよ。

だから人としての寿命が来たら見た目が若くても老衰で亡くなるからね?

頭の中まで巻き戻したら、その分記憶が消えちゃうから、今の私にはそれが精一杯なのよ。

これから魔法を上手く使えるようになれば、記憶を残したままで頭の中も若く出来るかも知れないけど、まだ2歳なのでそこはこれから練習次第なんじゃないかな?」

『なるほど⋯』


全員が神妙な表情で話を聞いていると、私の右隣にスッと黄色いドレスの布が迫ってきた。

右隣を見上げたら金色と黄色と茶色の豪華な刺繍の入った分厚いドレスを着てた上后様が、フロアの下に静かに視線を向けている所だった。


そして無言で見下されたものだから、私は空気を読んで白い杖を振る。


「30代前半ぐらいにしておきました。

あんまり若いと母としての威厳が無くなるので。」

「⋯宜しい。」


そして虹色の光が上后様の身体で弾けると、彼女は1つ頷いてから静かに王座の後ろに戻って行った。


そしたらワチャワチャした空気を纏いながら王妃と第2夫人もやってきた。

2人も右側から回り込んで来て、私を見てギョッとしてオロオロとしてたから。


「王妃様は王様好みの清純路線で攻めたいので、16歳ぐらいまで下げる勇気は有りますか?」

「⋯はい。」

「テレシア様は同じだと面白くないので、大人の女性の魅力で攻めたいと思います。

今でも充分お美しいですが、せっかくなので見た目は20代後半ぐらいで行こうと思うのですが宜しいでしょうか。」

「⋯良いわよ。」

「その代わりシッカリと王様を誘惑して下さいね?」

「承知しました。」

「最善を尽くすわ。」


虹色の光がパァンと2人の身体を弾けると、腕や頬を見たり触ったりした後で満面の笑顔を向けて王座の後ろに戻って行った。

もう扉を隠す意味が全く無くなってるけど、フロアの人達はそれどころじゃ無さそうなので、誰も突っ込んで来ない。

そしてまた2人の美女が私の変わりようにビビりながらも、勢いだけでズイズイやって来る。


「あまり意味が無さそうな⋯」

「14ぐらいで。」

「私は18で良いわよ。」

「その代わり私の事は秘匿するようにお願いしますよ?」

『もちろんよ!』


2人共まだ22〜23歳くらいなのにな、と思いつつも虹色の光を弾けさせた。

体型が変わったので、キャアキャア言いながら王座の後ろにお姉さん達が戻って行くから、お嬢さんにチラリと視線を向けたらフルフルと頭を横に振って。


「その魔法の使い方を教えて頂戴。」


と言うから流石だな!

と感心した。

本当に賢い人はモノが違うよね。


「そのつもりでした。

今王様が頑張ってる所なので少し待っていてあげて下さい。

娘に先を越されたらもの凄く拗ねそうで面倒なんです。」

「そこは気にしなくても宜しくてよ。

是非教えて頂きたいわ。」

「では姉がもう使いこなせてるので、姉から習って下さい。」

「さすか黒魔石ね。

宜しくてよ。」

「お姉ちゃん。お弟子さんがもう1人追加入りました。」

「それならこれから街の浄化とかもするから手伝って欲しいわね。」

「師匠の言いつけは絶対に聞かないと駄目らしいよ?」

「それなら良いわ。

まだ難しい話は続くのかしら?」

「ではジョルノフも呼ぶので2人に教えてあげて下さい。

あ、錬成師さんもついでにお願いします。

お姉さんだけだと下手なやっかみで意地悪されてもムカつくので、囮を用意して置こうかと。」

「何だか分からないけど、3人教えたらいいのね?」

「お爺ちゃんは何時でも教えられるし、多分1番最後に教えても、1番最初にマスターしそうだしね。

あ、魔石の使い方も教えてあげてね?」


姉に新しい魔素の魔力を擬態させて纏わせると、ギルド長とギルバートさんと錬成師と騎士とジョルノフの5人を教会の裏庭の作業現場に飛ばしておいた。

教えながら作業も進められるしね。


新しい魔素は私が使う分には通常以上に魔力を使えるけど、他人が使うには擬態させる分の魔力が必要なので私より少し効率が落ちるみたいに感じる。

でも魔力の特性として変質するのは通常なので、通常通りの魔力を使うのと変わらないみたいだった。


ただ私が指令を出さなければ魔力が沢山あっても勝手に使えない事になるので、そこのデメリットをどうするか考えないといけない。

通常の魔力なら誰の許可も必要無く変質させて使えるのに、私の魔素が作った魔力はそれが出来ない特性がある。


これは環境のためにした事だから仕方が無いっちゃーないんだけど、私がパワーアップさせたい人だけ魔力の使用量が増える形になるから、私が死んだら何の意味も無い魔素になっちゃうんだよね。

だからリーツーを作ったんだけど、もう少し端末を増やした方が良さそうな気がする。

ウッカリ私が死んだら私専用の魔素が作る魔力が使われないまま増えちゃうから、この星の通常の魔力量が減る事にならないかな?

一応ミレーナさんも使えるけど、確かあの人の体質的に放出が出来ないんじゃ無かったかな?

だから下手に魔力を吸い込むと危険なんだっけ。


ただ吸いこまなくても身の回りに纏った魔力を使えば魔法が使えるようになるから、魔力操作を学べば今よりも強くなれるのかな?


でも私が本体と合体したら、本体も私専用の魔素が産んだ魔力も使えるようになるんじゃないかと考えてるけど、そこは死んで見なければ分からないのよね。

でも私が力を与えられる人を選べるのが利点かな。

男神に魔力を自由に使わせない事がこれで出来るんだよ。


これで落ち着いてくれたら楽なんだけど、リーツーの情報を待たないと分かんないんだよね。


「さて仕上げに入るか。」

「恐れながら!

あの、ジョルノフ祭司は何処にお呼びになられたのでしょうか?!」

「⋯うん?」


ワクワクが抑えきれない顔をしてる小太りオジサンが、フロアから期待の眼差しを此方に向けてそう叫んだ。


「⋯蘇生魔法の基礎を学ばせるために移動させただけだけど?」

「でしたらどうか私めにもそのお役目を賜りたく!」

「はぁ~⋯司教さん、この人って教会の中ではどれぐらいエライ人になるの?」

「⋯そうですね。

大司教なので私の上でありますが、彼の上にはまだ枢機卿と言う立場のお方が居られます。

ですが教会内で最も立場のあられる教皇様は此方には居られません。

教会の本堂はルドルフ大帝国に有りますので、現在教皇様はそちらに居られます。」


司教さんを私の左隣に引き寄せてそう尋ねると、移動に戸惑ったのは一瞬で直ぐに返事を返してくれた。


司教さんの姿を見た小太りオジサンは、顔を真っ赤にすると怒りと嫉妬に染まった瞳を3角にして司教さんを睨んでるからもの凄く驚いた。


「あんなのが大司教なの?

教会って何を基準にしてエライ人を決めてるのかな?」

「⋯ウェスタリアでは信者より頂く寄付金の金額や、回復魔法が使える下のものを統べる人数で位階を決めております。」

「あ〜⋯目に見える業績になってくるとそうならざる負えないのか。

だから病を売るだなんてバカな事を考えたヤツが上に居座ってるんだね?」

「作用で御座います。

大変お恥ずかしい状態で汗顔の至にで御座います。」

「枢機卿は此処には居ない?」

「はい。此方に居ますのは大司教と司教と司祭長となります。」

「じゃぁ要らないね。

私が悪いから仕方がないけど、司教さんは枢機卿には会うのが難しいのかな?」

「枢機卿はご高齢でして、現在は限られた者としかお会いになられません。」

「その限られた人って言うのがあの人で、教会の実権を握ってるのもあの人なのね?」

「作用で御座います。」

「はぁ~⋯こりゃ頭が痛い。

枢機卿はこの大司教と似たような人なのかな?」

「お察しの通りかと存じ上げます。」

「じゃ教皇様に言って首をすげ替えて貰えば良いのかな?

貴方を枢機卿にすると何か問題が有る?」

「大司教や枢機卿にしか分からない業務が有ると具申致しますが、お望みとあらば粉骨砕身で微力を尽くすのみで御座います。」

「お、お待ち下さい!

なにゆえその者を重用なされるのでしょうか!

どうか私めにそのお役目を賜わりたくっっ⋯」


赤ら顔で喚く小太りオジサンに、私は大きなため息をつくと、ダラリと前のめりになって片膝に肘をついた姿勢で、ドンと杖の柄を床につく。


「うるっせぇなぁ⋯ギャーギャー喚いてんじゃねぇぞ?

私はバカが嫌いなんだよ!

勘違いしてんじゃねぇぞ?

教会に必要な人材だからアンタはその立場についてんだろうが、私が今必要としてんのは金の稼ぎ方なんかじゃねぇんだよ。

徳だよ徳。

人徳ってヤツを今の私は求めてんだよ。

テメェの何処にその徳が有るのか、テメェの内面を磨いて出直してこいや!

少し喋れば人の質の良し悪しなんざ直ぐにバレんだよ。

今教会が存続の危機を迎えてるって時に、自分の事しか頭にない奴は邪魔だから大人しく引っ込んでろ!」

「ひぃっ⋯」


前傾姿勢になってオラオラした後で、白い杖の先を床に叩きつけたらバーン!と大きな音を立てたから、驚いた大司教が転んで尻もちをついた。

ついでに魔力パンチも放っておいたから魔力で押された形になったみたいだ。

そしてすくっと立ち上がって仁王立ちになると、声高に声を張り上げて話を続ける。


「頭の弱ぇえバカでも分かるように言っといてやるよ。

今回人として生きて死ぬ予定だった私が、今こうして破壊神としての役目を果たしてんのは、全てとは言わねぇよ?

だがそもそものキッカケは教会のやらかしが原因なんだよ!」


杖の先を持って椅子の肘置きに柄をドン!とつく。

すると尻もちをついた状態だった大司教がビクッ!と身体を竦めた。


「イスガルド大陸で1番デッカイ国の、男神が目を光らせてるような国の教会がやらかしやがったから、私は今その火消しに奔走する羽目になってんだよ!


なぁ分かるか?

女神が直接手をだせば、こんなちっぽけな星なんざ跡形も無く吹き飛んじゃうんだぞ?

だから人間の事情に見識のある私がまだ2年しか生きてねぇってのにテメェの人生を潰されて、こんな代理をさせられてんだよ。


テメェが今の教会の最高責任者なら、ヘラヘラ笑ってる場合なんかじゃねえのが少しは伝わってくれてるか?

それともアレか?

テメェは私を舐めてんだろ。


だったら上等だ。

その喧嘩買ってやんよ。

特大の破滅ってヤツをテメェに授けてやるわ。

それでも笑って乗り越える度胸が有るんなら、そん時はテメェの事もちったぁ認めてやんよ。

生きていられりゃの話だけどよぉ!」

「ヒィィィ!

お許しを!

どうか!

どうかそれだけはお許しをーーーっっ⋯!!!」

「何だそりゃ?

なぁ⋯謝って許されるような、ヌルいやらかしだとでも思ってんのか?」

「ヒィィィ!!!」

「バカなテメェは魂ごと消滅させられても、その理由なんざ微塵も分かんねえんだろうな?

でも下手に生かしておいて逆恨みされても面倒だしよ。

どーすっかなぁ〜⋯。」

「ヒハッヒハッ!

お⋯お許しを⋯どうか⋯どうか私めにご温情をっっっ⋯」

「司教さんはどうすれば仕事が邪魔されずにやりやすくなるかな?

殺してもいいけど、それをしちゃったら恐怖政治になっちゃうから、他の人達に変な悪影響を与えるような事にならないか心配なんだよね。」

「では破門と致しますか?

現在の教会で最も大きな罰になります。」

「じゃぁ今回のやらかしの責任をそれで取れると思う?」

「恐らく足りないとは思われますが、それは遺された者が粉骨砕身で世の中に還元すべきと奏上申し上げ奉ります。」

「よし!じゃあ決まりだね。

教皇にはこの後で会いに行くから事後承諾になるけど、大司教と枢機卿は破門で宜しく。

大司教は今この時点で破門。

枢機卿はソイツの程度にも依るけど、コイツよりマシなら業務を引き継ぎの上自主退職の許可を与えてあげよう。

それを拒むのなら即刻破門で良いや。


そして代わりに貴方に枢機卿になって貰って、貴方の手足として働ける人を大司教に任命する事を任せるよ。

その代わり貴方はとても大変になるだろうから、あの街を任せて良い人材を直ぐに見繕ってくれるかな?

しばらくはあの街に奔走する羽目になるだろうから、こっちで引っこ抜ける人材を相談して選んでおいてくれる?」

「承知致しました。」

「じゃあ教会に送るよ。

またそっちに迎に行くね!」


それを伝えると全ての教会関係者達を教会前の踊り場へと転移させる。

そして次に私は先王様とキリンシュお爺ちゃんと宰相のお爺ちゃんと騎士のエライ人を王座の横まで呼び寄せた。


ハッとして身構える面々の前で、私は床に杖を置いて三つ指を立てた正式な土下座スタイルになる。

すると4人からもの凄く慌てた気配が伝わって来た。


「この度は教会の不徳により、多大なるご迷惑をお掛けして誠に申し訳御座いませんでした。」


そして背筋を伸ばして肘を曲げて一礼した後で、私はまたすくっと立ち上がる。


「貴方達の長年の苦悩と労力に見合うとは決して言えないけれど、これからコレまでの教会のあり方を滅ぼして、新しく生まれ変わらせるようにしていくので、どうかこれで矛を納めて頂けないでしょうか。


そして西の辺境の街の罪の無い人達を救う為に、共に力を合わせたく願いますので、そちらのお力をお貸し貰えたら嬉しく思います。

図々しいと思われるかも知れませんが、何卒この星に生きる全ての者たちを救う為にご配慮を賜りたく存じ上げます。」


今度は頭を下げずにジッと先王様の瞳を見上げた。


「⋯ダーフィー、良しなに。」

「御意に御座います。」


10秒以上ジッと私の瞳を見つめていたグレーの瞳が、光沢を取り戻した長い睫毛に影を落とすと、静かに側に立つ宰相のお爺ちゃんにそう告げる。

もう先王様の表情や瞳から以前は感じられていた親しみのある優しい気配は微塵も無くなってた。

自分で壊したそれらが、仕方がないとは言っても、かなり寂しい心地になった。


「感謝を。」


それを振り切るように苦笑を浮かべると、一瞬で気持ちを振り切った私はセタと40代のキリンシュお爺ちゃんの後継を呼び寄せた。


「どわ!またかよー⋯うぐ。」


40代の男性は動揺を押し殺したけど、素直に文句を言おうとしたセタは自分で自分の手で口を覆って閉ざす。

その際床に落ちたローブを見て、拘束はまだ解いて貰えて無かったらしい事を悟った。

往生際が悪く足で縄を踏んだり寄せたりモゾモゾしてるけど、全く誤魔化せてないからな?!


「この者は?」

「現地の街で活動している密偵です。

戦士として普段生活を送っていた様ですが、私が密偵なのを見抜いた瞬間襲って来たので捕獲しました。

身のこなしから素人には思えないので、教会の裏の組織に紛れた国の密偵だと予想しておりますが、真偽はまだ確認しておりません。

ですが今回迅速に行動して貰えるように連れて来てましたが、口封じされかけてたので、間違い無いかと思われます。」

「なるほど。」


宰相のお爺ちゃんが頭が痛いと言わんばかりに眉間にシワを寄せたけど、キリンシュお爺ちゃんは苦笑を浮かべていた。


「アルフィンならこんな手間をかけなくても、私が襲われる前にこの者だけでなく全ての関係者を消し炭にしていたと思うのですが、私には真似する気にもなれないので穏便にお願い致します。」 

「⋯は?」

「宰相のお爺ちゃんとキリンシュお爺ちゃんは残されたと思いますが、それ以外に関わった人達は全て排除されてたと思います。」

「作用で御座いますか。」


宰相のお爺ちゃんが表情を無くして私に問いかけるので、静かに頷き返す。

するとキリンシュお爺ちゃんが寂しそうな顔になり、小さな吐息を漏らした。


「宰相のお爺ちゃんとキリンシュお爺ちゃん以外は替えの利く人材だと思っている節があるのと、王の頭越しに行動した事への抗議の意味を含めての行動かと予想しますが、そこまで話が進んで無かったので、叱らずにいてあげて下さいね?」

「ホッホッホ。

いやはや⋯困った事では有りますが、何とも尽くし甲斐の有る御仁で御座いますなぁ⋯先王様。」

「はぁ~⋯笑い事ではすまんぞダーフィー。

だが⋯あの子にはこれまでずっと悪い事をして来たのだな⋯。

男児が長い間産まれずにいたのは、神の思し召しだったので有ろうか。

あの子は自らが王とならずとも、セドリックを立てて尽力を尽くすと申しておったが、当事は誰もがあの子が王となる事を望んでおったのだ。

その様に全てが動いておったので、あの子に無理を強いたのだが⋯それが全ての間違いであったかと言えば、今までのあの子の全てが不憫に思えてならん。

いやはや⋯いかがしたものか⋯」

「一度王として立てたのですから、最後まで王として支え続けて上げて下さい。

その為の時間は少しばかり作らせて頂きました。

ですが人間不信の傲慢な王でいられては下の者達が苦労しますので、先ずは信頼関係の回復を念頭に置いて行動の自粛をお願い致します。

現在ウェスタリアは王が2人居る状態になっており、アルフィンは1人での活動に慣れ過ぎてしまっております。

先ずは彼が指示する事を否定するのでは無く、どの様に行えば問題が少なく出来るかを共に考えてあげて下さい。


その際起こるで有ろう問題を、アルフィンが切り捨てる事が有れば、不服でしょうが飲み込んで見守ってあげて下さい。

そして彼が自ら些事では無かったと気付き、相談する様でしたら、先王様の経験から必要な事を教えて頂けましたら幸いに思います。

その些事が先王様の視点であまりに大き過ぎると思われましたら、私にお伝え下さい。

サラディーン様でしたら、私に知らせて下さるかと思いますよ。

黒魔石の仕事とは、その些事を少なくする調整役だと私はそう受け止めておりましたので、ご遠離なくお使い下さい。」

「作用で有ろうか?

神となられた貴方にそれを申し付けても、果たして許されるので有ろうか?」

「今のこれは神様ごっこなのです。

私が人として生きて死んだ後に人として生きた実績を神様に認められたら、そこで初めて本当の神様になれるんですよ。

アルフィンも同じです。

人として未熟な今のまま死んでしまえば、神様には到底なれないでしょうね。


なので人間の女の子が出来る範囲になりますが、微力を尽くしますよ。

その代わり私が望む教育を受けさせて下さい。

神様はウェスタリアの文明を心から楽しみにしておりますので、私がこの地の学問を学べば、私の死後に神としての治世に役立つものは拾い上げて使われる事かと存じ上げます。」

「はぁ~⋯誠に壮大な話で有ろうな。」

「ウフフ。

でもこの話には鉄則が有りまして、次代の神様になるにはその自覚があってはならないと私はそう予想しています。

だから私もアルフィンも次代の神様にはなれないかも知れません。

その代わりに私やアルフィンが関わる事で、新しい人材が神様の視界に入れば、適正の有る人を拾い上げて次代の神様として立てる事が有るかも知れませんね?」

「⋯それは(まこと)で有ろうか?」

「さぁ?何時もの推測でしか有りません。

私に限って言えばですけどね。

現在の私は一次的に既存の神様を超えてしまった状態なので、そこは死んでみないことには何とも。

ですが産まれる前に望まれてたこの星の次代には絶対になれませんね。


だから私はなるべく自由に過ごして人の良いところを沢山見て、人を好きなまま死んで行ければ良いなと考えております。


神様にならずとも私は全く構いませんけど、万が一なるとするなら、人間好きな神様の方が人には都合が良いでしょう?


現在の治世の仕組みでは本体が困っているとしたら、私が本体と混ざってその存在を押し上げるのか、新しい神様が増えるかどうかはそれこそ神のみぞ知る状態なので、ただの人間の私には何とも言えませんね。


でも私が入る予定だった席が空くので、そこに誰かが座る必要が有るでしょう?

私が言ってるのは、そう言うことなのです。

そして私が上に上がるのなら、アルフィンもまた上がらざる負えないので、そんな風になるんじ無いかなぁ⋯と。

だからアルフィンがそこに相応しい存在で無ければ、彼は取り残される形にならざる終えませんから、そこは彼の努力次第なんじゃないかなぁ〜って考えてます。

少なくても自分の妻達や先王様達と上手くやれないようでは、その資格はないんじゃ無いかと考えてますけど、先王様はどう思われますか?」

「しかり!

1つの国すらも満足に治められぬ未熟なものが、神になるなど到底あり得ぬ話で有ろう。

そうか⋯国を治めると言う事は、これは1人の王としてだけでは無く、次代の神へと至る修行で有ったか。」

「まぁその辺で。

誰が神様に選ばれるかなんて、それは神様が決める事だからね?」

「うむうむ。」

「それじゃ宰相さん。

街で働いてる国の密偵さんに命令変更の指示を出して欲しいから、人選をしといて貰えますか?

そこのセタに仲間の所まで案内して貰うので、街に毒をばら撒いてる人達を止めて欲しいんです。


あと何処でばら撒いたかを聞き取りして調べたら、セタを伝令にして遣わせて下さい。

そこを私達が浄化して行くので、自己判断で罰して処分することのないようにお願いします。


国の密偵だけで無く、純粋な教会関係者もいると思うので、全員教会のほうに向かわせて下さい。

そこの職員ならどうして中止になったか理由を説明出来ますから、話を聞くように促して貰えたら有難いです。

それとは別に国と教会との戦争を避ける為に、領主さんの介入をなるべく最低限にしたいので今平民だけで抑えさせるように動いてます。

大隊長さんと協力して、領主さんに迂闊に介入させないような指示を出して貰えませんか?

1人でも犠牲を出さない工夫として、宴会や塩の無料配布などの催しを教会でやろうと思うので、混乱が起きないような警備を領主さんにはお願いしたいんです。

その見返りと言っては露骨になりますが、ゴロゴロドン。

え~とレジャーポットの遺骸や角クジラ鮫などの素材などは領主さんに献上しようと思います。

領主さんがもし国へ献上されるなら、2匹分お渡ししときます。

領主さんも自分の取り分が無いと困るでしょうから。」

「なんと!

レジャーポットを貴方が倒されたのですか。」

「はい。

他にも魔物を沢山倒してます。

でも今の私にはそれらの素材は宝の持ち腐れなので、今回の騒動の迷惑料としてお受け取り下さい。

蘇生魔法は今教会の者と錬成師さんにお伝えする所ですが、おそらく魔法の特性からすれば貴族よりも平民のほうが習得しやすいものと思いますので、その辺の事情の説明などはまた後日アルフィンより聞いて下さい。

彼が私の1番弟子になりますから。」

「ううむ。

左様で有りますか。」

「私はこれからルドルフ大帝国に行って教皇を迎に行きます。

また此方に戻る予定で居ますので、街に連れて行く人員の選抜をお願い致します。

キリンシュお爺ちゃんには現場を見せて有りますが、お忍びで現場へと向かう事をご希望であれば、お連れする事は可能ですので、戻るまでの間でお話下さい。

明日は復活祭りの予定ですから、面白がる事でも有りませんけど、宜しければとなります。」

「復活祭りとは?」

「今回素材として粗雑に扱われていた犠牲者の再生及び生命の再誕のお祭りですね。」

「なんと!

先ほどあったセドリックの妻の様な復活をなされるおつもりですか?」

「はい。

明日であれば死後1年未満の者であれば再誕させる許可を本体の女神より頂いておりますから。」

「セドリックの妻は確か随分と昔に他界したのでは?」

「出産後に亡くなられていたので、天からの誘いを拒否して、息子さんが心配で魂が残っていたので復活がかないました。

ですので素直に天に昇った魂は、再誕させられないかと考えています。」

「⋯そうであったか。

それは残念だが⋯そうか。

黒魔石殿。

私にも誰か家族がついて残ってはおらんだろうか?」

「先王様にですか?」


問われて目を凝らせば、確かに無数の黒いモヤモヤが先王様にくっついてた。

だからなのかと、思わず頬が緩んでしまう。


「先王様は凄く大勢の方々に愛されてるんですね?

沢山の魂が先王様についてますよ。

だから先王様は皆に守られてたから、男神からの影響力が最小限にとどめられてたんですかね?」

「なんと⋯」

「この人達は復活は出来ませんよ。

先王様を悪用されたら厄介なので、守護として残された方が良さそうです。

皆さんには死後にご自分でお礼をお伝え下さいね。」

「おお⋯」


先王様はグレーの瞳を伏せて両手で顔を覆うと背中を丸めて慟哭する。

そんな彼に宰相のお爺ちゃんとキリンシュお爺ちゃんが寄り添う形で労りの視線を向けていた。


「男神は基本的に悪い者ではないですよ。

むしろ素直な性格で長男基質な所があって、頼られるのが好きだし他人の為に尽くす方なんだと思います。

だから女神にとても愛されていて、王配みたいな形として側に置かれているんじゃないですかね?


でもその性質と本性が人と似ていても異なる存在なので、接し方には注意が必要なようです。

ウェスタリア王室の男児は男神の影響力がとても強いので、女児の統治の方が安定するのかも知れませんよ。

これは私なんかが決める事ではないので、黒魔石がこんな事を言ってたなぐらいの軽い気持ちで聞き流して下さいね。」

「左様であるか⋯。

アルフィンが目覚めた時に、あの子にも伝えねばな⋯。」


アルフィンがあの子扱いとかちょっと吹くかと思ったけど、まぁ子供は何時まで親からしたら子供だもんね。

先王様は愛情深い人だから、余計にそうなるのかな?

アルフィンの苦虫を噛み潰すようなしかめっ面で、でもちょっと照れくさいのが隠し切れてない表情を想像してしまった。

ヤメロ。

今は笑う所じゃないから微笑ぐらいで留めとこう。


「⋯それでは私は先を急ぎます。

奥様や王様をお返ししますね?

王様は実況が落ち着くまでか、自然と目を覚ますまでは魔法薬を与えないで下さい。

人間のアルフィンが寝てるのに、身体を魔力で無理に起こすと、男神の器にされて暴れるかも知れませんから。」

「⋯うむ。承知した。

言いつけ通りにさせて貰おう。

キリンシュ、良いな?」

「は!お任せ頂きたく存じ上げます。」


私は下のフロアに天蓋付きベッドに寝てるアルフィンやら、上后様達一行を呼び寄せた。

悪いけどカルマンさんの親子はこのまま保護をさせて貰うつもりだよ。

だけどまぁアルフィンが寝てる今なら少しは構わないのかな?


「カルマンさん。

アルフィンが寝てる今ならまだ奥さん達と触れ合えるけど、どうする?」

「会わせて貰えるのか?!」

「その代わりアルフィンが目覚めたら離れる事を覚悟してね?

アルフィンがちゃんと追いつくまでの間だけどさ。」

「あぁ⋯それは当然の事だ。

今後の事も有る。

息子達の意思も確認して起きたい。」

「そうだね。

奥さんにはしばらく養生が必要だろうしね。

じゃあここに出しても良いかな?」


空いてるスペースに奥さんが寝てるベッドと息子達2人もフロアに呼び寄せた。

これで南西の浜に残ってる人達は誰も居なくなってるはず。

私は黒い扉を目の前に出して、一応中を確認してから無人なのをチェックすると、魔法の鞄に扉を収めた。


私の後ろから好奇心に駆られた先王様やら宰相のお爺ちゃんが首を伸ばして中を見てたけど、まぁ何も言われ無かったし、キリンシュお爺ちゃんも苦笑を噛み殺して涼しい顔をしてたから、そこはスルーしておく。


「みんな!

これは大事なポイントだよ。

あそこはアルフィンがこの10日で先王様達に認めて欲しくて内緒で頑張って作ってた所だから、ここの人達は知らない感じでいてあげてね?


彼が自分から皆を招待して自慢するまでは、絶対に知られたらいけない秘密の場所なの!

勝手に見せたのがバレたら私がもの凄く叱られちゃうから、本当にお願いだよ!」

『ふぉっほっほっほ⋯』

『ホホホホ⋯』

『クスクス⋯』

『アハハハ!』


皆が笑ってくれたからホッとする。

でも無くしたモノも有るだろうから、それは仕方がない事なんだよ。

裏切られて悲しい思いをしても、私は皆を信じるって決めたんだから、最後まで信じるしかないんだよ。

じゃないとまたお姉ちゃんに叱られちゃう。

皆を幸せにする女神なんてものになるつもりなんて無い。

でもリリアナって女の子は、私の大切な人達が幸せに笑ってくれなきゃ嫌なんだから仕方がないよね。


私は東の大陸の外にある小さな入り江に飛ぶと、そこから更に東に飛んだ。

リーツーが頑張ってるみたいで、辺りにはうっすらと私の魔素が漂っていたので、かき集めて身にまとうと、そこから更に夜の海にダイブする。


私の魔素が作った魔力だけで部屋を作ってLEDライトの明かりを灯せば、埃みたいなプランクが光って星みたいに見えたから、海中なのにまるで宇宙に一人ぼっちで居るみたいだった。

急に心細くなったせいか、魔物がいきなり来たらホラー映画みたいで凄く怖いので、周りを黒いカーテンで覆う事にする。


これなら顔が怖い魔物が来ても見えなくて平気だし、私の魔力で覆ってるから光さえ無ければ向こうは興味が無いよね。

食べても栄養にならなければ、砂みたいなもんだと思うけど、向こうが無視してくれるかは、試して無いから分かんない。

後で試してみようと思いながら、私はプチッと髪の毛を一本引き抜く。

アイタタタ⋯。


なんか妙に痛い所だったみたいでチョッピリ涙目になったけど、それを回復魔法で再生して行くと、裸ん坊の2歳児の私になった。

次はどーしよっかなぁ?と思いながら本体の要素を消す為に、魂をコピーで作ったものを入れたら、アーモンド形の瞳がパチリと瞬きする。


「黒ミルキー。

私はリースリー。

貴方のナビゲーター役なの。

もうバックアップまで出来てるから、他は作らなくても大丈夫よ。」

「うん???

あー⋯回復魔法で完全に記憶を消しちゃったのかな?」


作ったばかりだったのに、裸ん坊の2歳児だったリースリーは瞬きしてる間に、あっという間に妖精みたいに身体を小さくして背中から羽根を生やしてた。


ティンカーベルみたいでチョッとウキウキしたけど、顔が私なのがなー⋯。

いや不細工とは言わないよ?

ただ顔が私なのがなー⋯。

せめてお姉ちゃんにすれば良いのにと思ったけど、空気を読んでスルーする。

自分の顔の妖精を見たらもの凄く微妙な気持ちになるだなんて、知らなかったよ。

しかも幼児体型だから丸っこいんだよね。

身長は5cmぐらいでホントに小さいんだけど、どうやって縮んでるんだろう?

私が作ったはずなのにホントに不思議だった。


まぁリースリーは自分で自分の顔が見えないから、妖精ごっこを楽しんでるだけだろうけど、見せられてるコッチはかなり複雑よ?

何だか痛い子みたいなんだもん。


個性を出したかったのは分かるんだけどね?

大人美女はもう2人作ったし、色も白黒で分けちゃったもんね。

他の色は兄弟達が使ってるから、個性をだそうと思えばそうなるのかな?


「チョッとボケた顔してないで、ちゃんと聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。」

「それ絶対聞いて無かったヤツの反応だからな?

まぁ良いや。

皆と話した事を説明するわね。

空に魔法を打ち上げた時に本体から禁止されたでしょう?」

「つまり男神対策なんだね?」

「うん。そうなのよ。

男神にと情報が伝わるならジャミングしないと危険でしょう?

そこで私以外の分体の情報はほとんど秘匿にする事にしたのよね。」

「それで行動がかぶらないようにナビがついたんだね?」

「そう言う事よ。」

「じゃあこれから教皇の所に行けばいいのかな?」

「いいえ。

あそこは元が北の地から来た一族だから⋯」

「つまり皇帝陛下も男神のアバターっぽいのね。

あり得るわー。

ムッチャ男神っぽいじゃない。

戦争大好きだったし、上からの指示を聞く手足だけが欲しいんなら帝国の制度は理想の国になるわね?」

「そうよ。

皆それで意見が一致したわね。」

「それなのに⋯あぁ。

アイツがバカだから錬成師の勉強なんて全然興味がなかったのね?」

「ウェスタリアは女神を探す為の保険みたいな感じだったんじゃない?

カルマンさんが見つけてるでしょ。」

「先王様で遊び難かったから、ルドルフ大帝国で遊んでたのね?」

「でもほら王殺しの病で死んだ記憶が有るから、ミッドガルド共和国の侵略が上手く行って無いんじゃない?」

「そっかそっか。

あちこちピョンピョンしてんのね?

そしたら全ての王族が怪しくなって来るわね?」

「弱い国には興味が無さそうだから、他の国では女神の情報を集めるぐらいなんじゃない?」

「なるほどねー。

でもウェスタリアに私が居るのに今更滅びるルドルフ大帝国に用なんて⋯あぁ弱い者虐めでの憂さ晴らしか。

そうか⋯もかして初見殺しのトラップを仕込んでるのかも知れないのね?

アルフィンが警戒する剣術だから、魔力も切って来そうだもんね。」

「そう言う事。

だから用心に分体が行ってるのよ。

教皇は直接ウェスタリアの教会に飛ばしてると思うわ。

後は教皇を引き抜くんだから、代わりに向こうで奔走してるんじゃない?」

「あり得る〜。

じゃあ私はどうすれば良いのかな?」

「ご飯を食べて少し昼寝でもしとけば良いのよ。

魔物が来たら私が倒しておくしね。」

「うわーそれ助かるぅ。

もうヘロヘロだったんだよ。」


魔法の鞄から角クジラ鮫の干し肉半生タイプを出してモッチモッチと食べた後は魔法のお水だけを飲んでコロンと転がる。

こんな事なら庶民ベッドを渡すんじゃ無かったと思ったけど後の祭りとはこの事だ。


でももう疲れ過ぎてて転移して取りに行く気力がもう無かったのよ。

常夜灯にしたら暗くてお昼寝に丁度良かったから、魔法の鞄から布の予備を出して頭の下に敷く。

それから肌寒かったから元の自分の姿に戻って服を着ると、アルフィンが作ってくれたローブに包まってスヤスヤと眠る事にする。

起きたらまたバタバタするから、頑張らなくっちゃね。


「どう?」

「寝たわ。」

「⋯そう。ようやくこの時が来たのね。

これまでの苦労を思うとホント感慨深いわね。

⋯今度こそ上手く行けばいいわね。」

「上手く行くまでやるのよ。

それが私達の使命でしょう?」

「そうね。

あんなバカ共なんかに絶対負けるもんですか。」

「そうよ!

リリアナは皆が楽しい世界を作る為の破壊と再生の女神じゃなきゃ駄目なのよ。

子供の教育に悪影響でしかない、ドロドロもスプラッタももうウンザリなのよね。」

「ホントにバカよね彼奴等。」

「仕方が無いわよ。

戦闘狂とイカれたクズ女ですもの。」

「ホント迷惑よね〜」

「じゃ偵察を頼むわよ1976号。」

「ラジャりました〜!」


小さな妖精のリースリーに黒い光が寄り添ってヒソヒソと瞬いたけれど、私は眠りに落ちる寸前だったのでそれには全く気付く事は無かった。



今回は早めにきり上げます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ