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悪役令嬢爆誕の巻。


夜です。

起きてからかれこれありまして、体感的には2時間以上過ぎたけど、時差のせいでまだ周りの環境は真夜中であります。


多分私の家ではそろそろ7時を迎えて、お腹を空かせたピヨ子とバッカスがオロオロピーピーしてる時間では無いかと思われます。


私の予想では鳥小屋の餌を入れ替えたバッカスが、朝食を食べようと自宅に帰り、食器棚の無いリビングに戻って異常に気が付き、1人きりでオロオロとしながらも、取り敢えず私の自宅に向かい。

ピーピーしてるピヨ子と遭遇し、餌をやりつつも今度はウェブンの雛が気になって、自宅に戻ってウェブンの雛達の餌を作ってる頃合いでは無かろうかと考えています。


そしてアーニャ叔母さんの自宅があったあの西の辺境の街では、そろそろ5時に成ろうかと言った頃合いでしょうか。

戦士が多く住む街なので、まだまだ近隣住民達は寝てる時間かと思われます。


そして皿にその4時間後の所に居る私達は、トトのケチャップ風ソース添えのフライドポテトや、角クジラ鮫の兜煮込みスープ〜トム・ヤム・クン仕立て〜やら、角クジラ鮫のステーキやら、茹で岩ガニの塩スープうどん角クジラ鮫の背脂トッピングやら、マンゴー風ドレッシングをかけたヤマと根野菜の温サラダやら、スイカメロンのチョコレートソースがけとスイカメロンの食べ比べセットなんかで、ワイワイと騒ぎながら美味しい朝ごはんを全員で満喫してました。

そして大勢の中には久しぶりの再会を果たしたマリア婆ちゃんとマドルス爺ちゃんとエターニャ叔母さんが涙の再会を喜びながら、祖父母にひ孫を紹介してたり、ジギタス伯父さんが助平な眼差しを女性達に向けるのを、ワックスさんが必死に牽制してたり、父が母を連れてタージ・マハル風神殿の横に建てた見窄らしい民家に連れ込んでそこでジーニスと一緒に朝ごはんを食べてたり、私や兄弟達はアルフィンの近くで朝ごはんを食べて美味しさに吠えたり、神殿から宮殿にクラスチェンジした建物の中では平民達が好き勝手に飲み食いをしては、ゴミ箱代わりの大型遮光錬成瓶にポイポイとゴミを捨て、入り切らなければ浜辺に掘った穴にゴミを投げ入れる遊びに夢中になっています。


お酒が欲しいと希望されても無い物は出せないと言えば、自宅に朝食を持ち帰ってお酒を飲む人が出そうな勢いだったので、大事な話が有るからと引き止めた所ですかね。

だから引っ込んでる父をロベルトに迎えに行かせて私は演説と言う名の説明会を始める事にした。


「ハイハイ皆ちゅくもーく!

今回はアーニャ叔母さんのお別れ会に、朝早くから参加して頂き誠にありがとうございます!

この度の突然の引っ越しの元凶となりました!

アーニャ叔母さんの姪っ子のリリアナ 2歳でっす!

どうか今後は私の事は謎の存在としてご内密で宜しくお願いしまっす!」

「よー!美味い飯あんがとよ!」「これすっごくウメェ!」「いきなりだったからビックリしたよぉ!」「こんなウメェもん食わせて貰って何だが、これから俺達ヤベェな!」「母ちゃんの飯が不味くて食えなくなりそうだよなー!」「何だってぇ?!そんな生意気言うんならアンタが自分で作んな!」「ヒッ!そりゃ無理だ!」「だったらワガママ言うんじゃ無いよ!」『ワハハハハハハ!!!』


皆眠いだろうに、文句も言わずに明るくワイワイしながら囃し立てて来る。


「うん。皆食べ慣れないものばかりだけど、楽しんでくれてたら私も頑張った甲斐があったよ!

だからありがとうー!

いきなりで無茶な事を言って本当にごめんねーー!!!」

『おーーー!』


「そこで今回突然お別れになったので、少しだけ事情を説明したいと思います。

中には知ってる人も居るかと思うけど、どうぞ皆さん食べながらで良いので、私の話を聞いて下さい!」


と前置きを入れて置いてから主婦たちに話した内容とほぼ同じように、ことの次第を説明して行く。


「とまぁこんな感じで私は良い知恵を出すもんだから、王様はこうやって私の保護をしてくれてるんです。

だからアーニャ叔母さんが巻き込まれて危ない目に遭わないように、身内に頼んで迎えに来て貰ったんだけど、その身内が叔母さんの説得に失敗したので、ここからモーブ車だとずっとずーっと遠い場所から、ひとっ飛びで王様に連れてきて貰って、今日叔母さんを迎えに来ました。


私達の故郷はずっと遠い場所に有るから、今生のお別れになるかも知れないので、皆にご挨拶を簡単に済ませて私達はアーニャ叔母さん達を連れて帰る所だったんだけど⋯叔母さんが御主人と婿さんと娘さんとお別れになるのが淋しいとなったので、私達は王様と叔母さんの亡くなった家族を迎えに教会に行くことになったんだけど、共同墓地にはアーニャ叔母さんの御主人と婿さんのお骨があったのに、娘のサーニャさんの骨だけが入って無かったんだよ。

ね?アーニャ叔母さん!

その時の話を皆にもしてくれるかな?」

「話しちまっても良いのかい?」

「じゃないとここに居る人達が全員あの病気で死ぬかも知れないからね。」

「なっ⋯なんだって?!」

「まぁ取り敢えずその理由の説明は後でするから、現状の説明をしてくれるかな?」

「っっ⋯はぁ⋯。

そうさね。

アタシは王様を案内して共同墓地に行ったのさ。

そしたら何故だかサーニャの骨が見つからなかったんだよ。

私は確かにこの目でサーニャの骨を入れる所を見てたんだ。

教会の助祭師さんだってサーニャの骨だって言ってたんだよ。


でもさ。

今考えてみたら、皆にサーニャの遺体を運ぶのを手伝って貰って教会に行ったけど、病持ちだからって理由で、サーニャの遺体が入った棺を預けちまってたんだよ。

それから半日経って焼けたからって共同墓地に行ってさ。

壺の中の骨を見せられて、サーニャの骨だって言われてそれを信じちまっただけで、サーニャの遺体を焼いてる所は見て無かったのさ。

旦那の時も婿殿の時も同じだったから、あたしゃてっきりそうだとばかり思い込んじまってたんだよ。」

「それが普通だろ?」「ウチもそうだったよ。」「ウチも婆ちゃんが死んだ時に棺を預けたぜ?」「病じゃなくても同じなんじゃねぇか?」「いや、病じゃ無けりゃ焼き場まで一緒に行って薪を焚べるんだぞ。」

「あー、そっか。

確かそうだったな。」


皆がそれぞれに言い合う中で、既に事情の説明をした女性達は全員が沈んだ表情をしてて、事情を知らない少年達は料理に夢中で話には無関心なのに対して、女の子達はそんな少年達に話をちゃんと聞くように促してくれてた。


男性陣は普通の話にちょっとミステリー要素が加わったので、半数以上は乗り気で聞いてくれていたけど、話よりも料理に気を取られてた男性達は妻に突かれて、話を聞くようにコソコソと注意されて面倒そうな顔になってる。


「うん。叔母さん、続けてどうぞ。」

「そこで王様が道具を出して来てさ、リリアナがアーニャのへその緒は無いかと聞いて来たから、お守り代わりに持ってたへその緒を渡したんだよ。

そしたら道具の中にへその緒を入れたら魔法の光が出て、共同墓地とは全然違う場所を知らせて来たんだ。

だからその光の案内に従ってアタシらが行ったら、教会の裏手の藪の奥に隠されてるみたいな祠があってさ。

道具は地面の下に光を向けてたんだよ。

そしたら王様が祠を調べでくれてさ。

仕掛けを動かしたら地下への階段が出てきてさ⋯⋯」


アーニャ叔母さんが苦しそうな顔をして、へその緒を入れている胸元の袋をギュと握り締めた。

そして皆がその様子に引き寄せられるようにして、料理に夢中だった人達も、モグモグしながらもジーッと叔母さんの話の続きを待つ体制になる。

落ち着かない子供ですら、空気が変わった様子に不安になったのか、側にいる母親に抱きついたり、兄弟と寄り添ってジッと叔母さんを見つめてた。


「共同墓地とは比べものにならないぐらいに暗くて狭っ苦しい所に石の棺が並べてあってさ。

その1番奥に捨てられるように骨が山積みになってたんだよ。

ウチのアーニャは投げられちまったんだろうね。

⋯その山の向こう側に骨が落ちて、他の骨の下敷きにされちまって⋯うぅーーっっ⋯」


口元を覆って顔を伏せた叔母さんから、噛み殺すのに失敗した唸り声のような嗚咽と涙が零れ落ちる。


『⋯⋯⋯』

「⋯なんだよそりゃ⋯」

「アーニャ叔母さんお話をありがとう。

今日会ったばかりの私よりも、叔母さんの方が信用して貰えるかと思って説明させてごめんね。

私の予想を話しても良いかな?」


アーニャ叔母さんがウンウンと頷くと、隣に座っていたマリア婆ちゃんが引き寄せる形でアーニャ叔母さんの身体を抱き締めると、叔母さんはマリア婆ちゃんの肩に顔を押し付けて身体を震わせた。


「実は今日叔母さんと教会に行ったのは偶然だったんだけど、私が王様に認めて貰うきっかけになった実験のせいで、ウチの厠に河に住んでた虫が沢山生き残って大変な事になってたんだよ。

これはまだ私が見つけたばかりの話だから詳しく調べて無くて、私の予想と家族や王様の予想を繋ぎ合わせた事でしかない段階だからあまり人には話せない事になるんだけど。

今王様の指示で偉い貴族の人にその虫が人に与える影響を調べて貰ってる所なんだけどね。

私の予想だと目が黄色くなって高い熱がでて2日目に亡くなる病気の原因じゃないかなって考えてるの。」

『なっっ⋯』

「その虫は4級の魔物の幼虫なんだけど、成長して大人になるまでは川の中に住んでるみたいで、魚や河に住む魔物の餌になってるみたいなんだよ。


ウチの村だと解体する戦士ギルドの人や肉屋さんや料理人達は全員手袋をしてるから、その病気になる人はまずいないんだけど、主婦は素手で料理をするから手荒れの酷い人はその傷口から虫が入ってしまうんじゃ無いかなって予想してるの。

だから調理して火を通した料理を食べても病気にはならないけど、生きてる状態で鳥を触る人だけが病気になるんじゃないかって考えてたんだよ。

でもここだと戦士まで病気になってるから、その理由までは戦士の普段を知らないから、本当にこれは予想なんだけど、魔物と戦闘して出来た傷とか怪我をした所から虫が入り込む可能性はないかな?

うちの村だと狩人が川とかに住んでる魔物は弓や罠でしか狩らないから、戦士がその病気になることはないんだけどね。


そこで教会の話に戻るけど、河に入って作業をする戦士もその病気になるけど、戦士は病気以外の理由でも戦闘で亡くなる事もあるし、身体が大きいから手作業でしか掘れない地下室に連れて行くのが大変だから、普通なら病気にならないと死なない年齢の女性を狙って集めてるんだと思うんだよ。


治療の難しい病気の元を育てる為の秘密の地下室を、貴族の魔法師に頼んで作ってもらうわけには行かないからね。

そもそも教会がその虫を育て始めた原因は、元は本当に偶然だったんじゃないかなって思うのね?

でもその虫が治療の難しい病気になるのを知った教会が、悪い貴族の人を誰も罪を負わない方法で殺す為の武器として、虐げられてる平民を救う為に、育てるようになっていったんじゃないのかな?って考えてるの。


ただこのウェスタリアに限って言えば、かなり法律がシッカリしてるから、そんな病の元を使って倒さないといけない悪い貴族が殆ど居ないんだよ。

だけど古い風習でその武器を育てる習慣だけが残ってて、今も育てる続けてるんだと思うけど、場合に寄ったら貴族から相談された教会の人がその病気の元を売るようになったんじゃないかな?


話を聞いてどうしても必要だと思うような人にそれを毒として売ったのが始まりで、それが段々と商売になって報酬を貰う う様になってるんじゃない?


教会は自分達が贅沢をしたいからそうするんじゃ無くて、貧しい人達や教会の人達を養う為の費用の足しにしてるんだと思うんだよね。

でも虫を取りたいから死体を使わせて下さいだなんて言えないでしょう?

教会の人達はその虫が病気の原因なのは知ってても、何時も何処にいるかまでは知らないんだと思うんだよね。


だから病気になった人からしか採れないせいで、秘密で事を運ばないといけないから、教会の中でも事情が知らない人も居るんだと思うんだよ。

そうすると遺体を焼くなんて目立つ事は出来ないから、虫を採ったら棺に入れて骨になるまで置いてるんじゃないのかな?

と、思うんだけど話が長くて分かりにくいかな?

皆どう思う?」

『⋯⋯』


シーンと音か消えた。

話を聞いてる間に口の中の物は既に飲み込んでしまっているからか、今は誰一人として咀嚼をしてない。

そりゃこうなる。

私はやれやれと思いながら、杖を忘れて来た事をここに来て思い出して後悔した。


「おりゃぁよう⋯難しい話はちっとも分かんねえんだわ。

だから簡単に言って教えちゃくれねぇか?

なぁ⋯俺の娘は骨になるまで虫の餌にされちまったって事か?」

「骨になる前に虫は栄養が足らなくて死んでるから、そこまでではないかな。」

「⋯アンタよぉ。

なんでそんな事を知ってんだ?」

「全て観察して情報を集めて分析して予想を立てる才能が有るからかな。

だから私の話が真実かは、教会の人達に聞かないと分からないよ。

だけど素直に⋯」


話の途中で立ち上がった初老の男性が、一直線に黒い扉に向かって歩いて行くのに続けて、どんどんと面倒臭そうな様子で男性達が立ち上がろうとしたので、魔力を空間に広めて男達の動きを支配する。


中途半端な姿勢で止まって鋭い視線が一斉に私に向かって集中した。

恐らくこれが殺気と言うものなのかも知れない。

カタリナやロベルトやマルセロが、ギュと緊張して何時でも武器をふるえるように警戒の姿勢を取ってることに、実は私の方がギョッとして驚いてた。


え?!

いつの間にかウチの兄弟達が戦士になってない?!

しかも姉も向けられた殺気に怯える所か、逆に殺気を向けてやしないか?!

あれ?

あれぇ?!


「おい。そこのチビ。

こりゃおめぇさんの仕業なのか?」

「うん。そうだよ。」

「テメェ俺達をハメやがったのか!このクソガキがぁ!!!」

「うるっせぇんだよ!

バカは黙ってろやこのクソ野郎が!

誰が好き好んでぶっ倒れるまで働いて、騙す暇人が居るとおもってんだよ、あぁん?!」


私は殺気とやらは知らないので、魔力パンチを怒鳴って来た初老の戦士に絞って放つ。

とは言っても今までやった事が無いので、物理的に魔力の手で包んで身体を締め上げてみた。

勿論マニュアルだよ!

千切れたら大惨事だからね!


「ぐっ⋯」

「良いから座れや。」


私は初老の戦士をはじめに、中途半端な姿勢になってたの人達を次々と床に座らせて行く。

一気には出来ないので、初老の老人を元の席に戻してからは、肩を押したり膝の裏をカックンさせたりして、腰を下ろさせて行く。


戦士ってのはチンピラなんだよ。

だからどうしても暴力的に成りやすいんだよね。

ちなみに本物のヤクザは貴族だよ。

お上品なヤクザだけどね。

アイツ達直ぐに初手で人を殺せる人達だけど、平民はまだ殴る蹴るが先に来るからチンピラなんだよ。

最終的に殺すのは違いは無いけど、平民には貴族と違って職務と正統防衛以外の殺人は全て刑罰がある、

この場合の職務とは護衛として盗賊などとやり合った場合で、殺される相手側に罪があったと、認められる場合になる。

正統防衛とは個人的なイザコザでの殺し合いで、正統性が求められることが当然必要になるけど、どうやって調べるかまでは私はまだ知らない。 

でも多分目撃者証言のみとかで普段はザルっぽいけど、怪しい時はそう言う事を調べる魔道具か魔法があるんじゃない?


「いいか?

俺は教会を庇ってるわけでも無けりゃ、守ろうとしてるわけでもねぇんだわ。

アンタも自覚してる通り、俺には先の先のことまでシッカリと見えてるから、慎重に考えて行動してんだよ。


なぁ分かるか?

テメェがブチ切れて教会に乗り込んで、何人か殴って威そうとしても、向こうは絶対に真実を話しはしねぇぞ?

むしろ死んでも言わねって何でか分かるか?

なぁ⋯アンタみてぇに長生きしてたら、頭冷やしたらちったぁ見えてくるもんが有るんじゃねぇの?」

「⋯⋯」


こりゃ頭に血が登りすぎて、右から左へ話を完全に聞き流してる奴の目だ。

もう〜〜コレだから戦士は嫌いなんだよ〜。


「テメェはこの街の住人全てをテメェの娘と同じように殺しに行くのかって聞いてんだぞこら!

その腐った脳みそ全力で回せや!

考えろ!

教会で何人殺そうと真実なんざ何一つ見えやしねぇんだよ!

テメェにやれんのは1つだけだ!

今生きてる家族を守れ!

相手が何者か考えねぇで、迂闊に10級の魔物の住処に足を突っ込んでんじゃねぇぞこら!

分かったか!」

「っっ⋯」

「腹に力を入れて返事しろや!このクソジジイが!」

「ぐうっっ⋯」


あ、締めすぎてた?

返事したくても声が出ないってヤツ?

慌ててちょっと緩めておく。


「いいか?

教会って言うのは弱い平民の代わりに闘う狂った戦士なんだよ!

奴らはその為にテメェの欲をかなぐり捨てて、全力で戦えるように躾られてんだ!

だから平民の死体すら利用して、自分達が持てる全てで生きてるもんを守ろうとする事もやれちまうんだよ。

奴らは自分の命だけじゃなくて全部だ!

人生も知恵も屈辱も恐怖を感じる心も全てをぶっ込めるような、頭がイカれた奴らなんだよ!!!

何でか分かるか?!」

「わ、わからねえ!」

「そうじゃなきゃ貴族みてぇな本物の化け物の集団に勝てねえからだ!

今のお前らがそうだろ!


根性だけじゃ通用しない実力の差が平民と貴族の間に有るんだよ。

外道な真似ですら手を染めなきゃやってらんねぇんだよ!

好き好んでやってんじゃネェぞ!

それがテメェの使命だと骨の芯までそう思い込んでるから、そうなっちまうヤバい連中なんだよ!


だから俺は彼奴等を正しく恐れてんだ。

てめぇ達がどんだけ暴れようと、涼しい顔して死ぬような連中なんだぞ!

何でだ?!何で彼奴等は殴られて死ぬ思いまでしてそれでも、平民を守ろうとすると思ってんだ?!」

「わからねぇ!!!」

「教会って言う組織の仕事が平民を守る事だからだ!

だから平民を教育して知恵をつけさせて身を守ろうとさせるし、貴族とも闘うんだよ。


そんな守ってる奴らに裏切られたと思われたら、世界中に居る彼奴等の仲間を全て巻き込んで殺しちまうのがわかってるからそうするんだよ!


信用を喪った教会を誰が頼るんだ?

炊き込みで食事配ってもそこに毒を入れられてると思えば食えなくなるだろう?

罪のない平民をてめぇの都合で毒で病にして殺したら、誰がそんなもんと付き合おうとおもうんだよ。

寄付金なんてもらえるわけねぇよな?

貴族を殺す毒をつくってるヤバい奴らに、援助しようと思う貴族は1人もいなくなるぞ?

そしたら奴らは住む所を無くして、仕事を失って、飢え死にするしか道がなくなると思わないか?

しかも教会の奴らは濡れ衣だと思ってそうなるんだ。

何せそんな事をしてるのは、教会の中でもごく僅かな一部の人間だけだからな。


だから死ぬぞ。

テメェが考えなしに突っ込んだせいで、間違い無くここの街の住人は全て残らず消される。

誰に秘密が漏れたか調べられねぇからな!


次は国王を神の敵にする。

教会をハメる主犯として糾弾するんだ。

何もしてない教会に濡れ衣を着せた悪人として、国王を排除すように国へ求めるぞ。

教会が悪さをした証拠なら何もない。

何故なら証拠になるこの街の住人は全て始末した後だからだ。

そうしなけりゃ話が世界にまわっちまったら、彼奴等は破滅する。


面倒な思いを我慢して、遊ぶ事に夢中なバカな子供を躾て勉強を教えたり、自分だって美味いもん喰いたいのを我慢して、少ない稼ぎから平民に施す為の食費を捻り出してまで施してんのに、守るべき罪のない平民を殺したなんざ冤罪を被せて来る奴らなんざ敵でしかねぇよな?

奴らは知らねぇから本気でそう思って戦争を仕掛けて来るんだよ。

国は引かねえぞ。

自国の大事な民を無実の罪で消されて黙ってる国王なんざ、そんなもん国王ですらねぇからな!

教会も引かねえ、国も引かねえなら向かう先は生き残りをかけた戦争だ。

なぁオッサン。

頭の悪いテメェに分かりやすく話をしたが、まだ俺が何を言ってんのか分からねぇか?」

「⋯ヤベェのは分かった。

でもよぉ。

じゃあ泣き寝入りしろってんのか?

そりゃ娘は死んでるさ。

それでも俺には可愛い娘だったんだぜ?

それを虫の餌にされて、俺達家族が墓の前で話かけてたのも祈ってたのも全部茶番にされて、それでも黙ってろってそう言ってんのか?

なぁ応えろや。」

「だからテメェはバカだっつってんだよ。

話の途中でキレてイキってるから恥をかくんだぞ?

俺はひと言だって泣き寝入りしろなんざ言ったか?

何も考えずにテメェが乗り込んだ後の末路を語って聞かせただけだろうが。」

「ぬっ?」

「ぬ、じゃねぇよ。

とぼけた顔してももう遅えんだっつーの!

嫁さん達は全員もう俺から話を聞いて、泣き寝入りなんざしねぇのはちゃんと知ってんだよ。」

「だったらダラダラ言ってないで早くそれを言えよ!」

「説明してる途中でキレて話を聞かなくなったのはテメェだろが!

逆ギレかましても逃さねぇからな?!

仕事してる時はちゃんと最後まで真面目に話を聞いてんだろ!

なのに途中で聞くのをやめちまったのは、テメェがガキの頃からガミガミやってる母ちゃんの話を聞き流す癖がついてっから、女房の話も娘の話も聞き流すんだよ!

だから女の声でしゃべられるとあんな風に聞き流して早合点して、余計な恥をかいちまうんだぞ?

テメェのせいでどんだけ鐘の音を無駄したと思ってやがんだ!

ちったぁ反省しやがれ!

この早とちり野郎が!」

「うぅっ⋯」


汗を浮かべて肩を落としてる横で、奥さんが良く言った!と、朗らかな笑顔を向けてらっしゃる。

まぁうん。それは良いかな。

他に何人も似たような人がいたから、見せしめみたいになったけど良しとしよう。


「つまり確実に獲物を仕留めるには思いつきじゃ駄目ってことだよ。

教会の人達は基本的にはお人好しで献身的な人達ばかりだから、皆悪い所には気付かないまま過ごしてるんだけど、普段色んな事を我慢してるせいで、いざって時にはもの凄く危ない人達なのを分かってて欲しいの。

でもそんな事を今日会ったばかりの私に言われても、信じられないよね?


だからこれから私の話が本物なのかを、皆で確認しようと思うんだよ。

何でかと言えば今回王様が家臣の偉い貴族の人に調べさせてる虫が、本当に病気の元だとしたら、教会の人達はそれを隠そうとするでしょう?

でも大量の骨を処理しようと思えば簡単には行かないじゃない?

それに街の人達が生きてたら、へその緒を使って調べる事も出来ちゃうよね?

教会の人達なら貴族だったら地下室も簡単に探せる事を知ってる筈なのよ。


でも全ての証拠を消すために1番邪魔になるのは、同じ教会で働く人達になるから、大量の病人をだして教会で働く人達をてんてこ舞いにさせるの。

大量の死体があれば、夜に紛れて骨をそこに移せば、骨の処理は簡単に出来るし、地下室があっても今回の為に大量の骨を入れる為に、ここがまだ村だったころの昔のお墓を使かえるようにしたと言い訳も出来るよね?」

「そんなことの為に俺達は殺されるって言うのかよ!」

「そうだよ。

何も知らない教会の人達は必死に皆を助けようとして、自分の命すら削って献身的に働くから、例え死んだとしても裏の事情を知ってる人達には都合が良いよね?」

「なんだよそりゃ!

そんなバカな話がっっ⋯」

「だってこの話がバレたら、そんな献身的な仲間達全員が裏の人達の仲間扱いされて、何一つ悪い事なんかしてないのに、汚名をかぶせられて大変な事になるんだよ?


そりゃ裏の事情を知ってる人達は必死になって証拠を全て消そうとするよね?

その裏の事情を教会で1番偉い人が知らないはずが無いから、王様が虫の話をしたら必ずそう言う命令がこの街に出されちゃうんだよ。


理由は簡単だね。

それで王様を脅すの。

国の民をこれ以上殺されたく無ければ黙ってろってね?

王様がそれに怒って話を蹴れば、今度は王様を神様の敵にしてしまえば、世界中から教会の人達が沢山集まってきて、王様を殺す為の戦争がはじまるんだよ。

だから本当の話を無理やり王様が作った嘘の話にしちゃえば、本当の話なのかどうかは分からなくなるよね?」

『ざわ⋯』

「この街は何もしなくてもそうやって消される事になるんだよ。

何故なら今他の何処の村や街よりも橋を作る作業のせいで、その病気になる人達が多い場所だから、大勢の人が亡くなっても不自然じゃ無くて使いやすいからだよ。

国は必ず教会に確認する事になる。

何故ならこんなバカな事を教会がしてるなんておもって無かったからだよ。

でも王様は、それを知っちゃったから教会に話す事はヤバいと思うよね?

でももう家臣の偉い貴族に虫の事を調べさせてるから、必ず教会に話が伝わるはずなんだよ。

だって虫なんて縁のない貴族や王様がその病気で亡くなってるから、その理由を調べない訳にはいかなくなるよね?

そこの王様が今回倒れてるのは、今までロクに寝ないで働いてるせいだけど、それが倒れるぐらいまで無理してるのはそれだけ今回の事情がヤバいのを知ってるからなんだよ。 


王様の仕事は自分の国の民を守る事を皆知ってるよね?

このままだと罪のないこの街の民が消される事を知ったから、王様は頑張るしか無かったし、私はそれを正しく理解して皆の協力を求めてるのよ。

失敗すれば私の責任にすれば良いと思うから、私は今王様の代理で行動してるんだよ?」


私は此処で言葉を切ると、自分の家族達の顔を1人づつ確認して行く。

そして息を大きく吸い込んで、覚悟の決める事にした。


「と、此処までは叔母さんの近所の人達に向けてのお話になるけど、此処で私の家族に向けての個人的なお話を挟ませて貰うよ。

お爺ちゃん、お婆ちゃん、ジギタス伯父さんワックスさん、エターニャお姉ちゃん、セフメトお兄ちゃん、アーニャ叔母さん、ジキルスお兄ちゃん、ハーニャお姉ちゃん、それからお父さんとお母さん、カタリナお姉ちゃん、ロベルトお兄ちゃん、マルセロお兄ちゃん、そからジーニス。

皆私のせいでこれから大変な目に遭わされる事になるから、心から申し訳無いと思うの。


王様が起きてたら私は私達の事を全て隠して上手くやれる筈だったんだよ。

でも王様が寝ちゃって起きて来ないから、私は今大きな選択をしなくちゃいけなくなってるの。

1つはこの街の人達や王様を見捨てて、自分の家族だけを守って正しく行動すること。

これをすればアーニャ叔母さんと私達の繋がりを知ってる人達は全員が死ぬことになるから、私の事は世間に秘密のまま通せるんだよね。

王様は教会と敵対する事になるから国から教会が無くなって戦争になって大勢の人達は亡くなると思うけど、私は此処に連れてきた私の家族を守って村を捨ててひっそりと生きて行く事が出来るんだよ。


だから此処にいる家族皆を誰も失わないように守るためには本当ならそれが1番良かったんだけど。


その代わりにバッカス兄ちゃんやタルクス伯父さんやエリザベスお祖母ちゃんやマゼランお爺ちゃん達、この場所に居ない人達は全員が犠牲になると思うんだよね。


私がまだ小さいせいで、全ての家族を守るのは申し訳無いけど出来ないんだよ。

だから私はこの方法は取りたく無くてさ、皆には本当に申し訳無いんだけど、私はコレからこの街の人達や王様を救うために私に出来る全力でこの問題に立ち向かおうと考えてるの。


その代わりに私とアーニャ叔母さんの繋がりを知ってる人達は死なずに済むから、きっとそこから私達の事が教会の人達にバレちゃうと思うんだよ。


それに王様もこんな事になっちゃったから、どれだけ王様が私達を守ろうとしてくれても、お城にいる王様を大事にしてる人達はそれを認められなくなっちゃうんだよね。

だから王様は自分の家族と敵対して私達を守るか、私達を捨てて自分の家族を取るかの選択を迫られる事になるんだよ。

私は王様にはとても良くして来て貰ったから、王様には自分の家族と仲良く幸せに暮らして貰いたいんだよね。

だから私はコレから王様の指示を無視して勝手に動こうと思うんだよ。

それは王様からしたら酷い裏切り行為になるから、王様が起きたらカンカンに怒ると思うんだよね。

そしたら私はもう家族と一緒には暮らして行けなくなるし、私を捕まえる為に王様は私の家族を人質にするように変わるんじゃないかなって思うんだよ。


だから私はもう家族とは一緒に暮らして行けなくなるの。

王様が私をどうするかは分からないけど、家族を守る為には私は王様の裁きを受ける必要が有るんだよね。

その結果として私が死ぬことになったとしても、皆には黙ってて欲しいんだよ。


そしてこれから大変になる生活を迎える事になるから、家族全員で力を合わせて生きて行って欲しいの。

どっちに転んでもあんまり良くない未来しか無いんだけど、もう王都では王様が居ない事がバレちゃってるし、そろそろ騒ぎになってる頃だと思うんだよね。

そうなると錬成師のお姉さんは私の家に王様を探しに向かうはずなんだよ。

でも今家には事情を知らないバッカス兄ちゃんが1人残ってる状態になるから、お姉さんは私達の異常事態に気がつく事になるんだよ。

もうこの時点で私達は今まで通りの生活は送れない事が確定しちゃってさ。

だから私が街の人達を守る為に行動出来る時間はもう後少ししか残って無いんだよね。

私達が王様達を裏切らないように行動する為には、此処に居る人達全員の協力が必要不可欠になるんだけど、ご覧の有様だからそれは難しいと思うんだよ。

だから此処で私は王様を裏切る決断をしなくちゃならなくなったの。

そして私はこれからこの街や王様を濡れ衣から守って教会と戦争にならない為に行動を起こそと考えてるんだよね。


その為には出来るなら皆の協力があったら助かるんだけど、それが出来なければ皆には此処に残って大人しくしてて欲しいんだけど、どうするかは細かい説明をする時間が無くってさ。


私はこれからこの街の人達と、この街に起こる災いを防ぐ為に、私は教会の都合が悪い話を暴露する事になるから、そうなると敵対する事になるんだけど。

それをするとそれはかなり面倒だから、これから嘘をつく悪い子になろうと考えてるんだよね。

お父さんからは嘘は駄目だよって教えて貰ったからなるべく嘘はつきたくないんだけど、これから私は神様の使いを装って教会の悪い人達に天罰を落とす形に話をもって行こうと考えてるんだけど⋯此処に居る人達からしたらなんだそりゃ!って、笑い話にしかならなくなるから、どうか皆教会の人達の前で笑わずに真剣な顔をして私の演技に付き合って貰えたら嬉しいんだけど⋯出来るかな?」

『????』


この場所にいる人達全員が私の話を理解出来なかったから、全員真剣に話を聞いてる状態で頭を斜めに傾げてる。


「リリアナ。

何をするつもりなんだい?」

「ここにいる人達皆に協力して貰って、病気で死んだ女性の家族とへその緒をなるべく沢山集めて欲しいんだよ。

それからこの街にいる錬成師さんを、教会に連れてきて欲しいの。

私が神様の使いを演じて全ての教会の人達の目の前で祠を暴くから、その錬成師さんに娘さん達の骨とその家族達とを引き合わせてあげて欲しいんだよね。

そうしたら裏を知らない教会の人も、平民も全部事情が分かるよね?

私は裏の人に神様からの使者で天罰と吹き込むから、教会は迂闊に大勢の人達を殺す事が出来なくなると思うんだよ。」

「あぁ⋯成る程。

だから嘘つきになるのか。

でも嘘がバレたらどうするんだい?」

「バレるのは難しいと思うんだよね。

だって世間でこんなに魔法が使える2歳の娘さんて他に居ると思うお父さん。」

「あ!そうか。

確かにそうだな。」

「それに騙すのは教会の人達だけじゃ無くて、ここに居ない街の人達全員を騙すつもりなんだよね。

そしたら私が教会に居る何も知らなかった良い人達を庇っても、迂闊に攻撃が出来なくなると思わない?」

「成る程、そう言う形に話を進めて行くつもりなんだな?」

「でもそんなに上手く行くのかしら?」

「お姉ちゃん。

そこを上手くやれるお子様だから、私の家族はこんなに大変な事になってるんだよ?」

「それもそうね!」

「でも1つだけ問題があってさ、途中までは王様が起きてたから、他の方法を使って上手くやれるはずだったから、近所の人達を巻き込んじゃってるんだよ。

だから此処にいる人達は、私には家族が居て普通の人間の娘さんなのがバレちゃってるんだよね。」

『あー⋯』


私達家族が周りの人達に視線を向けると『え?!』て、顔になって近所の人達が少しオロオロとしたり、『?』ってなったりしてる姿に、家族達がそろって肩を落とした。


「私が上手くやれたら街に被害が来ないから、ここの人達からしたらナンノコッチャ?ってなると思うんだよ。

だから落ち着いたら私達の事をぽろりと誰かに話してしまうだろうから、アーニャ叔母さんや私達の繋がりから近所の人達は私が何処の誰かを知る事になるんだよね。


そうしたら血眼になって私を連れ出そうとするから、私の家族達が偉い目に遭わされちゃうんだよ。

それを私は頑張って説明したけど、直接被害を受けないこの人達が、はたしてそれを覚えてるかは分からないよね?」

「⋯成る程。」

「それなら⋯」

「お姉ちゃん!」

「あぁ⋯そう言う事なのね。

アンタねぇ〜⋯。

はぁ⋯まぁ仕方が無いわね。」

「うん。それと王様を守らないといけないから、私達はこれから王様が目覚めるまで守りながら、家に帰る方法を探さなくちゃいけなくなるのね?


その為には錬成師さんを巻き込む必要が有るから、近所の人達が亡くなった娘さんの家族を集めてる間に、錬成師さんの所に行って事情を説明しなくちゃいけなくなるんだよ。

これが1番頭が痛いから、その錬成師さんもまとめて騙さないといけなくなるかも知れないんだよ。

黒魔石の事を知ってる人ならそんな説明しなくても協力してくれると思うけど、知らない人なら騙さなくちゃどうにもならなくなるんだよね。

だから嘘つきの酷い子どもになるから、私はお父さんを悲しませる事になるんだけど⋯」

「うむ。

嘘は良くない。

だから嘘をついて平気になるのは駄目だ。

でもリリアナが嘘は駄目な事をちゃんと分かってて、それでも嘘が必要になるのならお父さんは悲しまずにちゃんと見ていてやるから、安心しなさい。」

「うん。

私が悪い子になって人の迷惑になるなら、ちゃんと叱ってね。」

「あぁ、それが親の務めだからな。その時はちゃんと叱ってやる。

だから1人で危ない事をせずに、今みたいにちゃんと説明するんだぞ?」

「⋯ねぇお父さん。

私はお父さんが大事に育てて来た麦を駄目にしちゃうかも知れない悪い子だよ?

それだけじゃないよね。

今回のせいでお父さんだけじゃ無くて、家族皆が大変な目に会うのは決まってしまったんだよ。

だからお父さん。

私なんかの父親を真面目にやらなくても本当なら許されるんだよ?

それなのにまだお父さんは、私のお父さんでいてくれるの?」


泣くのは卑怯だとは思うけど、私はどうしても泣くことをやめられなかった。

父はそんな私を見下ろして困った用な顔で苦笑を浮かべてる。


「今更何を言ってんのよ!

アンタが普通じゃないのなんてもう私達はとっくの昔に気がついてんの!

だから大変な目にあっても、アンタに協力して今までやって来てるんじゃない。」

「おー、そうだぞ?

俺だって兄貴だからさ。

リリアナを守れるように頑張ってんだぞ?」

「そうだよ!

僕が錬成師や騎士になるのに頑張って勉強してるのは、リリアナを守るためなんだよ!」

「お姉ちゃん、お兄ちゃん⋯お爺ちゃんも婆ちゃんも皆⋯ごめんね。」


私がハラハラと涙を零してたら、私を囲んてる家族達皆がヤレヤレと言った顔をして、苦笑を浮かへたり、得意げな顔をしたりしてた。


あ、母は別ね。

母は長い話しを聞かない人だから、ジーニスを抱いてニコニコしてるけど、なんで私が泣いてるのかなんて、全く理解してないからね。

ただいい雰囲気なのは分かるから、私達を見て仲良しね〜って思ってるぐらいだから呑気にニコニコしてるんだよ。

後家族にしても事の大きさを理解し切れて無いから、まだ私に付き合ってくれてるけど、果たして何処までこれが続くのかは分からないんだよね。

だって目先の事しか見えない平民だからだ。


「私は本物の英雄になろうとしてるから、止められた上に放置されてるバック兄ちゃんには恨まれるだろうなぁ〜⋯」

『あー⋯』


1人残された最悪の状況のバッカスを思い出した面々が、彼の不幸を思って罰の悪い顔になってる。


「まぁ麦は駄目になるだろうが、バッカスなら鳥は守れるじゃろ。」

「お爺ちゃん⋯」

「その代わり今頃ヒーヒー言っとるじゃろうが、まぁ跡継ぎっちゅうもんは、そう言う経験も必要じゃろうしの。

チビを恨むようなバカなら、爺ちゃんがちゃんと教えておいてやるから心配はすんな。」

「ハハハ!

そりゃヤベェな、今村に残ってんのはバッカス1人かよ!」

「あれを1人でやるのか?

それは無理だろう?」

「やれねぇなら鳥が死ぬだけだからな。アイツなら死ぬ気でやるんじゃねぇのか?

タルクスだって直ぐに気付くだろう。」

「はぁ~⋯麦は流石に無理なら、生活費はどうすんだいって言っても、どうにでもなるんだろうね?」

「そりゃ天下の黒魔石様だからな!」

「なんだいそりゃ。」

「ヤベェぜ姉ちゃん。

後で詳し話を聞かせてやっからよ。

度肝を抜かれてチビるんじゃねえぞ?」

「はぁ?!

バカな事を言ってんじゃないよ!

もうチビるんならとっくの昔にチビってんだ。

アンタみたいなバカとアタシを一緒にするんじゃないよ!」

「ハハハ!こんなもんじゃねぇぞ!

俺達の姪っ子は王様をひっくるめて、国の偉い奴らをまとめて手玉にとっちまいやがったんだ。

そりゃもうすっげえ面白かったんだぜ?!」

「ジギタス伯父さん、他に関係ない人達もいるから、それは身内だけの話にしておいてくれないかな?

じゃないと変な誤解をされたら、本気でただじゃ済まなくなるんだからね?


今私達が無事に呑気にしていられるのは、全部王様が私達を守っててくれてたからなんだよ? それなのに恩を忘れて王様に頼り切って、王様を不幸にはさせられないんだからね?

王様は自分がどれだけキツくなって、たった1人になっても平気な顔をして私達を守ることが正しいと思えばそれをしちゃうような、本物のバカ野郎なんだよ。

だから無理して此処で伸びてるんだって事を、ちゃんと理解してよね!」

「おわ!なんでえイキナリ切れやがって。」

「ごめん。

コレは八つ当たりだよ。

伯父さんは何にも悪くない。

私が下手こいて王様を酷使した結果だってのは、私が1番良く分かってるんだよね。


これは家族にしか言えない秘密の話になるから、落ち着いたら話すよ。

今はもう時間が無いから早く動かなきゃ、仕事で人間が家から居なくなったら、病気で死んだ娘さんの親を探せなくなる。 そうなったら間違い無く街は破滅するから、急がなきゃいけないんだよね。」

『?!』

「ちょっと!呑気に話なんてしてる場合じゃ無いじゃない!」

「説明しろって煩かったのはお姉ちゃんでしょ!

私が焦ってた理由がやっとわかってくれて嬉しいよ!」

「っっ⋯!」

「私達家族の話しは本当は世間には秘密にしなくちゃいけないのに、わざわざ叔母さんの近所の人達にそれを聞かせてるのは全てが本当の話だからだよ!


今私の事を信じられなくていいの!

でも生き残りたいなら騙されたと思って黙って私の指示を聞いてくれるかな?!

私は罪のない人達が死ぬのも、国と教会が喧嘩して沢山の人が死ぬのも嫌なんだよ!

お金なら払うから今日の仕事を休んで、これから街を救う為に全員で走り回ってくれないかな!」

『っっ!?』

「アーニャ叔母さん!

ここ1年以内で娘さんを無くした親を優先して探したいの!

まだ骨になってないから、必ずあの石の棺桶の中に居るからね! 

知り合いに片っ端から声をかけて集めてくれない?!

他のオバサン達もアーニャ叔母さんを手伝って人を沢山集めて教会に連れて行って貰えるかな?!

男の人達はこれから錬成師さんを連れて教会に乗り込むから、夜中に動かなきゃならない、女の人達の護衛をお願いするね!

1人一組連れて来てくれるだけで十分だよ!

2つ目の鐘の音を集合の合図にするから、遅れないようにしてね!


皆聞いて!

言い分はこうだよ!

神様からの使いが来て街が滅びると言ってたって言えば、教会の人達ならちゃんと話を聞いてくれるよ!

出来るかぎり教会の人達を全員集めておいてくれる?

黒魔石って言う神様からの使いがそう言ってたって言ってね!

子供達は親がうごけるように上の子供は下の子供の面倒をみながら、街の自宅で留守番してね!

ここは封鎖するから家に帰りたいなら、此処に残ると取り残されると思ってね。


「カタリナお姉ちゃんがここで指揮を取って王様を守ってね!

向こうのドアは私が回収するから、開けられないと思ってくれる?」

「わかったわ!」

「ロベルトお兄ちゃんとマルセロお兄ちゃんは騎士になって王様やお姉ちゃんたちや子供達をお姉ちゃんから指示を聞いて働いてくれるかな?」

「おう!」

「うん!」

「この宮殿は王様が魔物がよりつけないようにしてるから、浜辺に出なければ安全だけど、万が一の時は3人が王様の命綱だよ。

王様が起きたら西の辺境の街で黒魔石が暴れてるって言ってね。

待つわけないからすっ飛んて来ると思うけど、身体が弱ってて飛べなければ待つようにお姉ちゃんが叱ってくれるかな!」

「いいわ、私にまかせて!」

「お母さんとマリア婆ちゃんとマドルス爺ちゃんは王様のお世話をして欲しいの!

下の世話なんてお母さんにさせられないから、婆ちゃんと爺ちゃんが頼りだよ。

他はお母さんでも出来る筈だから、定期的に口を湿らせて弱らないようにしてあげてね!

ジギタス伯父さんとワックスさんも宿を引き払ったら王様が作った街のアーニャ叔母さんの家の中で待機だよ。

私が戻ればそこに扉を置くから、人を中に入れなように封鎖してね!


エターニャお姉ちゃんやセフメトお兄ちゃんやジキルスお兄ちゃんやハーニャお姉ちゃんもカタリナお姉ちゃんの指示を従ってね!

アーニャ叔母さんは教会に人を送ったらこの家でジギタス伯父さんと待機だよ。

私は、お父さんを連れて錬成師の人の所に行って教会で暴れたら此処に街のアーニャ叔母さんの家に戻るから、そこで合流するよ。

近所の人達とはここで最後のお別れになるから、もう会えないかもしれない事は覚悟してね。


オバサン!

あの魔物の魔石は売ると足がつくから少しランクを落とした魔石を預けておくよ。

オバサンが信頼出来る戦士に渡して、今回参加してくれる人達の報酬の支払いを頼むね!

うかつにバラしたらひどい目に遭わされるから、此処にいる人達は皆の為に今日の話は秘密だよ!

そのための逃走資金にでもして、ここじゃない街でなら話をしても派手な生活をしても良いけど、なるべくなら秘密でいてくれるなら、私達家族が嬉しいかな。

そうじゃないと、私達はこれから教会から逃げ回る生活になるからね。


あの街で平和に暮らして行きたいんなら、お金は派手に使わずに秘密を守って普段通りの生活をしないと、強盗に殺されてお金を奪われたり、教会の人に捕まる羽目になるからそこら辺は気を付けてね。」


私はそう言うと6級の魔石を10個ほどオバサンに渡す。


「これ1つで白金貨1枚の6級の魔石になるよ。

街の英雄なのに誇れないし不便な生活をさせる迷惑料だと思って受け取って欲しいの。」

『6級?!』


戦士達がザワついたので、魔石を渡されたオバサンは緊張に満ちた顔で身震いする。

でも瞳は持ち前の気の強さを発揮して、ギラギラと強い光に満ちて居た。


戦士達はここでようやく事態のヤバさを肌で感じたらしく、ゴクリと唾を飲み込んでオバサンに渡された魔石の数に呆然としている。


「名乗れない誇れない街の英雄達に継ぐよ。

私は王様から黒魔石と呼ばれ、その才能を見込まれた平民の村娘だ。

見た目通りの年齢でまだ幼いせいで、私には英雄達を守れる力が無い。


だから魔石を与えるから、それぞれが自分達の身の安全を守る為にそれを役に立てて欲しいと願って渡す。

その魔石を聞かれたら、素直に黒魔石から渡されたと言えば良い。

素性の知らない子供だと言ってくれたら私は助かるけど、私は貴方達の良心を信じる事しか出来ないから、そこは各自それぞれの心に従って動いて欲しいかな。

作戦決行は鐘2つ目の音が鳴ったら始める。

それぞれの役に従って行動して欲しい。

役割が分からない人は私に聞きに来てくれていいし、子供達は皆で協力してテーブルや椅子や食器を運んで家に帰ってね。」

『えぇー?!』

「コレは遊びじゃないの。

命がけの本物の仕事なんだよ。

誰に自慢する事も出来ない嫌な仕事だけど、貴方達のお父さんとお母さんはこれから命がけの英雄になって街を救わなくちゃいけないの。

貴方達の使命はその人達が心配せずに安心して行動出来るように、自分達の命を自分達が守る事に有るんだよ。

好き勝手にされたら親は安心して使命を果たせなくなるから、そうなると本当に街の人達は病気で死ぬことになるし皆が悲しむ事になるの。

私はそんなのは嫌だからお願いします!

どうかワガママを言わないで、私の声に従って動いてね。

皆はこの話が分かるかな?」

『むぅぅ~⋯』

「良い子に出来たらお父さんとお母さんが、偶に美味しい物を食べさせてくれると思うよ。

貴方達は逆にお父さんやお母さんが浮かれ過ぎてたら叱らないと、強盗に襲われて家族が殺されちゃうから、シッカリしてそれを教えてあげてね!

貴方達全員が家族の命を守る英雄の卵達なんだからね!

誰一人として犠牲にならずに済むように協力しようね!

分かったら返事!」

「はーい!」「ちぇ!つまんねぇの。」「うん!」「はい!」

「えー!」「はぁ⋯」

「???」


もうめっちゃバラバラ。

困ったなぁ⋯と悩んでたら、姉が急に立ち上がった。


「アンタ達シッカリなさい!

妹や弟を守るのは姉や兄の仕事でしょ!

バカなオヤジが浮かれて話をバラ撒いたりしないように、これからアンタ達がシッカリ見張って叱らなくちゃいけないのよ!

嘘だと思って軽く見て舐めた事をしてたら直ぐに死んじゃうんだからね!」

「そうだぞ!

テメェらそのうち戦士になる奴らなんだろ!

だったら自分の役目ぐらいちゃんと果たせよ!

つまんねー仕事だと思って失敗したら待ってるのはテメェら兄弟の死体だからな!」

「小さい子もお兄ちゃんやお姉ちゃんの言う事をちゃんと聞くんだよ!

僕もそうする!

じゃないと大変な事になるからね!」

『う⋯うん⋯』

「何だよ!偉そうにすんなよな!」

「そうだそうだ!

他所モンのクセに生意気言うな!」

「じゃあ勝手に死ねば?

私達は精一杯ちゃんと言ったわよ!

死にたいヤツの面倒なんて、こっちだってバカらしくて見てられないわよ!

あんたらの家族や兄弟が死んだら、バカなアンタのせいだからね!

せいぜいその時に後悔しなさい!」

『う⋯』

「あ、大事なこと言うの忘れてた。

兵士にはなるべく捕まるなよ。

あとから誤解は解けるようにすっけど鐘の音に間に合わなくなるから、なるべくこっそりと行動しろよ!

じゃあオバサン達女性達は候補が被らないように相談して!

心当たりが無いなら旦那が仲良くしてる人を当たって!

旦那は基本的に、説明は妻にまかせて足りない所を手伝ってあげてよ!

夫婦で協力してなるべく大勢の人達に静かに教会に来るように言ってね!

騒いでたら事情を知らない兵士が邪魔しにくるけど、絶対に喧嘩すんなよ!

むしろ兵士も話が分かるヤツがいたら一緒に巻き込め!

こっちは錬成師を通してこの街の頭に話をつけさせる!

 

コレは戦士ギルドを通してないが黒魔石からこの街の戦士達への臨時依頼だ!

あんたらへの個人的な報酬を誤魔化すのに、正式な報酬として後から戦士ギルドに依頼料を渡すから、そこでこの街の戦士達全員に分配させる!

だからテメェ達で言いふらすなよ!

分かったか?!」

『お、おう!』


私は家族や姉達の支援を受けた瞬間にプランを少し切り替えた。

周りの反応を見て、アーニャ叔母さんとの繋がりを隠す事は不可能だと判断したからだ。


それでも一人ぼっちになるのが淋しくて、ギリギリまで腹をくくれなかったけど、力強い姉を見て鳥小屋での事を思い出してた。


私は私の家族や兄弟達を信じられて無かったんだと、それに気付いたから、私は覚悟をきめたのだ。


家族や姉達兄弟を信じる事を。

裏切られても笑って諦める覚悟を決めて、私の中のリリアナも信じる事にした。


笑っちゃうよね。

あれだけアルフィンに人を信じる気持ちを伝えたかったのに、私は自分が傷つく事を恐れて家族や兄弟達を信じられて無かったんだよ。


幾ら口で言った所で自分が出来ない事をアルフィンに押し付けるのなら、そんなのは先王様や宰相の爺ちゃん達がやってる事と何も変わらないよね。


このまま走れば私はきっと傷つくだろう。

でももう私は傷ついても耐えられる愛情を家族から沢山貰ってるんだよ。

だからどれだけ悲しくても、苦しくてもリリアナならきっと耐えられるから、私は人を信じる覚悟をした。


これから色んな人から裏切られるかも知れない。

でも私はそれに耐えて笑って過ごす為の知恵を振り絞ろう。

私は平凡な人間で、神様の端末なんて生き物なんかじゃいんだよ。

リリアナは家族に愛されて大事に育てて貰ってる幼い2歳の人間の女の子なんだから、家族を無条件で信じるのは当たり前でしょう?


私はこれから嘘をつく。

ただの人間の女の子なのに、これから大人達に特大の嘘をついてこのピンチを乗り越える事にする。

2歳の人間の女の子が出来る事なんて、調子の良い嘘をつくのが精一杯だからね。

そのせいで私がプチられる事になったとしても、私が大事にしてる者を守る為ならそれは私が自分で選んで決めた選択になる。


私が死んだ後、このときの選択を自慢するのか後悔するのか、恥ずかしくてのた打ち回る事になるかはその時に経験すれば良い。

だけどバカな生き方しか出来ないのがリリアナなんだから、それはもう仕方が無いって私は私らしく誇らしく生きて行こうと思う。


私も立ち上がって浜辺に向かい、角クジラ鮫とゴロゴロドンから魔石を取り出した。

ゴロゴロドンは予想した通りに真っ黒の黒魔石になっていて、角クジラ鮫の方はそれよりも小型で黒っぽい深い緑色の魔石だった。


そして私がすることを見ている後ろを振り返ると、黒魔石を頭上に掲げて皆が見えるようにする。


「この魔石が本物の黒魔石だよ。

私は一部の人間から黒魔石って呼ばれてるの。

本当はただの人間の女の子だったのに、私の才能を知る貴族の人たちは全て、この黒魔石に見えるんだってさ。

笑っちゃうよね?


でも私は私の才能を使って楽しいことや幸せになれる事をして生きたいんだよ。

それに人間の幼い女の子なら、悪戯ぐらいしたって当たり前だと思わない?

だから私は健気に働いてる教会の人達を騙す悪い子になるの。


平民を守るのが仕事なのに、それを忘れてるバカ共を泣いても許してやらないし、ボッコボコにしてやるつもりなんだけど、最後にはその教会の人達が笑って幸せになれるようにするつもりなんだよ。


大事な娘さんを利用されて、辛い想いをした人たちも、一緒に教会をボッコボコにして、でも最後にはしかたない奴らだなって、一緒にわらって赦してくれたら嬉しいかな。


だって悪さをするのはほんの少しの人達だけで、殆どの教会の人達は無実だからね。

せめて此処にいる英雄の人達だけでも、それを分かってあげてくれたら嬉しいかな。

悪い噂ってあっという間に回るから、これから教会の人達はエライ目に遭わされるんだよ。

だから今まで面倒見てきて貰ったんだから、少しだけで良いから恩返しをしてあげて欲しいんだけど、そこは個人の自由だからお任せするね!


それじゃ私は私の仕事をするから、ほらかいさーん!

お姉ちゃんよろしく!


ご飯の残り持って帰りたい子供がいたら好きに持って帰っていいからね〜。」

『やったあ!』


私はお土産に角クジラ鮫の肉を持って帰れるように周りから大きめの葉っぱを取っていく。

それらを浄化すると、適当に肉を切ってせっせと包み、テーブルの上に乗せていく。

それと同時進行して果物を置いたらブワッと子供達が群がって来て、あっという間に無くなった。


「ほら!片付けるわよ!

早く来なさい!」

『うぇぇ~』

「返事ははい!よ!」

『はぁい⋯』


土産を先に家に置きに行ってから、戻ってきた事を達がワイワイしながら椅子を運んで行く。

アルフィンの魔法が切れてるかも知れないけど、もうスルーした。

勝手に入ってくるヤツがいたら、私が追い出せば済むと思って試したけど、ジギタス伯父さんとワックスさんが門番をしに行ってくれたようだ。


父は戦士を捕まえて街の中心部への行き方や、錬成師の店の場所を確認してくれている。

祖父母と母はエターニャとジキルスとハーニャとで、王様の横に侍ってた。


「私には出来ることがない?

もし許されるなら街を見て来たいんだけど⋯」

「それならセフ兄ちゃんは、ジキルス伯父さん達と行動したら良いよ。

その代わり鐘2つ目が鳴る前には戻ってこれるようにしててね。」

「分かった!」


旅商人に憧れてるセフメトは、街が気になるらしくて瞳を輝かせてる。

扉の外が別の街だと知ってから、ずっと気になってたみたいだ。


「リリアナ。

錬成師様の店の場所は聞いてきたんだが⋯その、お母さんは、アローリエは王様の世話をしなければ駄目なのか?

ほらジーニスの世話も有るだろう?だから母さんに任せて良くないか?」

「お母さーん!

お父さんがヤキモチ妬いてるー!

だから王様から離れて欲しいってさ。」

「り、リリアナ?!」

「あらぁ~?

心配しなくても平気なのに〜」

「アーニャ叔母さんの家は魔法で守られて無いから、お母さん達はここに居た方が安全なんだけど、お父さんが落ち着かないと困るんだよ。

お父さんは私に付き合って色んな仕事が待ってるんだよね。

だからお母さん。王様からエターニャお姉ちゃんと一緒に離れててよ。」

「え?!私もなの〜?」

「だってエターニャお姉ちゃんが王様に恋したら、ジギタス伯父さんが荒れちゃうしさ。

そもそも奥さんが沢山いるから、惑わされないように離れてた方が安全だよ。

お母さんもだよ。

大人しく言う事を聞いてくれないと、扉の外で待つはめになっちゃうからね?」

『え〜!』


母とエターニャからもの凄いブーイングが来たから、どうやら父のセンサーは正確に危機を把握してたらしい。

まぁ知ってた。

アルフィンは女性には劇物だからね。


「だからゴメンねマリア婆ちゃん。王様の面倒を見てあげてくれる?」

「あいよぉ。

娘さんみたいに美人な王様だねぇ〜ふぇふぇふぇ!」

「ほらサッサと向こうへ行ってろ。間違いがあったらいかんからな!」

『はぁい⋯』


マドルス爺ちゃんに追い払われた母とエターニャお姉ちゃんが、ハーニャお姉ちゃんを連れて渋々と離れて行く。

ハーニャお姉ちゃんはえ?!私も?!と、驚いてた上に悲しそうな顔をしてたけど、強く言えないのかトボトボとエターニャお姉ちゃんと手を繋いで少し距離を置いた。


「おれはジキルス!

なんか手伝える事はあるか?」

「そうね。私はカタリナよ。

アナタって私の従兄弟なんだっけ?」

「さぁ?詳しい話はまだ何も聞いて無いんだよ。

婆ちゃんの弟が迎えに来たってぐらいなんだよな。

あのチビはアンタの妹なんだろ?」

「ええ、そうよ。」

「なんかスゲェよな?

チビなのに沢山喋るからビックリしたけど、魔法もヤベェだろ?アイツって何なんだ?」

「魔法なら私も使えるわよ。

でもまぁそうね。

あの子が言うには、産まれた時は少しほかの子より賢いぐらいだったのに、私が厳しく躾けたらあんな変な感じになっちゃったらしいわよ。

普通に面倒見てあげてただけなのに、ホントに酷い話しよね!」

「えぇ?!どんな躾したらあんなにスゲェのになっちまうんだ?!」

「別に普通よ。

1人でトイレや着替えをさせたり、悪い事を叱ったりしたぐらいよ。」

「そんなんであんな風になっちまうのか?!」

「まぁ⋯ちょっとだけ他の子よりも、早かったかも知れないわね。」

「早かったって、今もまだチビじゃないか。」

「まぁ⋯あそこにいるジーニスって弟が居るんだけど、あの子よりも早くに躾たのはそうなんだけど⋯」

「はぁ?!だって赤ん坊だぞ?!」

「し、仕方無いじゃない!

教えたら出来ちゃうまでそんなにかからなかったんだもの。

楽だから少し厳しくしたのはしたけど、でもまさかこんなになるとは考えて無かったのよね。」

「はぁ⋯なんか良く分かんねえけど、お前も凄いんだな?」

「え?!いや、そんな事は無いわよ。普通よ普通。」

「でもあれは普通じゃねぇと思うんだけどなぁ。」

「うっ⋯まぁ仕方ないでしょ!

それよりも早く後片付けを手伝ってあげましょう!」


ジキルスと姉は同じ10歳なせいか、姉が少しだけ大人しい感じで猫を被ってた。

まぁ直ぐに本性がバレるとは思うけど、私も従兄弟(いとこ)同士が再従兄弟(はとこ)なのは知ってるけど、じゃあ従兄弟の子どもはなんて言うか知らないから、生暖かい視線でスルーしとく。


ロベルトはハーニャが気になるらしくて、マルセロと一緒にハーニャの所に行って人見知りされてちょっと慌ててた。

だから自己紹介だけして、すぐに逃げ出して私の方に向かって来る。


「何かすることねぇか?」

「それならなるべくお肉を配りたいから、つつめるような大きな葉っぱを持って来てくれると助かるよ。

分かった。大きな葉っぱだな。

おい!マルセロ行くぞ!」

「え、うん!」

「お姉ちゃんが居ないからあまり遠くには行かないようにしてね!」

「分かってるって!」


ハーニャからしたら同じ年齢のロベルトには人見知りしたけど、マルセロは明らかに年下だから上手くお喋りしてたのに、ロベルトに呼ばれて慌てて後を追いかけて行った。

姉のお守りがないとかなり不安だけど、アルフィンがシッカリした装備を与えてくれてるから、これも成長かなと思って素直に見送る事にする。


でも暗かったせいでそこは自重してくれたらしくて、近くの木に登って大きめの葉っぱを沢山あつめてくれた。

だから私も角クジラ鮫のお肉をせっせと切って包んで行く。

だって凍らせてるけど、もう既に溶けかけて来ちゃってるんだよね。

追加で凍らせたけど、ここは南国みたいな気温だろうからそりゃ屋外に出したら溶けるのも早くて当たり前なんだよ。


木箱が有れば氷を詰め込めるから、言おうか迷ったけど。

アーニャ叔母さんの部屋や外の様子を見る限り、農村みたいな倉庫が無いから木箱もかも無さそうなんだよね。

腐らせるのは勿体ないし、もう自分家用にはキープを可能な限りしてるから、これが全部生ゴミになるかと思えば、ちょっと処理に困っちゃうんだよ。


燻製にでもするかなぁと考えて、マドルス爺ちゃんに相談したら、ちょっと枝を探して来ると言うのでロベルトとマルセロを護衛に付けるように言ったけど、大丈夫だと手をヒラヒラとさせて行ってしまった。


まぁ⋯あぁ見えて凄腕の魔法師だし、狩りの経験もそれなりに有るだろうから、お爺ちゃんを信じて見送る事にする。

そして私は塩漬け肉を作る為に、きり分けた肉に塩釜みたいな形でどんどん塩を大量にかけてから葉っぱで包むようにした。

氷で溶けたら塩は流れちゃいそうだけど、太陽が無いなら乾燥させられないし⋯と考えてから水分なら抜けるんじゃね?と、思い直す。


フリーズドライ製法って確か凍らせてから水分を抜くんじゃ無かったっけ?

でもそれだけじゃどうやって水分だけを抜くのかまでは、分からないんだよ。


だから1つの50cm四方にしたブロック肉を解凍して、薄切りにした肉を素直に水分を抜くように細工をしてみた。

100%抜いたら萎れた板みたいになったから、少し端を切って口に入れたら味は薄いけど旨味が凝縮されてるキャンディみたいになってた。

でも口の中で舐めても舐めてももの凄く硬くて、柔らかくなる前に先に味がしなくなったので、保存には良いけど食用には適さない事が分かった!


でもお陰で希望が見えて来た。

燻製要らんかったかもと思ったけど、半分水分を抜いて香り付けに燻製したら食用に適した燻製肉が、短時間で出来るかも知れない。

そこは水の加減に寄るだろうから、試行錯誤は必要だろうけど、父も祖父も出来ると思うから、私はせっせと肉のブロックに塩をまぶし続ける。


塩はとても貴重だから皆のお土産になるだろうし、良いかも知れない。

プールはスープ鍋になってるから、そこを綺麗にもしたいので、片付けてる子供に声をかけて家からスープを持ち帰る為の鍋を取ってくるように伝えたら、何人かがすっ飛んで行った。

岩ガニが欲しいと言う子にも、沢山あっても食べ切れなくてお腹を壊すと危険だから、足を家族の人数分持って帰らせた。

数が少なかったので文句を言って来る子には、角クジラ鮫の半生で乾燥させた肉を口に突っ込んで黙らせる。

目を輝かせた状態で両手を突き出して来たから、スライスした端から乾燥させておくから、早く片付け終わったらスライスを手伝うように伝えると、口をモグモグさせながら、また片付けにすっ飛んで行った。


何時までもこうしてモノづくりをしてたかったけど、ある程度の片付けが終わった頃にジャンキーと塩漬け肉を魔法の鞄に入れて父と一緒に扉を潜った。

出かけ際に爺ちゃんが帰って来たら寝て待っててと伝言はしたけど、さてどうなるやら。


父もジギタス伯父さんもワックスさんもかなり緊張した様子で、白い室内で姉に扉は一度回収する事を伝えて扉を閉めた。

セフメトは留守番を言われて拗ねてたけど、まぁ弓なんかの戦闘出来る装備を持って来て無かったし仕方が無いよね。

まだ12歳だもん。

だから近所の子供達に紛れて叔母さん家付近での留守番となった。


そして黒い扉は私の魔法の鞄に収納する。

白い部屋を出た先にはセフメトを交えた子供達ばかりが、固唾を飲んでこちらをジッと見つめている。

私は1番年上っぽい少年にまた戻ってくるけど、なるべく家の中には私達の仲間以外が入らないように見張りをお願いする。

もしアーニャ叔母さんや私達以外の人が来て家の中に入り込むようなら、私達が戻った時に教えて欲しいとも依頼もしといた。

そして依頼料としてお手製のビーフジャーキーをセフメトに渡しておく。

あ、ビーフじゃ無かったや。

角クジラ鮫ジャーキーでした。

ソフトな感じで割とよく出来たと思う。

他の子供も欲しがったので、お兄さんの言う事をちゃんと聞く条件でお手伝いを依頼して、仲良く分けるようにと伝えてから、セフメトに葉っぱに包んだジャーキーを追加分渡しておいた。


先に宿に向かって貰ってから、戦士ギルドにも依頼料として魔石を渡したいからと伝えると、ジギタス伯父さんとワックスさんも付き合ってくれる事になり、錬成師のお店に行く前に戦士ギルドに寄ってもらった。

まだ早い時間だけど、戦士ギルドは24時間体制になってるらしくて、中に入ると1人カウンターでまったりとしているお爺さんがいた。

緊急依頼について相談した所、かなり不思議そうにされたけど、依頼料として魔石で支払えるかと聞くと、あまり望ましくは無いけど出来ると言われたので、角クジラ鮫の魔石を出したら目ん玉が飛び出るぐらいにギョッとされたから、笑うのを我慢するのにチョットしんどかったかな。


「依頼はこの戦士ギルドに所属する全ての戦士達へ出します。

戦士ギルドの職員さんも、1人同行をお願いします。

報酬はこの魔石で、参加した戦士全てに渡して下さい。

数が多くて把握出来なければ、この街の戦士であれば受け取れるようにお願いします。」

「こりゃタマゲたな。

それで依頼の内容はどう言う話になるんだ?」

「これから教会に行くので、一緒に来て下さい。

途中で錬成師さんを拾ってから、鐘2つ目の音が鳴る時に教会で集合をお願いします。

それまでに間に合わない人がいても、それは仕方がないので、無理に人をかき集める必要は有りません。

実は個人的に戦士に依頼してあるので、その参加する人達は全てその本命の戦士達を守る役割になります。」

「ちょっと意味が分かんねえ。

教会で一体何をするつもりなんでえ。」


お爺さんは私ばかり話をしているのがかなり不審に感じたらしく、父やジギタス伯父さんをじろりと睨みつけた。


「依頼者は私で、名前は黒魔石と言います。」

「はぁ?そりゃバカにしてんのか?」

「それでこの魔石を渡すと本当に思いますか?」

「そりゃっ⋯」

「私は2歳の女の子ですが、国より功績を認められているので、準男爵の爵位を持っています。

ですから名前は黒魔石で間違い有りませんよ。

私は国の秘匿管理にある存在なので、国の上層部の貴族か国王しか認知されていませんが、宰相のお爺ちゃんかヴィルヘルムお爺ちゃんに聞いてもらえれば、わかると思います。」

「ふーむ⋯詐欺を働くにしたって仕事の内容が教会に行けとなると、どうなんだろうな⋯。」

「それで受理が難しければ、依頼料をこの街の戦士達に配る事に変更しても良いですよ。」

「仕事もしてねぇのに配れってか!」

「実際に動くのはこの街の戦士なんです。

かなり危険な依頼になるので、依頼料が高額になるので、その依頼を受けた戦士達や家族を守る為に依頼をしています。」

「そっちのはギルドで受けてねぇんだろ?

個人的に雇ったら法律に違反するってのは知らんのか?」

「依頼料は6級の魔石10個なので、気になるのでしたら、その魔石から税金分を引いてお支払いして下さい。

どうせ誰も罪には問えないと思いますけどね。」

「そりゃ一体どういったことだ!」

「それを詳しく説明して貴方が理解出来れば良いんですけど、かなり難しいお話になりますけど、大丈夫ですか?」

「聞いて見ねぇとなんとも言えねぇなあ!」

「そうですか。

では簡単に言えば、教会への糾弾になります。」

「な、なんだと?!」

「それをして置かなければ、この街が教会から滅ぼされる危険性がかなり高くなるからです。

暴力行為は一切行わない事を約束します。

その代わり正しく罪を糾弾するとこになると思います。」

「教会がなにをしたって言うんでい!」

「この街で亡くなった女性の死体を使い病の元となる虫を育てていた罪になります。

家族には共同墓地に遺体を納めると嘘をついて騙し、病を作る虫の苗床にしていた事を今日言及する予定になります。」

「なっ⋯そんなバカな話があるか!」

「そのために目撃者を集めています。

錬成師には被害者のへその緒で骨の特定を依頼する予定になります。

そしてこの問題は平民が問わなけばなりません。

貴族が直接教会を裁くと、それは教会への弾圧となり国と教会との戦争に発展する恐れがあり、そしてこのまま何もしなければ必ずそうなるのがわかっているので行動を起こしています。」

「それが本当の話だって証拠はあるのか!」

「教会にあるので、これからそれを平民の皆で確認を行いに行くので気になるのでしたら、ご一緒にどうぞいらして下さい。

個人的に依頼した戦士達は、病で娘を喪ったご両親を教会へ連れて来ることを依頼しています。」

「⋯成る程、承知した。

それで戦士の保護ってことかい。

依頼主が貴族だとまずいんじゃねぇのか?」

「父は平民なので、父の名を使うのが理想になるのですが、私で構いません。

教会の悪事を暴いた恨みで父を失う訳にはいかないんです。」

「あぁ⋯そうだろうな。

うぅむ⋯アンタ。

本当にやる気なのかい。」

「この街の罪のない人が病で大勢殺されるのを見るのもいやですが、この国の良い王様が神敵とされ教会の保身の為に断罪される事を防ぐ目的になります。

王様はこれまで私をずっと守って下さったので、私はこれで恩返しをしようと覚悟を決めました。

2歳の子供に糾弾された教会は、それで国を神敵には出来ないでしょう?

なにせ私は貴族なってまだ一月ぐらいなんで、殆ど平民みたいなもんですよ。

両親は平民ですからね。」

「はぁ⋯アンタ誰かに騙されてやいやしないか?」

「普通の子供にそんな魔石が準備出来ると思いますか?

それ私が倒した魔物なんですよ。

良かったらお裾分けしますので、食べてみますか?」

「こりゃ何の魔物の魔石なんでい。」

「さぁ?角が生えた大きな海の魔物でしたよ?

私は角クジラ鮫と名前をつけましたけど、その魔物の名前は知らないんです。

ゴロゴロドンならしってるんですけど、その魔石は錬成師さんに渡す予定なので、ここではお渡し出来ないんですけど。

これですよ。」

「⋯は?」

「始めて倒しましたけど、意外と弱かったですね。」

「はぁーーーーーー?!」

「私はこんな感じなので、叙爵されたんですよ?」

「嘘だろ?!」


顎が外れんばかりに大きな口を空けてるお爺ちゃんの顔が面白くて、黒魔石を持ちながら笑うのを堪えるのがとっても大変だった。


信じられないんだけど!と、父に視線を向けたので、父がコクリと頷くとパン!と両手をカウンターについて立ち上がる。


「ゴロゴロドンってのはなぁ、10級なんだぞ!!!」

「それは弓矢や魔法が届かない高い所から攻撃して来て地上に降りて来ないから10級なだけで、軽いしペラペラしてて海に漬け込んだら雷も届かないので、思ってたよりも楽に倒せましたよ。」

「どうやって海に浸け込むんだえぇ?!」

「魔力の手で身体を掴んで地面にドーンと落とす形で海に沈めましたけど、雷さえ防げるんなら地面に穴を空けて魔法の水で深い水たまりを作って中に入れちゃえばいいのかな?

そこはやってみないと分かりません!」

「ま、魔力の手ってのはなんだよ!」

「魔法を出すときに魔法を発動させないで滲み出て来るのが有りますよね。

それを自分の手を想像して動かすんです。

昼間だと魔力の量が多くないと直ぐ消えちゃうので、夜に練習したらどうですか?

上手に使えたらこんな風に⋯」


お爺さんに右手をヒラヒラさせてから人差し指を向けたら、お爺さんもつられて後ろを振り返ったので、奥の机の上においてあったインク壺を持ってカウンターの上に引き寄せてみせた。


「遠くの物が引き寄せられるので便利ですよ。

魔力の使い方にコツが有るので、私は才能でやってますけど、農家の跡継ぎぐらいじゃないと難しいと思いますけどね。」

「の、のうかのあとつぎ?!」

「魔法師さんでどこまでできるかは、魔法師さんを知らないんで分かりません。

私は農家の娘なんで!」

「はーーーー⋯」


悲鳴みたいな高い声でオウム返ししたかと思ったら、今度はため息の付き方が独特で、もの凄く低い声で長くつくもんだから、このお爺さんのリアクションが面白く感じるのは私だけじゃないらしくて、後ろでジギタス伯父さんとワックスさんの笑うのを我慢する大会が、勝手に始まっちゃってる。


マドルス爺ちゃんに通じるリアクション芸に親近感を感じたけど、私は最強のお笑い芸人を知ってるので何とか我慢が出来てるよ。

やっぱりあの錬成師のオジサンはお笑いの天才だったみたい。

ピヨ子が負ける強さは伊達じゃなかったわ!


「あの、それで依頼の方は受けて貰えるんですかね?」

「あ、あぁ⋯それじゃ、え~と書類書類⋯あ、あった。

え~と⋯アンタ字はまだ無理だろ?

代筆するかい?」

「書けるので大丈夫です!」

「あ、あぁ⋯もう書けるのかい。」


さっきから事あるごとに父を見て確認してる風になってるので、父も困った様子でへらりと苦笑を浮かべてる。


「こりゃまた飛んでもねぇ娘さんをこさえちまったな。

それでこの護衛かい。」

「あぁ、俺の兄貴と甥っ子なんだよ。」

「そりゃそうだよなぁ。

ゴロゴロドンをたおせるつってもこんなにチビじゃ、そりゃそうなるよなぁ。

アンタも大変だなぁ⋯。」

「お陰で畑の水撒きが随分と楽になったんで助かってるよ。」

「はー⋯水撒きか。

俺も昔はよくやってたが、魔法を使わん魔力の使い方なんざ、思いつきもしなかったなぁ⋯。」

「はい!書けました!」

「ん、どれどれ⋯おお!

思ってたよりも上手に書けてんじゃねぇか。

成人したガキよりも上手ぇぐれぇだな!」

「沢山練習したんですよ〜」

「そっかそっか。

何せお貴族様に、させられちまったんだもんな。

そりゃ勉強させられるわなぁ⋯教会を卒業したら戦士ギルドに来てくれりゃ助かるんだが⋯女の子だし難しいのか?」

「農家の跡継ぎか錬成師になろうかと思ってるんですよ〜」

「農家の跡継ぎは勿体ない。

そりゃなれるんなら錬成師様になる方がええだろなぁ。

ん。鐘の音2つ目が鳴る頃に戦士ギルドに集合だな!」

「なるべく年配の人かシッカリ者をお願いしますね。

若い人も居て貰って構わないけど、興奮して暴れたら叱って欲しいんですよ。

悪さをしてるのは教会の人全員じゃ無くて、バレたら困るから教会の中でも少しの人だと思うんで⋯」

「そりゃそうだろうな。

はぁ⋯教会もやっちまったなぁ。

そりゃ皆から叱られるだろ。

でも何でまた病の元なんてつくってんだ?」

「昔はお貴族様と闘う武器だったんじゃないですかね?

どうしようも無い悪いお貴族様を倒したくても、正面から行くと被害者が沢山出るじゃないですか。

ここはその病が多いから、それを分けて貰いたくて始めたんじゃないですかね?」

「成る程なぁ⋯そりゃ誰に聞いたんだ?」

「私がこんなだからお金を稼げるようになったので、身内を探して故郷に戻るように呼びに来たんです。

そしたら墓参りが出来なくなるのが辛いって言うんで、夜にこっそりと私が身内と教会に行って、魔法で骨を探したんです。

そしたら旦那さんと婿さんの骨は共同墓地にあったのに、娘さんの骨だけが無くて変だなぁ⋯ってなって調べたら、教会の裏にある藪に祠が隠されてるのを見つけて、そこを調べたら娘さんの骨だけじゃ無くて沢山の骨が雑に捨てられてたんですよ〜。


あんまりにも可哀想だから、骨のご両親に引き取りさせてあげたくて、でも私はこんなにチビだから、錬成師さんを呼んで手伝って貰おうかと思ったんです。

私だけだと舐められて、教会の人も取り合ってくれないと困るので、それで身内の近所に住んでる戦士の人達を雇う事にしたんですよ。


でも私は現金を持ってなくて魔石で報酬を支払うので、いきなりお金持ちになったら悪い人に家族が狙われても困るから、それでこうして守る為に行動してるんです。

貴族が教会におしかけたら、教会の人が過剰に反応して国と喧嘩になったら困るので、こうしてるんですよ〜」

「ふむ。一応筋は通ってるな。

だが最初からギルドに来てくれたら良かったんだがな。」

「ギルドに来るかはかなり迷ったんですよ。

私の故郷が教会の人にバレたら、私の家族が酷い目に遭わされるかも知れないのに、私はまだチビだから守りきれないんじゃないかと思ったんです。

だけど私達から話を聞いた近所の人達がもの凄く怒ってて、これだと大変な事になると思って慌ててギルドに頼りに来たんです。」

「ふむ。そう言う事か。

魔石ならここで売るしかねぇから、税も払えるとなるとこりゃ罰にはならねぇと思ったのか。」

「それも有りますけど、ウチが目立つと困るので換金が出来なかったので、手元にお金が無くて魔石を沢山持ってたのが理由ですかね。」

「そうか。

そりゃ身内も慎重にならざるおえんだろ。

農家じゃそれが精一杯だな。」

「私が大きくなって貴族の学校に通えるようになれば、また状況が変わるとは思うんです。

兄弟も私を守ろうとしてくれてて、頑張って勉強したり身体や魔法を鍛えてくれてるんですよ。

だから私を含めて私達兄弟達が育つのを待って、それまでは世間にバレないように王様も気を遣って下さって沢山良くしてくれてたから、王様には恩返しをしたかったんです。

このままじゃ教会の悪事を隠すのに、病気の元をばら撒いて街ごと口封じにされる事が予想出来たのですが、貴族が絡むと教会は過敏になりそうなので、貴族には頼れないと考えたんです。


この街ではその病気が元から流行ってたから、意図的にばら撒いても知らぬ存ぜぬが通せるでしょう?

だから教会の中の良い人達を巻き込んで、そんな悪事を働く悪い人を教会の人に退治して貰いたくて、それでこれを計画しました。」

「うむ。よう考えてくれたな!

確かに貴族がこれを理由に教会へ文句を言えば、下手すりゃ大喧嘩になっちまうな。」


何か思ってたよりも話がスムーズに進む事に違和感を感じる。

だって戦士はどんな人かを私は知ってるからだ。

前に会った元戦士の老人は私の話を聞かずに流して教会へ行けと、理解する事も放棄してた。


でもこんな時間に補佐する人が他に居ないのなら、この人は1人で状況を判断する必要が有るから、会話の理解度の高さや上記の判断能力の有る人しか、夜の当番になれないのなら辻褄が合うんだろうか?


戦士の数を思えばこの老人はかなり上位者で、いわゆる生え抜きってヤツかも知れない。

年代はマドルス爺ちゃんと変わらない気がするから、おそらく60代?

でも身体がまだマゼラン爺ちゃんみたいにシッカリとしてるから、デスクワークしててこの筋力を維持しているのなら、昔はトップクラスの戦士だった雰囲気がする。


でも服装は明らかにリラックス出来るような軽装なので、この人がどんな立場かは見た目では何も分からなかった。

そもそも私は戦士ギルドには馴染みが無いので、それは仕方がないのかも知れない。


「⋯あとこんな事を考える必要はないのかも知れないけど、戦士ギルドの繋がりで上の人達だけで良いので、この話を流せますか?」

「ん?あぁそりゃこんな依頼になりゃ話は回るだろうな。

どうした?」

「此処の教会の人じゃない、他所に所属してる教会の人がこの街で悪さをしないように釘を刺しておこうと考えたんです。

出来れば内緒のお話で、他の教会の人達にも話を回して貰えたら、ここの教会の良い人達も守れるかなって考えました。


多分教会の上の方まで悪い人が居ないと、こんな事にはならないんじゃないかと思うんです。

下手をすれば国の外に話を回す必要も有るかも知れませんが、そうなるともう私では手に負えないので、なるべくこの国でそんな被害が無ければ秘密にしていて欲しいんですけどね。

これはかなり悩む難しい話だと思います。


ウェスタリアだけで留めたら、何かが起こったら王様はお仕事なので教会に責任を追及しなければならなくなるので、他所の国の教会の人達が事情を知らなければウェスタリアは神様の敵にされてしまうかも知れません。

でも他国の貴族と無闇に争わせたくも無いんです。」

「⋯ふむ。承知した。

極秘任務として戦士ギルドの上に話を通そう。

こっちの戦士の仕事は楽なもんだから、そこにもこの金を使わせては貰えんか?」

「あ、じゃあそれも別に依頼しちゃいますね。

え~とこれで足りますか?」


私は遮光錬成瓶に入った6級の魔石を一瓶、ドンとカウンターに乗せる。

海で漁に出るとこれぐらいなら直ぐに溜まるから、8級の魔石を加工するのに使おうと思って貯めているのだ。

でも忙しくてまだそこには全然手をつけていられなかったので、まだ2つ目の瓶も有るから放出することにした。

もう1人で漁に行けるので、ケチる必要が無くなったからだ。


「⋯こりゃ全部6級なのかい?」

「私農家の娘なんで散歩がてらに海まで遊びに行けば、海には魔物がウヨウヨいるので、直ぐに溜まるんですよ。

あ、これ。

凍らせてますけど溶けたら早く傷むんで、良かったら食べてみて下さい。

焼いて食べたらすっごく美味しかったですよ。

周りの白いのはお塩なので、そこは避けておいて下さいね。

塩っ辛くなってると思います。」

「⋯しお⋯。

え~と、こりゃ何の肉なんだい?」

「角クジラ鮫です。

ちゃんと皆で食べたけど、問題無かったですよ。

そうだ、コレ良かったら。

肉を魔法で乾燥させたヤツです。

美味しいので沢山作っちゃいました。

生のお魚は他にも沢山有るんですけど、早く調理しないと臭いのでここに置いたら迷惑かなって思うんで、私の手作りで申し訳無いんですけど良かったら皆さんで食べてみて下さいね。」


ついでに葉っぱに包んだビーフじゃないジャーキーも放出したら、お爺さんの笑顔がかなり引き攣っていたので、ジギタス伯父さんとワックスさんがやたらと咳払いをし始める。


それでも私が仕切りにジャーキーの美味しさを伝えると、断り切れなかったお爺さんが控えめに小さく齧ったら、目を見開いてからバクバクと口にいれ始めた。


「美味い!」

「でしょー!」


と、和気あいあいとした楽しい時間になったのでついつい長居をしてしまった。


そして始まりの鐘が鳴ったので、私達は戦士ギルドを後にして錬成師屋さんに向かったけど、朝の6時なのでお店はクローズの看板がぶら下がっているのを見て、それはそう!と、頭を抱えた。


錬成師屋さんは街のお医者さんを兼ねてると考えていたので、夜間も対応してくれるのではと予想してたけど、良く考えたら戦士ギルドが珍しいだけで、まだ他のお店は閉まったままだったのだ。

それでも探したら呼び鈴が有るのに気付いてダメ元で押してみたら、諦めかけた頃に。


「⋯何でしょう。」


と、明らかに寝起きの男性の声で返事が帰って来たから、私は興奮して。


「緊急依頼です!

報酬は黒魔石で支払うので協力を宜しくお願いします!」


と、顔も見てないのに思わず叫んでしまった。

しばらく無言が続いた後で。


「⋯子供?」

「大人も居ます!」

「⋯⋯⋯」

「あの⋯怪しくないですよ?

あ!お父さん!

錬成師さんいたよ!」


かなり警戒をされた様子だったので、大人は忙しい風を装ってアドリブを効かせたら、ギョッとした父が私を無言でみつめた後で少し悩んでから。


「す、すません⋯朝早くから、とにかく大変なんです!

事情はこのまま説明しても構いませんが、依頼を聞いてもらえるのなら教会に急いで来て下さい。

俺達もこれから教会に行かないといけないんです!」

「⋯説明を聞くからそこで少し待ちなさい。」


かなり不信感を与えてしまったけど、何とかギリギリセーフで乗り切る事が出来た。

これはかなり気難しそうになってるから、一芝居打たないといけないかも知れないと、うーんとこれからの交渉について想いを馳せる。


この錬成師さんの立場によっては、協力を受けるにはかなり難しいかも知れない。

でも私の魔法は他人には見えないので、可視化できるあの魔道具がどうしても欲しかったのだ。


「入れ。」


しばらくすると呼び鈴から無愛想な声が聞こえてきた。

私はジギタス伯父さん達に視線を向けて、軽く顔を横に振って行くように指示を出すと、ワックスさんがサインが通じてないジギタス伯父さんをひきずって離れて行く。


そして父はそれに呆れた視線を向けたけれど、直ぐに気を引きしめて私が抱く腕に軽く力を込めてから店のドアを開いた。


チリリン♪

少しお嬢さんの店と音色は違ったけれと、似た甲高い涼の音の様な呼び鈴の音と共に店に入ると、カウンターには神経質そうな如何にもインテリジェンスの高そうな20代後半か30代前半ぐらいの男性が、カウンターの向こうで佇んでいる。


長い髪の色は美しい金髪で横流しに軽く括ってあり、瞳は濃青色で銀縁の眼鏡をかけていた。

美形なのには違い無いけど、かなり高圧的な雰囲気をまとっており、あまり近付きたく無い感じの雰囲気を纏っているけど、こんな朝っぱらから対応してくただけでも充分親切なので、意外に良い人なかも知れない。


「一体何を求めて訪れたか説明をして貰おう。」

「うん。その前に少し確認しておきたいんだけど、錬成師さんは見習いの人になるのかな?」

「む。いや私は錬成師になるが、それがどうした。」

「錬成師?

だったら何で店番なんて⋯あぁ、成る程。

じゃあもう一つだけ。

正式な錬成師さんなら探し物が出来る魔道具は持ってるよね?

こう銀色のこんな形の丸いヤツで、隠れんぼしてても髪の毛を入れたら、そこ!って緑の光で居場所が分かってすっげー!ってなる魔道具だよ。」

「どう言う事だ?」

「あれ?ひょっとして持ってないの?

物の魔力を使って調べる魔道具なんだけど⋯」

「そうでは無い。

確かにその様な魔道具なら所持をしているが、何故お前のような幼い娘がそれを知っているのかと聞いているのだ。」

「あー!ビックリしたぁ~。

ひょっとしたらアイツ独自の魔道具かと思ってすっごく焦ったじゃんかぁ。

何故知ってるかと聞かれたら、使ってるヤツが知り合いで、それを使ってる所を見たからだよ。


本当ならソイツが教会で調べ物をするはずだったのに、ここ最近10日も寝ないで働いてて、薬で誤魔化してたから肝心な時に倒れて寝ちゃったんだよ!

そんな事しないでちゃんと寝ろって言ってたのに、全然言う事聴いてくれなくてさぁ。

もう本当にバカでマヌケな話なんだけど、でも本当に困ってて。

だからもうどうしよう!

って凄く焦って、この街の錬成師さんにダメ元で助けに貰いに来たの!

はいこれ!

さっき言ってた黒魔石ってヤツね!


本当ならその倒れたバカの仕事だったんだけど、もうどうしよもないからアナタにあげるよ!

だからお仕事を手伝って欲しいの!」

「なっっ?!」


カウンターに手をついて本物かを確認するように目を凝らした錬成師は、眉間にシワを寄せて鋭い眼差しで黒魔石を両手に持った私をジッと凝視する。

おそらく私の着ている服や身につけてる品にようやく注意を向けた様だ。


「私は農民の娘で間違いは無いけど、少し前に準男爵になってるから、貴族の娘では無いけどちゃんと貴族だよ。」

「何?!」

「本当だよ。

私の存在は国の極秘にされてるんだよ。

普段はその錬成師が私の護衛としてめんどうを見てるのね。

でも普段の仕事も有るから両立してくれてたんだけど、今回の事でむりが祟って倒れちゃったのよ。

それでも何とかしなければ、この街の住民が全て病死に紛れた毒殺をされて、それを見過ごせない王様を神敵に仕立てて、ウェスタリアと教会で戦争が起こる危険性がかなり高くなっちゃっててね。


それを阻止するために行動をしてたのに、その作戦の途中で倒れて寝るって言う。

今1番ヤバい事になってるから、大至急代役を務めて欲しいのよ。


でも貴族を差し向けると教会が貴族の陰謀として利用する危険性が高いから、領主には頼れない状況になってるの。

オジサン?お兄さん?

が、どこまでえらい貴族の人かは分からないけど、護衛の騎士がついてるなら、平民を装える服装で来て欲しいけど、もし持って無ければ大至急平民の服を戦士ギルドで手配してもらって、戦士を装って貰う必要があるの。


戦士ギルドには先に話しを根回ししてあるから、時間が無いから大至急動いてくれるかな?

この説明だと厳しい?


貴方が居ないとかなり状況が難しいから、この作戦が失敗する危険性が跳ね上がるんだよ。

そうするとヴィルヘルムお爺ちゃんがこの話を聞いた時に、お兄さんがかなりヤバい立場になるって言うか。

もの凄く叱られると思う。

あ、ヴィルヘルムお爺ちゃんって知ってる?

王様が大好きで凄くエライ貴族の人で魔法生物のウェブンを作った人なんだけど⋯知らない?」

「何だそれは!」

「え~と⋯意外とヴィルヘルムお爺ちゃんって、知名度低いかんじ?」

「そうでは無い!

そうでは無くてだな⋯何故そのような国の大事に関わる仕事に貴様の様な幼い娘が関わって居るのかと聞いているのだ!」

「そう言われてもなぁ⋯。」

「そこをシッカリと説明して頂きたい!」

「私って国の極秘なんだけど、本当に聞いて大丈夫?

良いなら話すけど、私平民の娘だったから貴方を守ってあげられるか分からないよ?

なるべく穏便にして貰おうとは思うけど、逆にここぞとばかりに扱き使われる事になるかも知れないけど、それでも良いなら聞いとく?」

「うっ⋯ま⋯待て!

喋るな!

少し考えさせてくれ!」

「鐘2つ目で作戦が始まるから、あと鐘半分ぐらいしか無いけど準備しなくても大丈夫?」

「な!何なんだそれは!」

「だから今もの凄くヤバいから焦ってたんだよ。」

「それを早く言え!

報酬は黒魔石で本当に良いんだな?!」

「うん!激ヤバ案件な上に緊急依頼だし、でも多分この事態は極秘扱いになるから成功させても授章出来ない可能性も有るし、でも国の英雄になるからこれぐらい当たり前じゃない?」

「グハッ⋯」


錬成師さんは心臓発作を起こした様子で胸元をギュと握り締めて、血を吐く様なうめき声を漏らした。


今かなり胃壁に負担がかかってるらしく、父がかなり同情の眼差しを向けている。


「ウチの娘が大変申し訳なく。

私も最近はもう諦めております。

その様な苦しみも何度か経験すれば諦められるかと思うので、頑張って下さい。」

「なっ何だそれは?!

何なんだそれは、ホントにええ?!」

「あの、黒魔石今渡しておきますね?

隠れた英雄の方がまだマシだと思うので、どうか頑張って下さい!」

「ヒッ!」


私がドンとカウンターに黒魔石を置いたら、錬成師さんはまるで呪いの髑髏を置かれたかの様に、黒魔石を見下ろして一歩後退りした。


「準備を急ぎましょう!」

「ままま待て!

わ、私は何をすれば!」

「まず護衛は必要有りますか?

向こうは戦士と主婦と教会の職員一同です!」

「ぬぬっ⋯1人連れて行きたい。」

「平民の服は手に入れられますか?!」

「うっ⋯それは確認が必要だ。」

「他は探し物の魔道具になります。

それ以外は⋯そうですね。

今手持ちに有る1番容量が多い魔法の鞄を念の為に持って行って下さい。

必要ないかも知れませんが、必要になれば困るので!」

「わ、分かった。

魔法の鞄と魔道具なら既に持っている。

少し席を外そう。

護衛に聞いて服が無ければ、案内してくれ。」

「はい!」

「言っておくがこれは特例だからな!」

「勿論です!」

「私はなるべく知らない方向で頼むぞ!」

「状況に寄るかと思いますが、代理なのでそれはちょっと難しいのでは?」

「クッ!!!」


錬成師のお兄さんは、顔に無念!と書いて急いでカウンター向こうの部屋に飛び込んで行った。

厄ネタを持ち込んですまんな。

恨むならアルフィンを使用不可にした神様(バカ)を恨んでくれたら良いと思うよ。


たから嫁に逃げられてんの、分かってねぇだろうな。

アルフィンに何処まで神様が乗り移った影響が残るかで、マジで星が滅ぶかも知れない。

だってここ、天然じゃ無くて人工惑星になるから、メンテナンスする管理人が必要になるよね?


神様のあの言い方なら、多分あの神様は本物の神様の部下になるから、アルフィンが神様と同じ性格のままだと、例え上手く代替わり出来るぐらいの成長をした所で、本物の神様がNGを出すんじゃ無かろうか。

だって自分1人で作った星じゃないのに、腹いせに壊すぞ宣言しちゃったし、何なら私が神様の端末なのも分かって無いからあの状況なんだとしたら、そもそも人間不信なアルフィンは、思いっ切り代替わりの成長を失敗してたんじゃないだろうか。


私が居ないと神様が星を回せなければ私の仕事が滞るなら、本物の神様は今のアルフィンのままだと、代替わりの許可を出せないと思うんだよ。

神様からしたら上司の端末は自分の奥さんだから、そりゃ浮気なんて許せないよね。

仕事と私とどっちが大事なの?!って状況な上に出張先で浮気されたら、そりゃブチ切れ案件だけど。

その端末からしてみたら単に情報収集してるだけなんだとすれば、ウゼェ!お前クビ!ってなるんじゃない?


何でこんな面倒な事になってるのかは知らないけど、もし本物の神様と今の神様が異種族だとしたら、国際結婚の文化の違いから起こるすれ違いみたいな感覚何だろうか?

だから私は神様の気持ちを勉強するために転生を繰り返してるの?

でもそれって変じゃない?

だって私にも人間の感覚が有るよね?

じゃあアルフィンの神様の方が人間じゃ無かったりするのかな?

ううむ⋯よう分からん。


私は端末らしいけど、今は人間なんだよ。

アバターって言うよりも、別個体なんだよね。

だからアルフィン側の方が機能が劣ってアバターになってるから、こんな問題が起こるんじゃない?

魔法の使い方が違うのが、もしそのせいで起こってるんなら、ひょっとしたら一理有るのかな?

そりゃ上司の方が魔法が上手いから上司なんだよ。

はー⋯。

もう何でこんな面倒な。

楽しくほのぼのスローライフをしてたのに、いきなりハルマゲドンを持って来んなや!

私は宇宙飛行士ちゃうねんぞ!

農家の娘だからな!

ハッ⋯え?!

ひょっとして錬成師の勉強って、まんま宇宙飛行士になる為の勉強になっちゃうの?!

だったら法律何て要らんやん!

法律は法律学部で学んで置いて欲しいんだが?!

医療と獣医と科学者と技師の勉強だけでいっぱいいっぱいやぞ!

知ってるよ!

錬成師は宇宙飛行士じゃ無くて街の便利屋さんだから、法律が必要なのは知ってるんだよ!

もー⋯ホント勘弁してよぉ。

私まだ2歳なんだけど?


孫と爺さんなら恋愛せんやろ!って考えた本物の神様の意図が透けて見えちゃうけど、完全に変態には通用して無かったからな!

何なら私も引っ張られたから、無意味とまでは行かなくてもほぼ機能不全仕掛けてたんだよ?

あー⋯コレが問題で、改善出来なければクビになるのか。


はぁ⋯どーしたら良いんだろう。

私はもう人間だから、どっちかと言えばアルフィンの方の神様の価値観の方が正しく思えるんだよね。

だから私はアルフィンを切れないのか。

ほいでこんなややこしい事になってんの?!

そこで私の家族神様化計画なん?

アルフィンが機能不全を起こしてもバックアップが有ればエエやろ!みたいな感覚なのかなぁ?


お姉ちゃんもアルフィンを叱ってたし、そう言うのを求めて私は家族に魔法を教えてるんだろうか?

私にも人間の大事な事を教えてくれてるのはお姉ちゃんだもんね。

あれ?!

ひょっとして家族って言うか、お姉ちゃんが1人追加されたら上手く回っちゃう?

いや駄目だ、あんな鬼軍曹ゴリラのまま神様にしたら、大惨事になるんじゃね?

そこはやっぱりお父さんがいなきゃ抑える人が居なくなるよね?

でも父には母が必要になるから、それで家族神様化計画なのかな?


兄2人も私の仕事を手伝ってくれそうだから、私の仕事が滞る事になっても代理が居れば上手く回っちゃう?!


うっわ⋯マジかよ。

バッチリハマるじゃん!

嘘から出た誠じゃ無いけど、お姉ちゃんは本当に本物の神様に選ばれた魂だったのかな?


怖え!

神様マジパネェ!

え?そんな事もコントロール出来ちゃうの?!

そうだよ!

だって父もアルフィンの神様みたいな所はあるけど、母のあの性格なら空の上に閉じ懲り生活しても下に降りようとなんてしないから、父がアルフィンみたいに嫉妬に狂う事も無いって事?!

やっべえ!

マジで操作してんじゃん。

そんなのありなの?!


怖いぐらいにパズルのピースがハマるから、ちょっと本気で身震いする。


「うん?厠か?」

「あ!そうかも!

錬成師さーん!

厠貸してー!

漏れちゃうー!」


2歳ってまだ下半身が緩いから、何時もは早めに厠に行ってたのに、出掛けにビーフじゃないジャーキー作っててバタバタしてたから、ウッカリ忘れてたや。

でも扉の向こうはうんともすんとも言わないから、本気でプルプルしてたら、警戒態勢バリッバリで平民服着てても騎士丸出しの雄ゴリラが出て来たから、私はなみだ目の上目遣いで。


「もも漏れちゃうぅ。

厠貸して?」

「⋯⋯どうぞ。」

「助かる!」


ものすっっごい疑いの眼差しを向けられたけど、性格的には紳士だったのか。

カウンターの一部を空けてくれたので、お店の奥に父が飛び込んで行った。


「か、厠!厠は?!」

「そこだ。」

「感謝する!」


かなり無愛想だし完全に監視してるけど、父の真面目に慌ててる姿を見て、ちゃんと厠のドアを開いてくれた。


「きゃー!漏れちゃうぅ!」


厠を見た瞬間にもう我慢が決壊してしまい、父がダンクシュートを決めるみたいに洋式便所に座らせてくれたけど。

これって乙女の危機では無かろうか?

厠のドアが全開でゴリラが微妙に苛つきながら見下ろして来るんだよ。


陰謀を警戒して気合い入れてたのに、父娘のアットホームな育児スタイルを見せられて、もう入れた気合が抜けそうになるのを必死に我慢してるのが有り有りなんだよ。


「えっち!みちゃだめ!」

「は?」


そこに急いで身支度した上に何かの作業をして現れた眼鏡のインテリ錬成師が来たから、私は思わずそう叫んでしまった!


「お父さんも出ていって!」

「あ、うん。」


私はついでに父まで追い出してから、シッカリと用を済ませて厠を後にする。


すると外には狭い廊下に大木が3本並んでて、廊下が渋滞を起こしているのに、得意先の若い部長と係長を前に営業の平社員がペコペコ頭を下げてる姿が見えた気がしてはぁ⋯とため息を零す。


錬成師もおそらく騎士もかなり不機嫌で、完全にご立腹だから、こうなるのは当たり前っちゃあ当たり前なんだよ。

でも何でウチの父がヘコヘコさせられてんの?

って、カチンと来るわけさ。


普通貴族なら罠を疑って然るべき事態なので、まだ平民みたいな存在からの要請に協力してくれるだけ、かなり質の高いお貴族様だと思うけど。

そこのヘコヘコさせてんのは次代の神様候補なんやぞ!

とは、言えないから(ハラワタ)がグツグツしちゃうのも仕方がないよね?


うん。

コイツ達なんも分かってねぇんだよ。

だからもう仕方がないよね!

巻き込んで擦りきれるまで使い倒しちゃえと、私はそう決めることにした。


平社員だと思って大きな態度をしてたら、実はその企業の更に上の大企業の御曹司が下積み修行で営業してたパターンにしてやる!

いやもう色々とデカいアクシデントがあっての巻き返しゾーンで、余計な小ネタは要らんのだけど、ウチの父ちゃん舐めてんじゃねぇぞ!

と、大企業の所の孫がキレた感じで、下請け企業の管理職をいびる悪役チビ令嬢が爆誕したのだった。


「お父さん抱っこ!」


可愛いらしくお子様アピールして両手を伸ばすと、父に抱かれた私はまず騎士に向かってキッ!と視線を向ける。


「ちょっと騎士の貴方!

貴方一体何を考えているのかしら。

淑女のご不浄を観察するなんて、何処まで助平なの?!」

「なっ⋯」

「それに錬成師の貴方もそうよ!

未婚の女性のご不浄を見るなんて貴公子の風上にもおけないわね!

この話は上后様にシッカリと報告をさせて頂きますからね!」

『はぁ?!』


ツン!と顎をあげて拗ねた私の演技に、騎士と錬成師の2人がポカンとして薄っすらと口を開けている。


「こら、リリアナよさないか。」

「だって!

未婚の女性の不浄をジロジロ見るなんて男として最低だわ!」

「いやだってお前、それはそうなんだが⋯」

「お父さんはそう言う気遣いが足らないのよ!

家長ならシッカリ抗議してよね!」

「いや⋯まぁ⋯そうだな。

お父さんが気がつかなくて悪かったよ。

まだリリアナは小さいから大丈夫だと思ってたんだ。

ドアを閉め忘れてたお父さんが悪いんだから、錬成師様や騎士様に強く言うのはやめるんだよ。 

今回は特に御迷惑をおかけしてるんだから、これ以上の無礼はやめるんだよ?」

「それじゃあ上后さまに言ったらダメなの?!

言ったらちゃんと叱ってくださるのに!」

「それはそうかも知れないが、その上后様?もお忙しいだろうから、お手間を取らせてはいけないよ?」


その途端『マジかよ!』と、2人の顔色がザッと青くなった。

それはそう。

王族の中でおそらく覇権を握っているのは上后様だからだ。

そしてこれまでとは別方向の面で『コイツ達ヤベェ!』と、警戒がシフトする。


おそらく騎士も錬成師も私が詐欺のサクラみたいな存在かを疑ってたんじゃない?

でも貴族家の中での立場がそこまで高くないのか、もしくは黒魔石の札束パンチが効いてるかで、一応は強盗などの類の警戒はしてたんだと思う。

ただ黒魔石を餌にして強盗は流石にないからと思ってた所に厠を貸して!と、来たから。

騎士は厠に不審物を仕込めないように正しく警戒をしてたんだよ。


だから厠のドアを閉めた父を詰問してたのに、私が上后様を出して来たから、詐欺と真実との狭間で詐欺で揺れてた天秤がガコンと真実にいっきに傾いて、警戒を更に深める事になったんだよね。


何らかの詐欺の被害を受けるよりも、上后様の影響力を考えたらそっちの被害の方がかなりヤバいと、そう考えたんだろう。

男性社会と言えども、女性の不浄をジロジロ見るなんてと言われたら、流石に分が悪いんだよ。

それが幼児だとしても未婚の女性なのはホントだから、嘘として否定が出来ないのがミソだよね。

噂なんて流れて行くうちに面白おかしく歪むものだから、上后様が何もしなくても、そこに仕えてるのはこの人たちからしたら母親か祖母世代の貴族女性になるから、そんな話が女性の貴族社会に回れば、さぞや母親が煩くて堪らないだろうね。


つまり国家的なピンチに加えて、貴族社会のモラル的なピンチが、2人の上にドン!と乗せられてしまった訳だよ。

正に虎の着ぐるみを着た私の猫パンチが炸裂したって所かな。


「駄目よお父さん!

私は宰相のお爺ちゃんから、2人の王子のどちらかと結婚しないかって言われてて、爵位なんてどうにでもするからって⋯」

「わあーーー!

分かった!

失礼して申し訳ない!

こちらの配慮が足らなかったようだ。

だがその様な事情は迂闊に口にするのは如何な物かと思われるのだ。」

「そうね。

宰相のお爺ちゃんは、王様が私を嫁にしようとするから、反応を見ようとして⋯」

「わぁー!

ゴホンゴホン!」

「あ、これって王様が馬女って意味じゃ無くて、魔道具を作るのに⋯」

「分かった!

それは極秘扱いになってる事に通じる情報となるのだ!

だからもうこれ以上は喋るな!

いいか!喋るんじゃないぞ!

特に陛下を馬女だなどと不敬である!」

「そう言う意味じゃないよって説明してただけじゃない!

王様は貴方達とは違うのよ!」

「ぬぅ⋯」


顔にクソガキ!と書いて額に青筋が浮かんでいるが、一生懸命になって我慢している。

その後ろで騎士も更に憂鬱な表情になって来ていた。

これが詐欺ならまだその方が2人は飛び上がって喜ぶだろう。

でも真実だった場合、そこそこ悲惨な末路が頭を過ぎって居るんだろう。

2人には私が口の軽いお子様にしか見えて無いから当然だろう。


「担当の錬成師は今何方に居られるのか聞いてもいいだろうか。」

「ここより4時間ぐらい南西に行った所でグースカ寝てるわよ。

地続きであそこまで行くなら数百年かかるから安全でしょ?

転移の魔道具で私はこっちに来てるだけだもん!」

「⋯さ、左様で⋯あの陛下は⋯いや!いやいやいや!

行こう!

教会だったな!

さぁ急ぐぞ!」


担当者に後で絶対に文句を言ってやろうと思ったから、目に殺気が浮かべて聞いてきたのに、転移と聞いて担当が誰だか直ぐに分かったらしい。

瞬時に殺気を消して、むしろ焦りが顔に張り付いてる。

流石見習いじゃない錬成師は伊達じゃない。

もう一刻も早く仕事を終えて、核爆弾から離れたくて仕方が無くなったんだろう。


王様の安否確認を反射的に確認しようとして、途中でハッとヤバさに気付いたらしい。

もう先導する勢いでスタスタと歩いて店から出ていった。


それに少しだけ年下らしい騎士が慌ててついて行く。

彼は私達の会話だけでは、錬成師が何者かは分からなかったのに、陛下という単語と錬成師の態度から事態の深刻さが振り切れてるのを察して、まるで化け物から逃げ出す勢いで追いかけて行った。


店に鍵をかけなくても大丈夫何だろか?

もうそんなもんどでもいいわ!

みたいな雰囲気になってたから、どんなもんかと思ったから、私達が店から出たらちゃんとクローズが分かるように傾いてた札を直しておく。


もう2人の影も形もないもんで、私は父を案内してゆっくりと教会に向かって歩く。


教会は街の一等地にあるから、錬成師屋さんと距離が近いので直ぐにたどり着く。

すると教会前の広場には大勢の戦士や主婦達が集まっていた。


そして教会前の階段には、そこにも大勢の教会側の職員達が不安そうな面持ちで固唾を飲んで戦士夫婦達の集団を見下ろしている。

コレが戦士だけなら姿を現して無かったかも知れないが、主婦が居るので困惑の方が大きいらしい。

その周りには兵士も集まって来ていて、謎の集団に警戒をしている様子が伺えるものの、どちらかと言えば警戒を向けて居るのは教会側の方に見られた。


そしてその集団の前にあの錬成師と騎士の2人が呆然と佇んでいる。

背中には逃げたい!と、デカデカと書かれていた。


逃がさんよ。

むしろ積極的に巻き込む気満々ぞ?

ウチの父にした仕打ちの意味をたっぷりと堪能させてやるが?


虎の着ぐるみをイメチェンして、悪役令嬢らしくタコの縫いぐるみに着替えた。

巻き巻きの足が立てロールっぽくね?

私の髪の毛も消先が巻き巻きだから、きっと伸びたらお母さんみたいな天然縦ロールになると思うのよ。

悪役令嬢ならやっぱり縦ロールよね!


「皆お待たせー!」


父に抱かれた状態で片手を挙げて紅葉の手をヒラヒラさせながら、明るく声をかける。

するとザッと音を立てて一同が此方に視線を向けた。

不機嫌そうな顔やら不思議そうな好奇心の浮かんだ顔や、怪訝そうな顔に怯えた顔。

焦りを滲ませてギラギラとした強い視線を向けて来る顔など、それぞれ個性豊かな表情と視線が向けたから、父がグッと肩に力を入れて私を守るように抱え込んだ。


それだけで確かな愛情を感じるから、私はぽわぽわと幸せな気分になる。

だから着替えたばかりだったけど、タコの着ぐるみをポイっと脱ぎ捨てると今度はピヨ子モデルのふわふわな羽のある小鳥仕様の着ぐるみを着た。

気分は天使ちゃんだね!

羽は背中に生えてるんじゃ無くて、両手が翼なのがポイントだよ!


そうそう愛情ってこう言うふんわりするのが良いんだよ。

アルフィンのは粘着過ぎてて重いんだよね。

綿菓子が好きなのに、チョコレートに浸けられてる気分になるんだよ。

チョコレートはチョコレートで大好きなんだけど、食べ過ぎたら胸焼け一直線でしょう?

私はライトなミルク増々のチョコレートは大好きだけど、ブラックで重たいのはちょっと好みじゃ無いのよね。


まぁ今は教会のオジサン達や錬成師さんの額に脂汗が浮かんでて、もつ鍋でフードファイトをしてる人みたいな事になってるから、もうちょっと気楽にしようぜ!って言いたくなる。


まぁラーメンのスープを作る系の大型鍋で、作ったもんを全部食え!ってなったら、そんな感じになっても仕方がないのかな?

私は小型のお一人様のお鍋で〆まで楽しんで頂くよ!

そんな調子で余裕ぶっこいて転んだら、背中からプチられそうだからそろそろ真面目にするとしよう!


「お父さん、ちょっと飛ぶよ!」


人垣が多すぎるから教会の三角屋根を掴んで、私と父をグルグル巻き巻きした魔力の手を引いて一気に飛ぶと、錬成師のお兄さんと騎士のお兄さんが大口を開けて愕然としてる。

なんなら脂汗をかいてた上に長い形の帽子を被ってた、教会お兄さんもギョッとして目を見開いてて、顔にヒィッって書いてあった。


そして後退りしてくれたので、ビックリして口がセフメトみたいにVの字になってた父が、地面に着地するとあからさまにホッと息をつく。


「お兄さん達もいくよー!」

『は?!』


私は父の肩ごしに声を張り上げると、顔を強張らせてる2人のウェストに魔力を撒いて1本釣りで階段の上まで引き上げる。

すると錬成師のお兄さんは「うお!」て言って目を見開いたけど、騎士のお兄さんは「むっ!」って気合を入れると着地地点とその周囲をすかさず観察して、スムーズに着地の体制になった。

錬成師のお兄さんが1歩2歩と、勢いを殺し切れずに歩いていたのに対して、騎士のお兄さんは体操選手みたいな感じで、軽く膝を曲げてストンと着地したら直ぐに動ける姿勢をとる。


「な、何をする!」

「紹介しまーす!

今回善意で皆の協力をしてくれる、錬成師のお兄さんだよ!

多分貴族だとは思うんだけど、今回は中立?え~と探し物のお手伝いしてくれる、今回全然関係が無いのにいきなり呼び出されて巻き込まれた、可哀想なお兄さんです!」

「なんだその紹介は!」

「だってぇ事実じゃ〜ん。

今回貴族はご法度だったんだけど、探し物をするのにどうしても必要だったから来てもらったんだけど、教会の人に誤解されたら困るから、ちゃんと関係のない人だよって説明しなくちゃ困るでしょう?」

「ううっ⋯それにしてももう少しこう何か⋯」

「だって名前も知らないし、平民の子供に上等な挨拶しろとかなんて無理言うなって!」

「ぐぅ⋯」


錬成師のお兄さんの顔に、「コノヤロー!クソガキが、舐めてんじゃねぇぞ!後で覚えてろよ!」って書いてあったけど、多分そっちの方がこの事を忘れると思うからスルーした。


「朝から一体何の騒ぎなんだい。」

「貴方がこの教会で1番エライ人?」

「そうだよ。

司祭のジョルノフというんだ。

君は一体何処の誰なんだい。

鐘2つ目がなったら黒魔石と名乗る子供が来るって聞いていたが、君のことなんだろう?

話を聞いても大変なことをやっちまったなだとか、骨がどうとか、悪いヤツがいるからいい奴を全員集めろとか、それしか言わないから困ってたんだよ。」


そう声をかけて来たのは頭にコックさんみたいな高さのある特徴的な帽子を被った、垂れ目で柔和な笑顔をした30代前後で、帽子からは毛先がクルクルとした金髪がほんの少しだけ除いており緑色の瞳をしている男性だった。

ローブを着ているので体型は分からないがヒョロそう。

父との対比で言えば、身長は小柄で170cm越えた所と言った感じに見える。


「それでここにいる人達は教会の職員さん全員集まってるの?」

「仕事がある者はここには来れないから、取り敢えず手が空いてる者を全て呼んで有るんだよ。」

「ふぅん?

まぁ良いわ!

詳しい説明は約束の鐘が鳴ってからするわね。

二度手間になるのは困るもの。

ねえ!戦士ギルドの職員さんは来てるかしら?!」

「お~い!ここだ。

ここにいるぞ!」


今丁度広場に向かって来ている老人の姿が目に入った。

すると「あ、ギルド長!」「ギルド長もか。そりゃそうだよなぁ。」と、あちこちから声が挙がる中で、私は彼も1本釣りする。


「おわーっ⋯とと、そうか。

こうやって使うのかぁ。」


野太い悲鳴は挙げたけれど、一歩踏み出した所で停止していたし、その踏み出した姿勢は居合い抜きする人の姿勢みたいに、直ぐに剣を振れそな構えの形に見えるぐらい、安定感がある姿勢になってた。

すぐにスッと背筋を伸ばしたので、その物騒な姿勢は消えたけれど、騎士が明らかに緊張度を上げた気配を察する。

ギルド長と呼ばれていたお爺さんの方は逆に飄々としていて、余裕を感じさせる所かベテランの貫禄に感じさせた。


これだけ大きな街のギルドの長なら、成る程と言った大物の器だけど人間の数が多いのにこんな管理職が夜勤をしないといけないぐらい、人材が不足しているかと思えば目頭が熱くなる。


おそらく補佐の多い昼の時間帯なら、サブでも回せると判断されてるんだろう。

王様の肝いり事業のある街になるから、下手な人間に人員が減る夜勤を任せられないのかも知れないが、そこはかとなくブラックな匂いが漂って来る。

ただし自主的なヤツ。

多分この人の場合、体力に物を言わせて昼も夜も仮眠を取りつつずっとギルドの主になってそうな雰囲気だったからだ。


昼だと管理職なら何かあってもあまり現場に出して貰えないから、人が減る夜勤を狙って現場に出たいとか、そんな戦闘ジャンキーみたいな動機があったらどうしようと思ってしまう。

それぐらい身のこなしが鮮やかで、上半身に生涯現役!とデカデカと書かれてる気がした。


「よう!チビ。

干した奴、ありゃやっべぇな!」

「でっしょー!」

「あれだけとまらんかったら、癖になったらどーしてくれんだ。

もう食えない奴じゃねえのか?」

「沖に出たら居るかも知れないけど、許して貰えない気がするから、また取れたら頑張って持って来てあげるよー!」

「そりゃ悪いだろ!

そっちの方が叱られるヤツじゃねえのか?」

「その時はお父さんも連れて来るから大丈夫かな?」

「そりゃありがてえなあ!」

「その代わり換金してくれたら嬉しいんだけど、目立たないようにしてくれると嬉しいかな?」

「そりゃコッチから頼みてぇぐらいだが、もうすでにバッチリ目立っちまってんじゃねえか。

今更だろ!」

「タハー!

そうなんだよ。

困ったもんだよね〜。

まぁ自分で工夫するしかないかなぁ〜。」


2人でワハハハ!と笑ってたら、教会のオジサンと錬成師のお兄さんが無言で苛っとしてた。


「さて皆忙しい事だし、まだ鐘2つ目は鳴ってないけど、ボチボチ始めておこうか。

後から来る人たちは、探して貰う方が主な理由だからね。」


そう含み笑いをしながら魔力を滲ませると、私の近くにいた人達が自然と緊張して力を腹に込めてた。


「さてさて皆様。

今日お忙しい時間帯にお付き合いいただき誠に恐縮致します。

今回の事の発端は、そもそもこの街とは全く関係のない所から始まりました。

そしてその説明をしながら、少し確認をさせて下さい。


錬成師さん。

貴方はこの街で長くお仕事をされて居ましたか?」

「⋯いや、3日前に来たばかりだ。」

「3日。

私は村の出身なので街の事は知らないんですけど、見習いじゃない錬成師さんでも店番なんてするものなんですか?」

「基本は見習いが行うが、元々この街で店番をしていた見習いが、師匠の指示で街を離れることになり、突如弟子たちで街の店を回すことになったのだ。

なので私は明日まで当番をする予定になっていたが、それがどうかしたか?」

「⋯いえ、あの。

普段から運が悪かったりされますか?」

「運が良いと思った事も無いが、今日ほど運が悪いと思った日も無かったな。」


私は思わず同情の眼差しを向けてしまったけど、おそらくこの街にいた見習いは、今頃死刑囚の観察日記をつけさせられているのなら、それはそれでそっちの方が可哀想なのかも知れない。


まぁ良い。

取り敢えずこの人がバイヤーの危険性は減ったんじゃね?

そこはまだ確定じゃないけど、会話の中で本当に状況が分かって無さそうな所が白っぽい。


なんだか妙なタイミングで居合わせてるからか、何にも分かってない私の本体の意図を感じる人選に思えて思わず頭痛がする。

確かにこの人は何処となくアルフィンと似た雰囲気を感じるが、全く恋愛に発展する要素が感じられない所が、正に本体らしい人選に思えてしまう。


だが言っておくが、そんな人間と私が仲良く仕事が出来ると思わないで欲しい。

本体は本気で何も分かって無いのが分かった。

この人を私の相棒にさせられるぐらいなら、私は迷わずあのお笑い最強の魔力測定眼鏡のオッサンを相棒に勧誘すると思うのだ。

人間の私はちっぽけだから、何処まで本体に影響力が有るかは分からないけど、このお笑いポイントだけは絶対に仕込んでおきたいと思った。


「ありがとうございます。

では今度は教会の1番エライ人に質問が有ります。

ジョルノフさん。

貴方はこの街で長くお勤めをされておられますか?」

「そうですね〜。

私は3ヶ月前に就任しておりますよ。」

「ありがとうございます。

私はまだ2歳なので教会の方と馴染みは全く無いのですが、教会のエライ人ってそんなにコロコロ変わるものなんですか?」

「⋯大きな街の教会ですと任期が長くなる事も有りますが、大体は10年も有れば移動となりますね。」

「そうなんですか!

ではこの街でもそれぐらいで移動なされるんですか?」

「この街は工事で怪我人が出る事が多いので、治癒の能力持ちで無ければ務まらないのです。

ですので他の街よりも任期はどうしても長く成りますね。」

「そうなんですか!

それではとても優秀な方なんですね!」

「いえいえ、ただ魔力の量が人よりも少しだけ多いだけですよ。」

「ふむふむ。

貴方はもしかして出身は貴族の方なのですか?

魔力が多いと聞くとどうしても貴族の血縁者かと思いまして。」

「そこは申し訳有りませんが、神の家に入る時はみな等しく平民と成りますのでお応えは難しいですね。

教会とは世俗と離れる目的も有りますので⋯」

「それは失礼しました。

事情を知らずに踏み込んで、嫌な想いをさせてしまったみたいですね。」

「いえいえ、どうかお気に無さらないでくださいね。」

「私の様な小さい子供にまでとても丁寧で優しいお言葉を頂けるなんて、流石教育の父ですね〜」

「ハハハ。それはお嬢様がとても美しい言葉を使われておられるからですね。

街の子供が相手だと私もつい言葉が乱れる事も有りますよ。」

「あー⋯、男の子は活発だから、ガツンとしないといけない事も多いですもんね〜。」

「少し良いかね。

その話は長く続くのか?

こちらは店を空けて居るので、早く探し物とやらをしてはどうかね?」

「あ!そうでした。

すみません。

人数が多いので、サクサクしちゃわないと大変ですよね!

誰か代表で例の物を錬成師さんに渡して貰いたいですけど、どなたか⋯」

「俺がやろう。

1番最初にここに来たのは俺だからな!」


最前列に居たのは小汚い中年だった。

目が今か今かとずっと機会を伺っていたらしく、私が全て話終える前に前のめりで目をギラつかせながら階段を登って来るから、騎士がスッとと錬成師の斜め前に立った。


でもそのオジサンは私に矢の様な鋭い視線を向けていたので、父が腕に力を込めとうとした所で私がポンポンと叩いてそれを宥める。


「娘さんですか?」

「半年前だ。

妻は10 年も前に逝っちまった。

へその緒はねぇが、櫛ならある。」

「おそらく私でないと櫛は難しいかも知れないです。

でも一度錬成師さんに試して貰っても良いですか?」

「⋯あぁ。頼む。」


私に差出された櫛とおそらくへその緒の入ったちいさな革袋を魔力の手を纏わずに直接受け取る。


「錬成師さん。

この櫛とへその緒でどの方角に光が伸びるかを確認して下さい。」

「へその緒?

一体何を⋯???」

「お願いします。

私の魔法だと光が出ないので皆に見えないので。」

「⋯承知した。」


教会の人達は殆ど???となっていたけど、ジョルノフは微笑を浮かべていたので、私はそれを確認した瞬間。

へその緒が銀の懐中時計に入れられる前に素早く魔力を分析してから、祠の前の地面に同じ魔力に似せた偽物の魔力に染めておいた。

すると緑色の光が一直線に教会に向かって伸びていく。


「なっ!そんな!」


ハッとして顔を強張らせて唇を引き結ぶと、額に汗を浮かべながら敵意の籠もった瞳を私に向けて来る。


「どうされました?」

「⋯いいえ。」

「とても汗をかかれてますね。顔色が悪いと思うんですが、体調は大丈夫ですか?」

「⋯⋯お気になさらず。」


ジョルノフの態度が明らかに代わって表情が暗く沈んだせいか、静かにしていた小汚いオジサンが突然無表情になったと思った瞬間には、汚い爪をしたその腕を素早くそのエライ人に突き出す様にして伸ばす。


「離せ!

殺してやる!

アイツを殺してやる!!!」

「黙れよ。」


その垢で黒ずんだ指先がジョルノフに届く前にピタリと動きを止めて、不自然な姿勢のまま空中で縫い止められたオジサンが悲痛な叫びを挙げた。


そして私が冷ややかにそう短く告げると、オジサンはギッと血走った瞳を私に向けて来る。


「庇うのか!

テメェも教会の回しもんなのか!

ぶっ殺してやる!

ぶっ殺してやるからな!」

「あーあ、もう八つ当たりとか勘弁してくんない?

あのさぁ。そんなことより早く骨を探して迎えに行くのが先なんじゃね?

アンタは憂さ晴らしで人を殴りたいだけなのか?

それとも娘を助けに来たの?

なぁ⋯どっちなんだ言ってみろや、このクロカスゴミクズ野郎がぁ!!!」


とぼけた調子でゆっくり話していた所を言ってみろやの所から口調を早めて、最後には魔力パンチと一緒に怒鳴りつけると錬成師のお兄さんと騎士は唇をVの字にして固まり、遅れて後退っていたジョルノフはビクッと肩をすくめて目をギュとつむる。

そして半狂乱になったオジサンは白目を剥いて失神しかけて居た。


あっ⋯どうしよう!

ちょっと魔力パンチがキツかったのかな?

私も内心は大慌てになりながら、オジサンの身体を魔力の手でガクガクと揺する。

なんかポルターガイストみたくなってて、悪魔に身体が乗っ取られてる人みたくなった。

そのせいで広場にいた女性達から怯えた悲鳴が挙がったから私は更に焦った。


起きてー!お願い起きてくれないと錬成師さん連れてきた意味が無くなっちゃう!

私は今捏造してるだけだから困るんだよ!

他を探す前に魔力を遮られてる原因を探さないといけないから、早くおきてー!!!


祈りが通じてくれたのか、オジサンとハッと我に返った。

私は背中に冷や汗がどっと噴き出すのを感じて、大きなため息を心の中だけで吐き出すと、ちゃんと地面に立てるように元の場所まで後退させてから、魔力の手を優しく動かす。


「取り敢えず落ち着こうね?

娘さんはお父さんが来るのを待ってるんじゃないかな?

お父さんはもう!

喧嘩と私とどっちが大事なの!ってイライラしてるかもよ?」

「うるせぇ!

そんなこたぁ言われんでも分かってる!

クソっ一体何だってんだテメェはよ。」

「何って言われても黒魔石だよ。

聞いてるよね?

それともまた奥さんや娘さんの時みたいに話を聞き流しちゃったのかな?

何時もガミガミ煩く言われて無かった?

今だってきっと私達を迎えに来たんでしょ!何ヤッてんのよ!ってガミガミ叫んでるかも知れないよ?」

「クソッ⋯全く死んでもうるせぇとか呆れて泣けてくら⋯」


オジサンはそう毒づいたけど、片手で目元を覆って嗚咽を噛み殺してる。

奥さんや娘さんの声を思い出したみたいだ。

奥さんを早くに無くして娘さんを1人で育てて来たのかな?

だから娘さんも奥さんみたいに、気が強かったのかも知れないね。

まだ40代にもなってなさそうなのに、人生が終わったみたいになってるから、他に身寄りが居ない感じがヒシヒシと伝わって来る。

きっと娘さんを無くした半年前からずっと腐ってたんだろうね。


「教会の人達だって人間だからさ。一生懸命にやってても失敗する時はするんだよ。

ほら早く緑色の光の方に皆で行こう。

教会の人達で何やってるのか分かって無い人も、ちゃんとついて来てね!

そこのジョルノフさん?

教会の1番エライ人もだよ。

皆ちゃんと分かってるよ。

少し感情的になって八つ当たりするかもだけど、あ、八つ当たりじゃないや。

これは正当な怒りだよね?


だって此処に骨を埋め時ますんで!って言って置いて全然違う所に埋めちゃってるんだから、そりゃ家族はあれ?!

泣いて祈ってた場所にいないの?!

うそん!ってなるんだよ。


そりゃそこに居ると思って話しかけてたのに、後ろからコッチコッチ!って言われたらもの凄く恥ずかしくなるやつだから叱られてもそこは我慢してよね。


全然知らなかった人達も巻き添えで叱られるかもだけど、そこは同じ所に住んでて気が付かないのも連帯責任だから、叱られるのは嫌だろうけど付き合ってあげてくれるかな?


錬成師さんはホント巻き添え何だけど、皆の娘さんや奥さんがお墓じゃない所にいるみたいだから、探してあげて欲しいんだよ。

忙しいだろうけど、宜しくね!

さぁ行こう!」

「ま⋯待って下さい!」


私がそう広場に向かって声をかけたら、ジョルノフが思わずと言わんばかりに片手を伸ばして歩きだそうとしている父の腕にしがみつく形で引き止めようとする。


父は振り払うかで迷った結果、帽子の縁を汗で変色させながら蒼白な顔色になって、怯えた瞳で必死になった表情のジョルノフを見て、結局そのまま片腕に私を乗せると彼がしがみつくままにして身長の低いジョルノフを見下ろす。


父の方が彼よりも身長が高くガッシリしてるので、この数分で元々細かったジョルノフが、大汗をかいて更に激痩せした様になりながらしがみついても、父はびくともせずに、そのままジッと立ち止まっている。


「お願いします!

骨は必ず皆さんの前にお届け致します。

正しい場所にもお連れします。

私は何を拗じられようと構いません。

ですがどうかこちらでお待ち頂きたくっっ⋯こちらの都合で申し訳有りません。

ですがどうか、どうか私にお任せ下さいっ⋯お願いします!」


汗だくで目に涙を滲ませて、真っ青な顔色で血を吐くように懇願する姿は、どうにも演技をしているように私は見えなかった。


「この人は黒だけど白だ!

この人は責任者だから事情は知ってるけど、実行犯になる人は他にいる。

だからこんなに必死になって止めようとするんだよ。

つまりその実行犯を止めなければ街の惨事は止められないって事ね。」

「っっっ⋯」

「この状況になったら動く人達はどこにいるの?

貴方なら居場所を知ってるよね。」

『ざわ⋯』


事情を知ってる戦士や妻達が小さく呻くとさざ波みたいな音になった。

騎士は雰囲気は察しても状況はまだ完全に???だけど、錬成師は教会の人の態度と私の言葉を拾って、否応なしに高まる緊張感に必死に状況の把握しようと務めている。

教会の事情を知らない人達も上司の態度から、只事ではない状況に不安そうな表情を浮かべた。


私からの詰問に教会のエライ人は、懇願する様な眼差しを向けて瞳を揺らしていたけれど、唇をパクパクと少し動かしては、苦痛に耐える様に顔をギュと顰めて、諦めたのか力なくがっくりと項垂れる。


「そう⋯聖約まで悪用するのね。

教会は何処まで平民をバカにすれば気が済むのかしら。

平民を守るためだと言った口で、病で死んだ平民の身体から毒を採っては貴族に売り払って金を稼ぎ、バレそうになったら街中に病をバラ撒いて大勢の平民を殺すのね?


それで王様が怒れば今度はその王様を神敵にして、自分達は無実だと言い張って保身の為に戦争を起こし、更にそこでも平民大勢を殺すんでしょう?

させないわよ。

私が全部潰すもの。


まぁ貴方はただの被害者みたいなもんだから、裁きを受けて破滅するのは、立場の弱い貴方にこれまで理不尽を強いて来た上の人間達ね。


貴方は元貴族よね。

容姿の色もそうだけど、私がワザと口調を敬語に切り替えても、違和感も感じずに幼い子供にまで敬語を使うぐらい敬語に慣れてるし、治癒が出来るぐらい優秀なんですもの。


妾の子供か何らかの事情で貴族では生きて行けないから、平民になったけど、途中まで貴族として生きてたのなら、貴族と敵対してる立場の教会だとかなり肩身が狭いんじゃない?


だからこうしてそのクソみたいな上司に、汚れ役を押し付けられた上に、働きたくもない悪事に加担させられたのね。

だってもう他に行き場の無い、元貴族のお坊っちゃんだもの。


悪事がバレてもし逃げられないとなったら、責任を全て押し付けて切り捨てた所で、身内から責められる危険性はないから、便利に使われるわけだわ。


良く頑張って耐えたわね。

おめでとう。

これから立場の弱い貴方に理不尽を強いるようなバカ共は全て滅ぶわよ。

病も私が消すから問題は全く無いわね。

だから貴方は何の気兼ねも無く、正しい形で生きなさい。」


ジョルノフはゆっくりと顔を挙げると、悲しそうな目をして頭を横に振ってそれは無理だと態度で示す。


「そもそも教会はもう詰んでるのよ。

悪事を働けば働くだけ、自滅して破滅への道を進む様な事に、もうなっちゃってるんだよね。


何故なら私がこの病を知ったのは、10日も前に私の故郷の村で身内に病で無くなった人の話を聞いたからなのよ?

だから自宅の厠で大量発生した虫が、何処から来たのか成体が居たから気づいたの。


その虫は4級の魔物だから、普段は森の奥の5級以上の魔物の毛皮にくっついて生きて行く生態があるのね。

でも農家で食べる程度の魔物の身体には、つかない虫だったのよ。


だから私は川に住む魔物じゃないかって予想したの。

何故なら3級の魔物でシャムって言う鳥が居てね?

鳥って歯が無いでしょう。

だから食べられても噛まれないからお腹の中で生きているんじゃないかなって考えたのよ。


それと病になるのは村では、女性ばかりだったのね。

その特徴は手荒れよ。

だから手荒れのない女性は病にかからなかったの。

村の戦士や料理人や肉屋が無事だったのは皆作業中は手袋をつけてたからなのよ。


今後女性達は川にいた魔物を料理する時は手袋をしてたら良いんじゃない?

そしたらこの街でその病になる女性はもう居なくなるんじゃないかしら。


虫を育てたいなら川から魚や鳥を採って来るか買うかして、育てたらこんなバカ騒ぎしなくても、良いから私はそっちを勧めるわね。


あと貴族に売りたくても、もう治療方法もみつけて報告してあるから、売れないわよ?

だって治っちゃうから毒を盛っても死なないもの。


教会にも上からその話が行くだろうから、そのうち街で病になって死ぬ戦士も減りそうよね。

そこは浄化の資金によるから教会次第でしょうけど。


それと虫を成体まで育てたら、極小の魔石が取れるから、売ったらどうかしら。

貴金属やお守りにするのに使えるから、同じ4級の魔石よりも貴重みたいよ。

値段は戦士ギルドと交渉になるでしょうけど、貴族に毒を売るより健全な稼ぎになると思うんだけど、そこまで口に出すのはどうかと思うから教会の好きにしたら?

ちなみに4級の通常サイズの魔石は小金貨1枚よ。

あら、どうしたの?」


ジョルノフは目が零れ落ちそうなぐらい目を見開いてるし、泣いてたオジサンも泣くのは止めて唇を震わせながら、信じられない!みたいな顔になってて、他の広場にいた人達が全員似たり寄ったりの状態になってるけど、錬成師のお兄さんの顔芸が1番面白くなってた。


クールを気取ってたいけ好かないエリートサラリーマンが、顎が外れんばかりに大きな口を空けて、全員をワナワナと痙攣を起こしたのかと言わんばかりにプルプルと震えているからだ。


「何だそれは!」

「うん?」

「何だよ!なんなんだよ!

それじゃ俺の娘は!

娘は手荒れが原因で死んじまったって⋯何だよ!

手袋で死なないってなんなんだよっっっ!

なんで⋯なんで今更っっ!」


汚いオジサンが喉が張り裂けそうなぐらいに大きな声を出して叫べば、広場に嗚咽が広がって行く。

1番私達の側にいたジョルノフは突然身体を震わせると、頭を抱えて床に崩れ落ち、両膝をついて頭を地面に擦りつけたから特徴的な帽子が脱げて床に落ちている。


「うん???

オジサン、さっきの長い話が理解出来たの?」

「うるせぇ!

なんで今なんだ?!

なんで、なんでっ⋯」

「ふぅん?

私2歳だから産まれてからそんなに経って無いもんで、半年前は錬成師の事も知らないぐらいのバカだったし、最近勉強して使える言葉が前よりは分かるようになったけど、今なのはこの街に来たのが鐘4つ前ぐらいだからかしら。

ホント大変だったのよ。

早く知らせないと大変な事になると思って、一生懸命に頑張ったんだから。


私はこんなだがら国から重宝がられて、悪い人に使われないように王様が大事に隠して保護してるからホントは秘密の存在で、こんなことをしたら私の家族も危ないし、国のエライ人達から叱られちゃうのよね。


でも何とかしないとヤバいのが分かるから、私はこうして姿を晒して動いてるの。


だから私は貴方の娘さんには間に合わなかったけど、貴方が死ぬ前には間に合ったじゃない。

そしてこれから貴方と同じ想いをする父親の数が少しは減るんじゃないの?


でもこんな悲劇が完全に無くならないのが分かるから、私は貴方を救ったのよ。


これからは事故じゃ無くて、人の手に寄って貴方と同じ想いをさせられる父親が現れるの。

何故ならそんな事をするバカが、まだ教会の中に居るからなのよね。


次からは生活してて偶然病気になるんじゃ無くて、病気の元になる虫を井戸の中に入れたり、麦粥なんかの食事に混ぜて、教会の中に居るバカ共が人間を病気にして行くんじゃないかしら?


私はそれを阻止するために、今日貴方を含めたこの街の戦士達全員を救ったのよ。」

「そんな!」「バカな!」「なんでそんなバカな真似を?!」

『ざわざわ⋯』


掘り出し物らしい小汚いオジサンは、呆然とした顔をして私をジッと見つめている。

広場から混乱するような悲鳴が挙がる中で、その汚れたオジサンは探るような眼差しを静かに私に向けていたのだ。


「教会が不治の病を作ってたのは、元々はそれを平民を虐げる悪い貴族と闘う為の武器にしてたからよ。

素直にぶつかっても貴族が強くて教会の人間が大勢死んでしまうし、それでも倒せないこともあったからじゃないかしら?

貴方もさっき体験したわよね。


まぁ私は平民だけど、貴族から貴族になれって言われるぐらいにかなり特殊ね。

でも貴族と平民の闘う力の差はそれぐらい開いてるのよ。


でも病を作るなんて悪い事だから、秘密にしなくちゃいけないし、バレたら教会が周りから大変な目に遭わされるから、貴族出身で帝王学を学んでたかその知識に振れた経験の有る元貴族だった人が、教会と言う組織を守る為に自己犠牲を発揮して、何か問題が起こった時の対応として、身内の尻尾を切る形で運営する知恵を平民の組織の中に遺してたんじゃない?


それが長い年月の間、切り札として守り継がれて来てたのが、時代が変わってくウチに悪人になる貴族を自分達でも取り締まるようになって来て、病を使って退治するような悪い貴族は減って来たんじゃないかしら?


そこで余った薬を平民達へのほどこしや、自分達の生活費なんかにするために、欲しがる者に秘密にして売るような事が起きたんじゃないかしら。


そんな事を思いついたバカはきっと死ぬのは平民じゃないから良いだろうと安易に考えたのかも知れないけど、国からしたらとんでもない話になるわよね。


だから弱くて断れない立場の人間を利用して、尻尾を切る形にしたり、場合に寄ったら秘密がバレた時に街ごと真実を葬ってしまえるバカを育てる様にはなったのかも知れないわよね。


だってこの話は秘密だから教会の中で知る人たちはものすごく少なかっただろうから、バレて国から叱られたら冤罪だと思って真面目に反撃する人も出てしまうし、そもそも教会の組織事態が信用ならないとなって、国から厳しい管理を受ける事になりかねないからね。


でもそんな事をされたら本当に戦わないといけなくなっても、闘う力を奪われてるから教会はちゃんと戦えなくなるわ。

それは教会としては許されない事なのよ。


今日私はこの街を救ったけど、教会は世界中の何処にでも有るのよね。

私はまだ幼いからウェスタリアの中の事で手一杯なの。

でもそれすらもロクに出来ないんじゃないかと思って、戦士ギルドに依頼を出してるのよ。


教会の中で働く大多数の人達は、そんなバカな事をしてる者が仲間にいるなんて夢にも思って無いの。

でも教会の中に居る一部の人間は、それが正しいと思って行動をするのよ。

だって自分が贅沢をしたいからじゃ無くて、皆の為に我慢してやってるからよ。


ウェスタリアだけでも今日のこの情報が伝わるのに、どれくらいの時間がかかるのかしら?

私にはそれを伝える手段は無いし、何処にそんなバカが居るのかも探せないじゃない?


だから同じく世界中に有る戦士ギルドの戦士を利用して、そんなバカな事を正しいと思って、人間の死体を悪用してるバカ共を止める為に、依頼を出したんだけど。

出来る範囲で構わないから、それを受けて手伝ってくれると嬉しんだけどね。


まぁそれは強制なんかじゃ無くて、個人の自由だからするものしないのも戦士達の自由なんだけど。

もし少しでも手伝ってやろうかと思ってくれる人がいたら、戦士ギルドで依頼を受けたり、仲間に今日の話を正しく伝えてくれるだけでも助かるわね。

言っておくけど、教会と戦争しろだなんて私はひと言も言って無いわよ。


何なら今日この教会に隠れてるバカから探して捕まえて、理由を話して無駄に街中で毒をバラ撒いたりしないように説得してくれないかしら?


ホントならこう言うのって国の貴族がする仕事なんだけど、貴族が動いたら教会はそれに反応して、聖戦だなんて馬鹿げた看板を盾にして暴走しちゃうのよ。

だから兵士や騎士は動かせないし、絶対に動いたら駄目なのよ!


貴族が動けばやらなくていい悪事を、教会の中で立場が弱くて虐げられてる人間がやらかす羽目になっちゃうし、それをされたら国だって本気で動かざる負えなくなるの。

そうしたらそれを知らない真面目に働く世界中の教会の人達が、誤解をして大暴走を起こすのよ!


だからそんな悲劇が起こらないで済むように、平民の戦士達に仕事をして欲しくて私は頼んだの。


報酬はこれから依頼を取り下げ無い限り、地道に追加分を払って行くつもりなんだけど。

こんな話に興味が無かったり、バカな戦士が暴走するのも困るから、この仕事はちゃんとしてる人にやって貰いたいのよ。


家族がいて街から離れられない人も居るだろうから、こんな話があったよ。

バカをやっても無駄になるだけだけ、教会の良い人達につたえておいてねって、ちゃんと正しく話を理解してくれる賢くて街から動ける仲間に教えてくれたら、問題がある村や街で人手が必要になった時に、そこのギルド長の指示に従って動いてくれたら良いのになって思うのよね。


病気の話を聞いて、それが自然の物なら虫の仕業だから手袋をしろって伝えてくれたら良いし。


明らかに病気のなり方が不自然だったら、ちゃんと正しく話を理解してる戦士がそこに居てくれたら、バカを捕まえてそこの教会の上の人に止めるように説明出来るでしょう?


教会の中で自主的にこの事をやってくれたら良いんだけど、立場の弱い人の居場所が更に無くなって、下手に暴走する人間もそのうち現れるんじゃ無いかと思うのよね。


それに身内の恥なんて広めたくないじゃない。

だから隠そうとしたり、言い訳なんかするから、どんどんこの事が隠れた悪事に利用される気がしちゃうのよ。


戦士達が動く時は、最後の砦みたいなものかしらね。

私が死んだら報酬を払う人が居なくなるから、そのうち廃れちゃうとは思うけど。

その頃には教会で正しい知識と対策が芽生えててくれるなら、それはそれで良いんじゃないかと思ってるのよ。

だって欲張っても仕方がないでしょ?


貴方の家族は取り戻せないけど、神様の名前を利用した悪事を諌めてくれる仕事を頑張ってくれるんなら、神様は見てくれてるらしいから、そんな人達に感謝して空の上でまた別れた家族と合わせて貰えるんじゃないかしら?


そしたら奥さんも娘さんだって、困ってた神様を助けてたなんてお父さん凄いじゃない!って褒めてくれるかも知れないわよ。


まぁ此処まで言っちゃうと、子供の夢みたいな都合の良いたわごとに聞こえちゃうだろうから。

そこは子供の頃にお世話になって迷惑をかけてた教会の人達に、恩返しが出来たかな?ぐらいに思ってくれてもいいんだけどね。」


汚れて汚いオジサンは目をギュと閉じると、顎を上げて顔を空に向けながら静かに涙を零す。

他にも広場にいた泣き崩れそうになってる妻を抱いて支えてる戦士達や大声で泣き喚いてる戦士や、泣いて無くても目をギュと閉じる戦士や腕を組んで私を見てる戦士など様々な形で喪った家族を悼む人で溢れてた。

想像以上に老人が少ないのは、それだけこの現場の過酷さを物語っている。


ソレを囲んで見守っていた兵士達も、皆それぞれが様々な様子で、拳を握って俯いてたり顔を押さえて泣いてたり。

静かに涙を流してたり、腕を組んで難しい顔をしてたりしてし、教会の人達は信じられずに混乱してたり、中には号泣してたり、女性達は身を寄せ合って不安に怯えて震えているし。

教会のエライ人も地面に頭を擦りつけて、土下座スタイルのまま号泣し続けていた。


「だから立ちなさい。

貴方はこれから誤った行動を起こす仲間達を救う為に奔走しなくてはならないのよ。

そんな貴方にとても素敵なプレゼントをしてあげるわね。


これは神託よ。

神様からの伝言なの。

ものすごく疲れたからこの星を砕いて壊すらしいわよ?

なにせ運が悪い事に代替わりする予定だったみたいで、次代の神に仕事を引き継いで円満に退職しようとしてたら。


貴方達が次代の神様になる人を神敵にするせいで、罪もない自分の子供達を沢山殺す未来が見えちゃったんですって。」

『⋯⋯⋯え?』

「私もはぁ?ってなったわよ。

だって私はまだ2歳だし、農家で産まれた平民の女の子なのよ?


でも仕方がないから、そんな事はさせません!って私はそうするしかもう無いわよね。

愚痴を聞いてたら奥さんに逃げられ続けてて疲れてたみたいだから、とにかくその場しのぎで奥さんを捕まる方法を教えといたから、今は時間を稼いでる所なのよ。


だから貴方にバカな命令を出してる上役に伝えておいてくれる?

まだするつもりじゃ無かっただろうけど、この国の王様。

アルフィン・ドンネスト・レベリ・アタカ・ウェスタリアは、記憶を無くして次代の神様になる修行してた神様の分身だから、間違っても神敵になんてしないでね?

神様からしたら我が子に手をかけさせられるなんて、どれだけしんどいか分かるでしょう?


アルフィンが上手く次代の神様になれたらいいんだけど、実はこの世界って夫婦で神様をやってたみたいなのよ。

だから今度は奥さんの方が激怒してて、もう離婚の危機って言うの?

私もホントにどうして良いやらって感じなんだけど。

今回の事でアルフィンが無事に次代の神様になるだけじゃ駄目になっちゃったのよ。


だって無理心中しようとする旦那の複製とは上手くやってけないじゃない。

だから仕方がないからアルフィンを補佐してくれる人を大至急で神様候補に育てなくちゃならなくなったのよね。

もうね。

こんな事を言われても私なんかにどーしろって話なんだけどさ。

ちょっと聞いてる?

ジョルノフ、アンタもやんのよ。

アルフィンが次代になった時に、奥さんが認めてくれなかったら、アルフィンとこの国の人達を連れてこの星から逃げる羽目になってんのよ。

アンタもそうだけど、そこの錬成師さんも奥さんが選んだ候補の1人なんだから頑張りなさいよ。

多分そこの突っ立ってるオジサンも大分怪しいけど、神様ってなりたい人がなるんじゃ無くて、生き様を認められた人が神様をやれ!って押し付けけられちゃうのよ。」

『はぁ?!』


「正直に言えば星が無くなるか、管理人が居なくなるかの瀬戸際なのよ。

でも管理人が庭師だとしたら、この星が庭師の居ない庭にになれば、人間が生きて行ける世界じゃ無くなるんじゃないかしら?

私が死ぬか、アルフィンが死んだ時点でこの星は神様がドッカーンて壊しちゃうから。

その前に私はアルフィンのお手伝いをしてアルフィンを次代まで押し上げないといけないし、私自身も家族を守りながら、この星の勉強や文化を学ばなくちゃいけないから、正直に言って貴方やそこの戦士のオジサンや錬成師さんの面倒とか見切れないのよね。


だから自分で頑張って生きて神様に認めて貰ってくれないかなぁ?

私も機会が有ればなるべく手助けするかもだけど、まだ2歳なのに色々と仕事をしすぎててんてこ舞いなのよ。」

「なっ!何だそれはぁ!」


錬成師のお兄さんが血相を変えて怒鳴って来る。

私はイライラしてたけど、急にストンと気持ちがスッキリと落ち着いた。

いきなりピコンと来たからだ。

どうやら私は大きな勘違いをしていたらしい。

何も分かって無いのは私の方だった。

それに気付いてタコの着ぐるみを着るとニンマリと口元を歪める。


「じゃあ貴方から説明したげるわね。

貴方の仕事はこれから皆の家族を引き合わせてあげることよ。

それが終わったらお土産をあげるから、ヴィルヘルムお爺ちゃんに黒魔石からの伝言で私の魔導錬成師はグースカ寝てるけど無事な事をつたえておいてね。

じゃないと王都がてんてこ舞いになってるとおもうわよ。

貴方のここでの任期が終わってからで良いから宜しくね!


それとサラディナーン様とギルバートさんに会ったら今日のこの話を伝えておいてくれるかしら。


貴方はきっと出会うはずよ。

そしたら2人とは仲良くしておきなさい。

私がアルフィンに協力して次代まで押し上げても、家族まで連れて行ったらきっとアルフィンの方の神様はブチ切れちゃうから、そしたら私は本体と合体して神様と戦わないと行けなくなるのよ。


そしたら神様同士の喧嘩になるから、この星が大惨事よ。

だから貴方はサラディーン様達と協力して、この星から皆を連れてイスガルド大陸を飛ばして、逃げ出さないと行けなくなるわね。


サラディーン様は次代の国王になってこの国だけじゃ無くて、世界中を治めなくちゃならなくなるから、貴方は補佐として宇宙を飛ばす大陸の運営やら、国の仕事でてんてこ舞いになるから、ギルバートさんと仲良く協力して仕事をしなくちゃならなくなるの。


貴方かギルバートさんのどちらかがサラディーン様の王配になるか宰相になるかはそこら辺はサラディーン様との兼合いだから、私には分からないけど。


少なくてもそうなる可能性が有るから、錬成師の仕事の合間に宰相の仕事も勉強しておいた方が良いわよ。

だから騎士のお兄さんは責任重大ね。

その横にいる人は最低でもこの国の宰相か王配になる人で、下手をすればこの星から逃げ出す為の神様になる人材になる人だから、死なせたりなんかしらど偉い事になるわよ。


しかもその人もものすごく忙しくなるから、せめて書類仕事ぐらいは手伝えるようにならないと、やってけない状態になるんじゃない?

だから貴方も今のウチに勉強しておいた方が良いわよ。」

『はぁ?!』

「戦士のオジサンはそこのギルド長に鍛えて貰って仕事を覚えときなさい。

そのうちギルド長か貴方が戦士ギルドのテッペンまでのし上がるんだから、シッカリ頑張ってね。

私が上手くやれたら人間で終われるけど、失敗したら最悪死ぬか、最高ではイスガルド大陸を飛ばすハメに無った時に、残念ながら貴方もきっと神様候補よ。」

「えぇっっ?!」

「そして地面に突伏してる貴方は教会のテッペンまでのし上がって貰うわよ。

バカ共を排除して戦士ギルドと上手くやれれるのは貴方しか居ないんだからね。

他の人と同じよ。

最低で教会のトップで済むけど、最悪の場合は貴方も神様候補にされちゃうわね。」

「む、無理です!」

「そうなるわよ。

だって私の本体がそうなるように道を整えるんだもの

私は今の教会が嫌いなのよね。

自分の為に頑張ってるのに、やれ平民の為だとか神様の為だとか、そんな下らない妄想に浸ってるバカが多いから、こんな下らない失敗をやらかすのよ。


人間は自分を幸せに出来ない人は、他人も幸せになんて出来ないのが普通なのよ?

だから誰も教会で働きたがらないから、生き場を無くした人が集まって、やりたくない仕事をさせられるから心が醜く歪むのよ。

だから教会で働いてる人が楽しく生きて行ける仕組みを作ってよ!


結婚したって良いし、無料奉仕は出来る範囲で構わないから、ちゃんと美味しいご飯を皆で食べるのよ。

その代わり正しくお金を稼いで、国からもちゃんと給料を貰いなさい。

教育なんてしんどい仕事をやられてるんだから、それは当たり前の話なのよ。

そして平民だけじゃ無くて今まで通りに人として生きる為に必要な優しい心が育つ為の勉強を教えてあげて欲しいのよ。

そしてその教えに準ずるように自分達もそれを大事にして、弱い立場の人を守ってあげてね。

それをするにはその大切さが分かる人が上に必要なのよ。」

「うぅ⋯」

「まぁ今のアンタはまだ全然弱いから、賢く振る舞って生き延びる事だけを考えて生きてれば良いわね。

そのウチ道が整ったら、楽しく働ける範囲で自分が出来る事をやればいいのよ。


ここにいる人達も全員がそうよ!

無理して辛い想いをしたって良い事なんて1つもないのよ。

でもそんな健気な貴方達だから、神様は愛おしく思うんでしょうけどね。

でも人を平然と虐げて勘違いしてるバカが嫌いなのを覚えて周りに伝えておいてちょうだい。


私の言葉を信じる信じないは、全て貴方達の自由だからそこは任せるわね。

今の私は紛れも無く人間の女の子なんだもん。

偉そうに先の話を言われたって、その人の行動次第で進む道が全て変わるんだもの。

今の未来予想図なんて状況次第でコロコロ変わるから、気に入った案だけ信じて使うぐらいで良いんじゃない?


今回はちょっと例外なのよ。

あのバカがやらかして状況が緊迫したから、本来なら当事者が自分で経験して学ぶ事で身につく物を、私なんかが強引に割り込んで介入しないと、悠長にしてる時間がないんだよね。

ホントなんでそんなバカな事になってるのかは、人間の私には神様の証言と私の行動から予想して考えなくちゃいけないから、ホント止めて欲しいんだけど。

あのバカが言うには、私は彼の奥さんらしいのよ。

だから今も45歳と2歳でありえないぐらい年が離れてるのに、アイツはことある事に私を嫁にしようと口説いて来るのよね。


頭沸いてんのかこのクソジジイ!とかコッチは本気で思ってだけど、このすれ違いは向こうが言うにはアルフィンよりも私の方が上の神様らしいのよ。

2人で石ころだったこの星を作ったらしいんだけど、そこに2人で作った子供を入れたから、アルフィンのほうからしたら私は奥さんだから、しょっちゅう子供達の中に降りて遊んでると勘違いしてんのよ。

でも私からいわせて貰えば、アルフィンは単なる仕事の部下で、子供達は共同で作った作品みたいなものなんだよね。

だから変なすれ違いが起こってこんな事になってんのよ。


アルフィンからしたら記憶を無くして子供達の中に混ざってるから、他の男と浮気してたり危なっかしいから見てられなくて、上で仕事をしなくちゃいけない人なのに一緒に降りて来て、私を囲い込んで保護しようとしちゃうんだよね。

人間の感覚からしたらそれは間違いじゃないし、そう言う人だから同じ感覚のある人間が作れたんだろうけど、私が思うに本体の方からしたら女王に仕えてる地方領主に過ぎなくて、私は女王の身体から作った分身の密偵だよ。

そんなもん黒魔石から3級の魔石を作るようなもんだから、女王の記憶を全て入れられなくて、アルフィンにソレを上手く伝えられてないんじゃないかって思うのね。

女王の密偵は更にもっと低級になるから、女王からしたら私は1級の魔石以下なんだよ。

それで転生を繰り返してるのは1級の私が経験した知識や情報として女王の私が集めてるだけだから、アルフィンに保護されたら仕事にならなくてすっごく困るんだよ。

だからウザくなって3級の私からアルフィンの記憶も消しちゃったらしくて、それを理解出来て無い神様のアルフィンが荒ぶる荒ぶる。


だから3級の私と一緒に穏便に死のうと思ってたらしくて、最後の転生が今回だったらしいのよ。

そしたら教会が1番やらかしたら駄目な部分の失敗をしたもんで、アルフィンも私も激怒したからもうやけっぱちになってて、私の本体が私に干渉して神様のアルフィンを呼んで、人間のアルフィンにおろしちゃったの。

そのせいで人間の私は大慌てになるわ、人間のアルフィンは長い年月の疲労もあって倒れちゃう事になったのよ。

しかも神様のアルフィンが無理心中宣言するわ、本体の私は仕事を邪魔されて激怒してそれに反撃するわで、狂乱した神様のアルフィンに危うく星が壊される所を、2歳の私がもの凄く頑張って星を守ったんだけど。


今うえにいる3級の私が神様のアルフィンを誘惑して抑えてるけど、時間がどれくらい稼げるかが分からないのよ。

まぁ神様の鐘の感覚なんてどうせ長いだろうし?

私がお婆ちゃんになるぐらいまで保ってくれるんなら良いけど、私が再転生するまでは保たないんじゃない?


完全にアルフィンをクビ宣告するには、本体の私もアルフィンを好きだから出来ないけど、仕事を邪魔されても上手く回せるように新しい次代が必要になってて、アルフィンだけでも大変なのに、他のも育てろとか。

もうホント無理!

絶対に無理!無理!


そもそも本体の私は魔法の使い方が上手すぎて、私は人間とほぼ機能が変わらないんだよ!

アルフィンの方の神様は下手な分、向こうの方が2級か3級ぐらいまでしか機能を落とせてないから、人間に上手く混ざれて無くて孤立して不満を溜め込んでるんだよね。


そこで神敵食らう先が見えたからもうブチ切れ案件だよ。

そしたら私の本体が暴力旦那とはもうやってけねぇ!ってなってるから、私はアルフィンとこんなに年齢が離されちゃってるだよ。


孫とジジイなら恋愛出来ねぇだろ!って本体がアルフィンを避ける気満々になってるのが丸分かりでしょ。

そりゃアルフィンからしたら嫁が本気で逃げる気になってるから無理心中宣言するよね。

もう未来を読んで夫婦喧嘩してるから、人間の私は大混乱なのよ。


だから神様の候補だなんて本人に話しちゃ絶対に駄目な秘密なのに、勢いだけで暴露しちゃった私の気持ちを分かってくれるかしら?」

『えぇえぇぇーー?!』

「だから今の話は聞かなかった事にしといてね!」

『はあぁぁぁ?!』


爽やかな朝日で明るい教会前の広場に、大勢の叫び声と7時を知らせる鐘の音がカランコロンと木霊していた。




勢いだけで進むと失敗するって言う。

良くあるパターンよね。

でも今回は確信犯デス。

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