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アナ雪の世界リスペクト
星と月が明るい夜空をテクテク歩いて畑に向かうが、途中で雲が出たら直ぐに真っ暗になるのに、何の明かりも無しに歩いてる。
農民は貧乏人だから、基本的に明かりを使わない生活をしているので、夜明け頃に起きて日が沈んだら寝るのが普通なのは、暗い夜明け前に行動するのは事故の元になるからだと思うの。
農作業用の人工小川の水位は成人男性の膝あたりしか無いけど、土手を踏み外したらコケたりするから危ないと思うのよ。
それなのに長年の勘と月明かりを頼りに、夜明け前からずっと明かりも無しに水を撒いて来れていたのは、恐らく無自覚で視力を強化してたり、魔力の場所を察知して、川の流れがどこに有るか、土手等の地形の把握や水量の配分などが、感覚的に分かっていたのかも知れないんじゃないかな?
改めて夜に畑に出てくると、それがよく分かって来た。
ロベルトはよく暗い中、父について来られたものだと感心する。
夜目といったスキルを鍛えていたのかも知れないが、よく考えてみたら月明かりの下で生活をするのが普通なので、そういや私も真っ暗の中で厠に行ってたなと、我ながら自分の鈍感さに笑ってしまう。
昔の私は魔力が目に見えると思って無かったけど、見えない景色が見えてた事に気付いて無かっただけなのだ。
何故なら昼間に目で見て記憶した地形を、暗闇の中では想像力で視力の補完をすると、体内の魔力が動いて実際に視力を強化する働きを行ったんだと思われる。
だから明かりを持って行かなくても、トイレの中がちゃんと見えてたから用が足せていたのだ。
これ、前世の頃ならあり得ない現象である。
そりゃ目の見えない盲目の人間が配置を覚えて生活する話は有るし、明かりを付けるのが面倒で、記憶だよりに見えない所を歩いたりした経験は誰にも有ると思う。
夜中に起きたけど、目を完全に覚ますのが嫌で暗いトイレに入ったりとかさ。
だから自宅の水洗トイレならともかく、屋外に出て別の施設に入り、なおかつ板に穴が空いてるだけのボットン便所で用を足すんだよ。
それがどんだけ危ない事か。
2歳なら余裕で落ちれるからね?
その穴と言うか板と板の隙間が空いてるだけのトイレなんて、下に落ち放題だよ。
しかも下は穴を掘ってるだけなんだから、そんな所に落ちたら人が出したもので溺れて死んでしまうからな?
そんな所に行くなら前世なら絶対に明かりを使うはずなんだよ。
だって見えないから!
そりゃ私は落ちないように目を皿のようにして穴の場所を確認しながら、慎重に用を足してたよ。
でも全く見えてないなら絶対にトイレに1人で行ってなかったと断言出来る。
でもそれって明らかに変なんだよ。
トイレの周りは上も周囲も、出入り口以外は全部板で囲まれてるから窓すらないの。
掘った穴に足したものが落下するんだけど、ソレが溜まったら溢れる前に処理をする必要が有るのね。
だからトイレは大通りに繋がる家の前の道に近い所に有るのは、その道を使って人糞を運ぶためなのだ。
だからトイレの中でウンウンしてたら、通りすがりの人に見られたく無いから、窓なんて作らないんだよ。
あと窓ガラスなんか無いから、壁に穴が空いてたら臭いじゃ無い。
どうせ下に穴が空いてるし、機械的に切って板を作る訳じゃ無いから立て付けだって悪いし、換気は窓なんか無くてもある程度は勝手に出来てるのね。
だったら幾ら外が月明かりで明るくたって、ドアを閉めたら光りなんて普通は入ってこないから。
そりゃ板と板の隙間から明かりが入っていたけど、だから見えてると勘違いしてたけど、実際みえてたんだけど。
それでもトイレの中がハッキリ見えるのって可笑しく無い?
無自覚で魔法を使うぐらい、魔力は身体の中にも大気中にも沢山有るから、いつの間にか勝手に発動してるせいで、ちゃんと意識をしてそうで無い頃の記憶と照らし合わせて考えないと、一生この可笑しさに気が付かなかったと思う。
ウェスタリアの民族って、耳の長くないエルフみたいだ。
魔力が豊富で暗視が出来て、しかも美形揃いの容姿に森にかこまれた場所に住んでると来れば、耳さえ長かったらエルフじゃ無い?
そう思うのって私だけ?
まぁ⋯エルフって言うにしては、ジギタス叔父さんとかタルクス叔父さんとか、カルマンさんとかマゼランお爺ちゃんとか。
体型と身長がオーガしてる人も多いんだけどね?
魔王とかお嬢さんとかギルバートさんを並べたら、ウチのエルフでーす!って、自信満々に言えるんだけど。
ジギタス叔父さんとかカルマンさんとかマゼランお爺ちゃんとかが並ぶと、ウチの鬼山賊チームです!って、なっちゃうからさ。
同じ民族の中でも個人差が有りすぎるんだよね⋯。
全員一応美形なんだけどさ。
ロベルトやマルセロ見てると、ジギタス叔父さんやマゼランお爺ちゃんだって子供の頃はめちゃくちゃ可愛かった筈無んだよ。
カルマンさんなんざ王子だからな?!
あの上后様と先王様に息子だぞ!あの魔王の弟だぞ!
そりゃさぞかし生ける天使並に可愛かった筈無んだよ。
今は可愛いの「か」の字も見る影無いけどな!
まぁ魔王は若作りしてるし、そのウチ耳さえ伸びればエルフになれるんじゃねぇの?ハハハ!
て、ネタにして笑うぐらいしか出来ないのかな?
せっかく魔物や妖精がいる世界なのに、エルフとかドワーフとか、あと猫耳の獣人さんとかいたら面白いのになぁ〜。
だがロリババアは断る。
私はちゃんと美人でバインバインなお姉さんに育つ予定だからだ。
素質はあるはずなんだよ。
だってウチのお母さんが美人でバインバインだからだ。
姉がパインぐらいしかないのがちょっと不安だけど、まだ彼女も10歳だしな!
エターニャはちゃんとポインポインしてるし、子供を産んで授乳してたらきっと、立派なバインバインになれる筈なのだ!
「さてどう手分けをする?」
「あー⋯、しまった。
そっちを優先して考えなきゃ駄目だった。」
「うん?」
「ううん。何でもないよ。
ちょっと将来の事を考えてただけなの。
私も大きくなったら、お母さんみたいな美人になって、立派なバインバインになるんだぁ!てね。」
「ぶふっ!
⋯ば⋯ばいんばいん?」
「そ!バインバイン!
それでお父さんみたいに、賢くて優しい素敵な旦那様を捕まえて、沢山子供を産んで幸せに暮らすんだよ!」
「ハハハ⋯ばいんばいん?はともかく。
リリアナならきっと俺よりも素敵な人を見つけて来そうだよなぁ⋯。」
擬音って不自由だよね。
言葉が通じなくても、ちゃんと意味が通じるんだもん。
ばいんばいんが気に入ったらしい父は、少し恥ずかしそうにそれを呟きながらも、困った様子で笑ってくれた。
「さて、冗談は横に置いといてさ。
お父さんの今までの魔法を使うと小川の魔力を使ってしまうから、お水を撒くには問題無くても、魔力を与える事については駄目な気がするんだよ⋯」
「成る程。今までそれを意識して無かったから気付いてなかったが、言われてみたら確かにそうだな。」
「うん。だから私が畑に沿って流れてる小川から、面を区切ってる小道を使って小さな小川に変えて仕舞おうと思うの。」
「うん?」
「つまり畑を囲ってる道や小川から、土に穴を空けて小川の水を畑の中に直接流し込もうと考えてるの。
でもこの方法だと、畑の周りには水を流せるけど、中央には届かせられないんだよ。
中央まで水を届かせようとしたら、先に畑の周りが水に沈んでしまうから、麦が駄目になっちゃうと思うんだよね。
だから中央にはお父さんが水を撒いて欲しいの。
ただし前みたいに小川の水を全体的に支配するやり方じゃ無くて、私が錬成箱の下や横を凍らせたみたいに、そこだけ水を支配して掬い上げて撒いて欲しいんだけど、分かるかなぁ?」
「すまん。ちょっと想像するのが難しいな⋯」
「なら私が一度試しにやってみてもいいかな?」
「あぁ、頼むよ。」
という訳で私は自分の魔力を小川に流し、小川の水の魔力を使って水を支配して行く。
その水を使って土手に直接穴を開けようとしたのだが、何だか水瓶の時と違って抵抗を感じて少しとまどった。
あ、なるほどそう言うことね。
でも直ぐにそれが人工小川を作った魔法師の魔力だと分かり、少し感心する。
人工小川の壁が崩れないように、シッカリ魔力を込めて固めて作ってたようだ。
だから強めに私の魔力を足して、その魔力を染め直せば支配は奪える。
でもその後が問題になりそうだ。
何故なら私は、魔力から手を離せば私が支配していた魔力が消えてしまうからである。
魔力の多いただの農民と学校で知識を学んで魔法を使う魔法師との違いを、ここで始めて認識した。
だから見様見真似でやり方を予想してゴリ押しする。
コレで後から問題になれば、ゴメンね!って謝って治して貰えばいい。
そうでなくても冬には村の整地が待ってる。
これが見知らぬ他人の貴族なら、こんな危ない橋は渡らないけど、あの村長だしな。
何ならお嬢さんに泣きついて治して貰えばいいやと思えば気分も更に楽になる。
そりゃ、この忙しい時になにやってんだコラ!って、叱られるかも知れないが、初っ端から犯罪だから処刑!
とか、ならないのならものは試し。
経験するのは何事も大事なのである。
いやまぁ法律を勉強してるから、故意に村の設備である人工小川を破壊したら犯罪なのは知ってるよ?
でも普通だと村人なら法律は知らないからな?
初犯はコラ!って、叱られて、それを懲りずに続けてやれば刑罰が与えられるって話だよ。
だから私は気にせずに強固に固められていた人工小川の壁を崩すと、地面の中を通り抜けて畑の面と面の間の小道に向けて支配した水を流していく。
そして水が小道に染み込めば、Uの字になる様に中央部分を凹ませて、その周囲を盛り上げる形でミニ人工小川を作成した。
勿論大元の人工小川から小道を通った先にある人工小川は連結させる。
そしてミニ人工小川に支配して無い水を誘導して、ミニ人工小川の壁に穴を開けようとしたら、勝手に壁が崩れて所々で水が氾濫した。
手間が省けて良かったよ。
でもこれで人工小川の壁が強固に固定されてた理由が分かった。
そりゃ盛り上げただけの軽い土なんて、水が流れた勢いで崩れるよね。
だから勝手に崩れたせいで、片側の面だけ水を流すつもりだったのが、小道を挟んだ両面から勝手に水が溢れてる。
均等とは行かなくても、そのお陰で僅か5分もしないウチに、小道を挟んでる畑の両方ともに水が生き渡っていた。
と、言ってもそれは畑からすれば僅か2/5の範囲に過ぎない。
何故なら私が支配している水が、大元の人工小川の穴を塞いで水量を調整してるからだ。
ただ手前と向こう側の両方を調整しているので、このまま穴を塞ぐ作業に入るのはちょっと難しい。
右手で絵を描きながら左手で文章を書けるほど、私の頭は器用に出来ていないので。
なので魔力に頼んで人工小川の壁を強固に修復させる。
使った魔力が消えるんなら、そこに留まって固まってろと指示だけ与えて、使ってない魔力を中に閉じ込めてやれば良いのだ。
その代わりゴソッと魔力を持って行かれた。
だから減った魔力を戻す為に、私は空気中にある魔力を身に纏い、ちょっとだけ吸い込んで不足した魔力を補強する。
私が支配下に置いてた水は、もう利用済みなら小川にそのままポイすればあとは勝手に流れて行く。
だから私の体内魔力は、魔法行使前と比べると一割減った状態になった。
髪の毛を目視で一応チェックしてみたけど、キャパオーバーして無ければ銀髪サイヤ人にはならないらしい。
でも茶色い髪の毛が金髪チックにはなってる気がするけど、まぁ許容範囲と捉える。
だってこれからガンガン魔力を消耗するからだ。
「これが私のやろうとしてる水の与え方なの。」
「ふむ。両面を一度に与えるのか。」
「うん。でも2方与えても多分中央には届かないから、次は別の方法でやるけど、先に2方共水撒きを終わらせるね。」
つまりはこう。
━を本家の人工小川。
|を私が小道をミニ人工小川にした所。
▓を水浸しにした範囲。
▦は水浸しまで行かないけど濡れてる所。
□をまだ水が届いてない区域と表現すると。
━━━━━━━━━━━
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
―─+─────+────
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
▦▓|▓▦□▦▓|▓▦□□
━━━━━━━━━━━━
と、なる。
なのでこの□▦の部分に水を与える為に、私が支配している水を、人工小川の底を這わせて凹の形を作り、その入れ物の中に魔力の籠った水を乗せて畑の中央に向かい。
底の部分に細かい穴を開けて麦の真上から水を落として行く。
この時入れ物の中心部分から穴を開けて、左右に開けて行けば、中央部分の水が多くなり、左右はその分少なく撒く事になる。
「と言う感じなんだけど、どう?」
「また難しい事を簡単そうに言うなぁ〜⋯」
左右の畑も2/5ほど浸水しているもの、中心部分までしっかりし水を与えた畑が2面完成した。
「だがこれは慣れたらかなり便利になる。
一度に4面水を撒いて、2面が同時に仕上がるのに、撒いた水の魔力は残ったままだ。
しかもかかった時間もかなり少ない。
魔力さえ保てば20面に水を撒くのに鐘1つで足りるな。」
「そこは外の魔力を身体に取り込めたから、まぁ休憩無しにイケルかもね?
問題は明らかに魔法で土を弄ってるのが分かっちゃうんだよねぇ⋯」
草1つ生えて無いのも不自然だけど角張ってる長方形の道とか、気合いが入り過ぎてる形がモロに人工的見える化してるからだ。
言い訳をさせて欲しい。
真ん中を凹んだ状態にした事で、水が決壊した箇所は土も畑の中に流されてしまっていた。
だから畑の中に逃げて行った土を集める様に魔力に命令を出したんだけど、道を作る為に形を指示する必要が有り。
その時に砂に形を与える方法で想像したのが、前世の砂場や海の浜辺で遊んでた記憶から、空のバケツに砂をいれて押し固めて、ひっくり返した時に出来る砂山だったのよ。
道だから長方形が良いやと思った結果がコレだったのだ。
しかも崩れない様にシッカリ魔力を込めて固めさせたから、見た目は茶色いコンクリートになってると言う…。
泥で出来る硬いヤツ!ってお題の連想ゲームみたいに、私が無意識でコンクリートを想像してたらしい。
本家のコンクリートの素材じゃ無いから茶色いままだけど。
明らかにソコだけ文化が違う匂いがプンプンしてる。
元は畑になってる土地を下げたから、畑を取り囲んでる所が面を取り囲んでる小川の土手や小道になってるんだと考えられる。
何故なら水を村全体に運ぶ為に高低差が必要だからだ。
だから森の川に近い場所にある人工小川は地面よりも高い場所に無ければならない。
そこから少しづつなだらかな傾斜を作って水を村の畑全域に、行き渡らせている仕組みになっている。
作物を作るのに水が大量に必要になるが、畑が増えると水路から距離が離れたら水を運ぶ事が大変になる。
その労力を減らす目的で作られたのがこの人工小川だ。
しかも村は井戸を上水としているので、恐ろしい事に人工小川を生活用の排水路としても使っている。
それでも病気が蔓延せずに済んでるのは、トイレを汲み取り式にして肥料にする事で発酵させてるから無毒化しているのと、風呂の文化が無いのと、食器洗いや洗濯などで洗剤を使用してないから、生活に使用してる排水量が少ない事に有るんじゃ無いかと予想してるのだ。
だから風呂を作るなら水を浄化するシステムは必須になる。
まぁそれは今関係が無いので置いておく。
村のトイレはそれで良い。
でも中央の町になり掛けてる場所は、そうは行かない。
だから何らかの下水道システムを利用してると予想してる。
だって臭く無いから。
いや戦士は臭いんだよ?
でも下水の匂いは民家よりも少なくて、ほぼしないと言っても断言出来る。
何なら店のトイレは無臭な上で水洗トイレじゃ無いのよ。
洋式トイレのボットンバージョンなのに匂いがしないとは、一体あの穴の中はどうなってるのやら。
あと民家の厠の周りは少し臭うけど、厠から出したブツに麦藁を混ぜて作ってる堆肥場はあんまり臭く無いのよ。
ほぼ草の匂い。
まぁ汚物の匂いがしてたら、通行人が大迷惑だからそれで良いんだけど。
私が思うに、消臭作用のあるなんらかの植物が関係してると考えてる。
だって肥溜めを兼ねてる厠に生ゴミやら元気草も捨ててるからだ。
何の植物が匂い消しになってるのかは分からない。
でも人糞だけだと臭くて嫌だから、トイレに残飯を捨てる様な生活習慣が生まれたのでは無いかと考えてるだけだ。
トイレに光が入らない造りになってるのは、ウンウン中に客と顔を見せ合うのが嫌なだけじゃなくて、真の目的は元気草対策なんじゃ無い?
ヤツは光が無ければ育たないから。
それを分かって無いヤツが、間違って堆肥場に生ゴミや元気草を捨てて繁殖させてるんだが。
私もソレをやってるから、人の事は笑えない。
だって厠の周りは少ししか臭く無いけど、板の間は匂いが直撃するからな?
しかも私には汲み取る為に高い場所にあるトイレに続いてる階段を登るのも難しいし、穴も怖いとなれば平地をトコトコ歩いて臭く無い堆肥場に捨てる方が楽だったんだよ。
叱られて元気草のヤバさを教えて貰ったから、今はあんまりしてないけどさ。
だって駄目って知ってるけど、まだトイレはシンドいんだよ!
叱られた後で外に捨てる時はなるべくお日様が当たらない様に気をつけてたから!
今は縁が遠くなったけど、フランを探してチューチューしてた頃は元気草との遭遇率が1番高くてさぁ〜。
「リリアナ?」
「お父さんスゴイね!」
「ははは、いやまだこれからさ。」
全然見てなかったけど、中央部分に水を撒いたらしい。
これだから私は駄目なのよ。
何もしてないと直ぐに頭の中が暇つぶしに何かを考えちゃうの。
脱線したなと途中で気付いて戻ろうとしても、次々と脱線した挙句に、何を問題に思って考え始めてたのか、良く忘れてるヤツだ。
特に今はメモを書けないから、はて何を問題だと思ってたのか、サッパリ忘れてるや。
まぁ大事な事ならまた後から思い出すでしょ。
「夜だからかな?
昼に魔法を使うよりも、身体が楽だね。」
「そうだな。
感覚的にソレが有るから、日の出前に水を撒く事が習慣になってたのかも知れんな。」
もう言葉にしなくても私達は何故夜だと身体が楽なのか、その理由を知っている。
だから後は無言でサクサクと作業を熟すだけだ。
今はまだ慣れてないし時間が押してて焦ってるから無言で集中してるけど、慣れたらそのうち会話をしながら作業が出来るようになって来るのかも知れない。
ちなみに私が小道を水路にしてる間に、父が中央部分の水を撒くからめっちゃ作業が早く終わる。
何なら暇になった父が1人で水路を作って終わらせる事も有るのだ。
楽だし早いしであっという間に終わりかけたけど、隣りに他人の畑が有る場所だけはそうは行かない。
でもそこは小道を水路に変えられないから、端の方も中央部分の水撒きをするだけなので、まぁ結局はそこまで時間はかからなかったかな。
「うーむ⋯予想はしてたが、1鐘も有れば全部が余裕で終わってしまったな。」
「休憩要らなかったしね〜」
そして疲れることも無く私達は自宅に帰って無事に熱々のお風呂に入った。
私が沸かすからそうなる。
とは言ってもほんの少し湯気が立つ程度だから、40℃ぐらいじゃ無い?
「はぁ〜⋯⋯⋯何だこれは。
疲れが溶けてくみたいだ⋯」
「ふぅぅ~⋯疲れて無いと思ってたけど、ホントは疲れてたのかなぁ~?⋯」
父に抱かれて肩までお湯に浸かると、お湯は最初だけ少し熱くて。
馴染んでくると心地良い温もりになった。
だから温もりに包まれる感覚と、フワフワとした浮遊感に思わず声が溢れた。
新しい事をしてたから、気が張ってただけだったらしくて、2歳の私にもお湯の温もりが身体に染みる様だった事にビックリする。
「リリアナ〜!」
「もうコッチはずっと待ってたんだからな!」
「アハハハ!」
人工小川のせせらぎの音を聞きながら、月と星空の下で父と温めの湯でマッタリしてたら、ドヤドヤと魔力草の作業を終えた兄弟達が突撃して来る。
しかもさっきお風呂に入ってた筈なのに、またマルセロやロベルトが水瓶の中に来るからギューギューになって、お湯もザバーっと溢れて行った。
カタリナも入りたさそうにしてたけど、皆の為に布や着替えの服を慌てて準備してくれてる。
水瓶に隙間が無いから遠慮してくれたみたいだ。
「ちょっと!
何で服を着て入って無いの?!
そしたら洗濯しなくちゃいけなくなるじゃない!」
「くぴ?!ピッ!」
「あ〜⋯。そのローブは自分で汚れを落とす魔法の機能がついてるから、洗濯しなくてもいいんだよ。
今までも洗濯して無かったでしょう?」
「あ、そう言えばそうね。
忘れてたわ。」
「クピ!ピピピッ!」
「もう、煩いわね。
悪かったわよ。
寝てた所を起こして。
でもそんな所で寝てるアンタが悪いんだからね?
寝るならリリアナの頭の上じゃ無くて、ちゃんとベッドで寝なさいよ。
ジーニスだって1人で寝れてるのに、アンタ恥ずかしくならないの?」
「ピッ?!ピピピッ!」
「リリアナは仕事をしてるのアンタ知ってるわよね?
静かな場所で寝たいなら、何時までも甘えてないで、留守番ぐらいそろそろ出来るように頑張りなさいよ!」
「ぴぷ〜⋯」
何でか姉とピヨ子が会話してる。
畑仕事をしてる間に、寝てたピヨ子は脱衣場代わりの木箱に、ローブと一緒に置いてたんだけど、カタリナが騒いだせいで煩くて起きてしまい。
キレて文句を言おうとして、カタリナに逆に凹まされるといったミラクルが起きてた。
言葉が分からなければ、絶対にこんな事は起きなかったから、これもピヨ子が成長した証だと思えば母としては感慨深い物が有るけれど。
どう考えても鳥の言葉なんて理解出来ない筈の姉が、ピヨ子と意思を疎通してる事には驚愕を禁じ得ない。
姉が猛獣使いへの道へ向かってる気がするのは、私の気の所為なんだろうか?
上は従兄弟達、下は自分の兄弟達と、元気のいい男の兄弟に囲まれたら、リーゼロッテやティアナへの道が拓けてしまうかと思うと、鳥を家業にしてるわが家らしい職業だなと遠い目で姉を眺めてしまう。
適正が全く無さそうなジギタス叔父さんが鳥の仕事が出来るのは、優しすぎる父だと舐めて言う事を聞かない鳥達が、叔父さんだと問答無用で従うからだ。
だって反抗したら直ぐに捌かれて肉にされちゃうので。
あの人元狩人だからその辺の躊躇いなんか一切無いから、自然とそうなる。
だから愛情深い優しいバッカスだとイマイチ鳥たちは従ってくれないので、彼が見て無ければ鳥が遠慮無く畑から脱走するから、見張りの人員をする人達が大変になるのだ。
つまり実の所を言うと、バッカスよりもカタリナの方が鳥を継ぐ才能が有るんじゃ無いかと、私は今のこの状況を見て、そう考えてる。
まぁカタリナは魔力草の育生にも適正が有るので、単に姉が優秀な人だからそう思えるだけかも知れない。
姉はとても真面目なので、決められた事はキッチリと熟したい人なのだ。
だから魔力草なんて縛りの多い植物の育生も、同じ作業を続けても勝手にオリジナルな行動を挟もうとしないので、決められた作業を淡々とこなせるから、私も信頼して任せる事が出来ている。
つまり研究者には向いてないが、私の助手としても魔力草の育生者としても適正が有る事になるのよ。
忙しい私はそんな有能な人材を鳥に取られたく無いので、この新しく気付いた現実は、秘密にすることにした。
今までの私は、自分が思いついた事を全て得意気に語っていたお子様だったけれど、お嬢さんと出会って色々と経験したから、世の中には言わない方が良い思い付きが有るとちゃんと学んでいる。
これを自分の利益の為だけに行うのなら、それはズルい選択になると言う事で、これぞまさに大人になると言う事だから。
ここは私が大人の階段を登った成長の証しとして、黙認するのだ。
前世の知識の中には、闇に葬る方が良い知識も当然有るけど、
それは前世の私が大人だったから、そうするべきと判断して封印している。
だけどこの世界の私はまだお子様だったから、この世界で見つけた気付きは、割と深く考えずにポロリと溢れる事も多かった。
前世の知識から分かる危険な事なら言わずにいただろうけど、ほら前世って魔力なんて無いから。
だから太陽と月の仕組みが、こんなに使い勝手が良くて危険な知識だとは全く気付いて無かったのだ。
でも前世の知識では、新しい発見と技術には危険がつきものだと認識していたので、漠然とその危険性は感じてたとは思う。
それがハッキリしたのは魔石強化や人工魔石の構想が出来てからになるけれど、だから私は前世の私が禁じてた戦争の知識を使って、ルドルフ大帝国を滅ぼす事になってしまったんだけれど。
そこは私なりに選択した結果となっている。
戦争の知識をこの世界に持ち込むよりも、危険な思想のある国家に打撃を与える方が、私が発見した知識がもたらす危険を考えると、マシだと感じたからだ。
正義とはその国の文化や方針で変わるものなので、私は世界中に知らしめるべく、聞けば誰もが驚愕を受ける手段を用いて、人間として正しい生き方として欲しい倫理の楔を、滅びの攻撃として撃ち込んだのだ。
人に優しく親切にしなければ、国が滅んで人は生きていけなくなる事を、イスガルド大陸に住む人間達が知る事に成れば、この先の未来で私の技術を悪用する人達は、必ずその摂理にしたがって行動しなければ、きっと誰かに裁かれる事になると、そこを期待している。
教会を利用したのはそのせいだ。
だって大陸中にある村や街や国に、支店が有る大型施設なので、しかも自分達の教えを補強してくれるとなったら、ヒャッハー!してぶち撒けてくれると思うのよね。
まぁ具体的にどんな教えをしてるかは知らんけど、教会に通ってた人から話を聞けば人道的な倫理を諭してるんだろうなって事に予想はつく。
ルドルフ大帝国の失敗も、他人の不幸は蜜の味って言うし、長年苦しめられて来た聖地のあるミスドガルド共和国の皆さんは、それはもう喜んで延々と末代まで語り継いでくれるだろう。
だから聖地を巡礼する人達がこの話題のブームが去った後でも延々と大陸中に回してくれると思うのよ。
泣く子に泥棒は勝てないって言う、あのベストセラーになったお話みたいにさ。
だから弱い子供に酷い事をして来た大きな国が滅ぼされる形にしたかったのに、あの魔王がしゃしゃって来て余計な事をしたから、私の思惑からしたら計算ハズレも良い所なんだけど。
あのダメ押しが有るからこそ、私の身の安全を保証してくれるんだと思えば、微妙な所なんだよね〜。
「リリアナ!
アンタ寝てんの?!
ちゃんと待ってたんだから早く作りなさいよ!」
「⋯あ、うん。」
カタリナから目の前に鍋を突き出されたから、私は仕方無く目の前の液体の表面を少しだけ凍らせる。
「お姉ちゃん、混ぜ混ぜして。
その方が美味しく出来るよ。」
「え?!混ぜるの?!
お母〜さ〜ん!」
カタリナは鍋を持ったままドタバタと走って行った。
鍋の中に砂が入らない事を祈るしか無い。
だって冷ますのに鍋を置きっぱなしにしてただろうから、あのまま凍らせたら、甘い部分と水の部分が分離してたらどうすんのさ。
だから表面だけ誤魔化しに凍らせて、混ぜさせる事にしたのよ。
そのまま理由を言って混ぜさせたら、それなら先に言いなさいよと、理不尽女王カタリナが怒るに決まってるからだ。
まぁ氷の塊を削るもんも無いから、何度かこれを繰り返せばシャーベットぐらい作れるだろう。
みぞれ味のシャーベットなら、甘味の少ないこの村なら、極上のデザートになると思うしな。
そしてそうなった。
まだお湯に浸かりながらも、カタリナが突き出して来る鍋の表面を固めると、そこを彼女が匙を突き刺してグルグルとかき混ぜて行くと、次第にシャリシャリとしたシャーベットになる。
「っっっーーー!!!」
そしてそれを掬ってパクリと味見をした彼女が、声もなく絶叫して瞳を輝かせた。
「俺も!」「僕も!」
姉の叫びが聞こえなくても、顔を見てあ、コレ絶対に美味いやつ!と察した2人が湯船の中から手を突き出した。
「コレは私が作ったんだからね!」
強欲の権化と化した姉がすかさず鍋と一緒に身を引いたが。
「あらあら〜。どお?
ちゃんと出来てるのかしか〜?」
そこに登場したのが我らがプチ聖女の母上様だった。
だからカタリナも仕方無く木匙を母に献上する。
「あらぁ!アッサリしてけど、ちゃんと美味しく出来てるじゃない〜」
一匙口に入れたら、次々と掬ってロベルトやマルセロや父や私の口にも放り込んで行く。
『あっっまぁい♪♪♪』
するとキラキラと目を輝かせる子供の集団が増殖した。
「へぇ?どんなもんかと思ったが⋯甘いがスッキリするんだな。」
「口の中で溶けちゃうんだよ!」
「なのにちゃんと甘いし、スッゲェ美味い!」
「ちょっと皆食べ過ぎよ!
私が混ぜてつくったのよ!」
「あらぁ?密を作ったのはお母さんよ〜?」
「なら元は私が稼いだお金で買った甘い粉だし、冷やして凍らせたのも私だね。
だから材料の提供者として提案します!
皆が協力して作ったんだから、皆のご褒美だし、皆で仲良くおいしく食べよう〜」
『わあぁー!』
「むぅぅ⋯」
「ほらほらお姉ちゃん。
むくれて無いでちゃんと食べなよ。
お姉ちゃんが混ぜるの頑張ってくれたの皆見てるから、お姉ちゃんもシッカリ食べなくちゃね?」
「もう〜分かったわよ。」
こうして平和に分け合って食べたけど、いやぁ~薄いなぁ〜。
もうみぞれ???って、感じの水みたいに薄い甘い風味の氷になってた。
そりゃスッキリするだろうよ。
ほぼ氷だからな。
貧乏性のお母さんが元のソースを作ったんだから、私が想像した以上に甘い粉をケチったんだろう。
それでも温かい状態なら甘かったんだろうけど、冷やすと甘みって感じ難くなるし。
もうほぼ氷。
なんなら薄っすら甘い風味の有る冷たい水に、チョッピリ甘い氷が混ざったヤツ。
それでも冷たいものや、甘いものに馴染みが無いから子供には人気のお菓子になってるとは思う。
私には不満だけどな。
次は是非ともマモーのミルクで作って欲しい。
臭みの無いマモーのミルクなら、かなり期待が出来る味になるに違い無いからだ。
「お母さん。今度はマモーのミルクで作ろうよ。
その方がきっと甘くて美味しい氷が出来ると思うなぁ〜」
「そうね。それなら明日はマモーのミルクを残しておくわね?」
「ん?明日するの???」
「だって楽しいじゃない〜!」
「甘い粉はまだ有るの?」
「大丈夫よ。お母さんが買いに行くから〜!」
どうやら母に甘味ブームが巻き起こってるらしい。
でもこの場に居る全員がそれを止めない所を見る限り、全員がその案に大賛成の様だ。
勿論私もその筆頭だけどな!
「お父さん⋯」
「水瓶は1つこのままにして起こうか。」
「あ、うん。
なら雨の日以外は入れそうだよね~」
父には風呂ブームが起こってたらしい。
どうやら麦よりも風呂の湯の癒し効果が、魅力的だったみたいだ。
「じゃ浄化してこのままお湯は残しとくから、蓋をしなければ月の光を浴びた水のお風呂になっちゃうね!」
「何だソレ!」
「アハハハ!僕たちも魔力草みたいに育っちゃうのかなぁ?」
「アハハハ!なによソレ。
背が高く伸びるってこと?」
「ハハハ!父さんはもう伸びないと思うけどなぁ〜」
「ウフフ、お母さんも伸びないけど⋯お肌が綺麗になれたら良いわねぇ〜?」
私が茶化せばロベルトが先ずは吹き出して、マルセロも笑いながらそれに続いた。
カタリナもそれに乗っかり、父や母も楽しそうに笑ってる。
「美肌効果はどうなんだろう。
井戸の水なら有りそうな気もするけど、浄化した小川の水だとなぁ〜」
「それなら明日は井戸のお水でお湯にしましょうよぉ~」
それよな。
母は美肌に興味があったらしく、井戸水での入浴に興味が湧いたらしい。
多分前世なら風呂は乾燥まっしぐらで、美肌とは潤いが大事な要素だとしたら、どうかなぁ?とは思うけど。
地下水ならミネラルが豊富だから、人工的な温泉効果が無いとは言え無くはないんだよ。
ただし浄化したらソレが何処まで残るのかは分かんない。
あともう一つ言えるのは無意識の魔法を人が使ってるんなら、魔力の豊富なお湯だと、思い込みだけでお肌が綺麗になる可能性が有るんじゃないかな?
だから月の光に美肌効果は無くても、その湯に浸かる人がそう思えば美肌の湯になる可能性が出て来る訳だ。
「井戸の水は植物に使うんじゃ無かったのか?」
「人間に使ったあと、小川にでも流せば別に良いんじゃ無い?」
「あー⋯なるほど。
そう言う使い方も出来るのか⋯」
「ウチの畑の上流で流さないと駄目だけどね?」
「ふむ。それぐらいなら簡単だな。」
「ねぇそしたらジーニスのオムツや他の洗濯物はどうしたら良いの?」
「それよねー。」
実は今ウチの洗濯物の8割を占めてるのは、ジーニスのオムツなのだ。
「何時もは小川で少し流してから、井戸水で洗ってるよね?」
「そうよ。」
「それなら小川の水で洗った後で私が浄化するか、お母さんが浄化するかだよね~。
この際お姉ちゃんも浄化魔法を覚えてみたら?」
「簡単に言わないでよ。
浄化魔法はとっても魔力を使うのよ。そんな簡単に出来るものじゃないんだからね!」
「それは変だよお姉ちゃん。」
「え?!」
「だってお父さんは魔法師になれるぐらいの魔法使いで、お母さんは浄化が出来るぐらいに豊富な魔力を持ってるんだよ。
いつも外に出て日の光を浴びてるロベルト兄ちゃんなら、魔力が劣化して少なくなるかもだけど、お姉ちゃんは最近家にいる事が多いから、沢山魔力が溜まって来てると思うんだよ。
特に最近は月の光を浴びながら作業してるから、前よりも魔法が使えるようになってる筈だよ?」
「え⋯うそ⋯」
「試しに浄化してみなよ。
綺麗になれ!って、洗濯した後のことを考えながらジーニスのオムツを綺麗にしてみたら?
お姉ちゃんはいつも洗濯をしてくれてるから、洗った後の布がどうかもちゃんと知ってるでしょ?」
「あ⋯え?⋯ホントに???」
カタリナの顔が強張るのを見て、またフラッシュの様に思考が巡り出す。
「お姉ちゃんはとても真面目な人だから、教会に行って始めて魔法を習った時にもの凄く努力したんじゃ無い?
例えばロベ兄ちゃんの魔力切れの症状を見て、それはまだ大丈夫だと分かるぐらい、酷い魔力切れの症状を体験したんだね?」
「あ⋯」
「だからその記憶がお姉ちゃんの才能の邪魔をしてるんだよ。」
「私の⋯才能?」
「その頃って私が生まれる前だから、お母さんが伏せってて、代わりにお洗濯とかのお手伝いをお姉ちゃんは頑張ってしたんじゃない?
日の光を浴びながら、慣れてない洗濯をするなら時間がかかるのも当たり前だよね?」
「⋯うん、そうかも。」
「そんな毎日を送ってて、魔力も消耗してた状態で魔法の練習をしてたら、そりゃ沢山の魔力を使う魔法なんて使える筈が無いんだよ。」
「⋯⋯⋯」
「でも今は違うでしょう?
でもその時経験した辛さを身体や心が覚えてるから、大きな魔法は使いたくないって思ってるんじゃないの?」
「⋯そうなのかしら?」
「だってお姉ちゃんは魔法の才能を持ったお父さんと、浄化魔法をバンバン使うお母さんの娘で、2歳なのに魔法を使いまくってる私のお姉ちゃんなんだよ?
そんな人が浄化魔法も使えないなんて、そんなはずが無いんだよ。」
「わ⋯私⋯」
「お姉ちゃん、お皿とかの洗い物も良くやってるよね?
だからそこの、鍋を洗いたてを想像して綺麗にして見せてよ。
お姉ちゃんなら絶対に出来るって私、信じてるから。」
「で、でも⋯」
「魔力切れなんて起こさないよ。
お姉ちゃんは毎日朝と夜にずっと月の光を浴びて、昼は殆ど家の中で過ごしてたでしょう。
あとさっき甘い粉で作った氷も食べたよね?
それなら魔力が切れる筈ないから、浄化しても大丈夫!」
「⋯ホントに?」
「私を信じてよ!
だってお姉ちゃんは私がそう言う事が分かる子供なのを知ってるでしょう?」
カタリナは空になった鍋と匙をジッと見下ろした後で、目を瞑って慎重に集中して行く。
「洗いたてを想像するの。
綺麗なお水を使ってお鍋や匙をピカピカにするのよ。」
するとふわりとレモン色の光が鍋と匙をつつみ込んだ。
「うそ?!」
それを信じられない気持ちで、目を開いたカタリナがぎょっとして鍋を見下ろす。
「えー?!
カタリナったらスゴイじゃない〜!」
「うん。ちゃんと浄化が発動してたな。
カタリナ凄いぞ。
やっぱりお前も父さんの娘だな。魔法を使う才能がちゃんと有るじゃないか。」
「姉ちゃんスゲェ!」
「僕も!僕も!」
「ふ⋯うっ⋯」
カタリナが鍋を持ったまま俯いてポロポロと涙を零し始める。
「マル兄ちゃんはまだ浄化は難しいよ。
アレは水を氷にするよりも、沢山魔力を使うからもう少し大きくならないと倒れちゃうかも。
あと洗濯や洗い物のお手伝いをしないと、綺麗になった時の事がわからないから、魔力があっても魔法にならないと思うの。
ロベルト兄ちゃんは、魔力はあるけど日の光に良く当たってるし、家業で魔力を沢山使ってるから、使うときは気をつけた方が良いと思うよ。
でもマル兄ちゃんと同じ理由で、洗濯や洗い物の経験を積まなきゃ、魔力があっても魔法は発動出来ないかもね?」
「俺別に浄化とかしなくて平気だし。」
「僕はどうしたら魔力を増やせるのかなぁ〜」
「ロベルト兄ちゃんは洗濯と洗い物が面倒臭いんだよね?
でも森で狩りに行って怪我や毒になった時に浄化が出来たら凄く便利だと思うよ?
仲間が死にそうになった時に、何度も浄化ができる様なら回復魔法だって使えると思うから、役に立たない事は無いと思うけど。
まあそれは人の好みだから、覚えたく無かったら別に良いけど。
カルマンさんやギルバートさん達がいつも綺麗なのは、浄化魔法が使えてるとは思うんだけどなぁ〜。」
「う⋯えー!
洗い物や洗濯なんて、そんなの女がする仕事だろう?!」
「戦場にそんな女の子とか居ないから、騎士達は浄化魔法が使えるように訓練してるんじゃない?」
「ぐは⋯」
「あと、魔力を増やすのは成長すると自然と増える事も有るけど、今月の光を浴びながら毎日お水をだしてるから、それが魔力を増やす修行になってると思うの。
だから教会で勉強が終わった頃に、ロベルト兄ちゃんみたいに家業のお手伝いをしてたら、マルセロ兄ちゃんもどんどん魔力が増えて強くなると思うんだけど⋯この答えでは気に入らない?」
「だって!リリアナは髪の毛の色が変わるじゃないか!
目だってそうだし。
だから魔力を増やせる方法が他に有るんじゃないの?!」
「え?!まだ目の色変わってるの?!」
「あ、今は⋯うん。
ちょっと銀貨の色っぽくなってるかな。大分元に戻って来てるけど⋯」
「うぅぅ⋯。
でもこれは使わない方が良い方法なの。
だって王様が年を取らなくなったのは、沢山魔力を取り込んだのが悪さをしてる可能性があるからなんだよ。
マルセロ兄ちゃんがその身長のままでいたいなら良いけど、お父さんみたいに背を伸ばして身体を大きくしたいなら、やらない方が良いと思うんだけど。
⋯する?」
「あ⋯ううん。
もっと大きくなってからにする⋯」
「私もなるべく使わないように頑張るよ。
お母さんみたいなバインバインになりたいからね!」
『ばいんばいん⋯』
「あらぁ~なにかしら〜?」
擬音って本当に凄い。
泣いてたカタリナも、マルセロですらお母さんのどこがバインバインしてるのが分かったらしくて、不思議そうな姿を演じて微笑んでる母の、服が弾けそうな一部分をジッと見つめてるからだ。
母もバインバインが何を示してるのか分かったみたいだけど、それを認めたら恥ずかしいからか、全力で気づかないフリをして誤魔化そうとしてる。
ちなみに恥ずかしくて母が見れない父は、不自然に空を見上げて、母からなるべく視線を遠ざけてた。
もうお風呂も入ったし、作業も終わったから母はもう寝間着代わりの白いワンピース姿なのだ。
そりゃ目のやり場に困るよね。
下着なんて無い世界なんだもん。
ゆったり着るサイズの服なのに、一部分だけがパッツパツで、弾け飛びそうだしよ!
そりゃ紳士で照れ屋なお父さんも、毎晩ハッスルしちゃうわな!
あ、毎晩はウソです。
今夜みたいに出来ない日とかも沢山有ります。
女の子の日もそうだし、子供が増えると寝るタイミングとかがズレやすいので、そんなご家庭はあるある話ですよね?
「つーかよー。
月の光を浴びてりゃ良いなら、倉庫から藁を出して来て、そこにシーツをかけてその上に寝りゃ良いんじゃねぇの?」
「雨が振ってきたらどうするの?」
「う⋯」
「今は雨が多い時期だから、それはちょっと向いてないが、もう少ししたらそれも出来るんじゃ無いか?」
「もう少ししたら寒くなってない?」
「冬でも雪が振らない日なら大丈夫だろ。」
「それ絶対に寒いヤツ!」
「それに今だってリリアナが氷で屋根を作れば良いじゃない。」
『それだ!』
えーもーマジかよー。
2歳児をこき使い過ぎじゃね?
やれるかどうかで言えば出来るけどさぁ〜。
氷の下で寝たら雨漏りみたいな事にならないかなぁ⋯。
傾斜つけたらイケルかなぁ?
「じゃあ俺ちょっと倉庫行って、藁取ってくるわ!」
「僕も!僕も!」
「あ!」
びしょ濡れのまま、タンクトップと短パン姿の兄達が、革のショートブーツを足に引っ掛けて駆け出して行く。
「うえぇ〜」
仕方が無いから月の光当たりが良さそうな場所を探して、でも厠の近くは臭いから嫌だしと、悩んだ末に爺ちゃんの家の近くに、長さの違う氷の柱を2本建てて、屋根を斜めになるようにつくってみた。
横から見たらこう。
▓
屋根 ▓
屋根屋根 ▓
壁壁 ▓
壁壁 ▓
壁壁 ■■▓
壁壁布布布布 ■■▓
壁壁藁藁藁藁布 ■■▓
壁壁藁藁藁藁藁布■■▓
壁壁藁藁藁藁藁藁■■▓
壁壁▓▓▓▓▓▓■■▓
地面地面地面地面地面地面地面
正面から見たらこう。
▓が氷壁で■が氷柱。
屋根屋根屋根屋根屋根屋根屋根
根▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓屋根
壁▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓壁
壁▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓壁
壁■▓▓▓▓▓▓▓▓▓■壁
壁■▓▓▓▓▓▓▓▓▓■壁
壁■▓▓▓▓▓▓▓▓▓■壁
壁■▓▓▓▓▓▓▓▓▓■壁
壁■▓▓▓▓▓▓▓▓▓■壁
地面地面地面地面地面地面地面
屋根を一部分凍らせて氷の屋根とくっつけたし、一晩溶けないように、一応は強固に作ったつもり。
私がコレを作るのに5分ぐらいしか掛からなかったので、コレを作った後に兄達2人がせっせと藁を運んで、最後にはカタリナがシーツを被せてたよ。
でもその間に私は服を脱いで父と一緒に魔法の鞄で脱水したし、母はいつの間にか家に引っ込んで居なくなってた。
そりゃ服を全部脱いで身体を拭いてたらもう垢がボロボロと面白いぐらいに落ちるから。
父と一緒になってハマって擦ってたら、見てる方は恥ずかしいよね。
母がお風呂を気に入ったのは、垢すりした後のお肌がスベスベになったからだと、父の肌触りが良くなった肌に触れてようやく気付いた。
一応父はパンイチ姿なので、マッパでは無いのでご安心ください。
あとピヨ子は気が付いたらまた寝てたから、木箱の上にローブと一緒に置き去りにしてる。
この隙にピアの様子を見に行ったら、野菜は全部無くなってて、ピスピス鼻を引くつかせながら警戒してたから、父に蓋を開けて貰ってタルクス叔父さんがくれた睡眠薬入りの野菜を落としておく。
蓋を父に開けて貰ったのは、ピアが魔物なので飛び掛って来られたら危険だと思ったからだけど、ピアは身を低くして警戒してるだけだったので、父が睡眠薬入りの餌を落としてもビクッとしただけで済んだ。
多分私が蓋を開けてたら飛び掛って来たかも知れないけど、父だしな。
そりゃ守りに入るよ。
ピアにとっては捕食者だもん。
それから井戸も確認しに行くと上の氷が溶けて来てたので、井戸の底に有る増えた水を使って、井戸の上の氷を補強しておく。
これは完全に偶然だけど、祖父の家の壁を利用して氷で壁を作ったから、そこに月の光が当たって反射してるせいで、嵩増しした井戸の上の氷にも月の光が当たってた。
その兼ね合いかは知らないけど、井戸のなかの壁が白いせいか、氷越しに分かるぐらい井戸の中も明るくなってる。
氷を分厚くしたら井戸がいきなり光ったから、本当にビックリした。
なので月が実家の向こう側に行っても、少しは月の光があたる時間が増えてるかも知れない。
そしたら藁のベッドが完成間近だったので、父と一緒に向かったんだけど。
「涼しいけど⋯何だかここ寒いわ?」
「俺、毛皮とってくるわ。」
と、本末転倒な事になってた。
それはそう。
雨が降ったら風が吹いたら濡れちゃうから、壁は全面氷壁だし、地面に泥水が来たら藁が汚れると思って床も氷床にしちゃったから、全周囲それすると寒いかと思ったから、横は一応開けといたけど、周りを氷に囲まれてるんだから、夏だとは言ってもそりゃぁ寒いよね。
でも毛皮なんて分厚いものを身体の上にかけてたら、月の光なんて浴びれないと思うんだけどなぁ⋯。
「リリアナはどうするんだい?」
「んー。皆が心配だから今日は此処で寝るよ。」
「そうか。
それじゃ父さんは家に戻って寝るから、何かあったら起こしに来るんだよ?」
「うん!」
父が隠しきれずにウキウキな所を申し訳なく思うけど、眠くなった母はもうすでに寝てるかと思われるんだが。
そこはもう出来るお子様な私なので、空気を読んで指摘せずにスルーしといた。
ジーニスはまだ残っているけど、子供達が居なくなった夫婦水入らずの広い寝室で、今晩はどうぞごゆっくりお過ごし下さい。
鐘も鳴るのが8時で終わりだから、今が何時かは知らないけど。
体感的には21時過ぎぐらいかな?と思うので、夜中に置きなくて済むように、サッサと厠に行ってから私もピヨ子を連れて子供団子にまざって寝る事にする。
頭の上の方にピヨ子を置いたらピヨ子が冷えるといけないから、足元の毛皮の下に入れといた。
もう蹴られたぐらいなら死なないと思うので、毛布を被ってるのにカタリナに抱き枕代わりにされた私はぐっすり寝る。
カタリナと私に続いて、私の反対側はマルセロがいて、ロベルトはその向こうに居るから、幾ら温かい外が近い場所だと言っても、温度調整機能つきローブを着た私が遠くなるので少しだけ心配になる。
強欲なカタリナが毛皮をシッカリ巻き込んで寝るから、ロベルトはきっと毛皮からはみ出して、お腹をだしながら寝る事になると予想がつくからだ。
明日になると久しぶりに、マリア婆ちゃんが作る元気茶の出番が来るかも知れないね。
苦みにのたうつロベルトの姿が目に浮かぶ様だけど、今夜はもう遅いからはぶあぐっない!(Have a good night)
よい夢を〜。
センブリ茶を飲まされる8歳児
| 厠厠| 堆肥場|
|獣車 厠厠| 堆肥場|
|倉倉箱 | 家家家家家家 |
|倉倉箱 |土家家家家家家家 |
|(※1) |間家家家家家家家 |
|家家家家家土 | 家家家家家家家 |
|家家家家家間 (※3) | 井木 |
|家家家家家 | ▓▓▓|
|家家家家家 | ▓▓▓▓▓▓▓|
※3の所に氷の部屋を作ってます。




