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フラワーロックって玩具をご存知ですか?
プラスチック製のヒマワリがサングラスを掛けてて、プラスチック製の植木鉢に植えられてるんですが、音がしたら反応してダンスみたいに身体を揺らして踊るし、陽気な音楽が流れるんです。
その類似した玩具は色々有ると思うんですが、それをイメージしたのを今回は書いてみましたの巻。
マドルス爺ちゃんの家は、私の実家よりも村の中央に近くて南西の方角に建っている。
私の鈍足でも3分以内で到着するほぼ真横にあるご近所様だ。
だから母の「いやぁぁぁん〜!」な悲鳴も聞こえてくる距離では有るが、「ぶふぃゃひゃひゃひゃ!」と魔女みたいなマリア婆ちゃんの笑い声の方が大きいので、まぁ⋯気にしない方向で、皆無心に昼ご飯を食べさせて貰った。
マドルス爺ちゃんは今寝てるので、なるべく静かにと思うけど。
私達の話がツボったマリア婆ちゃんは、酸欠になりそうな勢いでずっと笑い続けている。
「そんな面白い話かぁ?」
「でもこんな調子でずっと笑ってるのよ〜。」
「お先に失礼します!
ちょっと私、出て来ますので!」
「あ!獣車使うんなら、俺達を中央に連れて行ってくれねぇか?」
困惑してるバッカスに、エターニャも困った様子で苦笑を浮かべている。
興味が商人の修行にしか向いてないセフメトが、いち早く昼食を食べ終わって席を立とうとすると、ちょっと待った!と、言わんばかりにロベルトが呼び止めた。
「えと、それじゃ鐘1つぐらいしたらまた1回戻って来るから、その後連れて行くよ。
今は急いでるからまた後でね!」
「悪ぃな!」
昼休憩で家長が戻ったタイミングで話がしたいセフメトは、それだけを言うと一目散に家を飛びだして行く。
私はマリア婆ちゃん以外の子供達の純真さに、ほんわかと生温かい気持ちになりながら、丸いお腹を抱えて笑い続けているマリア婆ちゃんが少し心配になった。
マドルス爺ちゃんが起きてきて話を聞いたら果たしてどうなるのやら。
マリア婆ちゃんの様に爆笑しそうでは無いので、とても微妙な表情になって聞かなかった事にして流されそうな気がする。
「はえぇ〜ハァ〜ハァ〜⋯あ〜⋯こんなん笑ったんは久しぶりじゃぁ。」
「うん。婆ちゃん大丈夫?
お水でも飲む?」
「ひゃひゃひゃ⋯あ〜⋯こりゃ当分笑えるやつだの。
腹も痛いが、腰にもくるわい。
ちょっとエターニャ、お水をくれるかい?」
「はい、どうぞ。
マリア婆ちゃん。」
「おぉおぉあんがとよぉ~。
ひゃひゃひゃひゃ⋯」
「また笑ってるよ。」
「婆ちゃん、今日はよく笑うなぁ〜」
ロベルトが呆れた様子でそう言えば、バッカスも呆れ半分で楽しそうに笑ってる。
ジギタス叔父さんの奥さんは4年前に亡くなってるので、家事はマリア婆ちゃんやエターニャが行っている。
死因は病死だそう。
それも突然だったらしく理由は未だに分かって無いらしい。
それでも亡くなる数日前から体調が悪そうにしていたらしいけど、丁度ウチの母が流産した時期と重なってたらしく、気を使って元気に家事をしてたらしい。
それが突然熱を出したかと思えば、目があっという間に黄色くなってたった2日で亡くなったんだそうだ。
突然死や目が黄色と聞けば肝臓系の病気かなぁ?と、ぼんやり思い浮かぶけれど、他にも病気は有るだろうし、そもそもそれはこちらの世界の病気では無いから、それを考えると今の私にはお手上げだろう。
初級回復薬を飲んで寝るだけの治療法なら、例えどんな病気でも回復するのは中々難しそうでは有る。
母が浄化を使えれば、感染症が原因ならもしくはとも思うけど、流産したばかりの時期なら、そのタイミングも悪かったし。
そもそも病気で浄化魔法が必要なら、教会の方に連れて行ってただろう。
ただ体調が本格的に悪くなってから、亡くなるまでの時間が短過ぎたせいで、初級回復薬を飲んで様子を見ようとしてる間に、亡くなってしまった形なんだとは思う。
すっげぇ怖いんですけど。
しかもこれ、さっき聞いたばかりの話だからね?
そう言えば何時も会わないなぁ〜と、思ってたけど。
春に親族が集まるとオバサン達もドバッと増えるから、年1回しか合わないと名前も顔もまだ全員覚え切れて無いんだよ。
男性は男性のテーブルに座るし、女性は小さな子供がいなければ、土間に立っておさんどんを続けてるもんだから、もう誰が誰の奥さんで、私の従兄弟で父の姉なのかも分からないのだ。
だって村に残ってる娘さんも春には顔を出すから。
ウチもエリザベスお祖母ちゃんの経営する大食堂にご飯を食べに行ってたから、それが向こうへの挨拶代わりになってる。
宿にはお休みが無いから、向こうの親族も従業員してるし、従兄弟も大食堂で食事をしてるから、一般家庭なら身内だけの食事会なのに、宿をやってるから食事会に他人が混ざってる感じになるのよ。
それはともかく、流石にショックをうけたよね。
だって身近な親族過ぎて気付いてないとか、節穴すぎねぇか?
どんだけ興味が無かったんだって話だよ。
てっきり家事で忙しいから顔を合わせて無いだけだと思ってた、鈍感な自分が恨めしい。
私が勘違いしてた女性は嫁いだ父のお姉さんが、様子を見に来てただけだったようだ。
まぁこうやって疑問に感じた事を聞けるようになったのは、ここ半年ぐらいの事で、最初の一年間はカタコトの言葉だ団子のやり繰りが精一杯だったし、見学の見に入ってたから、しょうがないっちゃしょうがないんだけど、ジギタス叔父さんがどうして精霊実を1人で急いで取りに行ったのか、これで納得した。
風邪だと思って呑気にしてたら、あっという間に奥さんが死んでしまったからだ。
母は流産が原因で精神的に落ち込んでただけだったけど、ジギタス叔父さんの奥さんの事があったから、余計に身構えてたんだろうし。
ジギタス叔父さんだってもの凄く後悔してたんだろう。
精霊実の話を出したのも、自分がそれを取りに行ってたら、妻は生きてたかも知れないと、ずっと考えていたのかも知れない。
後から考えたら幾らでも、もしもの話は沢山出て来る。
だから私はこれ以上情報を取りこぼさないように、これからは気をつけるしか無いなと心に刻む事しか出来ない。
「いやぁぁぁ〜ん!
もお〜やだぁ〜~!」
「ぶふぃゃひゃひゃひゃ!」
⋯頑張ろう。
ちょっと遠い目になった。
「⋯ねぇ、お父さんは一体何をしてるのかしら?」
「お仕置きだね。」
「それにしては何だかお母さんがちゃんと反省して無いような?」
「それよりさ!お姉ちゃんは友達の所に言っておいでよ。
今ぐらいしかあんまり時間が取れないんじゃ無い?」
「そうね。なら早く食べて魔力草の水を入れ替えしましょう。」
「うん。僕もセフ兄ちゃんが戻ってくる前にしとかなくちゃ!」
「おう、なら俺も手伝うわ。」
というわけで私達は急いで昼食を終えると、木桶を借りて土間の扉を閉め切ると、水の入れ替えを頑張った。
何せ暗い場所と言えばわが家なら寝室の窓に毛皮をかけて使ってたけど、今この家の寝室はマドルス爺ちゃんが使ってるし、ほかの部屋は木造なだけあって窓が無くても壁際はどうしても光が入りやすいので難しいのよね。
でも土間だけは土壁だから、ドアさえちゃんと閉めて距離を離せば食器棚の影とか行けば光が全く入って来ない場所が出来るのよ。
でも幾ら子供でも4人ともなると、錬成瓶を置くスペースも必要だからかなりギリギリだった。
私は錬成瓶の出し入れ専属に回って、カタリナが古い錬成瓶から魔力草を取り出して新しく用意した瓶に入れる係になり、ロベルトとマルセロが空の錬成瓶に月の光の水を半分入れる係と、藁を入れる係とで手分けをして作業を進める。
私は移し替えた瓶をせっせと収納しながら、藁が足りなければ藁を出し、月の光を入れてる瓶が欲しければ出しと、かなり奮闘した。
ピヨ子は私の横で作業を見て、飽きたら土間をチョンチョン歩き回って筋トレに励んでた。
それを食事を終えたバッカスが、土間とリビングの境目にある段差に座って眺めてる。
エターニャは水瓶から水を汲んで、木桶に入れたお皿を洗ってくれてる所にだった。
「コレがあの時の卵かぁ~。
やたらとでっかく育ったなぁ〜。」
「うん。だから美食家になっちゃって、小屋には戻せなくなっちゃったの。」
「ぶは!そりゃあよっぽど良い食いもんやってたのか?」
「ウ~ン⋯トウモロコシとかは同じなんだけど、偶にパンとかもあげてたし、あと私が浄化した白いツブを食べさせてたから、鳥小屋のご飯や寝床は嫌になっちゃったみたいね。」
「パン!俺ですら滅多に口に出来ねえのに、何でそんな贅沢なもんを食わせたんだよ。」
「中央で私のお爺ちゃんがやってる食堂とかお店だと白いツブツブを出せないじゃない。」
「あー⋯そう言う。
そりゃそうか。
飯についてくるパンを食べさせてたからか。ていうか中央にも連れて行ってたのか?」
「私から離れない時期があって、でも私は中央でしなくちゃいけない用事もあったから、仕方が無かったんだよ。」
「ふぅん?そういや随分と向こうの家に世話になってんだよな。親父が戻って来たら一度挨拶に行かせとくわ。」
「それは春の時で良いよ。
向こうは凄く忙しい人達だから、かえって迷惑になるから止めた方が良いと思うの。
セフ兄ちゃんの服や靴は、仕事に必要だから準備したけど、それは向こうの仕事を手伝うのにも必要な事だったから、全く気にしなくて良いよ。
セフ兄ちゃんが身体でちゃんと返してるから。」
「いやぁ値段が釣り合ってねぇだろ。
新品の服なんざウチじゃ着ねぇし、値段を聞いて目ん玉が飛び出るかと思ったぜ。」
「それでもアレはバッカス兄ちゃんの箒や餌箱とおんなじなの。
無いと仕事にならないから、準備をさせたんだよ。」
「新品の服なんて着てる旅商人なんざいねぇじゃん。」
「それは旅の最中だからね?
一流の商人なら着替えを持って移動して、必要な時に着替えてるんだよ。
セフ兄ちゃんは独り立ちしたら最初から一流の商人として始まるから、付き合う旅商人も似たような服装になると思うし、他の一流の商人達にもツテを作る為に、それなりの良いお店に出入りする必要が有るから、下っ端な旅商人と同じ様に考えたら駄目だよ。
だからセフ兄ちゃんは難しい勉強をさせてるし、言葉遣いも直させてるでしょう?」
「まぁな〜⋯それはそうなんだけど、もう何ていうか別世界の人間になっちまいそうだよなぁ〜。」
「言っておくけどバッカス兄ちゃんも他人事じゃ無いからね?
ウェブンがもし順調に行けば金持ちの商人が買いに来るんだよ?
お兄ちゃんにも言葉遣いや礼儀作法は覚えて貰うし、服も今着てるのよりかは良いものを着なくちゃいけなくなるからね?」
「うぇ?!なんだソレ。」
「だからセフ兄ちゃんの勉強してる所を見て、ちゃんと覚えてよ。
お客の相手は基本的にセフ兄ちゃんがするけど、商売で家を出てたりして、お客さんが来たら対応すんのはバック兄ちゃんしか居ないよね?
鳥の事を聞かれた時に説明するのもバッカス兄ちゃんだけだよ?」
「うわぁ~、そっか。
そうなっちまうのか。
やっべー⋯俺は関係無いわって軽く考えてたわ。
そうだよ。
セフメトが出てて、鳥の事を聞かれたら俺が説明するしかねぇじゃんか!
え?!
ここ言葉遣いとかどーすんだ?!」
「セフ兄ちゃんが覚えてるから、話し方を真似して覚えたら良いよ。」
「ひえぇぇ!俺もわたしとか言わんとダメって事か?!」
「はい。頑張って下さいね。
今度から私もバックお兄様とお話する時は、言葉遣いに注意を払わせて頂きますわね。」
「ぶふ!ヤベェ!鳥肌が立ってきやがった。」
「ハハ!非常に驚きです。
肌が泡立ってしまいました。
かな?」
「うえぇ〜⋯」
『アハハハ!』
バッカスが嫌な顔をするのが面白くて皆が笑った。
「あ⋯そうだ。お姉ちゃんこれも1つだけ育てて見ようか。」
「ん?アンタ、それって鳥が取ってきてた元気草の新芽じゃない!」
『えぇ?!』
皆がギョッとした顔をして私に視線が集まる。
そりゃそうだ。
わざわざ元気草を育てようとする村人なんて何処にも居ないからだね。
「上手く行くかは分かんないけど、匂いや苦味が少しでもマシになったらお茶にも薬にも良いかなぁって思ってさ。」
「あー、確かにそうよね。
味や匂いが少しでも良くなれば、風邪を引いた時に嬉しいかも?」
『なるほど〜』
「でも元気草は畑の方に種が飛んだら迷惑だよ?」
「うん。マル兄ちゃんの言う通りだから、瓶の中で育てるんだよ。透明な瓶に入れて日の当たる場所に置いといたら育っても種は飛んで行けないでしょう?」
『あー!』
「たしかにそうだよなぁ〜。
リリアナってホント頭が回るぜ。」
「それじゃ1本分だけ作ってみようか。」
「僕がやる!」
そんな軽いノリで詰め替えた後の空瓶を使い、マルセロ兄ちゃんがウキウキしながら元気草の新芽を摘まんで、月の光を浴びせた水を入れて藁を敷いた所に乗せたのだ。
子供の小さな手はこう言う作業に向いてるよね、父みたいな大きな手だと瓶に手を入れるのも難しそう。
でも指が長いから2本の指に挟めば良いのか。
まぁ元気草だから投げ込んでても育ちそうだけどね。
「お兄ちゃん、コレ残った月の光のお水でお薬作っとくから砕いてよ。」
「ゲッ、お前コレって種じゃんか!」
「そうだよ。
もしもの時の為に直ぐに仕えるように準備しとくの。
余った月の光のお水が勿体ないしね。」
「あ〜それなら俺が林から魔力草を取って来てやるから、それで作っとけば良いだろう?」
「そお?ならお水だけ足して置こうかな。
あ!今日の帰りに戦士ギルドに寄れたら、傷物になった魔力草が貰えないか聞いて見てよ。
確か銅貨1枚で買い取りしてるんだよね?」
「あぁ⋯でも傷があったらダメなんだろう?」
「そうだよ。
傷ついた所から魔力が抜けるから魔力草の価値が落ちちゃうの。
でも瓶の中で育てるなら、魔力が抜けても魔力草がまた魔力を吸い込めるなら、育てられるかなぁ?って考えてるんだよね。
そしたら苦労して林に取りに行かなくても、ちゃんと根っ子が生えてたら育てられないかな?」
「なるほどな。じゃあ傷がなるべく少なくて根っ子が生えてるのを売って貰えるか聞いといてやる。でも理由はなんて言うんだ?」
「鳥の餌に出来るか試したいって言ってみてよ。それともピアの養殖の方が良いかな?」
「なるほどな!
ソイツで行こうぜ。
捕まえたピアの毛並みを良くして売れるか、試すのに使うって言えば良いんじゃね?」
「うん!嘘じゃないしね。
もし傷物の魔力草が少しでも育つなら、それをウチ用のお茶にしたりピアの餌にしても良いよね?」
「それなら私も賛成よ。」
「それじゃ遮光錬成瓶にこの余った月の光のお水を入れるから、コレを持って行って、傷物の魔力草を入れて持って帰って来てね。」
「おう!」
「水が満水じゃないと空気の中に魔力が抜けちゃうから、今魔法のお水を足しておくから、魔力草を入れる時は半分捨てても良いし、向こうでもう一つ瓶を買ってもいいからね?」
「分かった。」
「魔法のお水を入れるのは言っても平気だけど、月の光は秘密だよ?」
「任せとけ!
ソレは俺達だけの秘密だからな。」
そう言ってロベルトはニヤリと悪戯な笑みを浮かべる。
「あ、そうだ。
バッカスもエターニャも、月の光を魔法の水に当ててるのは秘密よ。絶対に外に漏らさないでね!」
「それはリリアナから聞いてたけど⋯どうして秘密にするの?役に立つなら皆にも教えてあげたら良いじゃない〜」
カタリナがそう釘を刺すと、エターニャが可愛らしく小首を傾げてそう窘めて来る。
「エターニャ、アンタ本気でそんな事を言ってんの?」
「お姉ちゃん落ち着いて、エターニャお姉ちゃんは知らないだけだから。
理由が分からないと、カタリナお姉ちゃんだってきっと同じ事を言ってたと思うよ。」
「⋯そうね。ごめんなさい。ちょっと苛ついてたわ。」
「エターニャお姉ちゃん、月の光の話はまだ秘密なんだよ。
これは守らないと大変な事になるから、絶対に言わないで欲しいの。」
「う〜ん⋯どうしてなのかは教えて貰えないのかしら?」
「そうだね。
この前貴族が来て叔父さんやお爺ちゃん達が話をしたのとか、王様から守護のアミュレットを貰った話は聞いてるよね?」
「ええ。この綺麗なペンダントよね?」
「うん。それで私が叙爵した話は聞いてないよね?」
「じょしゃく?」
「叙爵って言うのは平民が長い事国の為に働いたり、良い事をしてそれを国の偉い人や王様が認めたら貰える証で。
アナタはとても素敵な人ですから、貴族の仲間にどうぞ来て良いですよ、って言うウェスタリアの国に住む人達からしたらとても良いお話なの。
私はまだ私だけを認めて貰った状態だから、私だけ貴族になってるんだよ。
それが叙爵されるって意味なの。」
「え⋯?」
「は?」
「つまりリリアナはもう1人だけ貴族なのよ。叙爵って言うのは貴族になるって事なんですって。
騎士と同じ立場になったみたいよ。」
『えぇぇーーーー!?』
「ぶふぃゃひゃひゃ⋯」
エターニャは木のお皿を桶に落としてから私達を振り返り、バッカスはリビングとの段差に座ったままポカンと口を開いてる。
テーブルの椅子に座ってるマリア婆ちゃんは、2人の驚いた声で刺激されて、単なる余波で笑ってた。
「うん。それぐらい私が見つけた発見は凄い事だったんだよ。
月の光を利用するのは、その発見から見つけた中にある1つの方法なの。
でも子供の私が叙爵されるぐらい、飛んでもない大発見だから悪い人が私を攫ったり、身内を誘拐して悪い事に使ったりしない為に、王様がわざわざそう言う守るものを作って持って来てくれたのがその守護のアミュレットなの。」
「え⋯ちょっと良く分からないわ⋯」
「俺も何度も聞いてんだけど、話がでかすぎてイマイチ受け止められてねぇって言うか⋯」
「うん。叙爵もそうだけど、王様って言われても話には聞いててもソレがどれぐらい凄い事かは良く分からないよね?」
『ウンウン⋯』
「だからお金の話をしようか。
ウェブンの卵が銀貨10枚で買えるの知ってるかな?」
「ええ、とても高価な卵なんですってね?」
「バック兄ちゃんはどう?」
「俺もすっげぇ高い卵だって聴いてるな。」
「うん。確かノインの卵って一つが銅貨5枚だったよね?」
「ええ、それは知ってるわ。」
「おう。そう聞いてるぜ。」
「じゃあ銀貨1枚は銅貨何枚必要かな?」
「確か100枚で銀貨1枚だったよな?」
「え?そうなの?」
「エターニャは買い物あんましないし、使っても銅貨だから馴染みは無いよなぁ〜」
「つまり卵20個が銀貨1枚になるね。」
「そう聞いちまうと少ないよな。銀貨1枚ってさ。」
「うん。銅貨5枚あれば中央でも安いご飯が食べられるから、卵がどれだけ高いかわかるよね?」
「そおね〜。でもそれで私達はご飯を食べてるんですものね?」
「うん。それで銀貨10枚になるとノインの卵が200個になるって言えば分かるかな?」
「にっ⋯200個⋯て、そりゃスゲェな!」
「それでウェブンの卵はお高いって言われてるのね〜?
卵を200個も集めるのは大変だもの〜。」
「うん。そうだね。
でもね?ウェブンを育てて成鳥にさせると銀板1枚で売れるんだけど、銀板1枚は銀貨が100枚必要なんだよ。」
「うっわ⋯そりゃヤベェな。」
「えと⋯それって卵だと何個分になるのかしら?」
「2000個分て言っても分からないよね?だから鳥の卵や肉を売って稼ぐ1年分のお金って言えばわかるかな?」
「ひゃ!え?ウェブンて、そんなにお高いの?!」
「一匹育ててソレって震えるよなぁ⋯」
「はわわわ⋯」
「うん。それで私がウェブンの卵を取り寄せて育てようと考えたのはね?
そのウェブンの成鳥を使って魔法生物を作れば、それが金貨2枚で売れるからなの。」
「き⋯金貨?!」
「あ〜聞くの怖えぇなぁ⋯」
エターニャは桶の前で呆然と立ち尽くし、バッカスは両手で頭を抱え込んでいる。
「魔法生物を作るのに錬成師に金貨1枚とウェブンの成鳥を一匹渡さないとつくれないから、売値が金貨2枚になるのね?
それで金貨1枚は銀板5000枚と同じになるの。」
「え⋯ごせんまい⋯?」
「鳥の稼ぎの5000年分だね。」
「ごっ⋯え!?」
「ハァ⋯金貨なんか一生掛かっても出せねぇぞ。」
「でも5000枚て言われてもピンと来ないよね?
だから言い直すと、ウェブンを50匹売った値段と小金貨1枚が同じ値段になるの。
エターニャお姉ちゃん分かる?」
「え、ええ⋯」
「その小金貨が100枚あれば金貨1枚になるんだよ。
えーと⋯だから毎年ウェブンを50匹売って100年経ったら金貨1枚だね。」
「あぁ⋯もう分かりやすくお話してくれてるけど⋯ちょっと私には大き過ぎるお話ね〜。
でも良く分かったわ。リリアナ。」
「うん。
バック兄ちゃんはセフ兄ちゃんにウェブンを売るだけで良いんだよ。
その金貨を稼いで金貨1枚稼ぐのがセフ兄ちゃんの仕事だからね。」
「あー、そりゃ新品の服も買えちまうわな。
でも金貨1枚なんざ、一生働いたって手が届かねぇじゃんか。」
「うん。そこで今回私が叙爵して王様から貰ったお金が白金貨10枚なんだよ。」
『はっきんか?』
「ん?は白金貨って、金貨とどう違うんだ???」
「うん。金貨50枚あると金板1枚で金板が10枚で小白金貨1枚でその小白金貨が100枚で白金貨1枚になるから、それが10枚だね!」
『⋯⋯え?』
「うん。つまり私達実は一生働かなくてもご飯を食べて行けちゃうぐらいのお金を貰ってるんだよ。」
『なっっ?!』
「でも白金貨なんて私達じゃ使えないでしょう?
両替するのも大変になるから、それは1枚だけ手元に遺して、8枚ほどエリザベスお祖母ちゃんにあげたのよ。
それでセフ兄ちゃんの面倒を見て貰えるのも有るんだよね。
あとウェブンを成鳥にさえ出来れば、魔法生物には出来る金貨は有るから、心配は要らないかな。」
『⋯⋯⋯は?』
「なんかね?タルクス叔父さんが言うには白金貨を稼いだ狩人の家の人が、その狩人が狩りで留守にしてたら家族が全員強盗に殺されてお金を盗まれた事件がこの村でもあったらしいんだよ。
だからお金が沢山あっても使えないし、私が叙爵されたのも秘密なの。」
「⋯そりゃヤベェわ。」
「⋯ええ、何が大変なのか良く分かったわ〜。
強盗に殺されるなんて嫌だもの〜⋯」
「うん。金貨を稼ぐのも危ないから、親族を沢山集めて戦える人を揃えるのもそう言う意味が有るんだよ。」
「あぁ、そうだよな⋯だから兄貴が戻って来るんだよな⋯」
「あの⋯私はどうなるのかしら〜?」
「好きな人の所にお嫁に行っても良いけど、お婿さんになってくれる良い人を連れてきて貰った方が嬉しいかな?
そこはジギタス叔父さんの考え次第だから、私が口を出す事じゃ無いけどね?」
「でもリリアナの金を頼って商売すんだろ?
ならエターニャはセフメトの商売関係の仕事で嫁に出すんじゃねぇのか?」
「それでエターニャお姉ちゃんが幸せになれるならそれでも良いけど、苦労させるんならそんなのは要らないかな。」
「リリアナ〜⋯」
「まぁ農村の嫁になるよりは、商人の嫁の方が良い暮らしは出来るけど、その代わり勉強して作法を身に着けたり知識を増やす事も必要だから、そこはお姉ちゃんが好きな方を選んだら良いと思うよ。
その代わりウチで秘密にしてねって頼んだ事は秘密にして欲しいかな。
そうじゃないと家族が危ないからね。」
「月の光のお話は絶対に秘密ね〜!」
「なんだかもう良く分からんが、クッソ分かったから俺も絶対に外では言わん。」
バッカスが腕を汲んで難しい顔をして頷く前で、いつもほんわかとしてるエターニャもキリリとした表情で、土間にしゃがんでる私を見下ろす。
「本当なら皆に美味しいご飯を食べさせてあげたり、仕事も楽にさせてあげたいんだけど、生活が急に変わったら周りの人達からあれ?どうしたの?って、聞かれるでしょう?」
「そりゃそうだな。」
「えぇ⋯でも秘密にしないと、お話なんてしたらあっという間に噂になってお話が広がっちゃうわ〜。どうしたら良いのかしら⋯私、困っちゃう。」
「うん。だから聞かれないように今まで通りに生活するようにしてるんだよ。
でもやっぱり少しだけでも贅沢したいじゃない?
だから少し稼ぎが大きくなっても皆に理由が言える仕事を始めてるんだよ。」
「それでウェブンなのか⋯」
「そうね。ウェブンのお話は秘密にしなくて良いのね?」
「その通り!
だから少しなら美味しご飯を食べに行っても良いし、お酒を飲んでも良いんだけど、酔っ払うと秘密のお話もペラペラ喋っちゃうから、飲むなら身内でお店に行くか家で呑める美味しいお酒をご褒美で買うかだよね?」
「あ、俺、酒嫌いなんだよ。
酔っ払うと次の日仕事がキツくなるし、親父みたいに美味いと思えないんだよなぁ〜。
苦いし。」
「私もお酒はまだ飲んだ事が無いのよね〜。美味しいのかしら?」
「エターニャ。
外では絶対に飲むなよ。
変な男に連れて行かれて酷い目に遭わされた娘の話は聞かされてんだろ。」
「も〜、ちゃんとそれは知ってますぅ〜。
ただどんなお味なのかなぁって、気になってただけですぅ~!」
ふんわりとしたほっぺたをプリッと膨らませた可愛いエターニャが、珍しく目つきを鋭く尖らせてるバッカスを睨んでるみたいだけど、垂れ目だから全く迫力が無かった。
これは愛されるやつだ。
バッカスもエターニャがこんなに可愛いから、心配してるんだろうね。
バッカスも私の父に似て愛情が深いタイプの穏やかな人だから、そんな彼が目を光らせるって事は相当エターニャが可愛いんだと思う。
2歳違いだけどエターニャは末娘だし、今はマリア婆ちゃんを手伝って家の用事もしてくれてるから、感謝してるのも有るんだろうけど。
こりゃエターニャは嫁に行かせて貰えなさそう。
シスコンの匂いがプンプンするよ。
ジギタス叔父さんだって、今回の件で知りたくなかっただろうに、他の娘さんが亡くなった話を聞かされてるから、エターニャは外に出さないかも知れないなと、何となくそんな予感がする。
従兄弟で結婚するのも、お金持ちの家なら良くある話だから、エターニャはロベルトのお嫁さんにしたがりそう。
でもまだロベルトは8歳なんだよ。
エターニャより6歳も年下なんだよね〜。
だから他の従兄弟ではタルクス叔父さんの所や私が勘違いしてた叔母さんの所になるけど、叔母さんの所の従兄弟がどんな仕事をしてる人かあんまり知らないし、タルクス叔父さんの所にしても、あっちは狩人か戦士だからなぁ〜。
「ま、これでお話は終わりかな?」
「そうね。なら私はちょっと出かけて来るわね。」
「何かお土産に卵でも持ってく?」
「そうね。
ねぇバッカス、卵を何個かちょうだい。」
「軽く言うなぁ〜。
まぁ良いけどよ。
何時もの場所に集めてるから、それ持って行っても良いぞ。
でも根こそぎ持ってくなよ?」
「分かってるわよ!
そうね。5つもアレば良いかしら?」
「あ、そうだ。お姉ちゃんさ、友達を誘ってマゼラン爺ちゃんの店に行ってきなよ。
ついでにお母さんの代わりに甘い粉を買ってきてくれない?」
「あ!それは良いわね!
そうするわ!
でも友達の前でお金を支払うのは⋯」
「なら種を1つ持って行きなよ。それで買える分だけ瓶に入れて下さいって言えば良いんじゃない?
お嬢さんに今日はお友達を連れて来たんですって先に言えば、分かってくれるんじゃ無いかな?
子供なのでお金を持ち歩けないので、種で支払っても良いか聞いてみたらどうかな?」
「それ後で何の種だか聞かれちゃうわよ。」
「魔力草を育ててるって言えば良いんだよ。
森で採ってきたのを育てるのなら、別に話しても問題ないよね?
詳しく育て方を聞かれたら、日の光に当てない事と、魔法のお水を使って木のコップを風通しの良い窓辺に置いて育ててるって言えばどうかな?
日陰になるとしたら北側だから、夜になったら月の光を浴びれると思うんだよ。
でもずっと浴びれる訳じゃ無いから、種まで出来るかは運次第になるよね?
種をつくるのは凄く難しいから、錬成師さんにしか売れないけど〜って言うのはどうかな?」
「なるほどね!
月の光の事さえ言わなければ良いのね。
日陰じゃないと育たないのも本当だもの!」
「そーいうこと!
林から採って来るのに遮光錬成瓶が必要な事や、傷をつけずに採取するのも教えてあげてね?」
「ええ!分かったわ!
聞かれたらそう言えば良いのね!」
「どうせ噂が回るだろうけど、沢山の人に聞かれたらお姉ちゃんも困るだろうから、ここだけのヒミツだよって言うのはどう?
仲良くしてくれるお友達だけに、こっそり教える秘密のお話にするの。
良いお金で錬成師さんが種を買ってくれるから、泥棒に狙われたら困るよねって言えばどうかな?」
「あは!それは素敵ね!」
「皆ももし魔力草の話を聞きに来る人がいたら、ウチは麦を育ててる農家だから、姉妹が真似して野菜の他にも魔力草を作ってるって言うのはどう?
値段を聞かれたら、知らないって言えば良いよね?
錬成師のお姉さんには今から私が手紙を書けば済むし、お父さんには私から伝えておくから。」
そう言うと私はお嬢さん宛に手紙をサラっと書いて姉に手渡す。
姉は嬉しそうな笑顔で、手紙と種を1つだけ入れた遮光錬成瓶を手提げ籠に入れて麦藁を被せると、ちゃっかり卵も持って友達の家に遊びに出かけた。
何で遮光錬成瓶に入れてるのにわざわざ麦藁なんて被せてるのかと思ってたら、卵の為の緩衝材だったらしくて、気付いた時は思わず笑ったよ。
恐らく私の作った種と他の人が育てた種では魔力の含有量が違う恐れが有るので、ウチ以外の家庭から持ち込まれた種は、1つ調べてから値段を決めるか、最初から安く買い取るかはお姉さんに任せる事にする。
値段を決めたらおしえて欲しい事も手紙には書いたよ。
いつの間にかお母さんの声が聞こえなくなったから、昼寝する前にマリア婆ちゃんの腰に回復魔法をかけといた。
私だけの魔力を使ったから、湿布みたいなもんだよ。
一応魔力に腰の骨周りを癒すように指示したから、痛みが軽くなる程度の効果はあったみたいだよ。
私が昼寝にピヨ子とジーニスを抱いたエターニャが寝室に来たら、マドルス爺ちゃんが代わりに起きてきた。
私やジーニスに驚いてたから正直に事情を説明したら、噴き出した後で微妙な顔をして「⋯そうか。」とだけを言ってリビングに向かって行ったよ。
うん、割と予想通りの反応だったね。
エターニャが母の恥ずかしそうな悲鳴が聞こえる度に、マリア婆ちゃんが笑ってて大変だった話までしてたから、祖父も余計に微妙な顔をしてたよ。
ちゃんと私が提案して、カタリナがシッカリ縛れって言ってた事も伝えたから、父の尊厳は守られることを願っているが、まぁ無理だな。
多分春になって親族が集まってお酒を飲んだら、祖父だか祖母のネタにされて男兄弟の皆から弄られそう。
ムッツリな父はそれに懲りるだろうから、例えハマってたとしても継続するのは止めるだろう。
そしてその時は私とカタリナが全力で父の尊厳をフォローするだろうし、ジギタス叔父さんが羨ましがって後添えさんを欲しくなっても、その頃にはもう叔父さんの姉のアーニャ叔母さんが居るから阻止出来るし。
何ならカジノと夜のお店が出来る話を私がぶっ込んでやれば、話題が直ぐにそっちに行くだろうから、父や母の被害も軽く済むよね。
どうせジギタス叔父さんは放っておいてもギャンブルにどハマりそうだから、その時はお小遣いを渡して娼婦のお姉さんと繋ぎを取ってもらって、そっちの情報を集めて来て貰うのに利用してみようかなぁ?
ジギタス叔父さんじゃ難しいかなぁ?
生活費はウチの父とマドルス爺ちゃんがガッツリと握ってるから、遊ぶお金欲しさに森に行かれるよりかは私の情報収集に協力して欲しいのよね。
エリザベスお祖母ちゃんやセフメトの役にも立ちそうだしさ。
父にはお金の無心なんてプライドが許さないだろうし、私から理由をつけて依頼料として渡すなら、仕事だと思えば喜んで真面目に働いてくれる気がするんだよ。
もういい年だから、鳥の作業も畑の見張りぐらいにして貰っていれば、夜遊びで寝坊しても許して貰えそうだしね。
そいで慣れたらセフメトや息子のワックスさんに遊び方を教えてやって欲しいんだよ。
ウチの兄達にも教えといて貰いたいけど、まだ若すぎるからなぁ。
ワックスさんに遊び方を仕込んでくれてたらとは思うけど、ジギタス叔父さんみたいなセンスが無いと下手にのめり込まれても困るんだよね。
ジギタス叔父さんを見て反面教師で学んで誠実に遊べるぐらいの嗜みで済ませて欲しい所かな。
そうで無いと真面目1本で荒波は乗り越えて行けないと思うんだよ。
お金があればつけ入る隙を狙って、ハニトラとか仕向けれそうだしね。
商売の世界は海千山千の猛者がウジャウジャ居そうなんだもん。
私が男性なら要らない心配だけど、女の子だからな?
まぁ小さいウチならジギタス叔父さんを誑かして連れて行ってもらう手も有るんだけど、父がな⋯。
またあの強烈な魔力パンチをぶっ放して来そう。
まぁ効かないけど。
でも傷つけたい訳じゃ無いので、そこがね。
調子に乗ってたら何かにプチられそうだから、ほどほどにしとかないとだし。
匙加減が難しい所だな。
マル兄ちゃんぐらいの年になれば、少年の振りして行くんだけどなぁ。
その頃にはロベルト兄ちゃんやマルセロ兄ちゃんが、父以上にバッカス化してそうで怖いんだが。
エターニャみたいな愛嬌は無いけど一応妹だもんで、カタリナの正論パンチで育てられてる2人だから、モロ正論パンチをぶっ放して来そうな予感がするんだわ。
逃げ場無いしね。
そんな場所に女の子が行くとか、男性家族から鉄拳制裁されても文句が言えない文化だからさ。
仕方が無い。
頑張ってお金を稼いで、カジノの経営する人に資金援助して、顔を利かせておくしか無いか。
話が分かる人なら助かるし、そう言う人にジギタス叔父さんを仕込んで貰う方が話が早そう。
身バレしないように、エリザベスお祖母ちゃんやセフメトを使う必要が有るから面倒だけど、村長経由で子爵様から圧をかけて貰えたら行けちゃう気がするんだよ。
それには必要経費をシッカリ稼いで置かないと、玉が無ければ根回しも不自由するしね。
直ぐに現金化出来ない所と、私が資金の管理が出来ない所が辛い所だ。
あー面倒くさ!
早く学校に行って手足になる魔法生物やら通信機やら画像転送出来る魔道具を開発しなくちゃ。
イチイチ魔王を使うのは面倒なのよ。
表だけなら良いけど、裏の支配は神経使うからまだ手を出さない方が無難だけど、いつかは必要になるだろうし、それなら早いウチに知識を蓄えて置かないと間に合わないと困るのよね。
カジノと娼婦なんてガチ裏稼業じゃん。
そっち系が村に来るなら防衛もシッカリしとかないと、変なのに荒らされたら困るんだよ。
村長もエリザベスお祖母ちゃんも良い所のボンボンやお嬢様だから、裏の事なんて知らないだろうし。
利便性や付き合う商人の表の人柄だけ見てそうなんだよね。
村長からしたら王様からの指示だから、多少黒くてもいつでもプチれると思えば余計に警戒が緩むだろうから、果たして何処までエリザベスお祖母ちゃんが鼻を利かしてられるかにも寄るけど。
専門分野じゃないからちょっとそこが不安。
さてこの私の話をいつ誰にするかと言えば、父は確定。
あと巻き込む予定のジギタス叔父さんとセフメトは確定。
マドルス爺ちゃんは無理そうだから⋯エリザベスお祖母ちゃんも確定。
そしたらついでにマゼラン爺ちゃんも確定かな。
だったらこの面子が集まるとしたら、春か。
大食堂でぶっ放しかな。
人が増えるとアレだから、エリザベスお祖母ちゃんに早めにウチらが使う個室を準備して貰って、メンバーだけが途中で抜ける感じに根回ししとこ。
カジノが出来る前なら、まぁイケルっしょ。
この冬の動き次第になるけど、空間を作って区画整備するので手一杯じゃない?
エリザベスお祖母ちゃんのお風呂建設してからの、大型施設建設になるだろうから、まぁ箱だけは同時進行させるかもだけど、メインの風呂はそうなる。
何故ならそれが私の希望だからね。
大型施設の建築予定、及び完成日程はお嬢さんから聞いて、カジノはそこからかな。
まぁまだ夏だし、お嬢さんの所に行ったら聞いておこう。
もしかしたら魔王に拉致られて、お師匠さんの方に聞くのが早いかもね。
あ、待て待て。
今夜魔王が来るじゃん。
魔王に聞いた方が早いし確実じゃね?
てことでお休みなさい〜Zzz⋯
てことで夜になりました!
夕飯前には来るかなぁ?と、思ってたのに、父は迎えに来なかったので晩御飯もマリア婆ちゃん家で食べてたら、お腹を空かせた父がギュルギュルと胃を鳴らしながら現れたのです。
マリア婆ちゃんがそれを見て聞いてまたお腹を抱えて笑うし、父は罰が悪そうに視線を逸らしてるけど顔が真っ赤になってるし、マドルス爺ちゃんはあからさまに呆れてたしで中々に大惨事でした。
私はバッカスを含めた子供全員が???と、不思議そうにしてた事にこっそり驚愕してました。
いや、おいバッカス!
お前、その年でそれはやっべぇぞ!
と、本気で不安になったので、ジギタス叔父さんにカジノが入ってる大型館が完成したら、女の子のお店にバッカスを連れて行くように指示する決意を固めました。
そうだよね。
バッカスは家業を継いでるから、付き合う相手は村に残ってる同じ立場の跡継ぎか狩人ぐらいしか居ないんだよ。
でも跡継ぎなんて、そんな立場の人はあんまり居ないから、仲が良かった友達が狩人してないと、そもそも友達が村に居ない状態になってるんだよね。
それにお酒が苦手だからわざわざ夜に酒場にも行かないし、そりゃ純粋培養されちゃうんだよ。
そしてマリア婆ちゃんが気を利かせてスープを大目に作ってくれていて、それを鍋ごと持たせてくれたので、顔を真っ赤にしてるお母さんは何故だかシーツを頭からローブみたいに被ったまま晩御飯のスープを食べてました。
カタリナがどうしてシーツを被ってるの?って聞くと、母の目が潤むので流石の姉もそれ以上話が聞けず、父に無言で圧力の有る眼光を放っていたのですが、父は頑なに子供達全員と視線を合わせようとしないので、多分通用してなかったと思われます。
そのせいで私も、危うくマリア婆ちゃんみたいな状態になりかけたので、必死になって仕事に逃げました。
つまり父に今日種で買い物をした話をしておいたのよ。
話題が変わってようやく父が視線を向けてくれるようになったし、顔の赤さも落ち着いて来てたから、姉がまた質問しそうな気配を察して、買い物の話題から友達の話を向けて、姉の質問は出させんぞ工作をするのが大変でした。
姉は真面目だからしつこいんです。
それでもそうこうしてたら日が暮れて来たので、父は畑に向かって飛ぶようにして逃げ出すし、母は真実に逃げ出すしで、残された私達兄弟達だけで、錬成箱からの水汲みを、前の仕様でコツコツとやってたら、魔王がフラッとやってきました。
そして地面を魔法で持ち上げて錬成箱をそこに乗せた魔王が、金属製の物を手に持ってコチョコチョっと魔法を使うと、錬成箱の下に金属製の曲がったホースが付きました。
錬成箱とホースの間には、銀色の正方形の形をした土台に、青空の魔石がはめられていて、それに触れたら錬成箱から中の水が出てきたので、私を含めて兄弟達みんなで大喜びしました。
手を離せば水の流れが止まる仕様なので、とても便利だった!
問題が有るとしたら、構造上箱は高さの有る所に置かないと床に直接置けなくなった事と、そのせいで身長が低い私達では魔法の水が入れにくくなった事だけど。
魔王は予めそれを予想してたらしくて、四角い部品を捻って角度を変えたら、銀色の土台に銀色の魔法陣みたいな模様があって、水が出てくるホースの先も口が上を向くので、魔法陣に触れながらホースの口に魔法の水を出すと、直接箱の中に水が流れる仕組みになってたから、私を含めた兄弟達全員が飛び上がって驚いたから、魔王がもの凄く楽しそうに爆笑してた。
リアクションが大袈裟ですまんな。
魔道具なんて使った事が無いから免疫が無いんだよ。
しかも魔王は横幅2mの所に端から50cm感覚で3つも同じ魔道具をつけてくれたもんで、私もそりゃ感謝感激するよね。
さっきまで不便な思いをして、姉と兄が水を汲み乗るのを、その横で空瓶を渡して水入りの瓶を受け取る作業を繰り返してたんだもん。
魔道具の有難みが身に染みるんだよ。
「作りたい!
私もこれ作れるようになりたい!」
「ハハハハハ!
ならば早うに学院に行かねばならんな。」
「行く!絶対に行くよ!」
「僕も!僕もこれ作りたい!
僕も学院に行くよ!」
「⋯んん?」
「ウチの兄です!」
「兄のマルセロです!」
「学業は問題無いので、後は身体を鍛えて騎士科にも行けるようになったら学院に行く話をしてる所です。」
「⋯ふむ。だが、錬成師になるには魔力操作が必要不可欠だ。
先に魔法師科にも入学をせねば、実技で落とされるのでは無いのか?」
「そんなの初耳なんですが?」
「其方はその様なもの必要が無いではないか。
魔法を使わずとも知識さえ与えて置けば、勝手に色々するでは無いか。
魔法は使えるものを指示して使わせれば良いと思っておったのだ。
だが最早それすら不要であろう?」
「⋯まぁ、そうですね。」
「⋯⋯え?じゃ僕、錬成師にはなれないのかな?」
「あ、それは大丈夫。
今はまだ難しいけど、騎士の武術が出来るようになるぐらいまでには、魔法も教えとくから。」
「あ!そっか。あー、ビックリした!」
「⋯待て。其方、何を言っておる?」
「うん?」
「いや、魔法を教えた所で魔力の操作が出来るか否かは、その者の才に寄る所が多いであろう。」
「⋯ウチ父が天才魔法師で、母がプチ聖女なので問題ないっすよ。」
「ぷちせいずぉ?」
「ウチの母、一般家庭の主婦ですが、浄化魔法をバンバン使う人なので、うちの家族全員に魔法の才能が有るんです。」
「⋯⋯は?」
「父ももうすでに魔力操作は完璧なので、問題無いっすよ。」
「いや、両親が例え才を持とうとも、使えぬ物は使えぬと思うておるのだが?」
「使えるように教えるので大丈夫っすよ。」
「⋯⋯世に教えてみせよ。」
「あ、これウチの秘伝なんで、無理っすね。」
「うん?」
「秘伝て意味ご存じですか?」
「いや、秘伝が何かは知っておるが⋯世は国王なるぞ?」
「それで教える貴族家ってどんだけ居ますか?」
「其方は平民であろう?」
「この前貴族になりました!」
「あ⋯⋯⋯⋯⋯ん?」
「私、今は貴族です!」
「むむむ⋯」
一瞬呆気に取られた顔をした魔王だったが、ギュッと眉間にシワを寄せると眼圧と魔力圧を上げて威圧して来た。
「其方は新しく気付きを得たので有れば、世に伝える約定を違えると申すか!」
「だってもう王様は魔力ほ操作は出来ますよね?
なら別に知る必要はないでしょ?」
「ならん!世は知りたいと申しておるのだ。とく答えよ!」
「ったく⋯ワガママだなぁ。
だからコチトラ貴族だっつってんだろが!
どこのアホが教えろって脅されてホイホイ教えるバカが居るってんだよ。
少しは貴族の常識を先王様から聞いて勉強して来いや!
王様ならそれぐらいやっとかないとダメなやつだろうがよ!」
「ぐぬぬぬ⋯。
貴族の常識と申すのであらば、世の勅令であれば絶対に断れぬはずで有ろう!」
「じゃあ今のは勅令か?」
「ぐっ⋯」
「良いぜ?勅令なら断れないなら教えてやんよ。
その代わり宰相の爺ちゃんや先王様や全員に聞いて回っからな!」
「それで世を脅したつもりであるか!?」
「事実を言ったまでだが?
なんならサラディーン様経由で話を回しても良いんだが?」
「ぐうぅぅ⋯」
魔王は流石に良識的なので、ウチの兄弟には向かわない様に、私だけを集中して威圧を向けている。
それやったなきゃ、戦争だったからまぁこそは評価しといてやる。
「ではどの様にすれば世に教えると申すか。」
「そんなの秘伝なんだからって言いたい所だけど、そこは友達だから許してやるよ。
その代わり他にはバラすなよ?」
「うむ!
世の中で留めおこう!」
「でもどうやってって言われても⋯王様は魔力がめちゃくちゃ強いんだよなぁ〜。
要は私よりも弱い魔力の相手じゃないと伝えるのはかなり難しいんだよ。
私自身がまだ子供で魔力の量が少ないでしょう?
だから相手の魔力を上回ろうとしたら、普通のひとならまだしも王様はなぁ〜⋯。」
「其方そうして焦らしておるのでは無く?」
「うん。それに元々ある程度は魔法を使ってないと、魔力をコントロールする必要が有るから、せっかく教えても自分で感覚を掴めないんだよね。」
「それが魔力操作であろう。」
「そうだよ。
でも魔法が使えるなら、それは無自覚で魔力操作をして、魔法が使えてるの。
私のはそれを自覚してない人に、自覚を促す教遣り方なのよ。
だから魔法の水さえ出せる人なら教えるのは簡単なんだけど、魔力切れを経験してる人じゃないと危なくて教えられないんだよ。
私の遣り方を教えると全身から一気に魔力が抜けちゃうの。
私はそれを力付くで外から抑え込んで出させないようにするから、それで自分の魔力を自覚させるから、魔力操作が自力で出来るようになるのよ。
その手前の方法も有るんだけど、王様が実際にやってピンと来るか分からないんだよね〜。
お兄ちゃん、どうだったか教えてあげてよ。」
「うぇ?!俺?!」
「ほら、実際にやってみてどうだったか感じた事も教えてあねてね。」
「あ、うん。え〜と⋯。
リリアナに言われたのは大きく息を吸い込んで、吸えなくなるまで吸ってから息を止めて、苦しくなったら口をすぼめてゆっくり息を長く吐き出すことなんだけど⋯。
そうすると頭や身体がドクドクするから、そういや俺走ったりするとそうなるよなぁ〜って思い出したら、苦しい時とかもう少し!って強く思ってたら、フッと身体が軽くなったりしてたからもしかして?って思って身体の中を探したんだよ。
そしたら何か有るって気付いたら、それが魔力だったんだ。
今まで魔力なんて知らなかったから、魔法使う時に変に力んだりしてたんだけど、コレ動くわって気づいたから動かせるようになったんだよ。
って、こんな説明で分かるのかなぁ?」
「いや⋯確かに似たような指導方なら有る。
故にそれで気付いたので有れば、其方は元から才の有る者であったのだな。
だがそれで気づかぬ者をどうやって魔力の存在を知らしめるのだ?」
「あれ?実は王様も気付いてないの?」
「うん?」
「あー、お父さんと同じパターンのヤツだわ。」
「ぱとぅーん?」
「才能だけで魔力を感じて動かせるのに、どうしてそれに気づけないかなぁ?」
「ぬぬぬ⋯焦らすな。
早う教えよ。」
「じゃぁ王様なら自分で出来るから言う通りにしてね?
あ、でも王様がそれやると兄弟達が危ないんだよなぁ〜。
私で守れるかなぁ?」
「ならば少し借りるぞ!
同腹が居らねば良かろう!」
て、ことで拉致られた。
王様の私室にまた着てた。
「近くに人は⋯いない?」
「うむ。流石にまだ探れぬか。
隣室には控えておろうが、この部屋の外に魔力は漏れぬ。」
「じゃあ大丈夫かな。
そしたら手や足や首や背中やお腹の身体全部から魔力を意識して身体の周りに集めて、そう。そして周りにある、自分のものじゃない魔力を自分の魔力に染めて⋯あ、コラ。私の魔力をかってに染めんな!
む⋯むむむ。」
「ハハハ!
なるほど、そう言うことか!
確かに世は何故?
世は知っておったぞこの性質を。なのに何故これ程⋯フフフ。面白い。」
「もー、ちょっと遊ばないでよ。こっちは魔力切れでぶっ倒れるからね?!」
「フフフ⋯許せ。ハハハ!」
「ねぇ私が王様の薬が飲めないのを分かっててやってんの?」
「は⋯そうであった。
ぬう⋯不便であろう。
早うに成長せよ。」
「無理言うなぁ!」
思いっきり抱かれてる状態で、パンチを繰り出して顔面を殴ったけど、ニヤリと笑われた。
私の拳の方がグキッとなって痛かった。
ちゃんと魔力を纏わせて本気のパンチを繰り出したのに、向こうは私から奪った魔力でガードしてるから肌に触れる事すらさせて貰えてない。
魔王の魔力と拮抗出来ない以上、この壁はなかなか分厚い。
魔力を取り込む方法は知らないと、さっきの探りで分かったけど。
目の前でやれば直ぐに真似をされてしまう。
見てない時を狙って限界まで溜め込んでも、魔力の拮抗か出来なければ積む。
まぁ知ってた。
成人して変質させても追いつけるかどうかって所かなぁ。
元々彼はサラブレッドだから、そっちの方では勝てなさそう。
「ま、いっか。
王様に話をしたかったんだよ。」
「ほう?世は其方に釣られたのだな?」
「大した話じゃないよ。
でも兄弟達には私が聞かせたく無かっただけなの。
ウチの村にエリザベスお祖母ちゃんのお風呂を先に作ってくれるんだよね?」
「うむ。其方の希望で有ろう。」
「うん。その為に冬に沢山の魔法師や騎士を送り込んでくれるの?」
「ふむ⋯世がやれば早う済むので有ろうが⋯周りが煩いのだ。」
「王様の本気風呂予定の大型施設は何時ごろ出来そう?」
「ふむ⋯其方の申す練習のやらで世の興味が失せねば箱が完成次第早う作るのも吝かではないが⋯そうで無ければ設計だけして下に回すが?」
「うん。それは分かってるの。
だからその箱は何時ぐらいに出来るのか分かるかな?」
「ぬう⋯それは下の者の働きゆえ、いかほどかかるかは予想もつかぬ。
遅いとだけは分かるが、いつと問われてもこれは予想も難しい。」
「簡単な予想で良いよ。お師匠さんやサラディーン様やその弟子仲間が箱を作るんだよね?」
「ふむ。そうであろうな。」
「エリザベスお祖母ちゃんの方は建物も王様が作るのかな?」
「うむ。資材は作らせるよう申し伝えておるが、他は世が今から仕込んでおる故に早うに作れるで有ろうな。」
「それは冬に村の設備を移動させてからのお話だなら、春を越えてからかな?」
「春を迎える前にしろとは申し伝えておる。故に春には完成して居ろうな。」
「ありがとう!
凄く凄く凄ーーく楽しみにしてるよ!」
「フフフ⋯まぁあくまでも修練で、しかも予算は少ないとなれば其処までの物は作れぬと、心して居ろうな?」
「それでもすっごく楽しみ!」
「ならば大型施設とやらも、世が手を加えてやらねば世の本気など見せられぬな。」
「うわ、でも忙しいんだから無理はしなくて良いよ?設計だけしてくれるだけでも相当時間を取られるじゃん。」
「なに、その時間で作れば済む話故に、資材を自ら素材を集めて作るのが面倒なだけで、それほど手間はかからん。」
「でもせめて1年以上は開けて欲しいかな。
せっかく早くエリザベスお祖母ちゃんのお風呂を作ってくれてるのに、あんまりすごい施設が出来たら霞んじゃいそう。」
「ふむ⋯まぁ資材を集める時間と思えば再来年の春頃には作れば良かろう。」
「わあ!嬉しい!
すっごく楽しみ!
あ、だけどさ。
絶対に必要だから仕方がないんだけど、カジノや娼婦のお姉さん達が働く施設を作る予定になってるから、悪い人がどうしても紛れるよね?
そもそもウチの叔父さんがカジノにハマりそうで、ちょっと私も情報を集めたいから叔父さんを連れて遊びに行こうと考えてるんだけど⋯」
「ならぬ。」
「だよね~。
そこは叔父さんも良い顔をしないと思うんだけど、ウチの叔父さんはバカだから不安なんだよ。
元々カジノなんて村にないから、ハマって戻って来れなくなりそうで、だから私が動ければ色んな問題も起こる前に情報を集められると思うんだけど⋯」
「知りたい情報が有るので有れば世に問えば良かろう。」
「王様は国のお仕事をしてるんだから、そんな私の私情で使えるわけ無いじゃない。」
「ふむ?すでにかなり使われておるが?」
「それは私本来のお仕事や家族の命に関わるから、保護で動いてくれてるんじない。
カジノにハマるのなんて、そんなの自業自得だから、普通ならそんなの自己責任の放置案件でしょう。
其処まで面倒を見させるとか、厚かましくなんてなれないよ。」
「ふむ。そう申すので有れば、放置すれば良かろう。」
「そうじゃなくて、逆に利用したいから今相談してるんだよ。」
「ほう?」
「せっかくお金を貰ったのに、今の環境だと家族の為に金貨1枚すら使えないんだよ。
だから私の存在を隠しながら、少しぐらいお金が使える様に、お金を持ってる理由を偽装する為に、周りの村人にも分かりやすい新しい仕事を家族に与えてる所なの。
でも今はまだ鍛えてる段階でタダの農民だから、貴族や街なら当たり前の裏社会との付き合い方や交わし方を全く知らない状態なんだよね。
それを教える為にカジノにハマりそうな叔父さんを仕込んで、従兄弟達の指導役にさせたいの。
ただどうやってそれを仕込むかとなると、私に情報が足らないから、作戦が立てられないから、無理やりにでも叔父さんに連れて行かせようと考えてたんだけど、分かってるよ!
王様もだけど、周りが猛反対するよね?」
「ふむ。叱らずに済ませようと必死だな。ククク⋯」
「だって戦士ギルドに行っただけでお父さんがガチ切れしてたんだよ。
カジノなんて行ったのがバレたら絶対にボコられちゃう。」
「ばれた?がちぎれ?ぼこられる?」
「知られたら本気で叱られて泣いて反省しても許して貰えないって意味。」
「また面妖な言葉を使いおって⋯」
「省略言葉だよ。」
「まぁ確かに言葉を省きたくなるのも理解が及ぶ所ではあるが⋯言葉と全てにおいて省いては成らぬのだ。
魔導を学べば其方も理解に及ぶので有ろうな。」
「王様が魔法の言葉を使うのを見たから、それを言われると言葉にも魔法が反応するのかな?って感じるんだけど⋯」
「そうだ。故に人は安全に使える音を、言葉として使用しておるのだ。」
「⋯その割には貴族と平民の話し方が随分と違うよね?」
「貴族は魔法への造詣が深い故に、魔法言語の形に寄せて会話するからで有ろうな。」
「つまりその魔法言語が、魔導師の勉強の中に有るんだね?」
「うむ。学びは困難を極めるゆえに、修得者はかなり少ないがな。」
「⋯なるほど。
所で話が流れたんだけど、王様の部下の人で本来なら諜報関連のお仕事をしてる人って居る?」
「うむ。」
「王様は諜報も自分でやっちゃうから暇ある?」
「フハハハハハ!
それをそのまま伝えてみろ、愉快な事に成りそうだな。」
「侮辱じゃないし!
暇なら臨時で雇うから仕事してくれないかなぁって考えただけだし!
あんまり多くは払えないけど⋯」
「フハハハハハ!
世に仕える者ゆえ金で動かれては困るのだが⋯フハハハ!」
「笑うなし!」
「ハハハハハハハ!
そう怒るでない。
腹が捩れるでは無いか。
お主はどうしてこうも愉快なのか⋯ククク⋯」
「まだ笑ってる!」
「ハハ⋯分かった分かった。
あまりそう愉快な面をするで無い。
ハァ⋯其方と会うといつも世は黄泉の世界を覗かされる、少し控えて欲しいのだが⋯」
「またそうして誤解されそうな事を言う!」
「フフフ⋯ならば世を苦しませるでない。」
「勝手に笑ってるだけじゃんか!」
「其方が愉快に過ぎるのが悪い。だがまぁ良い。世では無く周りをそうして苦しめてやれ。
さすれば醜悪な企みなど、直ぐ様吹き飛ぶで有ろうな。」
「私は笑い茸じゃないんだけどなぁ〜⋯」
「ブフッ⋯ゴフ⋯ゴボッ⋯」
「笑いすぎ。
ねぇ⋯ひょっとして錬成師って茸が好きなの?」
「っっっ〜〜〜!!!」
魔王はそっと床に私を置くと、秘密部屋を開けて駆け込んで行った。
どうやらあそこは転移で入れない仕様らしい。
そして突然置き去りにされた私は、魔王の笑いが収まるまで放置されるようだ。
超迷惑。
この世界の茸は草と戦争してるらしい。




