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45

虫注意報

ソフトを目指しておりますが、グロ表現に該当の恐れ有ります。

ご注意下さい。




ゴロゴロドンや王様の事を話したり、父から素材の話を聞いて、魔物の辞書で調べたりしてたら、あっという間に時間が過ぎて夜になった。

晩ごはんを食べた後に家から外に出ると、至る所に水溜まりが出来ている。


「今夜は畑の水撒きは出来そうにないな⋯」

「まぁそんな日も有るよ。」

「だがかなり雷撃が落とされたなら、畑は一度見回りをしてくる。」

「うん。

あ!しまったお爺ちゃん達は大丈夫かな?」

「ふむ。それなら錬成箱を出すついでに様子を見てこよう。

畑はその後に見回ってくる。」

「じゃあ私は先に此処に錬成箱や他の瓶を出してからでも良いかな?」

「分かった。少し待とうか。」

「じゃあ倉庫からピアを持ってきてよ。」

「でも地面がどろどろよ?

こんな場所に錬成箱や瓶を置くつもりなの?」

「じゃあお水をサッサと避けちゃおうか。」


こうして私達は手分けをして地面の水を人工小川に捨てて行った。

私は井戸のためにこの前作った氷板を爺ちゃん家の前に地面の水を使って作っておく。

ゴロゴロドンの雨水なだけあってかなり魔力が豊富だったんだろうね。

辺りに魔力が沢山あって魔法がとても使いやすかった。

身体の中に取り込まなければ良いやとばかりに、サッサと作業を進めたので5分もしないウチに地面がカラカラになった。

そこにドンドンと箱やら瓶を置いて行く。


その後は木製の井戸の蓋を開けてもらって、井戸水を引き上げると、井戸が光るまでの厚さの氷の蓋にする。

使った井戸水は1/7ぐらいで済んだ。

溶けたら周りに溢れた水が少し勿体ないけど、地面に吸収されたらまた井戸水になってくれると思う。


今日買い足した大型透明錬成瓶100個と透明錬成瓶200個も追加されたので、元から有るのを足すと400本超えてるから、もう家の前が瓶だらけだ。

厠や倉庫や祖父宅へ行く道を作った形になるので、まるで瓶のお花畑になっちゃってる。


期限切れの袋が入ってる錬成瓶は、横置きにして月の光が銀糸の刺繍に直接当たるようにした。

私は錬成瓶を置いた後で、父に連れられて祖父宅へ向かい錬成箱を置き。

祖父宅の中に入ると、遅い晩ごはんの最中だった。

音が酷かったのでしばらく様子を地下の方で伺ってたせいで、晩ごはんが遅れたらしい。


早く様子を見に来れば良かったと、父と2人で罰の悪さを感じたけど、ウェブンの雛が元から居たのと合わせて2匹に増えてるのを見て思わず笑ってしまった。

名前を記念してゴロゴとドーンと名付けたらしい。

人を食べる魔物なのにそれは良いんだろうか?

と言うよりも、名前つけちゃうの?!

と驚いたけど、この2匹は手放さない事に決めたんだってさ。

てか先に産まれてきた雛にも今日名前がつくとかゆるゆるだよね。

ウェブンの雛と呼ぶとどっちの事を言ってるのか分からないから、名前をつけたらしい。


オスでも繁殖に使えるから、もし2匹ともオスなら一匹は自宅用の獣車にしたいんだそうだ。

確かにセフメトと奪い合う形になってるから、お金はあることだし、増やしても良いかも知れないね。


だって金貨がまだ40枚以上残ってるんだもん。

金板もまだ9枚あるし、そうなるわな。

あと残り卵が一つになる。

バッカスが楽になるわ〜と、よろこんでた。

そりゃいつも卵を抱える日々だったもんね。

本当にお疲れ様でした。


こうして祖父宅を後にすると父は畑の見回りに向かい、私はピアの錬成瓶を探して錬成箱に向かった。

皆が水を汲んでるのを横目でみながら、ピアの瓶に挟んでるメモに追加の文章を月明かりの下で書き込んでいる。


実はゴロゴロドンが来る前に、メモを見直ししていたら大型商店街の事を靴屋さんに伝えるとのメモを発見したのだ。

だからその事も追記したくて瓶を探してた。

弟子を増やしておく。

建設はエリザベスお祖母ちゃんの風呂完成して1年後と書き足した。


そしてふと昼間にあげた傷物の魔力草の食べ残しを観察する。

葉っぱはほぼ食べて無くなっており、茎は枝の部分だけ食べてるみたいだ。

そして根っ子は丸ごと残っていた。

次からは根っ子を落として食べさせようと思う。

根っ子だけでも魔法の水に魔力を与えてくれるから、使い道が有るもんね。


茎も外しても良いけど、それをすると枝から千切る手間が増えるので、そのまま入れることにする。


でもなんだか根っ子を見てると、本管から枝分かれしたヒゲが多く見える気がした。

だからなんとなく気になって他の瓶も観察すると、どうやら傷物の魔力草は根っ子が増える傾向が有る事に気付いた。

明らかに根っ子がワチャワチャしてるんだよ。


でもこれは予想がつきやすいよね。

だって上から漏れてるんだもん。

根っ子を増やして吸収する魔力量を増やさないと枯れるから、自然とそうなるんじゃ無かろうか。

茎や葉っぱは色がつくけど根っ子は無色透明なので、布製の魔法の鞄に使って魔力を増やせるから、根っ子が増えるのは大歓迎だからそれは良い。

根っ子だけを魔力の水に漬けたら、繁殖しないのも確認が出来てる。


でも⋯ふとここで思ったのは、種を飛ばして枯れた花付きの魔力草の根っ子はどうだったかと考えたら、あんまり良く覚えて無かった。

枯れたと思って全て厠に捨てたけど、とそこまで考えてハッとする。


厠は日の光が入らない。

元気草は育たないけど、魔力草はどうなんだろう。

そうでなくてもまだ夜明け前なのにマージンがエレガント米粒に群がってた光景が頭をよぎった。


私は傷物の魔力草を入れてる錬成瓶を置くとすくっと立ち上がり、堆肥場に向かってぎこちないなりに走って行く。


目指すは北側の日陰になる辺りだ。

堆肥場は家の北側にあるけど、建物から少し離れた場所にあるし、南側には遮るものが何も無い。

だから日当たりが良くて発酵してるんだけど、堆肥場は横に3m幅10m高さ2m以上と、小さな山になってるので、北側なら日陰になってると予想されるのだ。


倉庫近くにあるエレガント米粒を繁殖させる箱は何度もみてるから魔力草が繁殖してないのは分かってる。

あそこは閉鎖空間になるから、月の光が全く入らないからだ。

でも堆肥場は違う。


見に行っても何も無いかも知れない。

むしろ種を飛ばした後だから、普通ならそこで枯れて終わりになる。

でも私はずっと疑問に思ってたのだ。

ピアが食べてたように、魔力草の葉っぱは魔力が豊富で美味しいんだと思われる。

それなら森や林には魔力草を食べる生き物が沢山いても不思議じゃない。

月の光が当たりにくい場所でだと、花付きになるまでには1月以上もかかってしまうのに、魔力草はどうやって繁殖してるんだろうと考えたのだ。


私は太陽の位置を思い出して方角を確認しながら、北側になる辺りをウロウロして観察する。

すると魔力視すると上のほとんどが魔力が低い青色なのに、下の方になると段々と魔力が濃くなって来ていて、そしてついに見慣れた小さな双葉を発見した。


まさかと言う思いと、やっぱりが頭の中で交錯する。

堆肥場を直接手で触るのには抵抗があったので、魔力の腕をマニュアルにして慎重に双葉の周りを発掘した。

すると糸の様に細い根っこが3mに渡って堆肥の中央に伸びており、その先に枯れた花付きだった魔力草の残がいが引っ付いていたのを発見する。

これだけ細ければ林で採取した時に切断されてても絶対に気がつけない。

細い糸の根っ子は双葉の根元から分岐して、其後は本管になるだろう通常通りの根っ子が生えてるのを見て身体が震える。


実験が終盤?

飛んでも無かった。

私はまだ魔力草がどんな植物なのか、その入り口に立ってただけだったのだ。

予想以上に奥が深いと思えばぐうの音も出ない。

根っ子だけで生える雑草の話なんて、前世にもあったはずなんだよ。


だから雑草は春になったら抜いて処分しないと、夏になれば根が張って抜き難くなるから茂って大変だった前世の記憶が残ってる。

何でそんなものが私の中に残ってたかは知らない。

前世の私には園芸の知識が無いからだ。

アレかな?

子供の頃に経験した自宅か祖父母宅の庭での話かも知れないね。

曖昧過ぎて朧げだから、本当にそうなのかは分からないけど。


多分魔力草は水の中では繁殖出来ないのは分かったけれど、月の光と豊富な魔力。

そして空気が有れば無限に生え続けられることになる。


つまり魔力草は種だけでなく、竹みたいに地下茎でも繁殖することが確認出来た。

つまり枯れたと思っていたが、魔力草の根っ子の部分は生きていた事になる。


それを知らずに私達は沢山の花付き魔力草をずっと厠に捨ててしまっていた。

サッと顔から血の気が低く。

ドクドクと嫌な胸騒ぎがして、グルグルと頭の中に目まぐるしく情報が駆け巡った。


「お父さん⋯ちょっと良いかな?」

「ん?どうしたんだ。そんなに浮かない顔をして⋯」


私は父が畑から戻った姿を発見すると、直ぐに服を掴んで情報収集をはじめる。


「⋯あのね。

さっき気がついたんだけど、ひょっとしたら大変な事になるかも知れないの⋯」

「何があったんだ?」

「うん。実はね。

傷物の魔力草を見てて気がついたんだけど、傷物じゃない魔力草に比べると根っ子のヒゲが沢山生えてるの。」


そう言うと父を促して現物を見せながら説明していく。


「堆肥場に魔力草が?!」

「うん⋯掘り返したらほら⋯」

「もの凄い生命力だな⋯」

「それでね?

ピヨ子がまだ小さな赤ちゃんだった頃に、虫の幼虫が食べきれなくて古くなってたから、ロベルトお兄ちゃんに頼んで捨てて貰った事があるんだよ。


そしたらまだ夜明け前の暗い時間だったのに、マージンが地面に捨てたものに群がって食べてたのを見たことがあるの。


だから私達が捨てた種を飛ばして枯れた花付き魔力草の根っ子が、肥溜めに沢山魔力を流してたかもしれないと考えたの。

ピヨ子は畑に行っても元気草の芽は嫌がって食べないでしょう?

だから今の雛たちって、育った時にちゃんと元気草の芽を食べてくれるのか不安になったんだよ⋯」

「なるほど⋯それは大変な事になるな。」

「うん。だからこれからは種を飛ばして枯れた魔力草も、瓶の中で育てたら良いと思うんだけど⋯それとは別にね?

もう一つ気になることかあったの。」

「ふむ。」

「ジギタス叔父さんの奥さんが亡くなる少し前に、森で採ってきた鳥や魔力の高い魔獣を料理して食べて無かったのかな?」

「⋯それは随分と前の話になるが⋯」

「うん。だから確信は無いんだけど⋯女性は料理をするから魔獣とかの内臓を触ったりするでしょう?

虫を食べるのは鳥だけじゃ無いんだけど、叔母さんだけが病気で亡くなったのが気になってて。

もし内臓の中で生きてた虫が悪さをして病気になったとしたら、厠には森で採ってきた獣の内臓を捨ててるから⋯」

「それならバッカスやアニキも病気になってなければ可笑しくないか?」

「うん。でも叔母さんが触ったのは生きてる時の虫なんだよ。

でも森は魔力が豊富だから、ヤラマウトみたいに、魔力が低い所だと生き延びられなかったとしたら、魔力草で魔力が豊富になった場所なら生き延びてても可笑しくないかなぁって⋯」

「⋯なるほど。

義姉さんが虫で亡くなったかは分からんが、確かにそう言われると今のあの箱はかなり危険な状態になるんだな?」

「良く分からないよ。

推測だけで言ってるからなにも確認出来て無いけど、でも胸がザワザワしてて⋯」

「いや危険を事前に予想するのは大事な事なんだよ。

これから親父に相談しに行こう。

一緒に来てくれるのかい?」

「はい。お父さん⋯。」


もう少しで寝ようかと言う所だったけど、晩御飯が遅くなったせいで皆起きてたので事情を説明する、


「う〜む⋯昔過ぎて覚えては居らんな⋯ジギタスが鳥は良く狩って来ておったが。

それならば婆さんが何ともないのは可笑しくはないか?」

「うちのお母さんも偶にだけど鳥の料理はしてるんだよね。

その鳥ってどんな名前の鳥なの?

何処に住んでて普段は何を食べてるか分かるかな?」

「名はシャムと呼ぶなぁ。

川辺に住んどる鳥で、よう魚を捕るのを見かけた事がある。」

「川の魚は私達は食べないけど、シャムは食べて生活してるんだね。

それなら魚は生で丸呑みにするのかな?」

「うむ。そうだの。」

「取り敢えずそこは置いておいて、お母さんとマリア婆ちゃんと叔母さんとの違いを探してみようか。

叔母さんは手荒れが酷くなかった?」

『っっ?!』

「お母さんは良く傷薬を手に塗ってたのを覚えてるわ⋯」

「そうだな。

年中アカギレしてて、ずっと使ってたのを俺も良く覚えてるぜ。」

「人が亡くなった後は教会に連れて行ってお墓に入れるんだよね?

それなら教会の人に聞けば、何かが分かるかも知れないよ。

女性が多いとは思うし、突然亡くなるんなら覚えてる事も多そうだよね?」

「しかし何故シャムが悪いと思うんだ?」


マドルス爺ちゃんがお誕生日席で腕を組みながら顔を顰めて尋ねて来る。


「もしピアや美味しく無いえ~と何かのお肉の⋯。アレって名前なんだっけ?」

「ん?ワムウのことか?」

「そう!そのワムウもそうだけど、食べてる頻度が高いのは、畑に近い場所。

つまり害獣だから良く掴まえられて私達のご飯になってるよね。

人里は魔力が低いのもそうだけど、人を殺す何かがピアやワムウの中にいるのが原因なら、もっと噂になってるし原因が分からないまま亡くなるだなんて言ってないで、ちゃんと調べてると思うんだよ。


魔力が少なくてもその悪さをする何かが生きられるなら、それこそバック兄ちゃんやジギタス叔父さんや、箱を扱う人も亡くなる機会が有るって事になるし。

料理をする機会が多いって事は、それだけ大勢の人に扱われるから、被害を受けてる女性が多くないと変でしょう?」

「⋯ふむ。

確かに我が家はジギタスが居るから鳥を口にする機会は多いが、シャムは弓矢を扱う腕が無ければ狩りに難い獲物では有るなぁ⋯。

しかもアレは3級の魔物だ。

だからシャムが原因では無いかと考えたのか。

うーむ⋯」

「今回に関係の無い話をするのはアレなんだけど⋯シャムがよく狩れるなら、それで狩人を続けられるよね?

なのにどうしてジギタス叔父さんは強い魔物なんてわざわざ倒しに行くの?」

「⋯アヤツがバカだからだ。

シャムを倒すのは簡単で面白くないと抜かしおってな。

だがシャムは味が良いので、小遣い稼ぎにもなるから、よく狩っては来るんだ。

アヤツは狩人を辞めさせた方が、よほど狩人らしい生活をするんじゃよ。」

「そっか。」


全員の表情が呆れたような諦めたかの様な微妙なものになるが、私もそれを聞けば微妙な気持ちになるからよく分かる。

叔父さんは皆が納得するほどのバカなんだよ。


「ごめんね、話を逸らして。

ひょっとしたら他に原因があって、私は見当違いの話をしてるかも知れないから、この話はジギタス叔父さんには絶対に話さないでね?」

「⋯そうだのぅ。

今更済んだことをとやかく言うつもりで、話を持ち出した訳でも無いという事だな。」

「でももしシャムが原因なら、狩人の妻や料理人にも亡くなる人が居ても可笑しく無い事になるな?」

「うん。だから教会の人に聞けば分かるかな?とは考えてるの。

戦士ギルドの人達は病気で死んだと思われてたら、報告をする人も居ないだろうし。」

「明日教会で話を聞いてみよう。

あと狩人仲間で同様の話が無いか、タル兄に聞いてみても良さそうだな。」

「料理人ならマゼラン爺ちゃんも何か知ってるかも知れないね。

シャムもだけど、手荒れが無かったかも聞いてみた方が良いかも。

シャムを扱っても直ぐに亡くなる訳じゃ無かったら、皆シャムの話にはピンと来ないかも知れないしね。

私は餌になってる魚が気になるんだよ。

川は魔力が豊富な水が流れてるだろうし、もし水の底の陰になってる所にいる生き物が病気の原因だったら、魚はそれを食べて生活をしてると考えてるの。

シャムはそれを生きたまま丸呑みにするから、内臓の中にそれが生きたまま残ってるんじゃ無いかなって考えてるんだよ。

でも魚は美味しく無さすぎて、人間は誰も食べないでしょう?

だから魚を採る人も少ないし、採ったとしても魔石だけ抜いて処分するなら人間の手に触れにくいかなって考えたの。」

「うむ。

確かに推測ばかりでは何も分からんが、魔力草の事に関して言えば、リリアナの言う事は確かじゃろう。


じゃから前よりも魔力が高くなってるだろう、あの虫の幼虫を採る箱をどうするかを先に話そう。

もし取り越し苦労であれば何と言うこともない。

だが危険を感じるのであれば、早めに手を打って置くのは良い事だな。」

「うむ。この1月は兄貴が家に居ないからシャムも狩れて無いし、俺も春先からずっと狩りに行けてないから今の所はどうだろうか。

兄貴は春から村を出る前に鳥を狩ってきていただろうか?」

「あぁ、何度か狩って来てたよ。」

「料理はマリア婆ちゃんがしてくれてたわ〜。

私も習ってたけど、今の所は何もないわね⋯。

でもその話を聞いたら、これから怖くてシャムの料理をしたくなくなるわ〜⋯」


そう言いながら、少しアカギレの有る手をエターニャが擦り合わせて不安そうな表情を浮かべた。

まぁそうなるよね。


女性は年中水仕事をするから、水に触れる機会が多くて冬場になるとよくアカギレを起こすんだよ。

ジギタス叔父さんの奥さんは、アカギレをしやすい体質だったのかも知れないし、マリア婆ちゃんの代わりに炊事の仕事を引き受けてたのかも知れない。


これはもう予想でしか無いから、今更聞けないけど。

マリア婆ちゃんは長年アカギレをして、治してを繰り返してるから、手の皮膚が分厚くてゴツゴツしてるんだよ。

その代わり若いエターニャはアカギレをして、あの軟膏を塗った匂いがしてたから私もアカギレの事を思い付いたんだよね。

うちのお母さんは掃除は魔法でするし、洗濯は姉がしてるからアカギレしてないんじゃないかな?

ひょっとしたら無意識で治癒魔法してるかも知れないだけどさ。

なにせあれだけ忘れっぽいと、つい疑っちゃうよね。


「先ずはそのアカギレから治そう。

あと料理をする時は専用の手袋を使うのも良いかも知れないよ。

そもそもお金が有るんだから、初級回復薬を使って治しちゃおう。

傷薬の改良は私が勉強して良いものを作るから、それまでは手が荒れたら初級回復薬で傷を治してよ。」

「うむ。ええじゃろう。

エターニャまで失う訳にはいかん。

薬は腐るもんじゃ無いからの。

明日教会に行くついでにモズグス、何本か買ってこい。」

「分かった。そうしよう。

それで箱はどうする。」

「お日様の光を浴びせたら魔力を分解してくれるから、底から混ぜて光を当てるようにすれば良いと思う。

でも雛たちが餌を食べなくなったらどうしよう⋯」

「バッカス、今幼虫を餌にしている雛は何匹ぐらい居るんだ?」

「えっと⋯雛は30も居ないと思うけど⋯でもさ。

箱より先に厠を何とかしようぜ!

魔物の残がいを混ぜなきゃ良いんなら、それ用の餌を作ってから箱を処分して欲しいんだよ。

危ないってのは分かるけど⋯雛を死なせるのはちょっと嫌だし。」

「魔力草を混ぜなきゃ今までは問題無かったから、厠にはこれから魔力草は捨てないようにするよ。

でも雛の餌を変えたらピヨ子みたいに元気草の芽を食べなくなっちゃうと思うんだけど⋯」

「あぁ⋯そっちの問題も有るのかよ⋯」

「ならば今後孵る雛を分ければええじゃろ。」

「そっか!今いる雛達は仕方が無いけど、今はまだ卵のままのやつなら間に合うのか。」

「今いる雛は大人と同じ餌が食べられるようになるまでは、別に餌を私が作るよ。

あとは幼虫をどうするか⋯。

ちょっと私じゃ知識や経験が足らないから、明日錬成師屋さんで相談しても良いかな?」

「それまで餌はどうすんだ?」

「私が浄化する。

今更なんだけど小川に汚れた水をそのまま流すのは辞めよう。

下に水瓶を置いた上で魔法のお水を使って洗えば幼虫を採れるよね?

その後で浄化すればお水も綺麗になるから、そのまま捨てられるとおもうんだよ。

お水は念のために日の当たる地面に捨てたらどうかな?」

「分かった。

それなら明日中央へ行く前に餌を準備してから行ってくれ。」

「それなら朝ご飯の後で良いかな?日の当たる時間に作業した方が良いと思うの。」

「むしろそれでええなら、新しい箱を作っておいて、その古い箱のものはそうすりゃええんじゃないか?」

「今回だけだよ。

やっぱり錬成師さんに相談するのは必要だと思うの。」

「ふむ⋯ならば、聞いた後で厠の大掃除だの。」

「ならお爺ちゃんは午前中はシッカリ寝ててね。」

「あ!そうだタルクス叔父さんもだけどさ、今手伝いに来てくれてるヒルクスにも話を聞いてみようぜ。」

「ヒルクスって、タルクス叔父さんの息子さんだっけ?

年は14歳だったよね?」

「そこは俺達の従兄弟で良いじゃねぇか。

まぁそうだぜ。確か14だったと思う。

10の弟のヒューイと一緒に今うちを手伝いに来てるだろう?

まあヒルクスも狩人の弟子だから、何か聞いてるかも知れねぇしさ。」

「それなら私達はお肉屋さんでも聞いてみたら良いよね?

狩人がもしシャムをお肉屋さんに卸してたら、お肉屋さんも何か知ってるかも!」

「いや、待つんだ。

それは止めておこう。

今考えたんだが、4年前にそれをするならまだ分かるが、今になって調べる理由を聞かれたら不味い気がするんだ。」

「そっか⋯説明が難しいよね?

それなら教会も難しいかな?」

「うむ。俺達が動くより錬成師様に動いて貰った方が良いかも知れないだろう?」

「そのほうが説得力が有りそうかも。」

「じゃあヒルクスにもか?」

「うむ。ヒルクスはまだリリアナの事を知らんだろう。

狩人仲間に尋ねるのも、タル兄に任せるべきだと思うんだ。

下手にシャムが原因で死人が出たと騒ぐのは良くない気がしてな⋯」

「本当だ⋯私どうかしてた。

もし肉屋さんで同じように亡くなった人がいて、シャムを怖がって買わなくなったら狩人に迷惑をかけちゃう所だったよ。

本当にシャムが原因かも何も分かって無いのに、これは凄く危ない事だよね。」

「あ⋯、そうか。

俺は漠然とリリアナを騒ぎに巻き込まない事ばかり考えていたが、そう言った事も有るだろうな⋯、そうか⋯肉屋か。

それなら戦士ギルドで解体に携わる者もそうなんじゃないのか?」

「うん。注目する所が有るなら手の傷、または手荒れかな。」

「⋯では手袋をしているかどうかも見るべき所だろうな。」

「うん。そう言う専門的な仕事をしてる人達は、身を守る工夫をしてるかも知れないよね。」

「⋯ふむ。

恐らくそれは正解じゃな。

大きな獲物を解体するには力を使う。

言われてみて思い返しておれば、祭りで大物を捌く者たちは皆、革の手袋をつけておったわい⋯」

『あっ!!!』

「そう言う者達なら、シャムだけ捌く時に外しはせんだろうよ。」


マドルス爺ちゃんの言う通りだった。

私も祭りでその人達を遠くから見たことが何度か有る。

血で滑るのを防ぐ為に着けてるのかも知れないが、確かに薄手の革の手袋を装着しているのを私も見ていたのだ。

ほらね。

私は凡人の証明が出来ちゃったよ。


子供だから驚かれるだけで、記憶力も視野の狭さも大人になれば何も変わらなくなって行くんだろうね。

だから絶対に調子に乗らないようにしなくちゃ、大事な時に失敗して高くなった鼻がボキっと折れるのと同時に命も消し飛ぶんだろう。


身体が勝手に小刻みに震えている。

迂闊な行動を起こしたあとの事の騒ぎが垣間見えて、私はそれが恐ろしかった。


「モズグスよ。

騒ぎになり、他者の害になるのであればもう調べずとも良い。


だが我が家にいる女達には手袋を買い与えよう。

他家の者たちには、春に皆が集まる時に話を聞いて用意をしてやれば良いだろう。

もう二度とあんな思いは沢山だ。

ソーニャの二の舞が起こらぬようにするぞ。」

「分かった。

どんな手袋を使っているのかを調べて注文をしておく。

だが理由はどうするか。」

「子供が憧れて欲しがってるのって変じゃないよね?

私だってカッコいいと思ったもん。」

「ハハハ!確かにそうだな!

父さんも昔は真似がしたくて、欲しかった時期があったよ。

いつの間にか忘れてたんだな⋯」

「それに今度から油を触ることにもなるし、解体する時に手袋を使ってるなら知りたがっても変じゃないよね?」

「そうだな。

理由はそれにしよう。

お前が欲しいのなら嘘じゃ無いしな。」


こうして明日の予定をザックリと決めて私達は家に戻って行くが。


「この忙しい時に仕事をサボって何処に行ってたのよ!」


実の父まで容赦なく正論パンチで殴るのはどうかと思うが、怒れる鬼軍曹が私達の姿を見つけるやいなや、仁王立ちになってパンチと共に怒りの波動をぶっ放して来た。


「済まないねカタリナ。

皆も大変だったろう。

だが恐ろしい事情があったんだ。

後で話をするが、先に作業を終わらせておこう。」

「そうなの?

なら仕方がないのね?

リリアナもボサッと口を開けてないで、とっとと動きなさい!

アンタはどうせ役立たずなんだから、お風呂の準備をするのよ!

良いわね!」

「あ、うん⋯」


でもコミュニケーションの達人は全く動じずに、風のような身のこなしでサラリと怒りを交わすと、もの凄いスピードで姉の怒りを鎮めてしまった。

もう神業かな?と、思うぐらいに鮮やかで、真似出来ねーわ!と心から感嘆する。

だから何時もならカチンと来る姉の暴言も、あんまり気にならなくて私の中を素通りした。


なんだか分からんが、マジパネェっす。

うちの魔法師が天才過ぎる。

もう私の代わりにあの面倒臭い奴らをボッコボコにしてやって欲しいんだけど、立場って言うのは厄介なんだよなぁ⋯。


そんな事を考えながらもお風呂代わりに置いてる水瓶の周りの魔力を使って、崩れかけてる土台の整備をする。

それから余った魔力で、すのこと一緒に浄化して、雨水が入った水瓶の中の水やらで、泥に汚れたすのこを綺麗にした。

あとは水瓶の中の魔力を使ってお湯を沸かせば完成だ。

全て自分の周りにある魔力をマニュアルで操作したから、飛んでも魔法にはならずに済んでるよね?

周りの魔力を染めるのに、自分の魔力を使ってるから、それなりに消耗はしてるけど、消費は最小限で出来てるとは思う。


「お風呂出来たよー!」

「コッチはまだよ!

手伝ってちょうだい!」

「は〜い。」


元は私の仕事なのに、いつの間にか姉の仕事みたくなってるこの雰囲気は何なんだよ。

乗っ取りか?

密かに下剋上されてんのか?

そんな微妙な気持になりながらも、せっせと箱から空の透明錬成瓶に水の汲んでるのを横から空の瓶を手渡して行く。


瓶が多すぎるもんで、水を入れるだけでも重労働になって来てる。

早めに戦士達に水入れをさせるのに、魔法の鞄の袋バージョンの魔力を戻さないといけない。

アレが使えるようになったら、かなり楽になる。

だって錬成箱から水を汲む作業が最小限に減らせる⋯よね?

これ減らせんの?

むしろ戦士達に入れさせた水を此処に入れる作業が増えたりしない?

いやそれは流石に非効率的に過ぎるから、結局この作業は変わらないのかな?

可怪しいなぁ⋯仕事が楽に効率的になったはずなのに、何で仕事の量が増えてんの?


それは私が瓶を増やしたからだね!

うん、知ってた。

自業自得ってやつだ!


「お父さん、え~と。

アーニャ叔母さんだっけ?

お父さんのお姉さん達が戻ってきたらウチに住むって難しい?」

「そうだな⋯手を借りれるなら良いが部屋をどうするか⋯」

「この冬に引っ越しするから、そう言った大きなお家の有る所を希望すれば良いのかな?」

「ふむ。しばらく宿暮らしでも良いと考えていたが⋯この作業を手伝って貰えたらかなり助かるな。

カタリナが育った時の為の部屋が有るのは有るんだが⋯。

その荷物置き場にしてる部屋を整理したら一つ部屋を空けられる。

その代わり荷物をどうするか⋯。

明日になったら親父と相談してみるさ。

上手く行けばエターニャの部屋に姉さんや娘を寝かせて、男の方はバッカスやセフメトの部屋に入れるかも知れん。

一冬のことだからな。」

「そっか。

向こうの部屋数の方が多いんだもんね。

でもうちが何処に割り当てられるか分からないけど、一体どうするつもり何だろう⋯」

「ふむ。そこは聞けないのか?」

「決まれば教えて貰えるだろうけど⋯まだこれから秋までに決めるだろうから、今はそれを考えてる所じゃないかな?」

「なるほどな⋯」

「まぁ明日錬成師屋さんに行ったら一応聞いてみるよ。」

「うむ。そうしよう。」


錬成箱の水がすっからかんに無くなった頃には、大型透明錬成瓶100本と、透明錬成瓶250本の水汲みを終了した。

鐘1つ以上かかったよ。

あー、しんど。


そしたら私と父と姉の3人で、錬成箱の給水を始める。

そしたら皆、魔力の奪い合いだよ。


「これはちょっと⋯」

「う〜ん。私ちょっとお兄ちゃんに連れて行って貰って、あっちの小川から魔力を貰ってくるよ。」

「なら父さんは反対側に行こう。カタリナは少しづつでも良いから水を入れて行ってくれ。」


移動だけでも鐘半分かかるとか、効率悪すぎ!

でも沢山魔力を引き連れて戻ったら僅か5分で給水が完了した。

もちろん父も向こうの小川から戻って来たし、姉も地道に注いでたからね。


「余った魔力が勿体ないなぁ〜。」

「お母さん、ちゃんとマモーを温めておいたわよ。」

「じゃぁ私が凍らせるから、誰か混ぜといてね。」

「僕!僕がする!」

「じゃあマル兄ちゃんお願いします!

お父さん魔力が余ってる?」

「あぁ⋯あるぞ?」

「そこの大型錬成瓶で水の中にその魔力が入れられるか試してみて?

お父さんがダメなら魔力草の根っ子を使うか魔石を砕くしか方法が無いんだよね。

何かいい方法が無いかなぁ〜。」

「ふむ。指示を出して使った魔力は消えてしまうからなぁ⋯。

水の中に入れと命じてその後解放したら、消えてしまえば意味が無いだろう?

増えたかどうかも解放してしまえば、分からんくなるのがなぁ。」


そうなんだよ。

今自分のものにして身の回りに纏わせてる魔力は、私が解放したら分解されて消滅するのだ。

それはまるで日の光に当てられた時と似てると思う。


これって一体どんな原理になってるんだろうか。

魔力とはエネルギーだと私は考えている。

空気中にある何らかの物質に、エネルギーがくっついてると想像している。

そしてその何らかの物質に指令を出すと、エネルギーを消費して行動を起こす。

それが魔法の発動だったり、四年のような形で捜索すると具現化して物質に干渉するんだろう。

魔力自体は空気と同じなので、基本的に触れないからだ。

手を仰ぐと手のひらに空気が触れるのは分かるけど、触れた空気がどんな形をしてるかは分からないよね?


あ!今二酸化炭素にさわった!

なんて事は起こらない。

でも電気の光は触れないけれど、光は目視出来るのよ。

魔力がエネルギーだと思うのは、目に魔力を込めて視力を強化させる必要があるけど、見る事は可能なのだ。


でもその光が消えると、ランプなら電球が見えるのに、魔力にはその電球に当たるものが見えない。

だから忽然と姿を消す形になるので、錬成師達は必死にランプを探してたわけだけど。

恐らく人の目で捉えるのはかなり難しいんじゃ無かろうか。


前世で酸素ってどうやって見極めてたんだろう?

理科の実験なら、ロウソクに火をつけてビーカーを被せて消えたら酸素が無くなったと、してたし。

フラスコの底に金属をいれて、首の先にゴム製の栓を装着したものを準備して、ゴム栓には曲ってるガラス管がついてて、ガラス管の先についてるゴム製のホースみたいなものを水槽の水に入れておくと、フラスコに薬液を入れたら、ポコポコと空気が出て来る事で酸素の存在を教えてたんだよね。


じゃあ魔力ってどうやって産まれてるんだろう?

私が知ってるのは全ての物質に魔力が含まれていて、大気中にある魔力が空に昇ったものが、雨になって落ちて来て、地面に染み込み、食物連鎖の底辺である食物に吸われることで、それを食べた動物達が魔力を取り込んで、循環してるわけだけど。


じゃあ魔法を使って消えた魔力が消滅するとしたら、何処で新しく産まれて来るのかって話になる。

だって消滅してばかりだと、不足しちゃうからだ。

そこで今分かっていることが、月の光なんだよ。

月の光が当たると魔力が増えてる事を確認出来た。

でも既存の魔力が増えてる事を確認出来ただけで、果たして一から増えたかどうかは分からないのだ。


でもここで、私が立てた新しい理論を元に考えてみよう。

例えば魔力の元となる元素を魔素と名付けてみた。

その魔素は月の光が当たると魔力を生み出す性質があると仮定する。


魔法を使おうとすると、魔素が反応して魔力をエネルギーへと変換する働きがあった場合。

エネルギーを使い果たすか、指令を完了して魔法を発動すると魔素は魔力との接続を解放するとしたら、これが魔力の消滅に見えないだろうか。


そうなると空気中に魔素がまだ残ってる事になる。

日の光が魔素と魔力を分離させて、魔力を消滅させる働きがあるのなら、月の光は魔素から魔力を生み出して、増殖させる働きが有るとしたらどうだろう。


つまり魔力に指示を出して水の中に行くように伝え、魔力を解放すると魔力は消滅するが、水の中に魔素が残らないだろうかと私は考えているのだ。


何故なら私達は魔力を操っていると勘違いしてるけど、私達の指令を聞いてるのは魔素の方だと私が思ってる。

そして何故勘違いが起こるかと言えば、魔素を人間が認識出来ないからだとしたら辻褄が合う?

空気の中に酸素や窒素があっても人間が器具無しに認識出来ないのと同じように、魔素も何らかの器具か手段でなければ認識出来ないものだとしたらどうだろか。


この理論を証明する為に何か良い方法が有れば良いけど、今思いつけたのは魔力に魔素を運ばせて、そこで一度ゼロにした魔力の増加量を確認するぐらいしか手段が無いんだよね〜。


魔素は見えない。

だけど魔力の元になる魔素が増えるのなら、月の光を浴びせる事で最終的に魔力が増えないだろかと考えている。

問題があるなら、魔素はどれぐらいの容量を必要とするか。


水の中に100しか魔素が入れないなら、1000の魔素を入れたらどうなるんだろう。

押し込めば入るのか、弾かれるかで容量の差は産まれると思う。

でも魔石を見る限り、永遠に圧縮出来るんなら魔石の形は均一になってる筈だから、大きさや色の変化が有るのなら少なくても魔力には容量が有る事になる。


だったらもし100しか入らない所に1000の魔素を込めた時に、月の光を浴びせた場合。

大爆発を起こさないだろうか。

もし魔素が圧縮されない性質なら問題はない。

でも延々と魔力を増やした過去の実験で、月の光を浴びせて容量制限の有る魔力が増幅すると、あれだけ硬い魔石が砕けたんだから。

場合によれば大爆発も起こす危険性があると認識した方が安全だと思われるのだ。


つまり今私が父に魔力を瓶に詰めといてと指示しているが、魔力には容量制限が有るので魔素そのものをつめるよりかは安全では無いかと考えている。

問題は月の光をどこまで当てて、魔力を増幅させるかになる。

だって元はそれ以上中に入らないから弾かれてる訳だから。

その入れた分以上の魔力が増えたら透明錬成瓶が魔石みたいに弾けるんじゃ無かろうか。


でも今の所魔法の中に含まれてる魔素程度なら二月近く経っても錬成瓶は壊れてない。

つまり魔法の水に含まれてる魔力の30倍の魔力を込められたとしても、1日だけ月の光を浴びせても大丈夫といった形になる。

これは増幅量が倍と仮定した場合だから、1日の増加量が倍以下ならもっと日数はかかると考えている。


「お父さん。

魔力の消滅は気にしなくて大丈夫だけど、その透明錬成瓶にはいる量の魔力の水に含まれてる魔力の30倍の魔力を集めて、中に入るように指示を出せるかな?」

「うん???」

「透明錬成瓶1本の魔力を1として考えた時に、30中に入れと指示をしてみて?

入らなければ入れなくてもいいけど、多分入ると私は考えてるの。」

「すまん。

父さんにはその1が理解出来ないみたいだ。」

「分かったよ。

それなら私がその魔力を使うから、残しておいてくれるかな?

多分下手に魔力を込めすぎると、月の光を毎日当ててたら瓶が爆発して壊れると考えてるの。

魔石の時が砕けたみたいにね。

でも今の所1番長く錬成瓶の中に入れてる魔法の水は50日以上経っても平気だから、30倍を1日月の光を当てるだけなら安全に利用出来るんじゃ無いかなと考えてるの。

1日で倍に増えるんなら、50日も瓶は耐えられないと思うんだよね。」

「ふむ。リリアナはどうやって1を判断してるんだい?」

「魔力に聞いてるよ。」

「⋯そうか。

魔力に聞けば良いのか。」


聞くと言っても魔力が喋るわけじゃないから、感覚的なことなんだけどね。

それでも何度も錬成瓶に魔法の水を入れてるから、感覚的に理解出来るのよ。


ベテランの和菓子職人さんが和菓子を作る時に、求肥に100グラムのアンコを包む為にパッと手に取ったアンコを調べたら100グラムピッタリ!

あら不思議?!

ていうのと似てるのかな?


科学が無いから丼勘定ばっかりなので、何とも言えないんだけどね。

魔導師ならそこはキッチリとしてくれてる事を祈ってるよ。

歌って踊ってポン!

みたいな事じゃないことを、本気で心から祈りたい。

だってこの前魔王が大きな魔法使う時に、詠唱みたいなのをしてたでしょう。

アレが私には人の言葉には聞こえなかったのよね。


鯨が鳴いてる声を聞いて、鯨の唄って表現する事が有るのを思い出したんだけどさ。

あの時はサッパリ分からなかったけど、口元に魔力を集める指示を出す周波数とかじゃないよね?

音で空気を揺らして物理的に魔素に指示してるのが魔導なら、私が想像してる以上にフニャフニャなんだけど⋯。


魔導の発声がボイパだったらどーしようかと本気で悩んでるんだが?

だって魔獣も魔法を使うんならそれじゃね?

魔素や魔法が人間だけのものじゃないから、空気を揺らす音になる周波数を探したらそうなっちゃう気がするんだよ。

それを人が理解出来る言語にしたのが魔法言語で、日常的に使う時に魔法が発動しないように開発したのがマスタリク語なら、イルカの鳴き声をモノマネして喋る人間みたいな事になりそうで怖いんだけど⋯。


多分音だけじゃ魔法が発動しないのは確定してる。

だって歌があるからね。

しかも楽器の演奏とかもお祭りでしてるから、音だけ鳴らして想定外の魔法は発動しないと予想してる。


じゃあ魔王がどうして言葉にあれだけ警戒してるかと言えば、無意識で巧みに魔法を発動させられる人間が、意思を込めて言葉を使えば、それだけで魔法が発動する危険性が有ると考えられてるからじゃないだろうか。


でも思念で曖昧な指示したらどえらい事になるから、ちゃんとした指向性を持たせたのが魔法言語だと思うので、勉強はした方が良いとは思ってるけど。

中二病は嫌だなぁ⋯。 

ゴロゴロドンで噴く私に馴染めるといいんだけどね。

レジャーポットじゃないけど、たまにヒットする単語があると困っちゃう。


名前もパターンがあるみたいで、◯◯ニャって名前をよく聞くんだけど、日本なら花子とか優子の子みたいなニュアンスなんだよ。

うちはカタリナとリリアナで、ナが共通だから明菜とか雪菜とかそう言ったニュアンスなのかなぁって思うんだけど。

それと同じで男性は◯◯スて名前も多くて、前世で言えばタカシとかマサシとかのシや龍太郎や慎太郎とかの太郎に該当するんじゃないかな?って思ってる。

ウチの父もモズグスだし、マドルスお爺ちゃんもそう。


でもバッカスって前世だとお酒の名前だからね?

リアル本人は酒嫌いなんだけど。

こんな風にヒットするたんびに微妙な気持になるし、誰か転生して来てくれよ!

熱く語ろうぜって、なるんだよ。

だから偶然『うんち!』って言ったら魔法が発動するような、変にヒットする魔法言語が無ければ良いなと心から思う。


「お父さん。それ2日目のやつだから、練習したいなら1日目のにするか空の錬成瓶に魔法のお水を入れてやってほしいな。」

「え?見ただけで日にちが分かるのかい?」

「そう言う魔法を目に使ってるんだよ。

素では見えないからね?」

「どうやって使うんだい?」

「ピアの目を使って魔力視できる物を作ったのを覚えてる?

あれを参考にしたんだよ。」

「あー、前に目を弄ってたのはそれを作ってたのか。

アレは今何処にあるんだい?」

「厠の近くにあると思う。

今は濃い緑色になってるんだけど⋯探せるかなぁ?

誰かに聞いて置いた人に教えて貰った方が早いかも。


だから口で説明したら、1番低い魔力が白で、そこに少しづつ青色を足して行って真っ青になったら次は薄い緑になって枯れ葉になる前の黄色い葉っぱが、元に戻るように双葉の色の緑になって、それが段々濃い森の緑になると、最後は黒になるの。

この黒色が錬成師屋さんの看板の丸い形をしてるあの色とか黒魔石の色ね。」

「それなら魔石の色と同じだな。

あれを想像すれば良いのか。」

「ねぇ、混ぜたよ!」

「はーい。

じゃあまた混ぜてね。」

「シャリシャリしてきたね!

面白いなぁ〜」

「なんのまだまだ!」


マモー乳を何度か凍らせて、満遍なく甘みや乳を分離させずに凍らせて行き、最後に固めに凍らせた頃には、カタリナチームがしてた、魔力草の入れ替えも終わってた。


「もう!お父さんもリリアナも遊んでばっかりなんだから!」

「遊んでないよ〜。

ちょっと実験してたんだよ。

ね?お父さん。」

「いやぁ、中々難しいんだよ。

でもこれはどんな意味が有るんだい?」

「この技術が使えたら、1日月の光を浴びせたら30日分浴びせた効力のあるお水が出来る予定なんだけど⋯なかなか魔力を逃さないで詰め込むのが難しいね。

今の所は魔法の水だと10日分短縮するのが精一杯かなぁ?

後は月の光を浴びせたら、魔力がどれだけ増えるかなんだよ。


でも理論的には入れられる筈だったのが、魔力を入れるには蓋を開ける必要があって、魔力を押し込むと押される形で逃げられてしまって、すごく難しかったんだよね〜。」


父と2人でどうするか悩んでると、先に入浴していた母とカタリナがホコホコしながら上がってくる。

今はマルセロとロベルトが入浴してるみたいだ。


「それなら魔法の鞄にお水と魔力を入れたら良いじゃない。」

『あ!!!』

「そっか。

元々そうするつもりだったんだ。

でも魔力を入れるのには空気を抜かないといけないんだよ。

水に溶けてたら水を入れるだけで良かったんだけど⋯空気っていれられるのかな?」

「問題はどれぐらい空気が入ったか見えない事だね。」


皆には言えないけど、閉鎖空間に空気をいれると圧縮する形になってしまう。

でもそれなら品物を入れた時の体積分の空気はどうなっているのか。

空気と品物を交換してるなら、魔力を容量いっぱいまで入れられる事になるのだが⋯、どうだろう。


「煙を使ってみようか。」

「今から焚き火をするのかい?」

「もの凄く気になってるんだけど、駄目かなぁ?」


そして準備するのは藁と廃材を斧で壊して作った薪。

少し勿体ないがこれは必要経費だ。

夏の夜に焚き火とかキャンプファイヤーじゃん。

まぁ小さいけどね。

そして煙が見えやすいように、裏庭にまわって照明の月の光を模した明かりを灯す。


モクモクと出てきた煙を、容量が1番少ない魔法の鞄に入るように指示する。


「おお!成功だよ!

吸い込んでる!」

「何?!本当だ。

やったじゃないか!」


そして煙の吸い込みが止まった所で、今度は私が纏っていた魔力を吸い込むように指示するが、満杯です!

とばかりに吸い込んでくれなかった。


「入って行かないね⋯」

「うーむ⋯煙を全部出して見たらどうなんだい?」


と言う事で今度は全て煙を出すように指示したが、うんともすんとも反応しなかった。


「煙が出ない〜」

「駄目だったか。

しかし煙は何処に消えてしまうんだろう⋯」

「う〜ん⋯。

王様が教えてくれたんだけど、魔法の鞄はもともと錬成師が魔獣や魔物を分解させる為に作ったんだってさ。」

「うん?」

「森の奥に行くと折角倒しても解体するのに血の匂いがしたら、他の強い魔物が集まってくるでしょう?

だけどそのまま持って帰ると血液が固まってしまうから、その血液を使いたい錬成師が解体する袋を作るのが目的で、魔法の鞄が出来たらしいんだよ。

だからほら、このまえ氷を入れた時に紙が濡れてシワシワになってたけど、水を出したら乾いた状態で出てきたの覚えてる?」

「あぁ、そうだな。」

「不思議だったわよね、アレ。」

「それでお水を全部出ろって命令したらお水が鞄から出たのよ。

そしたら紙だけじゃ無くて、他に入れてたもの全部が乾いた状態で出てきたんだよ。

だから芋を錬成鞄にいれて、皮と実を分けて出ろ!って命令したら皮が剥けた状態の芋が出て来るって事なんだよ。」

『えぇ~?!』

「そ、そそそれは本当なの?!!!」

「うわ?!お母さん???」

「もうお野菜の皮むきをしなくて済むのね〜?!」

「う、うん。

鳥をそのままいれたら、血と羽と内臓と肉と骨で分かれて出す事も出来るらしいよ?」

「まあぁぁ〜〜!!!

なんて素敵なの?!

夢みたい〜!

明日からお料理するのがすっごく楽しくなっちゃう〜♪♪♪」


顎の下で両手を握り締めてぴょんと飛んだ母の瞳がキラキラと輝いている。

お料理嫌いな母にはまるで救世主みたいな機能だったんじゃないかな?

実際に全て手でやるとなると、面倒な作業ばかりだよね。

スーパーで買うみたいに、燻製肉や処理済みの肉なんて無いから全部手作りだもん。

中央に行けば売ってるけど、農民は基本的に自作なんだよ。


「待てよ!

それならあの虫を育ててる箱に使えるんじゃないか?!」

「あ!そうだよ。

ウンウンと虫を分けちゃえば良いんだ!

お父さん。あったま良い!」

「え?ウンウン?」

「ほら!ピヨ子の餌だよ!

厠の肥溜めからウンウンをいれて、小さい幼虫を育ててる箱が有るでしょう?

4年前にジギタス叔父さんの奥さんが病気で亡くなったのを覚えてる?

原因が何か分かってなかったけど、虫が原因じゃないかってお話してたんだよ。


その虫があの箱の中に居るかも知れないから、あの箱をどうするか悩んでたの。

お父さんはそれを魔法の鞄で分別すれば良いねって、思いついてくれたんだよ!」

「えぇぇーー!

駄目よ!絶対に駄目よ〜!

そんなものに使ったら、お料理に使えなくなっちゃうじゃない〜!」

『あ⋯』


母が半泣き顔になると、慌てた様に私の手から魔法の鞄を奪って、自分の手の中に握りながら胸元に抱く形で隠してしまった。


「確かに嫌かも⋯」

「そうね。全部出せるって分かってても、お料理に使うならもの凄く嫌ね⋯」

「しかしアレは急がないと不味いだろう!

誰かが病気になってからでは、手遅れになってしまう。」

「そうなんだよ。

手で触るだけで危ないから、出来れば魔法の鞄でやれるなら、そっちの方が重要度が高いんだけど⋯」

「嫌よ!絶対にヤダァ〜!

この鞄をそんな事に使ったら、絶対に許さないから〜!」


産まれて初めて見る母のプンスコ顔は、半泣きになってるので迫力が全く無くて可愛かった。


「しかし⋯」

「う〜ん⋯」

「取り上げるなら泣いちゃうから〜!」


うーむ⋯子どもかな?

母の駄々のこねっぷりが何だか幼くて、しかも似合ってるせいでムッチャ可愛いから、父は強気に出られなくなってる。

末っ子対決は母に軍配が上がりそうな気配がしてて、末っ子同士なのに仲が良い理由が分かった気がした。


ワガママでお嬢様な母に対して、父は兄弟達からずっと押さえつけられてるから、精神的にかなり大人なんだろう。

表向きは二人共穏やかな性格で良く似ている気がするんだけど、根っ子の部分が真反対だから、上手く行ってるんじゃないんだろうか。

あと父が母にべた惚れなせいもある。

俗に言う惚れた弱みってヤツだね。


しかし困った。

この様子だと絶対に魔法の鞄は使わせて貰え無さそうだ。

でも私の鞄だって嫌だし、父の鞄だって錬成瓶や魔力草なんかを運ぶのに使ってるから、やっぱり嫌だよね。

うーむ⋯どうしたら良いんだろう?


⋯あ!

ピコンと頭に閃きが走った。


「魔法だ!

そうだ元々魔法の鞄の分解は、魔法じゃないか!」

『うん???』

「私小川のほとりで錬成師のお姉さんが、魔法を使って土とお兄ちゃんの血とヤラマウトの毒を分けてるのを見たことがあったんだよ!」

「なるほど⋯魔法の鞄を使わないで魔法でやれば良いのか!」

「そう!

ウンウンとピヨ子の餌と、それ以外の物で分けてみるのはどうだろ!」

「やってみよう!

駄目なら錬成師様に頼んで来てもらえば良いな!」


頼んでもお嬢さんは来てくれるのかなぁ?

多分ウンウンの分解って聞いたら、ドン引きして嫌な顔しそうな気がする。

だって私達もだけど貴族は綺麗好きだと思うから、肥溜めと一緒に暮らしてる農民とは、絶対に感覚が違うと思うんだ⋯よ?


ピコン♪

うわああぁぁぁ!!!

そうか!

そうなんだよ!

貴族は綺麗好きなんだよ!

またさらなる閃きに私は興奮して身震いした。


「分かったぁ!!!」

「うわ!

いきなりどうしたのよリリアナ?!

大きな声を出すからビックリしたじゃない!」

「煙!

煙が消えた理由が分かったんだよ!」

「えぇ?!

今度は、一体何を思いついたの?!」

「煙が白いのは木が燃えて空気の中に煤なんかが混ざったから白い色がついたんだよ。


貴族の人は魔物の分解に魔法の鞄を作ったけど、魔力が働く限り中を掃除出来ないでしょう?

だから魔法の鞄の仕組みに、このローブみたいな浄化魔法を組み込んでるんじゃない?


そしたら汚れても自動的に綺麗に出来るから安心だよね?

これは学校に行って勉強しないと正解は分からないけど、煙が消えたのは汚れだと鞄に判断されたなら、そうかなって思うんだよ。」

「あぁ⋯そう言うことね?

確かに煙って竈門の近くは煤で黒くなっちゃうものね?

だから鞄の中を綺麗にする魔法が勝手に消しちゃったって事かしら?」

「うん。

王様が言ってたんだよ。

2つの魔法を一度に使うのは魔法師では無理だけど、魔導師の勉強をしたらそれが出来るようになるんだってさ。


だから魔法の鞄を作った錬成師は、空間を拡張する魔法と分解の魔法を組み合わせて魔法の鞄を作ってるから、絶対に魔導錬成師が作った作品なのが確定してるんだよ。

だから3つ目の魔法が中に混ざってても可笑しく無いと思うわない?」

「でも⋯だとしたらもの凄く魔力を使うんじゃないかしら?」

「うん。だから魔法の鞄に魔力草を入れたら萎れたんじゃ無いかな?

錬成瓶に入れて置けば大丈夫みたいだけど、錬成瓶に入れてない道具なんかから、魔法の鞄は魔力を吸ってるんだと思うよ。」

「あ!それで今少しでも水に魔力を溶かそうとしてたのね?

魔法の鞄を直すのに、魔力を吸収させたいから!」

「そうだよお姉ちゃん。

だけど魔力を直接送り込んだ方が早いかな?って考えて、それで煙を入れて空気を吸う機能があるか調べてたんだよ。」


頭の中の靄が晴れてスッキリとした気分になった。 

てか魔法の鞄はスゲェな。

綺麗にする機能もついてるなら、洗濯機としても使えるじゃねぇか。

脱水するのに使ってたけど、服を着て入浴するだけで服が洗濯したみたいに綺麗になってたのは、ソレが理由だったのかな?

でもこんな事を続けてたら鞄の魔力が直ぐに切れちゃうよね?

だから白金貨なのかな?

銀糸や革なんかの素材に高い魔力を込めなきゃいけないから、相当いい魔石を使わないと作れないんじゃない?


金属の中で銀は特に魔力を伝える性質が有るみたいだから、魔物の素材の糸と組み合わせる事で魔力の伝導を良くして、鞄そのものに高い魔力を保たせて作ってるのかな?


魔石を砕いたら中の魔力が漏れるのを農民ですら知ってて、水にそうやって溶かしてるんだから、最初は元の素材の魔力だけで魔法を発動させて、発生した空間に大量の魔力を詰めこんだのなら、魔石が必要無い訳だよ。

魔法の鞄そのものが魔石みたいなもんになるって事じゃんか。 

はー、偉い人は良く考えてこんなもん作ってるんだなぁ。


あと分かってるのは分解の魔法は多分オートマで使う魔法だと思う。

だからハッキリとイメージしないと指示出来ないと、分解出来ないんじゃ無いかな?

魔法の鞄は使用者の思考に反応して分解するのは、そう言う事だよね。


でも人糞と残飯との混合物と、エレガント米粒とシャムの身体の中にいた虫と指定すれば、分解後に調べたら分かると思う。


もしかしたら寄生虫では無いかと私は疑っているけど、細菌やバクテリアなどのウイルスの可能性は否定出来ない。

でも何故それらを指定しないかと言えば、発酵に必要な細菌や微生物が他に有るからだ。

病気になるウイルス等の悪性のものが何なのかを指定出来ない以上、漠然と指示したら発酵に必要なものまで分別してしまう恐れがオートマには有るんだよ。


それでもしエレガント米粒以外に虫が居なかった場合は、次こそ発酵に必要な細菌や微生物と人糞や残飯、それ以外と指定して分別すれば良い。

でもそれはサラディーン様に頼もうと思う。

目に見える虫ならともかく、ウイルスやバクテリアなんかは風で拡散する恐れが有るから、使い慣れてない私がするのは、少し不安がある。


ただどうにもこの世界にそんな知識が有るか、それが疑わしいんだよね。

そもそもゴロゴロドンじゃないけど、前世の知識が通用するのかどうかが微妙なのよ。

全く通じないとは思わないよ。

それなら私は人間の形をしてないと思う。

似ているけど違う。

だから通用する知識もあれば、通じない場合もあるんだとそう認識してる。

でもさ分かっちゃいるけど、つい前世の方に引っ張られてるから、これはもう私がこの世界で生きて前世と同様に学んで対応して行くしかないんだよ。

多分10年もすれば向こうの知識の方が薄れて消えて行くんじゃないかな?


「お父さん、やろう!」

「え?やろうって⋯今からか?!」

「だってお風呂にはいる前にやりたいから!

明日その作業してお出掛けするの嫌だからね!」


私が握り拳を作って力説するの、真剣な目をした母と姉がうん!と力強く同意を返してくれた。


「でもその前に!

練習で芋を剥いて良いかな?」

「リリアナ。

お母さんね、焼いてから剥いた方が良いと思うの!」

「な、何ですって?!

⋯でも焼いたら熱くて触れないけど⋯魔法ならそれが出来るって言うの?!」


練習をしようと思ったら、母がカッ!と目を開いて片腕にシッカリと魔法の鞄を抱きながら、反対側の腕を持ち上げて握り拳を突き上げた。

すると姉がハッ!とした顔をして驚愕の眼差しをこちらに向けてくる。


秋になるとタマの木から落ち葉が落ちるし、冬には新しいジャガイモが増えるから、焼き芋するんだよ。

そうするとアッツアッツだから皮を剥くのが大変なんだよね。

教会で火の魔法を使って、火傷するのはこの時だろう。

だからウチは皮を剥いて焼くんだけど、やっぱり味が落ちるんだよ。

もちろん剥き出しでは焚き火に突っ込めないから、木串に刺して焼くか藁で包んで焼いてるの。

どっちかと言えば炙ったり、蒸すかんじになるのかな。

2時間有れば出来るんだけど。


「ま、まて⋯流石にこの時間から芋を焼くのは⋯」

「お父さん任せて!

ここは『時短』で焼くから!」

「じ⋯じたん?」

「時間短縮、略して時短!」

「じかんとは何だい?」

「鐘2つを鐘半分より少なくするってこと!」


この前圧力鍋を思い出しちゃったしさぁ。

懐かしくなったんだよね。

30分湯がいてたジャガイモが1分でホコホコになるんだよ。

もう初めて使った時の衝撃ったら無かったよね!


だから残ってた魔力でお鍋をイメージして、そこに持って来た芋を人数分いれる。

土がついてるから魔法の水でザブっと洗ってから、水の魔力が水を消してまた新しい魔法の水を少し入れてから、閉鎖空間をイメージして焚き火の上に移動をさせた。

見た目は薄い水に浮いてる芋が見えてて、超楽しい!


今思えば鍋出してから芋を魔法の手で洗ってるから魔法を3つつかってたけど、鍋はオートマにしてから芋洗いをマニュアルにしたらイケた。

魔法の腕は自分の腕を動かしてイメージを補強するとかなり楽だったよ。

お父さんが井戸の底で手を動かしてた理由が分かった。

そういや魔王も棚の上にある杖を取るときに指先を使ってたね。

こうしてみると、工夫さえすれば魔法の同時使用もイケるな。

全部をマニュアルでやろうとするのが間違いなんだよ。


アハハハ楽すぃ♪

体感的に夜の22時ぐらいだから、もうテンションが上がる上がる。

とか思ってたら加熱し過ぎた。

ヤベェ!


鍋を空高く打ち上げて少し頭上からずらして解放すると、水やら蒸気がボフ!って爆発してる。

危ない。

頭の上でやってたら全員が大火傷だったよ。

圧力鍋はやっぱ早いわ!


そして空飛ぶ芋をゆっくりと下げて見たら皮が少しだけ破れてたけど、まぁドンマイ!

始めての料理だと思えば⋯、ってそういやシャーベットを作ってたな?

まぁいっか!


「出来た!」

『おおーーー!!!』

「今⋯芋が空を飛んで無かったか?」

「芋は最初から浮いてるから!」

「確かにそうだったな。

それならうまくやれば人も飛べるんじゃないのか?」

「う〜ん、飛ぶのは飛べると思うけど、お空にはゴロゴロドンが住んでるから⋯」

「よし止めよう。」

「でも8級ぐらいらしいから、工夫したら倒せるかも!」

「止めなさい!

危ないだろう!

絶対にゴロゴロドンの相手をしてはいけないよ。

あれは沢山魔法の勉強して経験を積んだ王様だから倒せたんだと思いなさい。

良いね?勝手に空を飛んではいけないよ。」

「はい。お父さん。」


いつの間にか私が飛ぶ話しになってた。

てか捨猫を拾ってきた場所に捨ててこいみたいなレベルで言われたが、そんなに簡単に人間は空を飛べないからな?


いや飛ぶのはかなり簡単そうだけど、飛んで戦闘ってなると上は寒いし気圧が下がるしで色々と調整が大変そう。

下手したら高山病真っしぐらだよ。

気球をプカプカさせるのがまだ精一杯のレベルだと思う。

まぁ飛ぶって言うより浮かぶだけだから、今度遊んでみようかな。

ローブもある事だし、せめて飛空艇レベルで操作性の有る飛び方が出来る様にしてみよう。

暇と魔力があったらだけどね。


あ、芋はスカッと剥けた。

もう分解しなくてもいいです。

そりゃ手で簡単に剥けるから、魔法の手だけで剥けちゃうんだよ。

そう大失敗ってやつだ!

分解の魔法要らんかった!


でも皆夕方5時ぐらいに消化の良いご飯を食べてるもんだから、小腹が空いてて芋が美味いのなんの。

ただ塩を振りかけただけなのに、空腹って言うのは最高のスパイスだから、食べ飽きた芋でもすっごく美味しかった。


「何か甘いわ!」

「はふ!あふ!」

「うっめぇ!」

「美味しいわねぇ〜♪」

「⋯うむ。何故こんなに美味いんなろう⋯」


今までのが生煮えみたいなもんだったからじゃ⋯とは思ったが、言わずが花とばかりにホクホクしながら物理的に口を塞いだ。


薪って火力が低いし、芋にしても串を刺して外側を炙ってるだけだから、真ん中辺りまでちゃんと火が通って無いんじゃないかと思うのよ。

皮を剥かなきゃ焼き芋も炙り芋にならずに済むし美味しいんだろうけど、麦藁に包むと熱が高ければ麦藁は燃えちゃうから、火を消して土をかぶせてるだけじゃ、どうしたって芯まで熱が届き難いんだと思う。


我が家だと剥いてからするから、炙り芋になってるんだよ。

教会でする時は火傷するぐらいだから、皮ごと焚き火にいれて元祖焼き芋を食べてるんだろうけどね。

家で食べる芋が不味いのは、単に料理人の腕が悪いだけじゃ無くて、薪に廃材を使ってるから火力が足らないんじゃ無いかと思ってる。

だからマゼラン爺ちゃんは、低火力でも作れるローストビーフみたいな調理方法で作ったんじゃ無いかな?


「リリアナ。

今度からアンタが料理作りなさい。」

「え?!」

「皮も剥けてこんなに上手に芋が焼けるなら、料理だって出来るわよね!」

「そ⋯そんなぁ~」


また鬼軍曹がぶっ放して来やがった。

でも母はとても嬉しそうにしてる。

そりゃ苦手な料理から解放されるなら嬉しいだろうよ。

母としてのプライドは無いのかと、小一時間正座をさせて問い詰めたい所だが。


⋯まぁ良い。

ぶっちゃけ不味いご飯は許せても、あのレパートリーの無さはもう我慢も限界だったんだよ。

分解と魔力の手を使えば私でも料理が作れるなら、今度から私が好きな料理を作りまくってやる!


「⋯良いよ!

でも私、麦とマモー乳だけのご飯は飽きちゃったんだよ。

だからマゼラン爺ちゃんみたいなご飯を作りたいから、ちゃんと買い物に行かせてね?」

『え?!ホントに?!』

「いや、作りたいからと言っても作れる物では無いだろう?」

「お父さん忘れたの?

私が爺ちゃんと一緒に考えて作った料理が有るじゃない。

でもマゼラン爺ちゃんに比べたら始めて作るから未熟だと思うけど、何度か練習したら似せるだけなら私でもやれると思うの。」

「それでも良い!

俺、あの飯が食いたい!」

「僕も僕も!」

「私だってマゼランお爺ちゃんのご飯が食べたいわ!」

「お母さんも食べたいわぁ~!

リリアナに料理の才能があってお母さん、ホントに嬉しいわぁ~!」

「その代わり朝の作業はお姉ちゃん達に任せる事になるけど⋯」

「美味しいご飯を食べられるなら、文句なんて言わないわよ!」

「初めは色々試したいから失敗するかも知れないよ?」

「それでも食べられる失敗なら許してあげるわよ!

その代わり焦がして食べられない物はやり直すのよ!」

「分かったよ。

頑張ってみるね!」


麦がそもそも麦じゃないから、強力粉なのか薄力粉なのかすら分からないし、全力粉かと言えば味がそうでも無いから、良く分からないのだ。

でもマゼラン爺ちゃんはパンやパスタみたいな料理を作ってたから、作れない事は無いとは思うんだよね。


「問題は魔力が自分のだけの魔力で保つかどうか何だよね。

あと魔法の鞄も私で登録されてるから、私しか出せないのがなぁ⋯」

「あぁ、その問題があったのね?

なら収納して畑の水撒きが終わってから食事を作れば良いのよ。

収納出来るようになったら呼ぶから、土間で出入りすれば良いじゃない。」

「そうなるよね〜。

お父さん、水撒きは殆ど頼む事になると思うんだけど⋯」

「あぁ⋯今のやり方なら、寝坊さえしなければ1人でしても問題は無いぞ?」

「そこよね〜⋯。

寝る前にマドルス爺ちゃんにお願いしておこうか?

鳥の世話が有るから、起きてるんじゃ無いかな?」

「そうだな。

箱の中身も分解するなら一声かけて置こう。」


芋を食べ終えてから、土間から祖父宅のリビングに顔を出すと、椅子を並べてベッド代わりにしていた祖父がムクリと起き上がり。

シッシ!と、犬を追い払うような手振りで外に出るように促された。


「なんじゃお前達。

まだ起きとったんか。

騒がしく思っておったが、何をやっとるんじゃ。」


土間から出て少し離れた所で、非難地味た口調で問いただして来る。


「煩くして済まない親父、今夜は色々と立て込んでたんだ。

でも仕事が(かさ)んで作業が前よりも増えたせいで、こんな時間になってしまったんだ。」

「まぁこれを見ればのぅ。

また仰山と瓶を増やしたな。」

「魔力草もだけど、ちょっと魔法の鞄に今手をつけた所なんだよ。

これが成功したら、白金貨1枚の魔法の鞄が5年は使いたい放題になるから、頑張ってるの。」

「かー!欲に目が眩んどるでは無いか。

良いか。

大金を楽して稼ごうとなんざするんじゃねぇ。

地道に自分が出来る事だけをコツコツとやらんと、そのうち身を滅ぼすぞ。」

「うん。

マドルス爺ちゃんの言う通りなんだよ。

だから反省して、明日からはちょっとやり方を変えてみようかと思うの。

まだ始めたばかりでやり方が決まってないから、試行錯誤してる所なんだよ。」

「⋯ふむ。

ならば良いが、呉れ呉れも欲に囚われぬように気をつけるんじゃぞ。」

「俺もつい楽しくなって手を広げてしまったが、これからは気をつける。」

「うむ。まぁモズグスなら気付けば持ち直すとは思うが⋯人が増えるまでは待つことも大事だぞ?」

「それなんだけど、アーニャ叔母さん達はうちかお爺ちゃん家に居ることって出来るかな?

宿を使って貰おうと最初の頃は考えてたんだけど、作業の都合で夜明け前と日が沈んだあとじゃないと仕事があんまり無いんだよ。」

「⋯ふむ。

いまアーニャは1人で部屋をつこうとる。

バッカスはセフメトとおるが、ジギタスが戻ってくれば3人になるな。

だがワックスと上か下かは分からんが、ひ孫が居れば5人になる。

流石にどうじゃろうか。

下の子が男子であれば、少しは保つがそっちもカタリナが10になるからのぅ⋯」

「あ、一冬で良いんだよ。

どうせ冬に引っ越すかも知れないから。」

「あぁ!そうかそれを忘れておったわ。

ならば一冬ぐらいであれば、過ごせるのでは無いか?」

「いや流石にそれはきついだろう。

うちはまだ一冬ならカタリナは今のままで過ごせるから、セフメトと姉さんの孫の男児を1人、うちで預かろう。

ワックスやバッカスを流石にウチに入れるのはな⋯」

「ふむ⋯そうだの。

間違いがあっては事だからな。

様子を見ながらになるが、まだ幼い方が男児であれば、エターニャも文句は言わんだろ。

だが移れるようであれば、移しても良かろうな。

セフメトもその方が勉強するのも楽しく出来るのでは無いか?

今はエターニャとバッカスがつきおうてやっとるが、張り合いがなさそうでな。」


まぁそうだよね。

あの様子ならそうなるか。

父がひっそりと美人な母の為に間男の予防線を張ったのを察しながらも、不出来な兄姉を教えてるせいで、1人メキメキと学力を伸ばしてそうなセフメトを思って納得する。


「それじゃそれでお願いします。

それで爺ちゃん、幼虫を採る為の箱なんだけど、あれから色々話してたら良い方法が見つかったんだよ。

ね?お父さん!」

「魔法で幼虫と(こえ)を手を触れずに分けようと思ってる。」

「何だと!

そんな真似が出来るのか!」

「お爺ちゃんも出来るよ。

基本的に水を操って分けるんだもん。

ただ具体的に何を分けたら良いのかを想像してやらなくちゃいけないけどね。」

「カァーー!

何十年と畑に水を撒いとったが、よもやそんな方法がとれるとは⋯俺は今まで何をしとったんじゃ!

それが出来るなら厠のクソを入れ替えるのも、手を使わずに魔法で出来るじゃないか?!


クソ!クソ!

何で俺はこんな簡単な事を思い付かんかった!

出来るじゃ無いか!

あんな水気の多いドロドロしとるもんなんか、水とほとんど同じじゃないか!!!」


マドルス爺ちゃんが目を大きく開いて、身体を震わせながら呆然としてる。

ナイスオーバーリアクション!

流石、コミュケーションの帝王様だ。

クソ!と叫びながら悔しそうに自分の太腿を手で打つ仕草が、まるでリアクション芸みたいで、ベテランの風格さえ感じられる。


「魔法でやれば腰の痛みに耐えずとも済んだのか⋯。

元気茶を飲んで頑張っとった俺のあの苦労は一体っ⋯。

何という事だ⋯。

何という事なんだ!

クッッソーーーーー!!!」

「お爺ちゃん夜中だから。

しー!しーだよ、しー!」

「むぐぐぐ⋯」


お爺ちゃんは自分の両手で口を塞ぐ。

その仕草がマルセロにソックリだったから思わず噴くかと思ったわ。


倉庫の周りに瓶は置いて無かったし、倉庫の横に置かれてた1つ余ってる水瓶はそのまま使用する事にした。

用意したのはまず日の光に似た照明。

これは必須。

マージンを叩き起こして、飛び出す成体がいたら食べて欲しいから。

あと間に合わないようなら、私が浄化で仕留めるために見逃さないようにだね。

カタリナや母にも説明してスタンバイして貰ってるよ。


変なバイ菌を持ってるかも知れない成体は絶対に野放しは出来ないし、あわよくば魔王が異変に気付いて来てくれたら助かるなぁ〜と。

じゃあ明日やれよ!って話だけど、お嬢さんなら卒倒しかねないし、魔王の方がまだ男だから耐えられるかなと思ってるんだけど⋯。

うーむ⋯駄目かな?

お坊ちゃまだし。

まぁ駄目ならそん時はそん時考えるさ。

ウチにはプチ聖女とゴリラ軍曹いるし、多分イケるやろ!


そして例の箱の前には2つの遮光錬成瓶。

透明錬成瓶の方が中身の観察には良いんだけど、餌には死なれたら困るし、もし変な虫がいたらそれを調べて貰いたいから劣化させないようにしたい気持ちもあるけど。


1番の理由はそんなもんを高価な透明錬成瓶に入れたくないから!

特に透明錬成瓶は月の光を浴びせた水を作ったり、魔力草を育てるのに使うから、人間の口に入るものを作るのに使うかと思えば、絶対に不潔にはしたくない。

そりゃ浄化すれば良いって分かってるけど、これはもう完全に気分の問題なんだよ。

悪いかよ。

女の子なんだから仕方がないでしょ!


てことで遮光錬成瓶2つ。

そして肥を入れる水瓶が1つ。

これは水瓶屋さんが運んで来てくれた、残り2つの水瓶のうちの1つなの。


本来は井戸の水を入れて月の光を浴びせる為に買った物だったけど、ほら井戸が光っちゃったから。

なら別に井戸水を外に出す必要は無いかな?って、保留してた代物なの。

お風呂受けが良いから、お爺ちゃん達に使って貰ってもいいねってお話してたんだけど、ゴロゴロドンが来てスッカリ忘れてたんだよ。

今日の午前中に届いてたんだけどね。

私が転んだり記憶が飛んだ後に、家でカタリナと魔法無双してたら、お爺ちゃんの家に届いてた。

今日お爺ちゃん達をお風呂に誘おうかと思ってたら、ゴロゴロドンのせいでバタバタしてて、こっちも新しい気づきや作業が大変だったから、まあ今度ね!

そして残りの1つは最初に孵ったウェブンの部屋代わりになってる。


卵孵機の方は今日孵ったばかりの雛が住んでるよ。

だから環境が変わったばかりだから、本当なら今夜は注意して見てて上げないと駄目なんだけど。

爺ちゃんが鼻息を荒くしてめっちゃやる気なんだよ。

何というか⋯ドンマイ!


1年に1回は、真冬に作業してるのをコッソリと見たことあるけど、本当に大変そうだったから気持は分かるよ。

ちなみにカタリナやエターニャは家事に逃げてるし、母もマリア婆ちゃんも参加しないから、やるのは全部男性陣なんだよね。


今年の冬からは爺ちゃんとお父さんで無双しそうだから、バッカスやお兄ちゃんズは嬉しいだろあなぁ。


そして今はうちの家族に見守られて、お爺ちゃんがお相撲さんみたいにパコーンパコーンと腕をクロスしたり開いたりして準備体操をしてる。

魔法使うだけだから、柔軟体操ちっくなのは必要無いと思うんだけど。

そこはもう大人の心でスルーする。

2歳児だけどな!


「お爺ちゃん。

説明を聞いてね?

私の予想がもし正しかったら、半分から下が危険な場所だと思うの。

理由は昼間に蓋を何度も開けて幼虫を採るから、上から箱の1/5ぐらいまでは魔力が薄くなってるはずなの。

分かる?」

「うむ!

日の光に当たれば魔力が駄目になるんだったか。

それなら自然と下の方に逃げてると考える方が良いだろうな。」

「それと水は高い所から低い所に向かうから上の方は乾燥して来てると思うんだよ。

それで水が少ないと操作が難しくなるから、魔法のお水で表面を湿らせて、箱の上の1/3位を、まず持ち上げてくれるかな?

それから中を水で探っていつも餌にしてる幼虫をこの瓶の中に入れて欲しいの。

それ以外にもし変な違和感のある見慣れない虫がいたら、こっちの瓶の方に入れてね?」

「⋯ふむ。

水を操って果たしてソレが分かるか⋯」

「最初に魔法を教える時に、木桶に砂を入れて水と魔力の違いを教えてるでしょう?

その水を上に持ち上げて、混ざってる砂を木桶に落とす形にすれば良いって言ったらわかり易いかな?

お爺ちゃんが頭の中に幼虫を思い描いて、その瓶に入れろって水に命令すれば良いんだよ。」

「ふむ。なるほどの。

それを聞けばやれそうな気がするぞ。

よし!一丁やってみよう。

もし上手く行かなんだら、その水瓶の方に入れればいいんじゃな?」

「うん!取り敢えずそれでいいと思うよ。

あと明るくしたからマージンが来てくれるかも知れないけど、お母さんとお姉ちゃんは変な虫が外に飛んでマージンが食べられないようなら、その虫をできるだけ浄化して欲しいの。

右手側をお姉ちゃんが、左手側をお母さんが見ててくれるかな?

私はそれ中央やそれ以外の場所に行こうとする虫を気をつけて見てるから。

お父さんはお爺ちゃんが何か困った様子になったら、助けてあげて欲しいの。

お爺ちゃんも魔力が強いから、私だと消費が激しくて素の魔力だと厳しいんだよ。」

「うむ。分かった。

親父なら、(こえ)を運ぶだけなら簡単にやるだろうが、虫を探して仕分けるならいつもと勝手が違うからな。

地面に落としそうなら俺が(こえ)を支えるよ。」

「うむ。頼んだぞ!」

「じゃあ蓋を開けるよ?

皆準備は良いかな?」

『おう!』

「良いわよ!

何時でも来なさい!」

「はぁい。」


祖父や父の息の合った返事や姉や母のマイペースな返事を聞くと、私は身体から薄い青色の魔力の手を伸ばして箱の蓋を開ける。

箱は錬成箱と同じ規格なので、縦1m横2m高さ1mの横長の箱になっている。

多分錬成箱の方がこれに似せて作られたのかも知れないね。

そして私の魔力の腕が薄い青色なのは、この後の浄化ぶっ放しに控えて魔力をギリギリまで削減してるから。

日の光が当たらなければ、薄くしたって散らずにマニュアルで動かせている。

今更何度も開けて来たんだから、箱の蓋を壊す事も無く浮いた蓋から黒くて小さな虫が何匹か飛んで行く。


そう何匹か。

だってピヨ子が沢山食べるから、随分と量が減ってるんだよ。

そしたらブブブ⋯と音が一目散に寄ってきて、次々と成体になった小バエみたいな黒い虫たちは、マージンにパクパクと捕食されて行く。

それはもうあっという間の早業だった。


「ひぃ!」

「お母さん?!」


でもその光景の悍ましさに母が耐えられずレモン色の光をマージンにぶっ放すのを、姉が思わずギョッとして叫んだ。

10匹はいたマージンがレモン色に光ったが、だから何?と言わんばかりにブブブ⋯と、何事も無く無事に倉庫の屋根の上に飛んで行った。


『ふぅ〜⋯』

「ごめんなさい〜、つい汚くって〜」

「お母さんは宿や大食堂の娘だから、虫なんて天敵みたいなもんだもんね⋯」

「そうなのよ〜⋯。

それでも何処からか飛んで来るから、見つけたら直ぐに消してるの〜。

お宿は綺麗にしてるんだけどね〜⋯」

「それは屋台が原因だろうね。

中央でマージンは見ないから、そこには行かないように指示してるのかも知れないよ。

元々マージンは麦の受粉が目的で作られた魔法生物で、虫を食べてくれるのは鳥の習性みたいなもんだもんね。


それが偶然私達の健康を守ってくれてるから、最初にマージンを作った錬成師さんもそのままにしてるんだろうけど、中央に餌があって其処に居着かれたら困るから、操ってる人がそんな指示をしてるのかもって考えたら、そんな気がしない?」

「え〜とぉ⋯」

「中央でマージンを見たこと有る?」

「そう言えば居ないわね〜。

お嫁に来た時に始めて見たわ〜。」

「だから昔中央の近くにある農村から産まれた虫で、マージンから逃げて来たヤツがいて、屋台の食べこぼしとか残飯を食べて中央で繁殖してるんじゃ無いかな?

今はもうマージンの数が多いから、中央で生活してる虫しか居ないかも知れないけどね。」

「そうなのかも〜?

でも教会の方々がたまに綺麗にしてくれてたんだけど、不思議といつの間にか増えてるのよ〜。」

「戦士達が宿に持ち込んだ屋台の食べ物から増えてる可能性は無い?」

「そおねぇ〜。

お客様が居ないお部屋は綺麗にしてるけど、何日か連泊してもお掃除を許してくれないお客様も居るの。

その人達がそうしてたら、お母さんは分からないわ〜。」

「それって結局宿が原因なんじゃない!」

「まぁまぁ、肥溜(こえだ)めから産まれたヤツじゃなきゃ、そこまで危なく無いかもだよ。

本当に危険な虫は森の奥に住んでるヤツなんだよ。

だから今こうやってその虫が居ないか探す所なんだけど。


お母さん。

これは叔母さんが亡くなった病気の原因を探す為のものでも有るから、次は浄化されたら不味いんだよ。

だから虫に耐えられないなら、離れて見てるかお家に避難しててくれるかな?」

「えっと⋯叔母さんが亡くなった病気の原因て⋯何なのかしら?

あの⋯リリの言う叔母さんて、ソーニャさんの事を言ってるの?」

「うん。そうだよ。

昨日話を聞いたばかりだから、突然亡くなったソーニャ叔母さんの病気の原因が、何処に有るのか私が気になってるの。

あの箱は関係無いかも知れないけど、今回魔力草の事でちょっと気付いた事が有るからついでに調べてるんだよ。」

「そうだったのね〜。

でもお母さんもあの箱は怪しいと思うわよ〜。

だって虫があんなに沢山出て来てたんですもの〜!」

「うん。まぁあの虫は関係無いんだけど、森から持ち込んだ魔獣に変な虫がついてたら、あの箱の中に居るかも知れないから、それを調べるの。」

「あの虫は関係無いのってホントに〜?」

「うん。あれは昔から人がわざと育ててる虫だから、それが原因ならもっと沢山の人が病気になって大騒ぎになってるよ。

中央でも聞かない病気だったんでしょう?」

「ええ⋯そうね。

虫がいてもあの目が黄色くなる病気は始めてだったわ〜。

なら違うのね?

でもやだわ〜。怖いわぁ~。」

「⋯お母さんはどうしてそんなに虫が怖いの?」

「だって昔料理をしてた下働きの男の子が、突然死んじゃったらしいのよ。

お父さんが言うには、虫に殺られたんじゃ無いかって言うから、それからお母さん虫が怖くって〜。」

「⋯そう。お母さんは話を聞いただけで、その男の子がどんな風に亡くなったかは知らないのかな?」

「最近姿を見ないな〜って思って聞いたらそう言われたのよ〜。

だから詳しい話は聞かなかったわね〜」

「やっぱりマゼラン爺ちゃんは何かを知ってるんだね。

この村に来た時の、料理の師匠になった人に何か聞いてるのかも知れないね?

お母さん、マゼラン爺ちゃんが料理をするとき手袋をつけてた?

それをして料理をしなさいって言われて無かった?」

「そうなのよ〜!

あんなのつけてたら指が動かし難くて本当に嫌だったの〜。

だから今はつけてないんだけど⋯、お父さんには内緒にしててね〜!」

「⋯そう。」


祖父と父が愕然としている。

それはそう。

母が想像してるよりも、この言いつけは破ってはいけない大事な事だったからだ。

このままだと母は今よりももっと窮屈な生活を送る羽目にならざる終えないだろうね。

だって自己判断で身を守る為の大事な言いつけを破るなら、そんな人は信用されないからだ。


それは自業自得と言うべき事態なんだろうけど、私は母を追い詰めたくて情報を聞いた訳じゃ無いんだよ。

また仕事が増えたかと思えば、遅い時間だから目眩がするけど、でもまたこれも放置出来ない案件になるからしょうがないなと小さなため息を呑み込む。

母を目の前にしてコレは厳禁なのを、知ってるからだ。


「お母さん。

お母さんは手袋をつける代わりに工夫してたんだよね?

だから手袋をしなくても、大丈夫だと思ったんじゃないのかな?」

「そうよ。虫が危ないなら消せば良いじゃない〜。

だからお母さんはお料理する時は必ず浄化してからお料理をしてるのよ?」

「それで虫は消えるかな?

だってお母さんはその虫が何の虫かは知らないんだよね?」

「え⋯」

「食堂にいる虫なら浄化で消えたから、浄化すれば虫は消えるって思い込んでたのかな?」

「え⋯!?そうなの?」

「うん。食堂にいる虫は魔力が少ない所で産まれて育ってるから、人には無害だし浄化も簡単に出来てたんじゃない?

でもマゼラン爺ちゃんが言ってる虫は、人を殺すぐらいに強い虫だから、お母さんが普段してるような弱い浄化だと、その虫は死なないと思うよ。」

「えぇーー?!

そうなの?

浄化で死なない虫なんているの?!」

「だってお母さんはその人を殺す虫を浄化して消えた所を見て無いんだよ?

でもお母さんでも魔獣には1級とか2級とかで、強さに違いがあるの知ってるよね?


ねえ?お母さん。

1級の魔物の虫と3級以上の魔物の虫が、同じ威力の浄化で消えるかどうかを今までに試した事は有るのかな〜?」

「あ⋯ないわ⋯お母さん、てっきり浄化すれば虫は消えると思ってたのよ⋯」

「うん。今回もし複数そんな虫がいたら実際に一匹試してみようか。

そしたら私が言ってる事の意味が少しは分かってくれるんじゃないかなぁ?」

「う⋯えと⋯お母さん、虫を殺すの?」

「その虫が原因かは分からないけど、食堂にいた虫と強い虫の違いを知るのって大事だよね?

特に手袋をしてないんなら、必要なんじゃない?」

「⋯そうね。

やだわお母さん⋯また失敗しちゃた⋯」

「昔からこれを繰り返してたから、お母さんは心が苦しくなるまで追い詰められちゃったんだね?

ガミガミ言われるだけで、理由を教えてくれないから、腹が立って言うことを聞きたくなくなっちゃったのかな?

でもちゃんと理由が分かったら、お母さんももう言いつけを破ったりしないんじゃない?」

「⋯うん、そうね⋯。

でもお母さん⋯直ぐに忘れちゃうの。

だからだめな子なのよ⋯」

「大丈夫!

お母さん、それは昔に叱られて胸がとっても苦しくて悲しかったから、自分で心が楽になるように回復魔法をかけてたんだよ。

だから心が苦しくなる理由を忘れちゃってたの。

だからもう忘れたりなんてしないよ。

今私が理由を教えてあげたんだもんね。」

「え?でもお母さん、回復魔法なんて使えないわよ〜?」

「他人に使った事が無いだけで、お母さんは天才だから自分の心が楽になるように無意識で回復魔法を使ってたんだよ。

今日私も慌てて回復魔法を使ったら、記憶が飛んじゃって自分が回復魔法を使った事も覚えて無かったの。


でも私は賢いから、残ってた証拠を集めてそれに気が付けたんだよ。

だからお母さんが忘れっぽい理由も、ちゃんと分かってるよ。

お母さんはね?

だめな子なんじゃ無くて、もの凄い大天才だったんだよ。」

「⋯え⋯えと⋯ホントに?」

「うん!ジギタス叔父さんとおんなじだね!」

「え?!お義兄さんと同じなの?!

え?⋯えーと⋯えーと⋯それはちょっとあんまり嬉しくないかも〜?」

「じゃあお母さんはジギタス叔父さんと同じにならないようにするにはどうすればいいかな?」

「ええ?!そんな事言われても、お母さん分からないわ〜?」

「じゃあジギタス叔父さんのどんな所が駄目なのかな?

7級の魔物が1人で倒せる凄い人だよね?」

「えっと〜お義父さんや、そのえと⋯も、モズグスさんのお話を聞かない所だと思うの〜。

自分でちゃんと賢く考えられる人なら良かったんだけど、そこはあんまりだから〜」

「じゃあお母さんは、ジギタス叔父さんと同じようになりたくないなら、お爺ちゃんやお父さんさんの言いつけはちゃんと覚えて聞けるよね?

もう記憶が消える理由もちゃんと分かったもんね?」

「えと⋯回復魔法を使わないのよね?

でもお母さん、自分で使おと思ってないけど、それはどうしたら良いのかしら〜?」

「苦しくなったり痛かったら治れって思わずに皆に相談したら良いんだよ。

ほら簡単でしょう?」

「そうなの?

そんな簡単な事で良いの?」

「うん。簡単だけど最初に回復魔法を使った時は苦しくて辛くて早くこんな記憶なんて無くなればいいって考えてたんじゃないかな?


だから記憶が消えてるから、お母さんはそのことを覚えて無いし、同じ苦しみを味わったら身体が覚えてたからまた魔法を使って記憶を繰り返し消してたんだよ。


それをずっと長い事繰り返してたから、普段の生活に問題があるぐらいになってるんだよね。

だから簡単に思えるかも知れないけど、お母さんが思ってるよりもずっと難しい事なんだと思うよ。


だってお母さん。

お父さんに最近叱られてお仕置きされた事、ちゃんと覚えてる?」

「え?⋯お父さんってモズグスさんに???

え〜と⋯そんな事あったかしら〜?」

『っっ?!』


戸惑う母の姿に異状さを理解した家族全員が、ショックを受けて愕然としてる。

何故なら今朝までは母が恥ずかしそうにしていたからだ。

祖父にしてもあんな大騒ぎをしてたのを知ってるから、余計に深刻な問題に気付いて眉間にシワをギュッと寄せてる。

父も信じられないとばかりに目を見開いていた。


「お母さんは恥ずかしくて辛かったから自分で回復魔法をかけちゃったのかな?

普段通りの生活をしないと、皆に迷惑をかけてしまうと思ったんだよね。

お母さんは皆が大好きだから、ちゃんとしなきゃと思って原因になる記憶を消しちゃったんだよ。


ねぇお母さん。

お爺ちゃんやお父さんの言いつけは守れそう?」

「ええ!私にも分かりやすく説明してくれるのよ〜?

だからお義父さんやモズグスさんの言いつけなら、ちゃんと聞けるわよ〜!」


混じり気の無い無邪気な笑顔に、父は辛そうに顔を歪めた。

忘れる事をいい事に味をしめてドスケベプレイを繰り返さない変態野郎で無くて何よりである。

でも父を虐めたい訳じゃ無いから、私は無邪気に微笑んでる母を見上げて言葉を続けた。


「お母さん、辛くて苦しかった記憶は綺麗さっぱり消すけど、そうじゃない思い出はちゃんと覚えてるよね?」

「そうかしら〜?」

「うん。だからさ。

お仕置きは恥ずかしくて皆に迷惑かけてるから忘れようと思ったかも知れないけど、辛くて忘れた訳じゃ無いからまだモヤモヤとした記憶が残ってるよね?」

「⋯モヤモヤした?」

「うん。例えば⋯縄とか。」

「っ?!」


母の顔が見る見るうちに真っ赤に染まって行く。


「え⋯と、縄ってあの藁で編んでる縄のことよね?

あら〜、どうしてかしら〜?

お母さんちょっと恥ずかしくなって来ちゃった〜。

可怪しいわね?

何で縄なんかで恥ずかしくなっちゃうのかしら〜?」


照明のお陰で首まで真っ赤に染まって、不思議そうに小首を傾げてる母の姿に、ホッとするやら照れるやらで父の方まで耳が赤く染まって来る。


うん。無心に徹しよう。

バカップルの砂糖攻撃を自分から受けに行ってる気がするが、とにかく私は石になるのだ。

兄弟達は全員が???状態になっており、父は何となく嬉しそうに口元が歪んでる。

真面目な顔をしようとして完全に失敗してるのがよく分かる父は置いておいて、隣をみれば祖父も呆れた様な、オラのやる気どげんすっと?!と、言わんばかりに少しイラッとしてた。


だって人の生死に関わる問題に立ち向かおうと気合を入れてたのに、突然嫁がエイリアンになったかと思えは、息子夫婦がバカップルオーラを撒き散らし始めてるのだ。


しかも途中まで話を深刻に聞いてたのに結末がコレだから、いきなり家主夫婦にハシゴを外されて屋根の上に取り残された大工みたいになってるよ。

しかも地上でイチャイチャタイムに入ってるバカップルを目撃したら、そらイラッと来るわな。

むしろ二転三転とコロコロと、変わる話の展開の速さについて行けずに、今正に理解を諦めた顔になった。


「モズグス。

嫁に見惚れるのは後にせい。

さっさと終わらせるぞ。

モタモタしてたら朝になっちまうからな。」

「あ、うむ。」


見惚れてませんけど!と、恥ずかしくて少しムッとした父だったが、遅い時間なのは確かなのでスルーして作業に意識を向ける。


「じゃお母さん。

後で呼ぶから今のことメモに書いて残しておきなよ。

このことはまた忘れるだろうから、しばらくは無くなる記憶を読み返せば分かるようにした方が良いから。

記憶が消える度にメモで読み返してたら、そのうち記憶が固定して忘れ難くなると思うよ。

忘れようとする癖が問題なだけだから、メモを読んで忘れた事を覚え直す癖をつけよう?」

「な、縄はどうして恥ずかしいか思い出せないって書けばいいのかしら?」

「お姉ちゃん。」

「分かったわ。

コッチは任せなさい。

お母さん家に戻るわよ。」


キリリとしてた母には申し訳無いが、私は忙しいのでゴリラ軍曹に任せる事にした。

ゴリラは母には優しいので鬼にはならないと思う。

昔に母が死にかけたショックが大きくて、強気に出られないんだろう。

昔と言ってもまだ3年前だしね。

姉はソーニャ叔母さんが亡くなった時は6歳で記憶が有るから、余計に不安だったんじゃないかな?。

だから鬼軍曹になって言動がキツイのは、無理をして献身的に身を尽くしているストレスが溜まってるからだろう。

知っててもムカついたら私は蹴り返すけどな!


祖父は慣れてるせいで、臭いのを我慢もせず少し深呼吸をして集中を取り戻すと、右手の掌を下に向けてサッと前にだした。

すると魔法の水を箱の表面に布をかけるように飛ばす。

魔力の流失点は人差し指なのに、そこから先の魔力操作が絶妙なので、魔法の水がとても薄くて美しいベールみたいに見えた。


水が表面に染み込むのを待つことも無く、祖父はそれから流れる様に右手を外回しに回してお椀を掬う様に掌を上にする。

するとゴソっと箱の上1/3が空中に浮き上がった。

泥の様な肥は不定形の球体の様に動いて左手側の遮光錬成瓶の真上に留まる。

そして浮いている球体から、ポトポトと白い幼虫が次々と落とされて瓶の中に入って行った。


米粒の分別が終わると、次は右側に移動してまたポトポトポトと何かを落として行く。

最後に残った泥の塊が水瓶の中に入った所で、私は一目散に右側の遮光錬成瓶駆け寄って行った。


瓶の中を上から覗き込むと、私の左右や後ろからも父や兄達が覗き込んで来たので、照明を遮られてしまい。

真っ暗でよく見えなくなったので、イラッとした私は瓶を両手で持ち上げるとその下に常夜灯のオレンジ色の明かりを灯す。


「こ、これは魔虫じゃないか!」


そして虫をみた瞬間父が叫んだ。

瓶の中に居たのは2cmぐらいのカメムシみたいな虫で、口らしい所にクワガタみたいな角か牙か分からないけど、鋭利な先の湾曲したトゲが2本ついてる虫が3匹入っている。


「まちゅう?魔物の虫?」

「そうだ。獣や魔獣の毛皮の中に潜んでいて、人間に噛みつく事があるんだが、牙が鋭いので一度噛みついたら肉の中に入ろうとするから大変なんだ。

噛みつかれたらそこの肉ごとナイフで落とさないと行けなくなるから、かなり厄介な虫なんだよ⋯」

「『真ダニ』みないなものかな?」

「まだぁみ?」

「ううん、こっちの話かな。

でも獣の身体につくならこの虫じゃないのかなぁ?」

「いや、違う。これは変だ。

ピアにしろ、ワムウにしろ、毛皮は捨てずに全て売ってる筈なんだ。

シャムは毛を毟るが、皮は食べるから、シャムではありえない。

それに魔虫はもっと森の奥に居る魔物や魔獣に付いてるんだよ。

だからこの魔虫は一体何について此処まで来たんだろうか⋯」

「あ!ひょっとして!

お父さん!

これは成体なんじゃない?!

だから肥の上に来て幼虫を餌として食べてたんじゃないかな?!」

「何?!

ならまだ他にもいるのか?!」

「私が予想してる虫は魔虫の幼虫だったのかも?

下の方が水分が多い筈だから、幼虫が居ないか調べてみようよ。

だってこの魔虫なら、ソーニャ叔母さんの身体についてたら、見落とすはずがないよね?」


私は直ぐに遮光錬成瓶をもう2つ取り出して、3匹のうち一匹を魔力の手で掴んで移動させると、両方の瓶の蓋を閉める。

そして2つの瓶をロベルトに持って貰うと、空の遮光錬成瓶の蓋を開けて、また待機していた所まで戻った。

そして怖いもの見たさでいつの間にか1人一瓶持って、瓶の中を夢中で観察してるマルセロとロベルトから祖父に意識を向ける。


「お爺ちゃんどう?」

「腹立たしいが余裕だの。

クソ!こんな簡単に出来るとは⋯一生の不覚だわい。」

「あ、うん。

じゃ残りは多くなるけど出来るかな?

もう居ないかもだけど餌は左手側で、魔虫や魔虫の幼虫がもしいたら右側の瓶に入れて欲しいの。

もし他に何かが居たら其処に入れておいてくれたら、後で分けるよ。」

「うむ。しかし魔虫とはな⋯コレはいよいよ怪しいのう。

ゆくぞ。」


マドルス爺ちゃんはそう言うと、今度は両手を使い。

まるでオーケストラの指揮者のように掌を下に向けて持ち上げた所からふわりと空気を包むように外回りに回して胸元の前で掌を上に向ける。


するとゴボッと箱の中から残りの肥が持ち上がり、左手側には行かずに最初から右側の瓶の上に移動させポトポトポトポトポト⋯と、大量の虫を落とした。


『うわぁ⋯』


皆で近寄って見てみると瓶の底から1/3ほどの量が、私の小指の爪先の大きさの、糸くずみたいな幼虫らしい虫がウジャウジャいて、それが成長したらこうなると言った様々な段階に変化したものが沢山入っていた。


糸よりも細くて小さな幼虫がスタートで、それが少し長くなって太さが10倍まで膨れ上がり、そこから足が6本生えてきて、最後に小さな角が2本生えてきているのが確認出来た。

糸クズの数を思えは成長するほど数が少なくなっていて、成体が確認出来たのは最初に見つけたらあの3匹しか居なかったのだ。

ピヨ子が沢山エレガント米粒を食べて無ければ、成体の数はもっと多かったかも知れない。


「コイツがソーニャを殺した犯人か⋯。」

「あぁ⋯まさかこんな物が居たなんて⋯バッカスやリリアナも危なかったんだな⋯。」


祖父が苦々しく呟けば、父も頭が痛いと言わんばかりにそう零した。


「この量を見たら成体になれるようになったのは最近だけど、昔から幼虫はこうやって底の方で生き延びてたのかも知れないね。

私は小さいからこの箱の中を触るのは難しくて、魔力の腕を使って餌を取ってたけど、バッカスお兄ちゃんは素手で触ってたから危なかったと思う。」

「はぁ~⋯なんてこった。」


マドルス爺ちゃんが頭を掻いて途方に暮れている。

何故なら今まで家長となって、皆の命を守って来た責任者だからだ。

今まで危険を感じて無かった安全なはずの場所が、安全では無かったのだからこの衝撃は大きいだろう。


だから今回自分がやると意気込んで頑張ってくれたんだよ。

跡継ぎはうちの父で殆どの仕事は父が継いでるけど、ジギタス叔父さんの事が有るからまだお爺ちゃんが家長だからね。

このままだと家長は父なのに、ジギタス叔父さんがそれを越えて自分の思い通りに家の方針に口を挟むだろうね。


つまり1つの家に頭が2つ有ることになる。

父の性格ならジギタス叔父さんを立てる行動をするのが分かってるから、祖父は家を分けて継がせようと考えてるけど、それは表向きなだけで直ぐにジギタス叔父さんが失敗するだろうから、今バッカスを鳥の跡継ぎとして育ててるんだよ。


うちの父だけなら言う通りに動かないジギタス叔父さんに対抗するのが難しいから、バッカスを育てて父の味方を作るつもりなんだろう。

家業を分けてもバッカスなら、ちゃんと父と相談して切り盛りするだろうしね。


そうすれば家を分けずに協力して生活するかも知れないし、最悪分けざる得ない事も考えてるんだと思う。


分けた所のデメリットは税だね。

恐らく麦の私達の家の税が安くなる代わりに、生活が苦しくなるぐらい鳥の税は高いんじゃ無いかな?

今まで麦で払ってた税が金銭に代わるからだ。

しかもジギタス叔父さんは弟から財産を奪った形になる。

我が家では話し合いの結果の事だとしても、周りはそう判断しない。

何故なら我が家は昔から鳥と農家の混合農家だったからだよ。


だから爺ちゃんはウェブンの飼育に乗ってくれたのよ。

周りが納得しやすいし、ジギタス叔父さんは今まで通りにノインを育てながらも、バッカスがウェブンを育てて行けば生計は建てられるし、財産分けも周りが納得する形に見えるからね。


我が家の事に他人の家の人なんて関係無いと言えないのが、農家の生活なのよ。

鍵すらかけない生活をしてるのは、近所に住んでる人達は皆家族みたいな関係だからだね。

血の繋がらない赤の他人が親戚の叔父さんみたいな顔で世話をやいてくれたりするんだよ。


我が家でそれが無いのは母が嫁だから。

母は同じ村民でも中央のお嬢さんなんだよ。

まだソーニャさんが居てくれてたら違ってたとは思うけど、要はうちの母は浮いてて、農家に友達が1人もいないのさ。

母が人懐っこいのは従業員に囲まれて育って来たからかな。

身内以外に攻撃してくる人が居なかったから、あんなに無防備で居られるし。

近所の村民も金持ちの娘なのに、お高くとまってない母を好意的に受け入れてくれてるんだろう。


だから会えば笑顔で挨拶や会話をするし、表向きは上手く付き合えてるんだけど、友達じゃないからお互いに積極的に会う関係じゃないから我が家には客が来ないのよ。


父は会話したら他人を人類みな兄弟みたいな仲にするような人だから、家業を継ぐ跡取り同士の関係やら、戦士や狩人の友達やらと、友達がウジャウジャ居るけど、母に心から惚れてるから友達なんて1人も家に呼ばないのよ。


だって母が無邪気に懐くから。

そりゃ賢い父は何気なさを装って母を隠したくなるよね。

目の前で他の男を褒められたり、笑顔を向けられたら嫌だもん。

母は母で大好きな父の友人だから、余計に張り切って相手に優しく対応するだろうし、笑顔も向けるだろう。

浮気じゃないし悪気もないから何も言えないせいで、父は家に友人を呼ばずに用があるなら自分がそっちの家に向かうのを選ぶよね。


でもお呼ばれしたらお返しに呼ぶのが普通だから、結局今は何処にも行かずにウチにいるんでしょ。

お爺ちゃんはそんな閉鎖的に生活してる二人を見て、財産を分ける事で他家との関わりを、またアレはアレでコミュケーションキングなジギタス叔父さんに、やらせる事でやり繰りしようとしてたのかな?


ジギタス叔父さんは自己中なので他人の事情は気にしない図太さがあって、バカだから相手が腹の中に抱えるものがあっても見抜けないから無邪気だし、バカだから信じやすいし、バカだから周りから呆れられても話のネタにされて愛されてるんだよ。

あれで兄貴肌で面倒見も良いからね。


ジギタス叔父さんが多少のバカをやっても昔からだから近所の人達も慣れてるし、父がフォローに回れば好意的に見てもらえるから、父が人付き合いが悪くても疎外されずに居られるから、祖父はそう言う所もちゃんと見てると思うのよ。

頭の良い人だから。


満足の行く教育を受けて無いから、人の話も理解を越える時は流したりするけど、頭の回転が早い人だから家長に選ばれるのも有ると思う。

魔力は必要だけど、例え魔力が沢山あっても、それだけでは先代から家長には絶対に選ばれ無い。

何故なら家族が不幸になるからだ。


だからジギタス叔父さんは長男だけど、祖父はバッカスに期待してるし、父に全権を譲って楽隠居してないのも、父に家長として足りない物が有るからかな。


そんな事を考えながら、沢山虫が入ってる瓶に蓋をしようと手を伸ばしたら、後ろ襟を摘まれて身体が浮上した。


「王様?」

「全く其方は目が離せぬな。

先程の魔法はなんだ。」

『え?!王様?!』


全員がギョッとして身体に力を入れてザッと物理的に距離を一歩だけ下った。

魔王はいつもなら直ぐに腕に座らせてくれるのに、プラーンとしたままで笑わってない視線を向けてきたので直ぐに合点が行く。


「水魔法。」

「水魔法?

アレがか?」

「そうだよ。

水を操って中の物を仕分けしたんだよ。

ね?だから水魔法。

やったのはウチの爺ちゃんだけど、私もお父さんも出来るよ。」

「⋯ふむ。

其方が教えたのか?」

「元から出来てたんだよ。

水の中の異物を魔力で探って分けてるだけの、単なる魔力操作だからね。


ウチに昔から伝わる魔法の使い方がソレなんだから、出来るに決まってるじゃん。

たださっきのが肥で出来ると気付いて無かっただけかな。

その気付きを与えたのが誰かと言えば私だよ。

それで何か問題有る?」

「⋯ふむ。」


長いまつ毛が美しい銀のマダラになってる緑色の瞳を隠す。

こんなマダラがあったかな?とは思ったけど理由は直ぐに分かった。

此処に飛ぶ為に魔力を大目に取り込んだんだろう。

だから姉や私みたいな変異が瞳に現れてるのかと予想して納得する。

こんな事を考えている間に、私は何時もの様に細くみえてもシッカリとした腕に座らされていた。

どうやら魔王からお許しが頂けたらしい。


分離の魔法は錬成師の候補生が沢山勉強して関門を突破した後始めて習う魔法だから、勉強もしないいち平民が使って良い魔法じゃないんだよ。

そりゃ錬成師の重鎮なら見逃せないと判断しても可笑しくは無いけど、単なる水の操作をしてるだけなら、お目こぼしして貰えたんだと思う。

実際にやってる事はそれだからね。

これが地面の中だったり、人間そのものに影響を与える魔法なら、今頃私や家族達全員が消されてたのかな?

まぁ私や父は出来ると思うけど、言わなきゃバレない。

いや多分バレてるけど、言ってないし。

そう言う使い方をしてないからの、お目こぼしな訳だよ。


なんちゃらの猫だっけか。

箱の中に猫を入れてるけど、入れてる所を見てないから、本当に猫が入ってるのかを、蓋を開けるまでは証明出来ないから、猫が入ってる状態になるやつ。

蓋を開けて入って無いのが確認出来るまでの間は、猫が入ってる謎な理論をほんのりと淡く覚えてる。


つまり私や父が実際に魔力操作で水以外の物体を仕分けしなければ、私達は分離の魔法が使えない状態に私がしたんだよ。


王様はそれが本当か確認したくても、万が一使えるのが分かれば私や父を処分する立場の人間なので、私達の利用価値とこれを今追求しない不利益を天秤にかけて、追求しない方向に判断した。

となる。


「アレは何だ?」

「平民に魔虫と呼ばれてる虫の幼虫と成体のなりかけ。

私はその幼虫に人殺しの能力が有る事を疑ってて、それを調べたくて住処を漁ってた所だよ。」

「⋯人殺しの能力とは何だ?」

「前に話したバカな叔父さんの奥さんが病死したと思われてたけど、原因が不明だったんだよ。

王様なら知ってるかな?

数日に渡って身体が怠くて、ある日突然目が黄色くなって高い熱が出た後2日で亡くなる病気の話。

聞いた事が有る?」

「⋯瞳の一部が黄色に変化し、その後高熱を発症し治癒魔法も浄化も回復薬も効果を発揮せず、激しい腹痛の後で数日の後に死亡する例なら認知しておる。

だが其方との話の類似は、瞳の変色と高熱しか無い。」

「それは森に入った騎士がなる病気かな?」

「いや⋯騎士も無いとは言わんが、高位貴族で稀に起こる病の1つだ。

過去に現職の王ですら命を落としている事から、王殺しの病と別名がついておるな。」

「⋯そう。」


うっわ⋯出た。

モノすっごいヤバげな匂いがプンスコしてる。

自主的に森に入った人ならともかく、王族がソレになるってはヤバすぎるだろ。


「これらがその病の原因として、その治癒法。

または何故既存の治癒魔法では、病が治せぬその理由があれば、其方の見解を述べよ。」

「さぁ〜。

実験してみないと、何とも難しい所だけも。

虫が原因と分かって無いから、治癒が出来なかったんなら、分かった今なら何とかなんじゃない?

と言っても虫が増殖した後なら治療が簡単とは言えないけどね〜。

でも王様や私なら虫の形を認識してるから、成体になる前なら浄化だけで治せるっしょ。

あ、あくまでも王様の言う病気と、私が予想してる病気が同じならって事が前提に有ったらだよ?」

「では何故差が起きたと予想している?」

「保有している魔力量、及び治療法の違いかな。

私の予想では最初の数日の身体の怠さは、人間の身体の中に入った幼虫が成長するのに、人間の魔力を吸収して使ってる状態だから起こる症状で、高熱は身体が虫に気付いてその虫を退治しようと頑張ってるか、または幼虫が人間には毒になるウンウンを出しているかだよね?


だから浄化しようとしても、虫が出してる毒は消せても、原因が虫とは思って無いせいで魔法の指定から外れてるから魔法の威力が足らないのと、虫そのものが魔力を使って消されない様に抵抗してるかで、消しきれずに残ってるんじゃない?


平民の症状が軽いのは、元々持ってる魔力量が少ない上に、使ってる回復薬も初級回復薬だから、生きるのに必要な魔力が枯渇して亡くなってるんじゃ無いかな?


貴族や騎士や王族の場合は、そう言う魔力が豊富な薬を与えて貰えるから、虫が成体になれるまで生き延びられると考えたら、腹痛は成体に成った魔虫が体内を食べてるからなんじゃない?

だから回復魔法で傷ついた身体を治せても、魔虫が番が居なくても繁殖する性質を持ってたら幼虫を沢山産むせいで、最後は魔力が枯渇して亡くなるか、身体の中の色んな所を食べられて亡くなるか。

そんな事が起きてたら、症状が違ってても可笑しくは無いのかなって思うんだよ。」

「⋯では何故虫が原因と誰も気づけずに居ると考えている?」

「さぁ〜。

病気で亡くなってると思われてるから、遺体にはなるべく触る人も少ないだろうし、直ぐに虫ごと焼いちゃいそうだよね。

後は気付いてる人が居るから、森に行かない人達まで亡くなってるし、隠してる人が居るから、対応が後手に回ってるのかもね。

でもこんなのは何も調べもせずに、憶測で言う事じゃないから、私の勝手な妄想として聞き流してよ。」

「⋯では聞き流さずに真実を暴いた場合は、何が起こる。」

「それ聞いちゃうの?」

「フッ⋯不忠者を裁くのに何の躊躇いが有ろう?」

「そうだね〜。

やり方次第だとは思うけど、素直にお前が犯人だ!って言っても多分絶対に素直に認めないし。

逆に口封じに関係無い人達まで巻き込んで、大戦争を起こすだろうから迂闊に犯人とは言えないかな。


それに素直に罪を認めた所で、尻尾切りで下っ端が処分されちゃうだけだろうし。

だからと言って世間にこの虫が悪さをするから病気になるんだと言っても、悪用する人達はきっと何時までも消えないし。

治療法だって使える人が限られてるから、ヤケになった悪い人がこの知識を悪用して街の井戸とか麦の袋に入れたりしてバラ撒きでもしたら、それこそ大惨事になるよね。


それがずっと今後も起こるとしたら、迂闊に公表も出来ないから、上だけで手打ちにするのが精一杯になりそうかな。

暴いて被害が多過ぎたら、そもそも暴く意味が無いよね?


単に正義感だけでぶちまける、英雄気取りな自己満足野郎が居たら私は蹴り飛ばすかな。

つまり真実を暴こうとしたら、私に叱られて泣くまで蹴られるのが答えになると思うんだけど。

どう思う?」

「そこまで理解しているのならそれで良かろう。

ゆめこの事は迂闊に漏らすでないぞ。」


コレはつまり教会の関与を魔王も疑ってるか、知ってるって事なのかな?

つまり知ってて私がバカな英雄にならないか確認したわけだ。

かなり不本意だけど、まぁ確認するのは大事だしね。

少し前に祖父宅で話し合いして無ければ、バカな英雄になりかけてた身の上としては強く出られない所は悔しいけど。

まぁちゃんと気付いて軌道修正したからギリギリセーフって事にしてスルーしとく。


「そこで相談があるの。

ノインで商売してるのはウチみたいな規模の所だから多くないけど、自宅で畑の元気草対策に飼ってる農家は他にも沢山有るんだよ。


仕組みは同じだから、他の家でもこの幼虫が箱の底でウジャウジャ繁殖してる危険性が高いんだよね。

区画整理をどうするのか知らないけど、引っ越しになるならこう言う箱は、必要な分だけ取って中身を処分する人も少なく無いと思うの。


そしたら捨てるのに小川に流されたりして、あの病気が蔓延する危険性が高いのよ。

子供達はオヤツ代わりに小川にいる生物を取って食べてるからね。

1件や2件なら対応が出来ても、それが村中全員で一斉に移動するとなれば、病気が流行った時に対応が難しいよね?


だから危なく無い様に上手いこと出来るかなぁ?


村の人達は皆ウチのお爺ちゃんみたいに魔法の使い方が上手だから、水魔法で肥溜めの処理が出来る事を教えてあげたいの。

魔虫やら魔虫の幼虫が居るって知ったら、皆素手で触らない様にすると思うのよ。

土の上で天日干ししたら幼虫は直ぐに死ぬと思うんだけど⋯。

でもやっぱりダメ?

平民の方の病気も言わない方が良いかなぁ?」

「⋯ふむ。

水魔法か⋯仕分けさえ伝えねば良いのでは無いか?」

「王族ありがとう!

でもウチから伝えるのはちょっと目立つから、村長の代理人さんにこれを伝えてもいい?」

「セバスには伝えておこう。

だがあくまでも魔虫の存在だけを伝える事とする。

それで良いな?」

「それは私達が直接動いたらダメってこと?」

「うむ。

其方はいち村民として錬成師に報告したのだ。

村の者に魔虫の存在を知らせるのは、その務めを持つ者の仕事とわきまえよ。

そこな老人が身近な者に魔法の手ほどきをするのは良かろうが、其方は決して動くで無いぞ。」


魔王がそう言うと人差し指をクルリと回して幼虫入りの遮光錬成瓶の蓋を閉じる。

そしてクルリと身体の向きを変えると、私の身体を差し向ける形で父に手渡す。

最初は緊張して直立不動になってた父は、空気を読んだ私が両手を向けるとハッとして直ぐに受け取ってくれた。

そこで私は魔王の足元から影が静かに伸びて行くのを視界の隅っこに捉えて、まぁそうなるか⋯と諦めの境地で納得する。


「コレはまだ幼いゆえに迂闊な所がある。

呉れ呉れも危険に身を寄せぬ様に心して努めよ。

さもなくばその役目の者を、この場に遺さねばならぬで有ろう。」

「き、気をつけます!」


それだけを言うと、魔王は唐突に来た時と同じ様にスッと消えて行った。


残された私の家族達は展開の速さについて行けずに、しばらく呆然として突っ立っていたのだが。


「あ!瓶が消えてる!」


マルセロが1番最初に気付いて声を挙げたら、全員がハッとして地面に置いてあった2つの遮光錬成瓶が跡形もなく消えてる事に気付いて騒然となった。


「鳥の餌まで無くなってる!」

「王様が間違えて持って行っちゃった!」


魔王が聞いたら噴きそうな台詞を、ロベルトに続いてマルセロが言うから私も笑うのを我慢して、ウッカリ者にされてる魔王のフォローに回る。


「王様はアレがノインの餌だと知ってるんだよ。

私は王様があれも影の中に回収しようとするのを横目で見てたから知ってたけど、影の動きがあんまりにも嫌そうだったから、持って行かないでってどうしても言えなかったんだよね。


だって死ぬような病気を与える生き物と同じ場所で産まれて育った虫だから、ちゃんと安全かを調べないと食べた雛たちも人間に危険な病気を持って無いか分からないじゃない。

だって魔虫の成体は上に登ってるんだもん。


私が予想してる理由が原因なら、餌には問題無いと思うけど、もし餌の幼虫も魔虫に影響を受けて変化した事が有ったら、アレを食べて成長した雛を人が食べた時に、病気になる事も考えておかないと、危ないでしょう?


餌がもし悪い変化をしてたら、今の雛たちは全て処分されるんじゃないかな?

ううん。

もしかしたらあの餌を食べてた親鳥も全て処分するかも知れないね。


でも万が一ウチから外に出した鳥で問題が起これば、ウチは処罰までは行かなくても、もう二度とウチで育てた鳥や卵を買うお店は居なくなるから、餌が足らなくて雛が死ぬとか関係無いぐらいに大打撃だよ。

下手をすれば麦まで怪しいってなるから、この村で住めなくなるんじゃない?」

『なっ⋯?!』

「だから王様は餌の虫まで持って行ったんだよ。

私達が村に住めなくなったら困るだろうから、そうしない為に調べてくれようとしてるの。


ウチの鳥が全部居なくなれば餌がヤバかった事になるけど、そうじゃ無ければ鳥は連れて行かれないと思うけどね。

ソレが分かるまでは、餌をどうするか。

ソレを考えないといけないんだよ。

困ったなぁ⋯」

『⋯⋯』


強張った顔で私を見下ろしている大人達から向けられてる視線に、心の中だけでため息を零す。


いや本当に参った。

少なくても祖父はこの経験から保守派に回るだろうし、父も私の指示に対して警戒心を強く持たざる終えない。

今まで好き勝手にやらせてもらっていたのは、大人達がそれを許してくれていたからだ。


それが私が持ち込んだ魔力草のせいで、家業が存続の危機に面してる。

そりゃブチ切れ案件だよ。

永年続けて守って来ていた鳥の危機だもん。

これぞ正に欲に溺れた結果の末路にしか2人には見えないだろうからね。


「まぁつべこべ言ってても仕方が無いし、よし!

何とかしよう!」

「⋯どうするつもりじゃ。」

「バッカス兄ちゃんに謝って知恵を貸して貰うよ!

鳥の事はどうしてもお兄ちゃんの協力が要るからね。

そりゃボロクソに言われるだろうけど、私の責任だからそれは仕方が無いから耐えるよ。


それよりも雛達を助けなきゃ!

私の予想が正しければ、餌の幼虫は無害だよ。

ううん。

害があったとしても無害にさせるから問題は全く無いって断言する。

ただそれしちゃうと、ウッカリピヨ子みたいな聖獣が増えても面倒だから、王様の調査の結果が出てから判断すれば良いかな。

こっちも余計な手間が省けるしね。」

「では鳥は大丈夫なのか⋯?」

「うん!全然大丈夫だよお爺ちゃん。

何せ我が家はお母さんだけじゃ無くて、お姉ちゃんや私だって浄化するのが得意なの!

私だけでも1日か2日有れば済む作業だしね。

まぁもし不安なら調査の結果が出るまでは、出荷前に声をかけてくれたら浄化しとくけど?」

「しかし⋯本当に浄化に効果は有るのか?!」

「有るよ。不安なら今からでも見本を見せて説明するよ。

でももう遅い時間だし、バッカス兄ちゃんにも見せたいから、明日にしない?」

「何を見せると言うんじゃ!?

虫はもう居らんじゃろ!」

「まだ沢山残ってるよ。

厠はまだ触って無いじゃんか。」

『あ!』

「箱と違って日も当たらないし、新鮮な残飯も多いから、箱よりも凄い事になってるんじゃない?」

『ひぃぇ?!』


全員が厠に視線を向けて顔を青ざめさせながら悲鳴を口々に垂らしてる。


だから私はマドルス爺ちゃんが水瓶に移した肥を操作して元の箱に戻すと、そこから魔力を半分引き抜いて魔力の腕を2本作った。


そして自分の魔法の鞄から、また新しい遮光錬成瓶を取り出すと、一本に瓶を手渡す。


「リリアナ?!」

「お爺ちゃんやバッカスに虫が消える所を見せてあげたいし、お母さんにも思い込みだけの浄化だと、この虫が消えない事を説明しないとだから、魔虫と幼虫を少し残して置くの。

だってみんな厠に行くときにお尻を魔虫に噛まれたくないでしょう?

居ると分かってるんだから、サッサと殺して置かなきゃ、安心してトイレも出来ないじゃない。」

「そ、それは⋯」

「だってお父さんならもう見えるでしょう?

魔虫が外に出ようとして厠の穴から出て、木の壁に取り付いてるじゃん。

上に出口が有るって知らないから、厠の壁の隙間に取り付いて、穴を掘ろうとしてるじゃない。

でも木だから上手く行かなくて、ウロウロしてるでしょ?」

「うっ⋯」

「あのまま肥溜めを出すドアを開けたら一気に押し寄せてくるから、このまま殺しちゃおうと思うの。」

『え?!出来るの(か)?!』


驚愕を顔に貼り付けた全員から一斉にハモられた。

だから私はここぞとばかりにキリリとした表情を意識して作る。

しかも男達の中には、さっきカッコ付けて飛んで行ったばかりの魔王もシレッと混ざってた。


でも家族達は私に驚き過ぎて、全く魔王に気付いて居ない。

それに噴きそうになったけど、私は頑張ってスルーした。

アイツがぴょんぴょん飛んでんのは、ウンウンの匂いが耐えられんからじゃあるまいな?

あり得そうだけど、浄化もバンバンしてるから、今ん所は匂いが消えてもう臭く無いっすよ!


「皆もう忘れたの?

私は飛びっきりの黒魔石なのよ?

だから王様も必死になって私を保護しようとしてくれてるんじゃない。

そんな簡単な事が出来なければ、10級なんて名乗れないわよ!」


そう勇ましく啖呵を切ると、魔力の手をマニュアルで操作して、厠のドアを開けて飛び込ませた。

そして開けたドアから私が支配した箱の魔力達を次々と厠の板の割れ目に飛び込ませて行く。


腕はマニュアル操作で壁をウロチョロしてた成体の魔虫を確保して錬成瓶の中に次々と放り込み、魔力操作で肥溜めの中の魔力も支配すると底を漁って次々と幼虫達を表面に浮上させる。

そして糸くずみたいな幼虫から、成体になりかけてる様々な種類の魔虫から、数種類分別して、成体入りの遮光錬成瓶の中に浮かせて放り込み。

最後に遮光錬成瓶を引き上げてから、肥溜めを取り囲んでる壁から、地面の中の穴の壁まで魔力達を動かして壁をつくり。

圧力鍋の容量で肥溜めの中の水分を沸騰させて行った。

でもこのままだと圧力が溜まった蒸気が厠を吹き飛ばして仕舞うので、沸騰させてる間に上の魔力の壁からホースみたいに厠の板を通して道を作りドアを抜けた先の上に向けて空気を解放させる。


ピーーーーーーーー!


全く意図して無かったけど、お湯を沸かせたら鳴るヤカンみたいな音が空に向かって打ち上げられる様に鳴り響いたからクッソ焦った。

急いでホースを太くしたから、音が鳴らなくなったけど。


「な、なんだ?!」

「何があったんです?!」


私達がガヤガヤしてて煩くて目を覚ましてしまったのか、バッカスとセフメトが目をショボショボさせながら、家から飛び出して来た。


「虫退治!」

「へぁ?!」

「む、虫退治⋯?」


へんな声を出してポカンとしてる後ろでセフメトが怪訝そうな表情になってる。

そんな2人に悪いと思いつつもキリリと宣言すると、仕上げに通常より魔力を込めて具体的な指令を与えた浄化魔法をぶっ放す。


取り残されていた糸くずや成体未満の魔虫はそれで次々と消滅したけれど、ムカつく事に成体の魔虫からは弾かれてしまったらしい。


かなり高温に晒して弱らせてから、強い魔力と具体的な指示で浄化したのに、流石は魔虫と言うべきか。

強い魔物に取りつく生態が有るせいか、防御力がやたらと優れているようで耐えられてしまった。


だが賢いお子様な私の専売特許は観察だ!

魔力の指示をオートマに変更すると、糸みたいな細い針を無数に作って、牙みたいなトゲの間を狙って次々と突き刺して行く。

狙うは魔虫の小さな口!

でもオートマなので力が強すぎるのか、トゲが次々と魔虫を貫いて行った。

それでも藻掻く手足の動きを察知すると、今度は魔力のトゲにオートマで発熱を命じる。


高熱で苦しんで死んで行った叔母の苦しみを思い知れ!と、私がイメージしたのは前世より引っ張って来た永久脱毛のニードル法だ!

前世のは人に怪我をさせないから同じとは言えないけど、私がイメージに使ったのは電撃になる。

毛根を焼く要領で魔虫の体内を焼いて行くと、私の魔力への抵抗力が次々と弱体化したのが分かったので、残っていた肥溜めの魔力を使って2発目の浄化をぶっ放す。


すると次々と魔虫の身体が消滅して行く中で、ポロポロと砂粒見たいな小さな何かが落ちて行く。

何だろと思わず魔力を広げてそれらを回収したけれど、直接手に触れるのには躊躇われたので、生きている魔虫達を捕獲した遮光錬成瓶をロベルトに渡すと、新しく透明錬成瓶を取り出して、魔力の手に持たせて厠の中に送り出した。


「お、思わず受け取っちまったたけど⋯こ、コレぇ?!」

「あ、ごめんごめん。」


茶色いに透けてるせいで中身を見た兄が、爆弾を拾った少年見たいな顔でアワアワしているから、丸ごと包んで浄化魔法でレモン色に光らせてあげる。

兄は瓶が汚いと思って慌ててる訳ではないとは思ったものの、私が気になったのはそこだったので、そこは仕方がないすれ違いだと諦めて欲しいかな。


成虫が2匹入ってた瓶はまだ平気そうに持ってたけど、流石にウジャウジャいるのは気持が悪かったらしい。

成虫2匹入りの瓶は足元に置いて、ウジャウジャの方を今度は恐る恐るとマルセロと2人で瓶を少し掲げて横から眺めてる。


そして砂粒を回収して来た透明錬成瓶を、レモン色に輝かせながら厠から引き上げさせると、私の目の前の翳して中身が見える様にする。

すると父が私を抱いてる右腕とは反対側の左手で、宙に浮かぶ瓶を持ってくれた。


「青色の砂?」

「リリアナ、コレは何なんだい?」

「魔虫を倒したらしら、身体の中から落ちて来たのを拾ったの。

魔虫の身体の一部分だとは思うけど、浄化で消えなかったんだよ。

これって一体何だろう?」

「⋯魔石だ。」

『うわ?!』

「魔石?

魔虫にも魔石が有るの?」

「色からすれば5級とは行かぬが、恐らく4級相当以上の魔石ではないか?

魔虫は魔物と言う事で有ろう。

だが⋯これ程小さければ容量は、少ないように感じられるな。

しかしこれ程極小の魔石で有るなら、使い道は多く有るだろう。」


父の横からしれっと出て来た魔王の顔に欲しい!と、書いてるから、どうやら価値としてはお高い品らしい。


「売ってあげたいけど、戦士ギルドに持ってくと理由を聞かれても答えられないし、直接売るとなると脱税になっちゃうから、素材同士で交換する?」

「⋯どの様な素材が希望なのだ?」

「そうだね。

取り敢えずこの魔石は少しだけ強化して渡すから、5級の魔石を何個か取ってきてよ。

大きさが違うから、数は少なくても良いよ。

魔法の鞄の再生に使えるか試したいだけだから⋯そうだ。

今布の魔法の鞄が15個有るから予備を含めて20個ちょうだい?

これだと王様は損しちゃう?

何だったら4級の魔石でも大丈夫よ?」

「いや⋯強化を頼めるのであれば、20個ではむしろ少ないのではないかと思うが⋯?」

「良いよ。

その代わり餌の虫が悪くなってたら、ノインを浄化するから教えて欲しいな!」

「良かろう。

では魔石の強化が終われば伝えるが良い。

こちらも調査が終わり次第其方に速やかに伝える事を約束する。

契約を結ぶか?」

「信用してるから要らないかな。」

「承知した。」


少しウキウキとした魔王がまたスルッと消えて行った。


「は?え?」

「なぁ⋯5級の魔石って幾ら何だ?」


さっきまで瓶を嫌そうに身体から遠ざけてたロベルトが、今はシッカリ胸元で抱きしめる様に持ってる。


「お父さん知ってる?」

「5級は⋯確かヤラマウトがそうだったと思うが⋯確かアレは魔石は取れなかったが、取れて居れば金板1枚だと聞いた覚えが⋯」

「き、金版1枚?!」


恐る恐ると記憶を探って呟いた父の一言に、セフメトが素っ頓狂な声をあげて目を見開いてる。

バッカスも目が覚めたようで、何が何だか分からないけど、何か凄い事になってる???

見たいな顔でじいっとこっちを伺ってた。


「マルセロ兄ちゃん、お母さんが起きてたら塩の入った瓶を持ってコッチに来てって呼んでくれるかな?

寝てたら塩だけでも持ってきてよ。」

「分かった!」

「塩なんてどうすんだ?」

「それは国の秘密だからちょっと教えてあげられないの。

ごめんね?

ロベルトお兄ちゃんが消されたら私泣いちゃうから、聞かなかったことにしてくれたら嬉しいな。」

「だったらそんなヤベェ話を堂々としてんじゃねぇよ!」

「大丈夫だよ。

コレはまだ向こうに教えてない私の秘伝だから、内容をバラさなければお兄ちゃんは拷問なんてされないよ!」

「な!じゃあ余計にダメなヤツじゃねーか!

そんなヤバいもんペラペラ喋んな!バカ!」

「アハハハ!」

「笑い事じゃ済まねぇからな?!」

「リリアナ⋯夜だから静かにしなさい。」

「はい、お父さん。」


そろそろ眠気が耐えられないのかな?

自覚として眠気は全く感じてないけど、テンションが高いのってそんな気がする。


「バック兄ちゃんとセブ兄ちゃんは後から来たから話が分からないと思うから簡単に説明すると、ロベ兄ちゃんが持ってる瓶を中の虫が、ソーニャ叔母さんを殺した犯人じゃないかって疑ってるの。」

『え?!』

「詳しい話はまた明日か暇な時が有ればお爺ちゃんから聞いてね。

でも大問題だったのが人を殺すような虫と、餌の虫が同じ場所で産まれて育ってた事なんだよ。

もし魔虫が毒を持ってる虫で、餌の虫に変な影響を与えてたら、最悪この餌で育てた鳥の肉を食べて死ぬ人が出ないとは言い切れなくなってしまったの。」

『えぇ?!』


セフメトとバッカスがショックを受けて顔を歪めてる。

母だけで無く、大切に育ててる鳥にまで悪影響が有るかも知れないとなると、否応なしに魔虫への嫌悪と憎悪が高まるのは自然な形と言えるだろう。


「な、何だよそれ!」

「大丈夫!

お兄ちゃんノイン達は私が絶対に守るから安心して!」

「り、リリアナ⋯」

「餌が無事かを今王様が全部持って行って調べてくれる予定なんだけど、もし悪い結果が出たら今いるノインは全て私が浄化するよ。

数が多いからお姉ちゃんやお母さんにも手伝って貰うかも知れないけど、今回の事で一匹も被害は出させないから心配しないでね?

でも問題は雛の餌が今無い事なんだよ。

代用出来る物が何か無いか、ピヨ子を育てた経験で同じ餌を作る事は出来るんだけど⋯そうするともし聖獣化しちゃったらごめんね?

バック兄ちゃんに、それだけは悪いかなって思ってて、私が持ち込んだ魔力草で苦労をかけるかも知れないから、本当にごめんなさい。」


父の腕に座っている状態だけど、ペコリと頭を下げたらバッカスが小さなため息を零す。


「いや⋯魔力草はそうかも知れないけど、虫を此処に持ち込んだのはリリアナじゃねぇし。

母さんが死んだんだってタマタマだったのも分かんだよ。

だって親父は昔から鳥を狩って持ち込んでたしな。」

「バック兄ちゃん⋯」

「それにウチだけじゃ無くて、そう言う家は多いんじゃねぇのか?

だから誰が悪いとか言ってないで、早く皆に言わなきゃダメだろ?!

俺達みたいな悲しい思いをする子供を減らす方が大事なんじゃねぇのか?」

「⋯それなんだけどね。

病気の事は皆には教えられないんだよ。」

「はぁ?!な、何でだ?!

だってそれじゃあ⋯」

「魔虫がいるって話を病気の話はしないで、村長から皆に伝える方針になったんだよ。

理由は悪い人に悪用される恐れが有るからなの。


ねぇこれ見てくれる?

幼虫ってこんなに小さいんだよ。

だから悪い人が殺したい人のご飯に混ぜたりすると、毒の代わりに使えるし、強盗に入りたい家の井戸とかに入れて、そこの住民達が病気になってる間に盗みを働く事も出来ちゃうの。

この虫を使えば昔王様だって助からずに死んだから、ソーニャ叔母さんの病気は王殺しって呼ばれてる病気だって言ってたんだよ。」

「じゃこれからも知らねえ奴らが死んで行くじゃねぇか!」

「だから魔虫の話を伝えるの。

病気の話はしなくても、魔虫は恐ろしい虫だから皆気をつける様にしてくれると思うんだよ。」

「けどっ⋯」

「うん。バック兄ちゃんの気持は凄くよく分かる。

魔虫は大きくて目に見えやすいから、本当に危ないのは幼虫なのを、ちゃんと教えないと皆気が付かないよね。


でももし本当の話をしたら、悪い人が悪用するのはともかく、シャムを狩って生計を立ててる狩人や、肉屋や戦士ギルドの人達も困る事が有るかも知れないし、シャムを狩る人が減る事で、魔虫が増えて村の小川まで流れて来る様になれば、小川でオヤツ代わりに食べ物を集めて食べてる子供とかも危なくなるかも知れないと思うと、私は伝えない方向で、でも身を守れる手段を伝えた方が良いんじゃないかと思うの。


今私が思いつくのはこれだけだけど、その魔虫が入った餌をノインに与えてた事や麦の肥料に使ってる事がもし色んな人にバレたら、誰もノインや麦なんて買わなくなると思わない?

安全ですよって言っても、同じ場所で育った虫は人が死んじゃう虫なんだよ?

しかもウチだけじゃ無くて、村全部がそれって旅商人も困るよね?

麦を何時もの値段で売れないかも知れないとなると、この冬を越すお金も無くなるって事にならないかな?

冬だけじゃ無くて、この先村の人達はどうやって生活して行けばのかな?

これって私の思い過ごしかと思う?

バック兄ちゃんは、もしそうなったらどうしたら良いと思うのかな?」

「⋯俺には何が良いか⋯、それを聞いちまうと、わかんなくなる。」

「うん。先ずはウチの雛たちを助けよう。

それから先は村長さんから皆に話をするだろうから、それを聞きながら魔法で厠の掃除が出来る事を伝えたり、手袋をつける流行りを作ってみたりとか。

家族皆で協力して、出来る事をして行くのはどうかな?」

「⋯少し考えとく。」

「ごめんねお兄ちゃん。

コレは相談じゃないんだって、言うのを忘れてたよ。」

「え⋯?」


バッカスが目をパチクリとマバタキする。

私の顔を見て、それから集まってる周りの人達を見てキョトンとした。


「バック兄ちゃん、おはよう。」

「え?あぁ、何で俺⋯。」

「私達が大きな声をあげてたから、セフ兄ちゃんと起きてきたんだよ。」

「あー!そうだったそうだった。

何をを騒いでたんだよ。

こんな時間に⋯ん?何だよ。

皆してジッとコッチ見て。」

「お兄ちゃんがとても優しくて良い人だから、王様の命令を無視して、バカな英雄になるんじゃないかって、皆心配してるんだよ。」

「うん?何だよそれ。」

「お兄ちゃんはきっと心から優しい人だから秘密に出来ないと思うの。

でもコレはお願いじゃ無くて王様の命令だから、守れない人は王様も殺さなくては行けなくなるから。

私がバック兄ちゃんを守る為に記憶を消したんだよ。」

「は?え~と⋯え?」

「お兄ちゃんは私達の話を聞いて、王様が黙っていなさいねって言ってたのに、秘密にする事にもの凄く辛そうなお顔をしてたの。」

「え⋯?何の話をしてんだ?

何で皆そんな顔をするんだ?

え?何だよ一体。

変な空気になってるじゃん。」

「それはバック兄ちゃんが、私に記憶を消されちゃったからなの。」

「うえ?!

リリアナってそんな事まで出来るのか?!」

「頭の中に回復魔法を使って、少しだけバック兄ちゃんの時間を巻き戻しただけだから、ピーって大きな音が鳴ったのは、覚えてるよね?」

「え?回復魔法て、そんな事まで出来るのかよ?!」

「ウチのお母さんがそうしてたんだよ。

お母さんは実は凄い天才で、幼い頃に叱られて悲しくて辛いから、そんな気持から助けて欲しくて治れって無意識に考えちゃったのよ。

そしたら叱られた原因になった記憶と、叱られたことの記憶が消えてしまって忘れちゃったの。

元々使おうと思って使った訳でも無いから、お母さんは辛い思いをする度にそれを無意識で繰り返してたんだけど、それを私が自分の身体でもやっちゃったから、それでこの事に気が付いたんだよ。」

「え?!リリアナ、記憶が消えるぐらいの回復魔法を使ったって、怪我でもしたのか?!」

「そこも忘れてて覚えて無いんだけど、多分走るのに失敗して転んだんだと思うの。

私、走るとまだ転んじゃうから。」

「あぁ、なるほど⋯。」

「そこで元にもどれみたいな曖昧な指示で回復魔法を使ったから、怪我が治るのと同時に転ぶ前まで記憶が戻ってしまったんだと予想してるのよ。


そこは自分の足跡とか、落としたメモの場所やら転んで倒れて地面に寝てた状況とかの、転んだ事は忘れてても残ってた痕跡を元にして、私がその異常さに気付いたから、お姉ちゃんにすぐに報告して相談したし。


お父さんや他の家族にも伝えてたから我が家では皆知ってる話なんだけど、お爺ちゃん家の人達にはまだ伝えられて無くて、お爺ちゃんもさっきその事を知ったばかりだったんだよ。」

「それで俺の頭を回復させて、記憶を消したのか。

って、それってどうなんだ?!」

「回復魔法も悪用すると、こんな事も出来ちゃう悪い見本だよね!

でもそうしないとバック兄ちゃんも、他の皆もこの話のヤバさが伝わらないと思ったんだよ。

でもそのヤバさを伝えようと思ったら、寝る時間が無くなるから明日また時間を作って相談しようと思うんだけど、それで良いかな?」

「良くねぇよ!

俺がもの凄く気になって眠れねぇだろ!

何を忘れさせられたんだよ。

ヤバ過ぎんだろ!」

「今お兄ちゃんがモヤモヤとした気持なのは、私が記憶よ消えろ!って思って使った魔法じゃ無くて、此処に来た時に戻れって指示して消えた記憶だから、お兄ちゃんは記憶をまだ覚えてるの。

だから思い出せそうで出せないから、モヤモヤとした気持ちになって気になってるけど。

ちゃんと説明して消えた記憶を戻したら、モヤモヤも消えるから気にしなくても大丈夫!」

「気になるに決まってんだろーー!」


塩の壺を抱えた母やらカタリナが何だ何だと集まって来る。

1人だけ事情がサッパリ分からないバッカスは、寝癖もあって何時も以上に髪の毛をツンツンさせた頭を両手で鷲掴みにして、ソバカス顔を苛立ちで歪めて叫んでるけど、周りの皆からは『あー⋯』と言った声を出しながらも、同情してるような、どう声をかけて説得したものかと悩んでる様な、何とも言えない微妙な視線をバッカスに向けて向けてた。


セフメトもバッカス同様に少ししか事情を知らないけど、彼は理解力が高くて空気が読める賢いお子様なので、ジッと様子を見ている状態に入ってる。


もう体感的には夜の23時を越えた時間なので、朝の5時前に起きないと行けないと思えば、どうしたって気持は焦るけど、もうコレは寝てる場合じゃないのかも知れない。


2歳児の私がどれだけ耐えられるかは分からないけど、やれる所までやるしか無いかぁと。

諦めの境地で私は夜空を見上げた。


ゴロゴロドンが来た事で周りの雲を沢山使ったのか、空は満天の星空でお月様もハッキリと青白く輝いている。


そしてふと思い出せば、昨日から土間の外に置きっ放しにしてた、透明錬成瓶入りの元気草の双葉が、もうワチャっと小さな茂みを瓶の中で作りかけてるのを見て、ひっそりとドン引きした。

だって今日は昼から大雨で太陽なんて出て無かっただろ?!

と、思わず叫びたくなったけど、今はそれに気を取られてる場合じゃない。

だからかなりソレには気になったけれど、今は無心で現状の回復に力を注ぐ事にする。


どうやら今夜は眠れない夜になりそうだから、明日は皆で元気茶を飲んで頑張る1日になりそうな予感がした。

幸い新しい栽培方法で育ってる元気草も有る事なので、味見がてら皆で試飲してくれたらと、そう思いながら覚悟を決める事にする。

何だか私も魔王が歩いて来た道を自主的に歩いてる気持ちになるけど、ここはもう自業自得と割り切って乗り越えるしか無いかと思う。


「お母さん、お塩貸して。」

「え?はい〜、でもお塩だなんてどうするつもりなの?

お高いんだから、あんまり使わないでね?」

「うん。まぁそこはね。

また後から説明するよ。」


私はそれだけを言うと塩壺に手を突っ込んでモシャっと鷲掴みにした塩を、「あ!」て、顔をしてる母を無視しながら、新しく出した透明錬成瓶にぶち込んで行く。

濃度調整はまた後でするつもりなので、まぁ握り拳3回分も有れば足りるだろうと、ワシャワシャと塩を取り出してたら、「もう!」と母に塩壺を引き上げられてしまった。


「沢山使わないでって言ったのに〜!」

「お母さん、その塩壺幾らで買ったヤツ?」

「とってもお高いのよ〜!

銀貨20枚もするんですからね〜!」


壺のサイズは1kg分ぐらいだろか、小壺の部類に入る大きさなので、ソレが20万円するかと思えば母が大事に使うのも分かる気がする。

何なら一財産にあたるので、塩壺は小出しにする為に食糧庫に入れてあるぐらいだからね。


ピコン♪

そしてこんな時にまた新しい閃きが走ったせいで、もうお腹が一杯な気分になってる私は、思わず目眩がした。

今回の閃きは、塩と魔石だ。


コレも大事な閃きなんだけど、取り敢えず今はソレを全て横に無理やり置いておく。

個人的には今直ぐ全てを放り出して、この新しい閃きに齧りつきたい気分なんだけど、もう今は流石にキャパシティオーバーなのよ。


「そっかお高いね。

でももうお金は沢山あるから、無くなったら買いに行けば良いんじゃないかな?」

「でもお一人様壺1つしか売って貰えないのよ〜!」

「だったら家族皆で買いに行けば、壺5つは買えちゃうね?」

「あら⋯でもカタリナやロベルトに銀貨20枚持たせるのは⋯」

「じゃあエターニャお姉ちゃんや、セフメト兄ちゃんを連れて行って来たら?

お礼にマゼラン爺ちゃんのお店で美味しいご飯を食べておいでよ。」

「そんな事まで考え無くても、明日俺が新しい塩を買ってくれば済むだろう。」

「あら?

じゃあお母さん、それで良いかな?」

「ええ、新しいお塩を買って来てくれるなら⋯でも無駄遣いするのはダメですからね〜!」

「ちゃんと大事に使うから、安心しててくれて良いよ!」


そう言えば今マゼラン爺ちゃんのお店は、お腹を空かせた戦士達が大勢溢れ返ってるんだった。

ウッカリと父のガードに引っ掛かってしまって、不機嫌そうな父の横顔につい生暖かい気持になってしまう。


しかし塩を買うのにまさか制限があるとは。

まぁお金持ちは少ないけど、塩は色々と面倒でお金が有るからと、ウッカリ買う事も出来ないんだろうね。

塩は戦略物質だと聞いた覚えがあるし、南に有るからまだマシな気もするけど、塩の生産量に比べてウェスタリアの領土が広すぎるのと、運搬能力が低い事で一部の領地だけで塩を沢山買えないような生活の為の制限が、どうしても必要なのかも知れない。


塩は人間の生命の維持に必要な物資だから、⋯いや、待てよ。まさか塩まで錬成師が作ってるとか言わないよな?!

え?流石にソレは無いよね?!

もうやだわ〜、魔法の鞄を使ってジャンジャン生産すれば良いじゃんか〜。

何でそんな変な制限が塩なんかに掛かってんだよ〜?!


「リリアナ?」

「くぉら!

アルフィン今直ぐ此処に来いやぁ!」

「はぁ?!

リリアナ?!」

「わかってる!

今こんなもんに手を取られてる暇なんざ無いのは百も承知で言ってんだよ!

でも塩はヤバいだろ!

何で塩なんかにそんな制限かけて高価にしちまってんだよ!

この国はちゃんと海を持ってんだろうが!

フザケてんのか!

他国を通す訳じゃ無いのに、こんなもん絶対に許しちゃダメだろ!」


眠くてイライラして来たのか、もう腹が立って仕方が無い。

私はまだ2歳のお子様だから、睡眠時間は大事にしなくちゃ駄目何だと思うの。


「⋯全く何を騒いでおる。」

「塩!何で塩に制限かけて高価にしてるか、その理由は何だ!」

「⋯ふむ。世は忙しいのだが⋯」

「煩え!

塩なんざお前!

そんな人の命に直結する、大事な物資だぞ?!

麦並みに安くしとかないと1番駄目なヤツだろうが!

そこん所をちゃんと理解して、こんなバカな真似やらかしてンのかよ!

こんなん激怒案件に決まってんだろが!」

「むぅ⋯しかし、塩を安くすれば運ぼうとする者が居なくなるのでは無いか?」

「そんなもん!

平民に任せてっからそうなっちまうんだろうが!

何のための転移魔道具何だよ!

各領地に置いて運ばせれば良いに決まってんだろうが!」

「む⋯しかしそれだと寄る必要のない土地には、人が通らぬではないか。

人は無駄を省き経費を抑えようとするもので有る為に、コレはやむ無しで今の手段を取っておるのだが⋯」

「だったら国が塩を買い取って安値で回せば良いんじゃねぇのが?!」

「それでは既存の商人が立ち行かなくなるのでは無いのか?

塩で生計を立てる物は多数に及ぶと思うので有るが⋯」

「っっ〜〜!

ハァー⋯分かった。

つまりウェブンと魔法の鞄と商人を増やせって事だな?」

「まぁ⋯極論では有るが⋯ソレが1番穏やかで良い変化になる可能性は世も認めよう。」

「輸送を増やして塩の生産量に問題は?」

「さぁ⋯どうであろうか。

生産量を増やせば価値が落ちる危険性が有るゆえに、領主の判断に寄らば増やさぬのでは無かろうか。」

「⋯そうなるか。

なら薄利多売の仕組みを教えてやれば良いんだな?」

「はくりたばい?」

「安値で大量に売れば、高値で少し売るよりも儲かる形を薄利多売って言うんだよ。」

「しかし多量に生産を増やせば、その経費もかかるで有ろう?」

「今どうやって塩を作ってんの?」

「分離の魔道具を使用して居ると思うが⋯分離の回数を増やせば魔力を消耗するゆえに、多量に作れば経費がかさむ形で不利益になると予想するが⋯」

「分かった。

私がここで吠えててもアルフィンに迷惑なだけで何の解決にもならねってのが、よおおおおっく分かった。

忙しい所を呼び出して悪かったな。

端から勉強して人間の知り合い増やして、躾して開発する人間を増やさんと何も変わらないのがクッソ分かったよ。


そのために私は学校に行って、知識や常識を学ばないと駄目って事は前から言ってた事だったものね。


アルフィン、手出して。

ほら浄化したからちゃんと綺麗よ。

呼び出したお詫びに、御駄賃をあげるわ。」


私はそう言うと濃い青色から緑色になってる魔石を、親指と人差し指で摘んで魔王に見せた。


「?!なっ⋯」

「さっき取り引きして置いた魔石を利用するのは何だから、ちゃんと分けてた魔虫から取った新しい魔石なの。

ロベ兄ちゃん、その足元の瓶が空になってるのは私が使ったヤツだから、心配しないでね。」

「えっ?!」

「取り敢えず強化してみたけど、これでお礼になるかしら?」

「ど⋯どうやって?!

何故先程の今で強化がもう完了しておるのだ?!

先程までは確かに4級相当の魔石であったであろう!

今は最早5級を越えて6級相当ではないか!」

「お陰様でヘロヘロだよ〜。

もう眠くてやってらんないから、もう寝るわ〜Zz⋯」


もう寝ると言うよりも魔力枯渇して気絶したレベル。

でももう私は色んなこと考え過ぎて限界だったせいで、震えている魔王の掌に魔石を落とすと、全てを放り投げる事にしたのだ。


『ええええぇぇーーーー?!』


魔王を含めて家族全員から絶叫が挙がったけど、私はクカー!と父に抱かれて寝ているので全く聞こえ無かった。




酸素は二酸化マンガンにオキシドールを入れると発生するそうです。

もう薄っすらとしか覚えて無かったので、調べなおしたら何だか新鮮でした。

今は三角フラスコなんですね。

単なる記憶違いかも知れませんが、私の記憶は丸いフラスコに金属の支えるヤツだった覚えが(笑)

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