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今回のピラメキネタは魔法の水!

足りない魔法の水を貴方はどうやって増やしますか?


私以外の全員が事の大きさに食欲なんて吹き飛ぶ思いをしたけど、そこは育ち盛りと逞しい働き盛りの男性なので気合を入れて完食する。

私は父の邪魔なので自らマゼランお爺ちゃんの太腿を希望して移動し、エリザベスお祖母ちゃんから給仕をして貰った。


最初はぎこちなかった2人だけど、若い頃を思い出したのか。

直ぐに緊張が溶けてノホホンとした懐かしの嬉し恥ずかし新婚生活オーラに包まれたから、なんか同じテーブルなのに此処だけ別空間みたいになってた。


冷えた肉を食いちぎって飲み込む父や、少し冷めて飲みやすくなったスープを具まで飲み込んでる様子のセフメトの2人が、これから戦場に向かう戦士に見えたからそんな気がしただけかも知れない。


マドルスお爺ちゃんはマイペースに今まで食事を続けてたから、このメンバーの中では1番最初に食べ終わってたから、私達が食べ終わるまでのんびりとお水を飲んでたからね。

のんびりって言うか、何時もの自分を取り戻そうと頑張ってのんびりしようとしてる感じかな。


まぁ騎士が2人来ても大わらわになる村に、大群で現れる予言を聞いたら動揺するのは村人あるあるだから、こればかりは仕方がない。


まず食事を終えてマゼランお爺ちゃんはこれから長時間出払う事を給仕のお姉さんに話すと、夕方の仕込みをしておく様に弟子へ伝言を伝えて、聞こえない絶叫を挙げてるだろう弟子を残して皆が揃って店を出る。


そこから先に私達全員で村の靴屋に行って、これから銀板の靴を注文するから、後日足型をセフメトが1人で取りに来る話をつけたが。

この時ついでに父も銀板の靴を前金で2人分払って注文したので、靴屋のオジサンはもの凄く良い笑顔でニコニコしてて、それがなんだか面白かった。


靴は後日足型を取る予定のセフメトの分から優先して作って欲しいとお願いしても、機嫌の良いオジサンは空気を読んで快く話を聞いてくれたのだ。

顔には上客ゲット♪と、書かれてるんだろうなと察せられるぐらいだった。

そんな話の分かるオジサンには、セフメトを使って冬の話を切っ掛けにして弟子を増やす事を早目に伝えておこうと私は企んでる。

それは今後セフメトが独り立ちする時に、オジサンの靴を商品にする為だが、忘れないようにと私は籠の中でメモをとっていた。


村人からしたら服は中古品を買うのが普通なんだけど、今回は街の服屋に行って服を注文するんだそう。

何故急ぐかと言えば、いずれも作るのに月単位の時間が必要になるからだ。

しかも服は一回だけの訪問で終わらず、2回ぐらい行く必要が有るので、今回はエリザベスお祖母ちゃんが連れて行ってくれるけど、次からはセフメトが1人で行く事になる。


だからついでに商人ギルドに寄って行って、そこの知り合いの職員さんにセフメトの紹介もしてくれるそうだ。

何故ならセフメト一人では街に行けないので、お祖母ちゃんが馴染みの護衛を着けてくれる事になり。

だからついでにお祖母ちゃんの用事をセフメトにさせる為の顔つなぎだ。


お祖母ちゃんもセフメトの便利さに気付いて初っ端からこき使う気満々である。

流石商いで村の英雄になる女傑がする事に無駄がないなと、セフメトにはとても良い勉強になってると思う。

その為にセフメトを連れて行くお祖母ちゃん夫婦と私達はそこで別れた。

ドナドナされて行く子牛みたいなセフメトが面白くて、めっちゃウケたのは私だけの秘密だ。


この時突然姿を消す事になるスパルタンなお祖母ちゃん夫婦の、動揺する親族達や部下の聞こえない悲鳴も聞こえた気がしたけど、そこはもう独り立ちしてるんだから頑張れ!って言うしかないよね。


そこから私はお爺ちゃんと、籠を背負ってお父さんと一緒に錬成師屋さんに向かう。


「またいきなり数を増やすのねぇ〜」

「だって冬になったら森を拓くのに騎士や魔法師さん達が沢山来るんでしょう?

それなら薬は沢山必要になるから、原料が無いとお姉さんが困るんじゃないかなって思ったんだけど⋯要らない?」

「私が飲む訳じゃ無いから何でも良いけど⋯確かに今の現状なら私だけが作るなら原料は全く足りないわね。

だからそれは他所から持ってくるだろうとは思うけど?」

「じゃあ種も要らない?」

「⋯⋯ウーン⋯喉から手が出るぐらい欲しいわよ。

でもどうやって貴方の事を隠すつもりなの?」

「別にこの村で作ったなんて言わなきゃ分からないよね?」

「なるほど⋯流石ね。

仕入れを装って黒魔石からだと伝えて売り込めと言うのね?

しかも私は薬を作らずに稼げるの。

でも代わりに私の収入は減るのだけれど、それはどう思うのかしら?」

「その頃お姉さんは大浴場やら建設に使う資材を作らされてると思うんだけど⋯」

「た種!私買うわ!

なんなら誰にも渡さないで独り占めにするわ!

何も問題ないからじゃんじゃん作って持ってきなさい!」

「お水をたくさん飲むとお腹がタプタプになるもんね。」

「えぇ!

ありったけで宜しく頼むわね!」

「それが瓶はあっても魔力が限られてるから魔法の水が足らないの。

だから工夫しなくちゃいけないから、少し値上がりするけど良いかな?

今回が落ち着いたらのんびり育てたら良いと思うから、その時は値段を下げても良いんだけど⋯」

「う⋯ウーン。

まぁ仕方が無いわね。

良いわよ幾らにするつもりかしら?」

「種1つで今銀貨10枚だから、この期間だけ20枚貰うね。」

「宜しくてよ。」

「今回は取り敢えず大型透明錬成瓶100本と、透明錬成瓶200本だけど、状況に寄ったら私達家族が使う分を増やすつもりだから、その時はまた納品の時にでも注文するね。」

「えぇ承知したわ。

そうね⋯今から必要そうな資材の原料を集めるのに募集をかけたり、集めて作っておかなければ大変な事になるのね。

今日貴方が来てくれて本っっ当に良かったわ!!!」


顔にヤバかった!と、書いてるお姉さんが半分涙ぐみながら引き攣った笑顔でそう言ってた。

どうやら相当大変らしい。

そりゃ大量の建築機材をたった1人で準備して作ろうと思えばそうなるよね。


多分お師匠さんが他から弟子達を引っ張って来るとは思うけど、現場担当はお姉さんだから、1番働かないと白い目でみられちゃうもんね。

そこであらかじめ用意しておきましたけど⋯何か?

みたいにやったら周りからブラボー!って、なるからこんなにお姉さんはホッとしてるんだろう。


多分1人きりの仕事じゃ間に合わないだろうけど、そう先を見越して出来る限り行動してるのと、なにもせずにノホホンと当日現場に来て、てめぇこの話を前から知ってたんだろ!って、叱られてワタワタして絶望しながらデスマーチする事を思えば、それはもう断然に効率が違って来る。


普段なら村長さんからそんなアドバイスが事前に来てるんだろうけど、多分あっちはあっちでてんてこ舞いな気がするんだよ。


この村の村長だから新しい村の設計図を作ったり、それにかかる人や物の費用やら、今後村が負担する大型施設の建設費や維持費を魔王から聞いて形だけでも計算して領主に持ち込まないといけないんだもん。


その為の情報収集で、お祖母ちゃんにこの話が伝わったんだけど、自分が動いてるって事は相当追い込まれてそう。

大勢の騎士や魔法師達をこの村の設備やキャパで収納出来ないから、そっちも手配しなきゃいけないし。

パッと思い付くだけでも大変そうだよね。


仕事の段取りなんて経験を積まなきゃ新人が分かる訳が無い。

それでも仕事が出来る女アピールしとかないと、姫だから望まない結婚を押し付けられない為にも見栄を張るのが大変だ。

出来て当たり前の世界なんだろうね。

貴族の社会って怖いなぁ。


現場の苦労を知らないボンボンが頭だと、年単位で計画してやる公共行事なのに数カ月でヤレってぶっ込んで来る訳だ。

しかも強権。

不満があってもイエス!しか言え無いパワハラ上等な縦社会。


まだ理由の説明があっただけマシなのかは知らないけど、コレをあの宰相のお爺ちゃんやら先王様は、今まで支えて来てたんだね。

どうか末永く健康で長生きして欲しいと心から願うよ。

魔王マジヤベェ。

それでアイツ1人で勝手に動くようになったのか。

周りがグチグチ言うのに、その割にモタモタするから自分が動いた方が楽だし早いなってなったのかよ。


アイツ1人だけ頭の回転も速いし、仕事のスピードが突き抜けてるんだろうなぁ。

そりゃ周りはついて行けないわ。

配慮する気ゼロなんだもん。

むしろ察せないそっちが無能とまで思ってる始末なんだから、最悪じゃねぇか。


こんなパワハラ上司の居る所で働くの嫌なんですけど。

まぁ今回は対岸の火事なので、ノホホンと魔力草を育てて荒稼ぎをさせて貰うよ。

でも魔法の水をどうしようかなぁ⋯誰か私に魔法のお水を恵んでくれないかなぁ。


水瓶を売ってるお店に向かう途中、屋台で活きのいい声が響いてる。

どうやら置いてる獣車の所に行くのに、屋台の並んでるエリアを父と祖父が歩いているらしい。

私は一旦横に置いていた、ピヨ子の事を考えようと思ってたとこだったけど、肉の串を買う若い戦士の声を聞いた瞬間。

ハッと頭に閃きが走った。


途端にブルリと身体が震える。

何故私はコレを思い付かなかったのか。

むしろ何で忘れてたんだろう。

魔力を覚えさせる必要のあるウェブンの卵の育生にはコレは使えない。

畑の方も井戸水や小川の水の方が、麦の成長には良さそうに感じる。

そこは水のみで育つのか。

またはその水のみで育った麦と、現状の麦の性質を調べなくてはいけないけど。

取り敢えず今は水瓶を買うのは必要事項なので今の段階で焦る必要は無い。


でも魔力草は違う。

あれは私が現時点で栽培の最高率を叩き出せる効果を魔法の水で作ってる代物なのだ。


魔法の水よりも魔力が低いと思われる小川の水は利用に向かない。

井戸水の方は調べてみたら、そっちの方が優秀な気もするが、私が今思いついた案を運用出来れば、こっちの方が手間としたら破格に楽になる。


後は人材をどうするか。

情報も必要になる。

頭の中を猛スピードで新しい思いつきに必要な事を叩き上げて行く。

凡人の私はこれだからいけない。

お姉さんの事を笑ってられないと心から思う。

エリザベスお祖母ちゃんがさっきまでそこに居たのに、それを思えば二度手間も良い所になる。

ここはやはりセフメトとカタリナに任せるしか無い。

でもセフメトはもうこれから村の知り合いを回って話をして行く事になる。

夜はウェブンの雛の事も有るから、彼はもう使えない。

他の従兄弟を頼るべきだろう。


もしくはカタリナの伝手を辿るか。

これはカタリナに相談する必要がある。

報酬をどうするか。

甘いお菓子を作ればそれで釣られてくれないかな?

女の子は甘いものが好きな筈だよね。


回収をどうするか。

魔法の鞄は1つ余ってる。

それならマルセロでも持ち歩くのは簡単に出来るから、教会の帰りにでも回収を任せれば済む。

必要な物資は藁や紙でイケる?

そこはエリザベスお祖母ちゃんに相談するべきだから、まだ保留で良い。


イケる。


私は隙間を1つ1つ詰めて行くと、その確信を持って拳を握りしめた。


ピヨ子の事はとても大事なんだけどごめん。

今はこの天才的な思いつきの感動を堪えるのに精一杯なのだ。

むしろ自分のアホさ加減に絶望してるとも言えるけどさ。

決してピヨ子を蔑ろになんて思ってない。

脱税だって今年限りにする。

だから神様お願いします。

どうか金の亡者になった私をプチらないで下さい。


「お父さん⋯ちょっと話が有るの。

そこら辺の路地裏にでも入ってくれるかな?」

「どうした?」

「うん。まぁちょっとね。」


お爺ちゃんと2人で人気の無い場所まで移動して貰うと、魔法の水を調達する方法を相談する。


「まさかそんな⋯」

「エリザベスお祖母ちゃんの協力は必要だし、其処が駄目なら戦士達が寝る所に使う宿とかに個人的に話を持ち込むしかなくなるけど⋯」

「いやエリザベスさんなら乗るだろう。

だが人を雇うのか?」

「もう身内では無理だし。

翌日の午後まで魔法の鞄を預けてたら、教会に行くロベ兄ちゃんやマル兄ちゃんが帰りに持って帰ってくれると思うの。」

「子供にアレを持たせる訳にはいかん。」

「なら他に良い人居る?

お祖母ちゃんなら受け渡しをする時に配慮してくれると思うんだけどなぁ⋯お爺ちゃんのお店を使ったりとかさ。」

「むむむ⋯それは少し考えさせてくれ。」

「うん。でもこの方法で集めれば毎日魔法の水が届き放題になる。

そしたら銀貨10枚が20枚になってるから、元は取れると計算してるの。」

「あぁ、それは間違い無いだろうな。俺でもそうされたら魔法の水の1つや2つぐらい使うだろう。」

「そこで紙とインクが必要なんだけど、ついでに買って帰りたいの。

エリザベスお祖母ちゃんに見せる見本も欲しいし、直ぐに行動出来るわけじゃ無いけど、こつこつ作って置かないと⋯」

「それで呼び止めたのか。

水瓶を買う前で無ければ難しいと思ったんだな。」


基本的に籠を抱えた私と父と会話をしているけど、マドルスお爺ちゃんは素知らぬ顔で周りの警戒をしてくれている。


そして話が一段落すると、父と祖父は雑貨屋さんに引き返してくれた。

ウロウロさせて申し訳なく思う。

ごめんね。


そこで色付きインクの代わりと紙の束を銀貨10枚分ゲットする。

1枚が大きいから今回使い切れ無さそうだけど、紙は色々使うから全然余っても大丈夫。

色付きインクはかなり珍しいみたいで置いて無かったから、爪紅で代用する事にした。

前世のネイルと違って、木の入れ物に入ってる軟膏みたいになってる。

塗るための刷毛は別売りしてたので、一応それも買ってもらった。

爪紅は銀貨1枚で刷毛は銀貨10枚もした。

父が母が持ってるだろと渋い顔をしたけど、カタリナの分とゴリ押しした。


でもまぁ麦に色がつけば良いので、問題無いかな?

乾燥したら色移りしないから、多分大丈夫だろう。

純粋にカタリナの分じゃ無いけど、そこは赦して欲しいと思うよ。


それからやっと水瓶を3つ買おうとしたけど、馬車には2つしか乗らないのが判明したので1つだけ買い、後の2つは配達を頼んだ。

水瓶の代金は1つ銀貨10枚で、配達の手数料は銀貨1枚だった。

めっちゃ安い。


あと白いのが何かと聞いたら、水漏れさせないのと瓶を頑丈にするための塗り薬りだと言ってた。

原料は魔物の骨だってさ。

他にも入れてるみたいだけど、それは秘密だと笑ってた。

それはそう。

真似されたらほかの人も水瓶が作れちゃうからね。

そんな簡単な技術じゃ無いけど、土だけ固めて作っても強度が脆くて使えないらしい。


父が真面目に感心して、それは知らなかった。

勉強になる。

と言えば水瓶屋さんは気を良くして、遠くから旅商人がウチの水瓶を買っていくんだと自慢話をしてた。

どうやらウチに有る今回買った同じ製品は安いけど、ちゃんと高値で売れる水瓶も作ってるらしい。

それはこんな茶色と白に黄色が混ざった色では無くて、真っ白で美しい水瓶だった。

貴族の家で使ってるんだってさ。


それを聞いて父だけじゃ無くてお爺ちゃんまで、こりゃ驚いた!こんな綺麗なもんが村に有るとは、この年になっても知らん事が有るとは人生とは勉強の連続だな。コリやええもんを見せてもろうて冥土の土産になる!と、興奮したから水瓶屋さんはそれはもう鼻が高くなって上機嫌になり。

じゃぁ3つも水瓶を買ってくれたから、運搬費用はタダで良いよってサービスしてくれたんだよ。


なんか⋯元祖褒め殺しテクニックの師匠である爺ちゃんは流石だなと、私は籠の中で密かに戦慄してた。

コレ絶対にセフメトに教えとこ。

お爺ちゃんは素で驚いてたからウケが良かったんだとは思うけど、セフメトも自然にやれそうだから伝えるだけ伝えとこうと思う。


この辺りじゃ売れないだろうけど、その内王都や国外に行けばここの水瓶は大きな武器になると考えたからだ。

でも本当はこう言う判断をするのが商人の醍醐味なので、そこまでは伝えないか教材にするかは悩む所だ。


自分でこの価値を見抜いて欲しいとも思うし、普通に売ればただの白いだけの瓶なので、付加価値をつけて高く売る方法を教える事も大事だとは思う。

でもこの方法はやり方次第で身の危険も起こるから、それを思えば難しい所だ。


それを教えるには王都に連れて行ってこの瓶が幾らになってるのかを見せた方が早いし、なんならオークションが有るならそこに参加をさせても良い。

その時はこの鼻が高そうなオジサンも連れて行って教育して、さっさと子供に店を継がせてから、陶芸家にジョブチェンジさせたって良いと考えてる。

だって水瓶を作るのが好きだから、家業を継いでるんだろうからだ。

経験なら山程積んでるんだし、更に高みに登らせるのに必要なのは、芸術とは何かを感じさせれば良い。


なんなら白い水瓶がメジャーなら、この土の力強さを感じさせる安い水瓶を持っていって売らせた方が良いまである。

それにはポンと持っていって買ってくれと言うだけでは誰も買わない。


空間を水瓶だけの為に整えて、ちゃんと侘び寂びの感覚を感じられる演出が必要になる。

目新しさはそれがそれだけで武器になると、セフメトに伝えたいから今籠の中でメモを書いてる所だ。

ピヨ子はクークーと小さな寝息を立てている。


メモを書き終えてから、私は父の背中から降ろされて獣車の奥に置かれた。

籠に入ってるから背負ってたら危ないし、邪魔だからね。

これから水瓶を獣車に積み込むのに、邪魔になる絨毯やクッションも端に寄せられている。

まぁ水瓶は獣車のなかに積んだら魔法の鞄に入れるけどな。

馬車の中に積み込むのは、父と下っ端の従業員のお兄さんが手伝ってくれた。


私は大型ショッピングモールの構想を持ち出してたのに、村に住んでる職人達の価値を知らなかった。

モールとここの立場を明確に分けなければ共食いになる。

弱いのは金の無い客層を持ったこの中央に居る職人達になる。

それは駄目だ。

ここの人達は全員が宝物の原石みたいなものだもの。

本屋にしたって画家を雇って春画を描かせたら、向こうと此方とで差別化出来る。

若い戦士達は図鑑よりも可愛い女の子の絵のほうを買うだろう。


そうやって店と縁を繋ごうと思えば、父の時間を作らなければならない。

自分の幼さにため息が溢れる。

魔王もきっとこのもどかしさに、仮面をつけないライダーにならざるおえなかったんだろうか。


まぁ良いさ。

私は自分を改造する代わりに、私の手足を増やして行くだけだ。

少なくても後1月もあれば、従兄弟の子供達が2人やってくる。

私の手足として動いて貰う代わりに、好きな夢を追いかけられる様に色々と仕込んであげれば良いのだ。


そしてピヨ子に私は思考を戻した。

ピヨ子は賢い。

人の言葉を簡単にだけど理解出来るなら人間で言うと3歳児以上の知能を持つ事になる。


ピヨ子が自分はノインだと気が付いたら、ウチの家業を知った時どう思うだろう。

雌は卵を産まされるだけ毎日産まされ、その卵の大多数は人間が食べる餌になってる。

しかも雄は半年もして成鳥になったら殺されて人間が食べる肉になるのだ。

今回ピノの事を話していた時には気が付かなかったけど、瓶の中に閉じ込めて最後には殺されるピノを見たら、果たしてピヨ子は何を感じるだろう。


鳥だから理解出来ないとは、ピヨ子に限っては安易に考えてはいけないと思う。

私がピヨ子なら自分の将来を不安に思うだろうし、何とか仲間を助けたいとも考えるだろう。

その先に有るのは人間との生存競争になる。

ピヨ子がもし人間を敵だと認識してしまったら、私はこの手でピヨ子を殺さなくてはいけない。

甘えて誰かにそれを任せるのは、ピヨ子に対して無責任だと感じるからだ。


まだピヨ子の性別は分からないけど、もし雄なら本来であれば後4〜5か月で、ピヨ子は肉にされる存在なんだよ。

聖獣化してるから雄でも繁殖用として残せるけど、そうするとピヨ子が群れのリーダーになると言う事になる。


あ、雄だった場合の事考えずにピヨ子って名前をつけちゃった。え、どうしよ。

雄ならピヨ太郎になるんだろうか?

まぁ今更だからそれは良い。

私以外にこの矛盾は気が付かないだろうから。

いや待てよ。

ピヨ虎で良いんじゃない?

トラと書いてコって読むし。

よし成鳥して雄だと分かったらピヨ虎にしよう。

呼び方同じだから誰にもバレない。

これぞまさに完全犯罪ってヤツだ。

よし問題解決。


⋯えーとなんだったっけ?

あ、そうそうピヨ子だ。

自分が家畜だと理解したら流石に気分が悪いよね。

隠そうと思っても隠せるもんじゃ無いし、かと言って子供の頃にその真実を突きつけるのは可哀想。


いつか真実を知らせるとしても、どうやってピヨ子に説明したら良いのか。

それが難しい問題なんだよ。

私が苦しむのは自業自得だから、そこはどうでも良い。

でもピヨ子が悲しむのは、なんか違う。

その悲しむピヨ子の姿を見る事が私に与えられた罰なんだろうか。

ピノの事を利用しようと考えたのは私なのに、ピヨ子の気持ちを考えたら正直に言えばピノとか今はどうでも良い。

そこに手を出さなくても、魔力草を売ればお金を稼げるんだもん。


今回はもう頼んだ後だから仕方が無いし、靴屋さんには申し訳無いけど。

今日タルクス叔父さんがピノを連れてきてくれたら、一旦保留にしようかと思う。

私だけじゃどうしてもいい案が思い浮かばないから、明日になったら相談しよう。

そうしようと一応保留で思考に区切りをつけた。


水瓶が乗せられて、マドルスお爺ちゃんが荷台に登ってきて、それから父が獣車を発車させた。

中央から出る頃には、お爺ちゃんに籠から出して貰って人の視線を確認した後で水瓶を消して空間を広くする。


そしてゴトゴトと揺られながら、絨毯やクッションを元にもどして、お爺ちゃんと一緒にごろ寝した。

寝つきが悪かったけど、この後もずっと動かないといけないから、ピヨ子に顔を埋めて寝た。

エレガント米粒とかどうでも良かった。


ただ私に甘えてくれるピヨ子に私は甘えたのだ。

きっといつか別れの時は必ずやって来るだろう。

でも私はピヨ子と出会えた事で大事な事を沢山教えて貰ったから、例え悲しいお別れになったとしても今ピヨ子に癒されてる日々を、私は絶対に忘れないようにしようと思う。


でもピヨ子がいきむ気配を察したので、スッと木の板をピヨ子の尻の下に差し込む。

今回は尿だけかと思ったが、ダブルだった。

一応確認だけしてさっさと浄化すると、今度こそ安心して寝た。




リリアナはどうやって魔法の水を手に入れるか、もう分かってしまったよね。

答え合わせは次号です。

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