25
ピロリン♪藁からバージョンアップした!
ピヨ子はもうチクチクしないぞ!
私は今久しぶりに錬成屋さんに来ている。
ピヨ子は木箱に入れられた羽毛の座布団に包まれて、私の身体と布で固定された状態でスヤスヤと寝ていた。
私よりいい布団で寝やがってと言いたい所だけど、端切れ布で袋を作ってそこに羽毛や端切れ布や短くなった糸を詰め込んだごった煮みたい物なので、あんまり良くは無いかも知れない。
でも藁じゃ無いから前みたいにチクチクしないだけマシだと思う。保温性は良く分からないので、少しは暖かくなってたら良いなぐらいなもんだ。
そして私は姿を消して、お父さんが背負ってる背負い籠の中に座ってここに訪れてる。
私が勉強会に参加出来ない事は、お父さんが昨日知らせてくれてたから、お嬢さんも最初は驚いてたけれど。
私の失敗談を聞いて楽しそうに笑ってくれた。
米粒も見せてあげようとしたけど、「結構よ。」とピシャリと断られてしまった。
私の感じた悍ましさを是非分かち合いたかったのに、非常に残念である。
そして場が暖まった所で、満を持して私と家族の汗と労力の結晶をご披露しているのだけれど。
錬成遮光瓶から出したさっき回収したばかりの魔力草を見たお姉さんは「これは予想以上だわ!素晴らしくてよ!」と、最初は無邪気な笑顔を見せてくれたのに。
丸いレンズのメガネをかけた途端に、手にした魔力草を見下ろしながらプルプルと小刻みに震え始めた。
「な⋯なんですのこれ⋯」
「魔力草です。」
そんな事は知ってるわい!と、顔に書いたお姉さんは無言で魔力草を見下ろし、はぁ~〜とやたらと長いため息を吐き出した。
「これ一本で前に見せた魔力茸と同じ量の魔力が込められてるわよ。」
「つまりかなり良品?」
「驚いたわ。
此処まで違えばまるで別物よ。
見た目からして全然葉の輝きが違っていたから、気になったのだけれど⋯」
「だから魔力測定眼鏡で確認してくれたんですね?」
「そうね⋯まぁ10本を銀貨10枚で引き取る約束だもの。
適正価格になっただけで、貴方へのご褒美が減っただけになるわね。」
「それじゃあ、次からはそれより質を落とした魔力草を納品しますね。
その方が手間が減って楽なんです。」
「フ⋯そうなるわよね。
良いわ。今回は契約通り銀貨10枚で買い取りさせて頂くけれど、次からは同じ品質なら銀貨15枚で買い取りして差し上げてよ。」
「ホントに?!やったぁ!」
「あら?銀貨20枚にしなくて宜しいのかしら。」
「それだとお嬢さんの利益がかなり減りませんか?
質を考えても倍は流石に無いと思うんです。」
「そうね。魔力の含有量だけを見ればそうなるわね。
でもこの魔力草なら一本から買い取り出来るのよ。
その意味がお分かりかしら?」
「なるほど。質が良いから処理に必要な本数が減って、手間や消費する魔力が減るって事ですか?」
「ええそうよ。
魔力茸が好まれるのは錬成前の処理の少なさと、魔力の含有量にあるの。
どう違うかまでは説明出来ないのだけれど、10本が1本になる利便性を考えれば銀貨20枚でも欲しがる人がいても可笑しくは無いわね。
魔力草を使用しての初級魔水は、言っては悪いけど基本的には単なる義務なのよ。
初級魔水を作るだけなら魔力草の方がとても楽なの。
でも錬成師達が魔力草の買取を拒否したら、戦士ギルドが困るのよ。だからこれは義務として続いている錬成師の国への奉仕作業になるわね。」
「ほほう?でも魔力草と魔力茸で同じますい?がつくれるのに、その違いが分かるもんなんですか?」
「味が全く違うのよ。
回復する魔力の量は同じか少し魔力草の方が多いけれど、それは魔力茸を一本使用するのに比べて魔力草は10本使うから、それを思えば微々たる違いなの。
でも魔力茸から作った魔水には茸特有の香りと甘みはあっても、魔力草の様な葉物の香りと苦味が無いから違いが分かるの。
正直に言えば同じ魔水でも魔力茸から作った方が私の好みね。
同じ好みの人も多いのだけれど⋯量を飲んでると不思議と魔力草の魔水が飲みたくなってくるの。」
「つまり甘いばかりじゃ胸がムカムカして苦味が欲しくなると言う⋯『胃薬』感覚ですかね?」
「フフフ、その通りよ。
いぐすりが何かは分からないけど、苦味が欲しくなる時は大体そんな感じなのよ。」
「それなら私の魔力草はどうなんでしょう⋯苦味は有るけど子供の私でも飲めますし、作り方を知らないので何とも言いにくいんですけど⋯」
「⋯ねぇまって?
貴方は一体何をしてるのかしら???」
会話の途中で遮光錬成瓶から出した魔力草は、魔力の観察が済んだ後は直ぐに瓶に戻しながら会話を続けていたけれど、ジロリと睨まれてしまった。
「お茶にして飲みました。
だから味を知ってます。
今ウェブンの卵を育ててるので、担当した従兄弟が良く魔力切れの症状を起こしてるんです。
なので少しでも回復させるのに、魔力草を煮込んでお茶を作ってます。」
「あぁ⋯そう言う。
それで回復するものなの?」
「月の光を込めた水を利用しているので、今の所は効果が有りますね。」
「⋯はぁ。ねぇ貴方が作った魔水を今度持ってきて下さるかしら?」
「今回出荷したので早くても10日は必要になります。
あと使用した月の光はひと月ほど月の光を浴びせたものだったので、同じ物を作るのは可能では有るけれど手間と時間が必要ですね。」
「あぁ、なるほど。
そうなのね。
それを聞いて納得したわ。
貴方は私達が錬成師として使ってる魔法の技術が使えないから、その分を手間と時間で補うのね?
でもどれ程の魔水が出来るのか、味も魔力量も気になるの。だから時間がかかっても良いから貴方が良いと思う物をもってきて下さるかしら?」
「そうですね~。
まだ月の光の限界が分からないんです。
月の光を浴びる日数が1月と2月とで、どれだけ変わるのかが分からないので、良いと思う物をと言われたら、ちょっと悩みますね。
なので取り敢えず1日目の月の光の物と、1月の物は用意出来るので、それで比べてみては頂けませんか?」
「なるほど⋯、まだ研究途中だもの。そうなるのね。
それはそうよね。
この理論は貴方が発見してまだほんの3ヶ月だもの。
まだ1番長いもので月の光はひと月なのね?」
「はい。最初の頃は透明錬成瓶の数も少なかったし、利用していたので。
効果を確信して保存してる物がとても少ないんです。
なので安定して月の光の魔力の水を作るにはここ最近の話になるんですが、どうしても利用出来る範囲が広いので中々残らないんですよ。」
「何だかワインの話を聞いてるみたいね?寝かせれば価値が上がるだなんて面白いわ。」
「それが置くだけなら楽なんですけど、毎日毎日晴れた日は家の外に出さないといけないので、数が増えると大変なんです。
魔法の鞄を頂けたので出来る作業ですね。私は小さいので、一度に沢山運べないので。」
「そう⋯なるべく魔力草と月の光の研究は続けて欲しいから、無理のない程度にはして下さる?あと魔力観測眼鏡を用意しておくから記録はしっかり取りなさい。」
「えーと、色ですよね?」
「いいえ、それが貴方が理論を見つけた事で数値化した魔道具を完成させた人の作品が出回ってるのよ。
確か貴方がそうする様に言ってた筈なのだけど、覚えているかしら?
便利なので私も早速使ってるわよ。」
「あ、そう言えば有りましたね、あの研究の人の作品ですか。
言われてみたら前と少し違いますね。眼鏡の部分が同じなので直ぐには分からなかったです。」
「かなり便利になったわ。
微妙な色の違いを文章で表現するのがとても難しかったのよ。」
「それおいくらですか?」
「今は最新技術だから1つ白金貨10枚よ。でも倍の値段を出しても買いたい者が多いらしいから、更に値上がるかも知れないわね。
一度行き渡れば落ち着くでしょうけど、これは錬成に関わる全ての人達が欲しがるものだから、恐らく白金貨10枚より下には中々値段が下がらないわよ。」
「うーわー⋯」
「今研究者としての権利の保護と、需要の高さとの兼ね合いでお父様も苦労されてるわね。
使う者からしたら設計図を早く公表して欲しいけれど、こればかりはねぇ⋯。」
「そうなりますよね。
なら作る人はとても大変でしょう。」
「ええその者の実家の領では、直轄の上級貴族を巻き込んで、総力を上げて全力で作らせているわね。貴方は功労者だから最優先で作って貰えるわよ。」
「残念です。お金が足りません。色々と使ってしまいましたから⋯」
「あら、何を言ってるのかしら。貴方保留になってるけれど強化魔石と人工魔石が有るじゃ無い。研究内容が公表出来ないし、1人の人間が出来る研究でも無いから国が買うわよ。
簡単で良いから論文を私に出せば、直ぐに評価して貰えるわよ。
黒魔石3つは硬いんじゃ無いかしら?」
「ふわ?!」
「は?」
「ウフフ!黒魔石が、黒魔石を稼いでしまったわね。」
『ええぇぇぇーーーー?!』
まぁうん。
適正価格かは分からないけど、でもなぁ。
技術が秘匿されると言う事は個人的に作ってはダメになるんだろうから、それってどうなんだろうか。
その辺は要相談だな。
だから黒魔石複数個分の報酬なんだろうしね。
今のうちに作りまくって置こうと心に誓った。
もうすっかり全てが終って帰る気満々だったけれど、まだ花があった事を思い出してそれをお嬢さんに伝えた。
先ほどと同じ様にお姉さんは花付きの魔力草を取り出して。
「まぁ⋯素敵ね。」
と、嬉しそうな感動してる様な微笑みを見せてくれていたのに。
「ふ⋯私知ってましてよ。
もうこれぐらいでは、何も驚かないわ。」
「つまり?」
「⋯先の魔力草は魔力茸と多少の数値は高くてもほぼ等価でしたのよ。
この花のついた魔力草は更に倍以上の魔力を保持していますわ。下手をすれば全く別の素材になりますわね。
何せ自然界で花付きの魔力草だなんて、中々見つからない代物ですもの。
これだけで本来なら金貨1枚以上の価値はありましてよ。」
「はいーん?」
「でも、貴方ですもの。
それぐらいではもう、私は驚かなくってよ!オホホホ!」
「驚かないけど壊れるんですね。それほどですか。」
「残念ながらこれからその希少価値は衰えるのでしょうけれど⋯今の時点では製造方法が知られてるせいで銀貨30枚が妥当になるわね。でも最新の知識で作られた素材ですもの。
今すぐ研究目的で利用したい者なら天井知らずになるわよ。
下手したらこれだけで貴方一財産稼げるわね。栽培方法が公式に出てしまっているから、なんとも難しいでしょうけれど。
でもあれは魔力の水だけで作られた物でしょう?月の光の魔力の水は秘匿されてる様な状態ね。
それなら先に権利を登録するのに早く論文を出しなさい。
ギルバートから完成間近と聞いてるわよ。
貴方の理論を聞けば同じ研究をしてる者はきっといるわよ?」
「わかりました。大至急論文を完成させます。そして種と一緒に持ってきますね。」
「そうですわね。もし論文の提出が同時期だとしても、理論を見つけた貴方に発表を先行する権利はありましてよ。
使用したい者からすれば、なるべくお安くして頂きたい技術になるわね。」
「そりゃもう最安値の銅貨1枚で良いんじゃ無いですか?
基礎の基礎になるから、広めた方が錬成師界の発展に繋がるでしょう?」
「はぁ~貴方ってホント困った人ね。まぁ銅貨1枚はともかく、その心意気は同じ錬成師を目指す者としてとても美しいと思うわ。
貴方は流石世界の黒魔石ね。
末永くウェスタリアの黒魔石でいて頂きたいわ。」
と、言うことで銀貨50枚ゲットだぜ!ひゃっふう♪
そして黒魔石3つは硬いと言われて少し喜んでたが、確か私。それぐらいの借金が魔王にあったと思い出してガックリと肩を落とした。
まぁ魔王の手数料分はそれでチャラにして欲しいかな。
なるわけねーか。
だったら借金返済で黒魔石を2個返して、あとはボソボソと別の研究で返そうと思う。
それはそうとして、お父さんにお願いして近所のお店屋さんに寄ってもらい、銅貨10枚前後の商品を買って銅貨に両替して貰う。
目当ては銅貨なので、買うものはお父さんに任せてある。
会話からしたら、靴屋さんで革の靴紐を買うついでに皮の鞣し方をどうしてるのか聞いてくれた。
セフメトにも頼んでいたけど、他にも沢山お願いしていたのでまだそこまで辿り着いていなかった。
なので私も籠のなかで、フムフムと聞いているのだ。
戦士ギルドでは魔物を解体した後、油などを軽く処理したものを、革を扱う職人や専門の鞣し職人に売っているのだそうだ。
靴屋さんも戦士ギルドで皮を買ってるらしい。
この靴屋さんは戦士や農民相手の商売がほとんどなので、兎の皮は注文が無ければ殆ど取り扱わないそうだ。
戦士ギルドで聞けば、兎の皮を買う旅商人も居るんじゃ無いかといったアドバイスを貰えた。
村では買うものは中々いないが、外をあまり出歩かない女性や幼い子供なんかは、柔らかい兎の皮を使った靴を履くらしい。
罠を使うつもりなら毛皮に傷がついて無いから、その方が喜こんで買ってくれるかもなと教えて貰った。
ついでにウチでも品を見たいから、持ち込んでも良いよとも言ってた。
量は買えないけど、偶にしか買わないから少し在庫を残す分には買い取れるとの事だった。
お父さんが商人を目指してる甥が居るので、修行がてら連れて来て顔つなぎをさせて欲しいと、笑いながらスルスルと話を持っていく。
それならいい靴を作ってやるから、独り立ちの前に金を貯めて買い取れよと、売り込みもされてしまったが、こう言うのがWin-Winと言うヤツなんだろう。
向こうは質の良い毛皮付きの皮が手に入り、こちらは質の良いシッカリとした靴が手に入るのだ。
お父さんも乗り気で、うちにはまだ幼いが息子もいるので、独り立ちする前には注文をさせて欲しい。
どれぐらい前なら良いものが作れるかとか、金を貯めたいから幾らになる?とか。
前のめりになって話しを聞くものだから、靴屋さんも嬉しそうにしてた。
ちなみにこの店の本気の靴を飼うなら小金貨1枚だそうだ。
でもそんな注文は腕の良い戦士か、金持ちな旅商人ぐらいしか持ち込まないので、まず作る機会が無いそうだ。
普通の良い靴が欲しいなら、銀板10枚も有れば充分だとも言っていた。
農民は銀貨5枚ぐらいの安い靴を履き潰すまで履いてるが、足元がしっかりすると身体も楽だぞとお父さんの足元を見てそう言っていた。
確かに銀貨5枚(5万円)は履き潰すまで履くよと私も同意するが、若い未熟な戦士でも同じか少し上の靴を買ってるそうだ。
お父さんが知らなかった、勉強になると真顔で言えば、靴屋さんはそれはもう得意気で嬉しそうにしてた。
今持ち合わせがないが必ず靴を注文に来ると言うと、それなら足形を作っておいてやろうと足の形まで測定されてしまい。
最後には兎の売り込みでは無くて、靴屋さんに取り込まれて注文してたので、私は爆笑しないようにするのが大変だった。
私は靴屋さんの本気の靴が見たかったので、小金貨の靴を注文して欲しかったけど、お父さんは銀板10枚の靴を注文していた。
子供は足の形が変わるので、買うなら成人になる3ヶ月前に注文しに来るように言われたからだ。
あと本気の靴を作るのには1年掛けるそうだ。
これは季節で革の柔らかさが変わるので、どうしてもそうなるらしい。
あとこの店では実用的な品物を売りにしてるので、お洒落目的の靴が欲しいなら街の靴屋さんに行かないと、作れない訳では無いけど同じ料金を払ってもやはり向こうの方が良いぞと。
靴屋さんも商売気じゃ無いミニ知識まで教えてくれた。
畑仕事が終わったらどう手入れすれば長持ちするとか、雨の日はどうするとか。
新しい靴を履いて見て気に入ったら靴をもう一足増やして毎日履き替えた方が、長い目で見たら一足づつ履き潰すよりも長持ちするとか⋯。
足形を取りながら靴屋さんがミニ知識の大盤振る舞いをしてくれてて、私も退屈しなくてとても楽しかった。
ピヨ子の事を忘れてたので、鳴かないでくれて本当に良かったと。
店を出て鳴き出したピヨ子に慌てて、お父さんが路地裏に走って向かい。私も慌ててローブを脱いでとワチャワチャしながら対応して、落ち着いた頃にそう思った。
銅貨の両替目的の買い物は、本来ならマナー違反なので1軒だけでやめておく。
靴屋さんも革紐を買うのに銀貨をだされて笑っていたが、兎の取引がてらの買い物だとでも思ってくれた様だ。
そのうちカタリナやマルクスの銅貨が貯まれば、それを銀貨に両替するつもりでいる。
そう我が家は今銅貨不足になってた。お小遣い制度のせいだ。
お嬢さんのお店でも初級回復薬を一本買ったので、銅貨50枚ゲットしてる。
ピヨ子の話をしたから深く突っ込まれなかったけど、中級回復薬を勧められてしまい。
それは種を売るときに考えますと、誤魔化して逃げた。
いや欲しかったんだけど、それされるとちょっとね。
今回の稼ぎが全部吹き飛ぶのは少し悲しいからさ。
次からはしっかり稼ぐから、もう少し待って欲しい。
金は有るんだけどね?
でも変な拘りかも知れないけど、1番最初に買う中級回復薬は私が自分で稼いだお金だけで買いたかったのだ。
多分次からは気にしないだろうから、ホント謎の拘りだと我ながら思う。
「⋯黒魔石かぁ~⋯」
「ん?」
「いや⋯そんな物貰った所でどうにもならんぞ⋯」
薄暗い裏路地で店の壁と籠下ろしたお父さんが中を覗く形で自分の身体で隠す様にカモフラージュしてくれていた。
四苦八苦した後にピヨ子に米粒を食べさせてたら、お父さんが沈んだ顔をして私を見下ろしながら呟く。
「あ、それね。
2個は王様に返すよ。
実は事情があって遠くの国にちょっとだけ行く必要があってね?
王様も私も時間がないから、早く用事を済ませるのに魔道具を作ってくれたんだけど。
それを作るのに黒魔石を2個も使ってくれてたみたいなんだよ。
王様は私に支払わせるつもりは全く無かったみたいなんだけど、私の用事もあったし。
なんか悪いじゃん?
王様は他にも色んな物を使ってくれてたから、お金を稼いで黒魔石2個ぐらいは返そうと思ってたんだよ。」
「はなしがよくわからないんだが?」
「まあ、お父さんは気にしなくても大丈夫な話だよ。
むしろ聞かない方がいい奴だね。
だから黒魔石は1つ残るけど、お金としてじゃ無くて私が魔道具を作る時とか、もの凄く高い物を買う事が有るなら使うけど、気にしない方が良いと思う。でも魔力量の測定眼鏡は研究に必要みたいだから、最後の黒魔石も王様に買い取って貰っても良いかもね。」
「⋯黒魔石のことは気にしなくて済むのは有難い話だが、親が聞かなくて良い娘の話なんかないぞ。」
「まぁそうなんだけどさ。
私が見つけた1番最初の理論を使うと、ヤバい国が更にヤバくなりそうだったから、その国を滅ぼしてきたの。」
「は?!」
「とは言ってもお話をしてきただけだよ。それに滅ぼすのは国じゃ無くて国の方針なの。
その国は軍隊で他の国を攻撃して土地に毒を使って作物を取れなくしたり、お金を奪ったり、その国の民を奴隷にして、ろくな食物も食べさせないで下働きに使ってたんだよ。
だからそんな迷惑な国が、新しい理論を使った方法で、大勢の人を殺せる技術を開発したら困るよね?
それで王様が色々としらべて魔道具を作ってくれたから、私がそのやり方だと国が滅びちゃうから危ないよってその国の民全員に教えてあげたんだよ。
だから今頃ワチャワチャして、向こうは大変だと思う。
日頃の行いが悪すぎるから、まぁ自業自得かな。
盗賊の親玉が王様じゃ、そうなるよね。
運が良いのか悪いのか分かんないけど、周りの国を虐めてたせいで貧しい国に囲まれてたから、ウェスタリアから比べたらかなり魔法や錬成師の技術が遅れてたんだよ。
荒れて物騒になった国を旅商人が通れないもんだから、知識や技術も届かなくて自然とそうなっちゃったの。
放っておいてもいつか滅びる国だったんだよ。
私と王様はそれを少しだけ早めただけなの。
でもお父さんが知っても知らなくてもウェスタリアはあんまり関係無いんだよ。
その国はこの大陸の1番東にあるから、本当なら滅びても滅びなくてもまず関わる事も無いぐらいに遠いの。
今回は王様が全力出したから行けただけなんだよ。
盗賊の国の周りにいる人達に、迷惑かけるのが嫌な私の為にしてくれた事だから、使った黒魔石分ぐらいは返さないと、王様は損ばかりになるからさ。」
「⋯話しが大きすぎて聞いてもよく分からんが、まあ悪い国を倒してきたってことか?」
「うん、そうなるね。」
「お前や王様1人でか?」
「うん。元々滅びる予定の国だったからね。」
「何故その国は元々滅びる予定だと分かるんだ?」
「日頃の行いが悪いからだよ。お父さん、家に押し入られて畑に毒を撒かれたりしたら腹が立つよね?しかもお母さんや私達全員が拐われて死ぬまで酷い事をされちゃうんだよ。
お父さん1人なら倒せなくても、教会の人達が皆に声を掛けて力を合わせたら、その盗賊と闘えるよね?
その盗賊の国はそういった人達と戦って負けてたんだよ。
それなら他の国の人達も、皆が力を合わせたら倒せるんじゃ無いかと思って隙を見てたと思うんだけど、どう思う?」
「ふむ。なるほど、それで自業自得なのか。じゃあ何故リリアナが話をすればそれが早まるんだ?」
「その盗賊の国の人達は親からずっとそれが正しいと教えて育てられて来たから、何か変だな?って感じてたのに悪い事だと思ってなかったんだよ。
だから私がそれは悪い事で、そのままだと周りの人達から攻撃されちゃうよって正しい知識を教えてあげたのよ。
だからちゃんとした人達はヤバいと思って、国のあり方を変えてくれようと頑張るけど、自分達が楽でお金もちな生活をしていたい身勝手な人達は、国が変わると贅沢出来なくて困るでしょ。
だからそんな人達が国の中でバチバチしてると思うの。でも小さい子供は関係無いから、そんな弱い人達は今頃教会に駆け込んでると思うんだよ。そうなると国の仕事をする人が減るから⋯て、お父さん。分かってきた?」
「⋯うむ。そうか。正しい生き方を説明しただけで滅びるぐらい、その国は酷かったんだな。」
「私一人が街角で喋っても何も変わらなかったと思うけど、王様が国の民全員に私の話しが届く様にしちゃったから⋯」
「それは王様が1人でやれば良かったのでは?」
「それは逆にダメな事だよお父さん。
王様が他人の国を攻撃すると、それはウェスタリアが攻撃したのと同じことになるの。
だから私がするしか無かったんだよ。
王様と私では立場が全然違うからね?
でも王様も途中からそれに気がついたみたいで、王様は自分個人として私に協力してた事を向こうにバラしちゃったの。
だからウェスタリアの王様だってバレたら、後からきっと色々と面倒になると思うんだけど、そしたら私よりも王様に注意が向くでしょう?
だから王様は自分がしんどくなっても私を守るように頑張ってくれたんだよ。
そもそも王様は盗賊の国に関わる理由なんて何も無かったの。私が自分のせいで周りの国の人達が迷惑すると考えたからした事だよ。
なのに王様1人に丸投げなんて出来ないと思わない?」
「⋯そうか。⋯そうなんだな。」
「私が見つけた事は大勢の人達を幸せに出来る知識だけど、使い方次第では大勢の人達が迷惑するものでもあるの。
ナイフは野菜を切ったり解体するのに使う道具なのは皆知ってる事だし便利だよね?
でもお店の人を刺してお金を奪う事に使われたら迷惑でしょ?
わかるかなぁ〜?」
「うむ。やっと飲み込めた気がする。
そうだな。知識と言うのは使う人次第で良い使い方や、悪い使い方が出来るものだな。
そうか。
だから悪い生き方しか知らなかった人達を、リリアナは正しに行ったのか。
そして王様は協力してくれたんだな。俺には出来ない事だったから。
⋯有難い話だ。」
ピヨ子が完全に沈黙したので木箱に収めて、複雑な顔をしているお父さんが布の端っこを背中で結んでくれた。
そして私がローブを着ると、お父さんは籠を背負って立ち上がった。
お父さんが私に言えずに呑み込んだ言葉が少しだけ切なかった。
優しくて賢いお父さんを傷つけたのを自覚して、とても気持ちが沈み込んだ。
私はとても悪い子なので、私がした事は実績のある立派な戦略であり、また混乱した国で何が起こるのかも大体予想しているのに実行している。
それも自分の身勝手な理由でだ。
それをお父さんに知られたく無くて隠しておいて、更に今は誤魔化して少しでもソフトに伝わる様に説明した。
狡猾で残忍で悪辣なのもちゃんと自分で自覚しているのだ。
子供だから狡猾で残忍で悪辣なんだと言いたいが、残念ながら私は産まれた時から私なので、きっと死ぬまで私でいるに違い無い。
そんなものの親になる不幸を嘆かれても、私には何も反論出来ないだろう。
私はボトボトと大粒の涙をこぼしながら、籠の中で揺られていた。
お父さんはあれからずっと無言のままでいる。
それは私を隠す為にしてるいつもの事なのに、怒っているのか傷ついて悲しんでいるのか。
呆れて見捨てられたかもしれないと、ふつふつと込み上げてくる寂しさに唇を噛む。
こんな時にピヨ子はスヤスヤ眠ってる。
胸元にじんわりと伝わる生き物の温もりが、今の私の細やかな慰めだった。
気が付いたら泣きつかれて眠ってしまい、気配に気付いて上を見上げれば、困った顔をしたお父さんが見下ろしている。
「リリアナ。
お前は自分が悪い事をしたと、ちゃんと気が付いてるんだろう?」
「⋯うん。」
「リリアナは何が悪かったと考えてるんだい?」
「⋯行動する前に、お父さんに言わなかったこと。
⋯ずっと黙ってようとおもって隠してたこと⋯。
巻き込んではダメな人なのは分かってたのに王様を利用したこと⋯。」
「⋯ほかには?」
「ない。」
「⋯ふむ。
じゃあリリアナ。
放っておいても滅びる国だったのに、何故お前は滅びをわざと進めたんだ?いや、違うな。
周りの国の迷惑になる危険な知識なのは分かった。
だから早目に滅ぼした方が良いと考えたんだろう?
でもどうしてそれを自分で1人でやろうと考えたんだ?
王様も途中まで理由は分かって無かったんだろうが⋯彼はお前1人が実行出来る様にしてくれただけだろう?
だから途中でそれが駄目だと分かってやり方を変えた。
俺にはそう聞こえたんだが。
前の時の様に俺たちがするんじゃいけなかった理由は何だ?」
「⋯私には責任があるから。」
「責任?何の責任だ?」
「新しい知識を見つけて広めたら、良いことも有れば悪い事が起こるのは、少し考えたら分かったから。
もっと早く気がつければ良かったんだけど、私は知識が少なくて大事なのは分かったけどあやふやな感覚だったから、どんな悪い事が起こるかまでは最近まで分からなかったの。
でもそれが分かってしまったから、私がやらないと駄目だと思ったの。
何故なら私が見つけて、私が納得して広めるのを許した知識だったから。」
「⋯でもそれは1人で出来る事では無いし、してはいけない。
知識と言うのはとても広く伝わるものだから、それでいちいち何か問題が起きれば、リリアナは何も出来なくなるだろう?
確かにリリアナが見つけて、リリアナが広げるのを許した知識なのは俺も知ってる。
でもそれを自分1人の責任にするのは大きな間違いだ。
そうだろう?
リリアナならそれは分かっていただろう?
ナイフを作った人が、人が刺される度に謝れるかと言えば、それは出来ないし、責任を感じるのもおかしな話だとは思わないか?」
「⋯うん。」
「リリアナならそれが分かるのに、どうして自分1人でやったんだ?」
「⋯国を滅ぼすのは悲しい事だから。その人達が間違ってたからそうなるんだとしても、その国で生きてた人が全員悪い人なんかじゃ無くて、教えた人達や知識が悪かっただけなの。
気が付かなかった人にも責任が無いとは言わないけど、流されてしまうのも罪だと思うけど。
でも⋯」
「リリアナ。それはお前が1人で行動する理由になってないよ。話しがそれて来てるから戻しなさい。」
「う⋯えと。1人で出来ると思ったから⋯」
「出来ないのを知っていたはずだよね?リリアナ。」
「ううぅ⋯えーと、その。」
「また、誤魔化そうとしてるね?ちゃんと言ってご覧?」
わは!ヤバい!
普段怒らない人が怒ったらマジでヤバいってこれか?!
頭の中が混乱して良い言葉を探したいのにグルグルしてるから真っ白になってる。
「⋯皆を巻き込みたく無くて、あの、私は家族の騎士なの、で⋯」
「はぁ~⋯。」
「うう⋯」
メッチャ大きなため息をつかれた。
ため息でダメ出しされると辛いんですが?!
「今回は自分だけで出来ないと考えたから、王様に手伝って貰ったんだろうが、1人で出来る事ならお前はたった1人で危険な事に飛び込んで行っただろうね。
それはこの前1人でここに飛んで来た王様と同じだと思わないかい?」
「はわー?!」
あんなバカと一緒?!
え?類友?!
マジか!ヤベェ、いつの間にか私、魔王に汚染されてる?!
「ぷっ⋯いや。うんんっ。
その表情が何かは聞かないで置くけどな。
お前が今回本当に悪いと思って反省するべきなのは、1人で危険に飛び込んだ事だ。
俺も中々リリアナの話を聞いてやれない事もあるが、危険だと思う事なら尚更隠したらいけないよ。
王様と同じと言われるのが嫌なら、彼の悪い所を真似しては駄目なんだ。
分かるかい?」
「⋯はい。」
「お前が家族を守りたいのと同じで、俺も皆もお前を守りたいと願ってるんだ。どうかその思いを踏み躙らないでくれるかい?
王様を心配して叫んでたあの人達みたいな思いを、俺たちにもさせないでくれ。」
「うぅ⋯はい。
ごめんなさい。
本当にそれはもう⋯」
籠の中で丸まって土下座したら「ぶっ」と笑われてしまった。
でも見上げたら、怒ってるんだぞ?のポーズで困った顔を頑張ってキープしてるお父さんに心からホッとして力が抜けた。
そしたらまたブワッと涙が込み上げて来て、ポロポロと鼻水と一緒に目や鼻から溢れ出す。
「ほら、反省したなら良いから。もう泣くな。」
「ゔん⋯」
最後には籠からみょーんと抱き上げられて、片腕に乗った状態でヨシヨシと頭を撫でて貰えた。
馬車は鳥小屋の近くに有る藁置き場を改良して作ってあったので、本当なら帰り道にバッカスの様子を見るつもりだったのだけど、泣いててそれ所じゃ無くてウッカリ忘れてた。
それよりも今は背中をポンポンしてくれるのが嬉しくて、私は全力でお父さんに甘えていたのだが。
「⋯リリアナ。1つ相談が有るんだが⋯」
少し罰が悪そうに苦笑を浮かべたお父さんの話とはこうだった。
思ってたより魔力草が高値で売れたから、それを家業にするのはどうかと言うお誘いだ。
それは私も考えていた事なので、今の時点で抱えてる問題をお父さんに伝える。
「まず魔力草は夜しか外にないから、昼は空き地になるでしょ。すると周りから目立っちゃうんだよ。
あとお父さんも知ってると思うけど、魔力草は隣同士で育たないから、少し距離を離さないといけないの。
今なるべく近くにあっても育てらる様に考えて実験してるけど、大人1人分は離さないと駄目なんだよ。
最後の問題は倉庫が必要なこと。壁は布でも良いんだけど、朝日が登る前に避難さられる場所が必要になるの。
魔力草が生えてる状態では魔法の鞄に入らないのと、それを運ぶ労力をどうするかが問題なんだよ。
最低10本を横並びに並べられたとして、持ち上げて倉庫にいれるのってかなりの重労働になるよね?
あと水の入れ替えも数が増えれば大変になるでしょう?
これらの問題が解決しないと、家業にするには難しいと思うの。」
「だが今は10日あれば発芽から銀貨15枚で売れるまで育つだろう?それなら税に必要な畑を除外しても、空いた場所で充分育てられるよな?
それなら目立たないし、余裕を見ても1月銀貨30枚なら半年で銀板1枚と銀貨80枚になるから、大儲けだぞ。」
「それは魔力草だけの日数と本数でしょう?種を作るには倍以上の日数が必要なんだよ。
つまり23日かかるのね?
花も売れるし、種も栽培に必要だから10日で出荷出来る魔力草とは別に花と種用のが更に10本必要でしょう?」
「なるほどな。余裕を見て1月で種20〜30個は要るのか。」
「今種は魔力草一本で15個の種が最低数作れるけど、種は甘いし魔力も多く含んでるから、かなり有能な素材なんだよ。
だから下手したら魔力草よりも需要が有るかも知れないんだよね。
ウェブンの事を考えたら魔力草は欲しいから、欲を言えば出荷以外でも使えるように魔力草は30本育てたいの。
そうすると種欲しさに10本育てたいから、花と半分半分と考えても40本。つまり4つ横に並べて育てたいんだよ。
そうなると倉庫が大きくなるから、上下に重ねて2つ入る大きさの倉庫って無理だよねぇ。」
「一本につき大人1人空ける必要があるなら厳しいな。
家を元に考えても4本が限界か。だが上の空間を使えるなら8本、横でと考えると⋯32本が限界か。重さは大変とは思わないが、保管場所は確かに困るな。」
「問題はその重い物を高さ大人1人分持ち上げる必要があるのがなぁ⋯お父さんみたいな大人じゃないと、子供には無理だよ。
連成瓶も月の光を入れる為に特注で王様が作ってくれたけど、犯罪予防の為に1メートル超えの瓶は本当なら作れないらしいよ。」
「うーん⋯木箱は駄目か?水をどうするかだが⋯」
「移動させずに済む方法を今考えてるんだけど、せめて距離を大人半分以内に縮めたいんだよね。多分月の光の日数や交換回数を増やせば行けそうで、大きな箱の錬成瓶を特注したんだよ。」
「麦を作らずとも農家と認められれば、税を金で払えば済むんだが⋯」
「うちが鳥一本にしないのはそれが理由?」
「うむ。
畜産になると税が高くなるんだ。魔力草は植物だが食い物じゃ無いだろう?それで農家と認めて貰えたとしても、税を金で払えなければ数を用意するのもなぁ〜。
魔力草は日が短いのが厳しいな。」
「そこは村長と相談だね。
布でも木でも良いから大型の屋根の無い木枠の倉庫を作って、朝は上に登って布や藁で覆うか、魔道具を使って日陰を作るかして、夜はそれを取り払えば月の光を当てられるでしょう?」
「屋根が無いのにどうやって布や藁を乗せるんだ?」
「網を使うんだよ。縄を網目の大きい網籠みたいにして、柱の上に並べたら上に布や藁を乗せたら屋根になるよね?」
「雨の日をどうするかだな⋯」
「そうなんだよねぇ。晴ればかりじゃ無いし。でも自然の魔力草は雨にも打たれて育ってるから、そこはあんまり気にして無いんだけどね?
でも水の入れ替えは必要だと思う。」
「確かにそうか。魔力草は自然の植物だったな。
今は家のなかに入れてるから雨に当てないようにしているが⋯」
「当たって問題が出るかだよね。今までも小雨に当たってた時もあるし、今の所は大丈夫だけど、それは経験してみないと分からないかなぁ。」
「先ずは村長に話を聞いてみよう。」
「え?あ、代理人さんの事かな?」
「うん?」
「村長さんはお姉さんのお師匠さんだから貴族だよ?」
「え?!そうなのか?」
「うーん⋯これは秘密だったのかなぁ?」
「う⋯聞かなかった事にする。」
「まぁ麦を魔力草に変えても問題無さそうなら、本格的に倉庫も考えるが、今なら40本ぐらいならそんな設備は要らないだろう?」
「家族みんなでやったら直ぐに出来るよね。お父さんが麦の方に持っていかれるから、大変なだけなのかなぁ?」
「俺もそう思う。
まあ今年は植えちまってるし、人手も増える。目立たない事を考えれば両立は出来るだろう。
俺が学校にいる間、兄貴の負担を考えたら何とかしてやりたい所だけどな。」
「鳥もウェブンを育てるのが案外大変そうだから、バック兄ちゃん1人じゃしんどそうだし。
セフ兄ちゃんは商人の修行が有るもんね⋯」
「でも姉さんが戻ってくるし、孫も10歳と8歳なら労力になる。それにワックスが戻るのがデカい。しっかり者のアイツなら俺の留守を守れるだろう。」
「確かに。カックス叔父さんも来てくれたら良いけど、難しいかなぁ?」
「向こうの家庭の事情が有るだろうからな。それにもし来られても済む所がな⋯」
「そこはエリザベスお祖母ちゃんの宿でしょ。」
「費用が大き過ぎやしないか?」
「そっかぁ。
家を建てる方が実は安い?
向こうに戻る事を考えたら、倉庫兼借宿みたいに出来ない?」
「あー、なるほど。そう言う使い道も考えると畑を少し潰して家を建てるのは有りか。」
「畑を潰すのはなんか勿体ないね。」
「どちらにしろ、規模を増やせばそうなるさ。」
「まぁねぇ〜」
そんな事を話しながら歩いてたらあっという間に自宅で、何なら自宅の前で畑を見ながら話し込んでた。
この長閑な光景が変わると思えば少しセンチな気分にもなるが、言っても魔力草だからね?
鉄筋になる訳でも無いから、そこまで凹む事も無かった。
「さて、魔力草の事も大事なんだけど早く卵孵す様の道具を作らなくちゃ。」
「ん?まだ魔道具が買えてないんじゃ無かったのか?」
「保温できるのはまだ買えてないよ。でもお湯を沸かすだけの安いのは買えたんだよ。
だから今日完成させようとおもってたんだけど⋯水がねぇ⋯」
「あー、昨夜のアレか。
バッカスが出さないと駄目なんだったか。」
「まぜてどうなるかが不安なんだよ。1人ぐらいなら別の人の魔力の水を使っても良いんだけど⋯飼育の事を考えちゃうとさぁ〜今1番魔力の有る人ってお父さんなんだよ。」
「ふむ。なるほどな。
なら父さんはどうだ?」
「それしか無いよね⋯。
でも孵ってみないとどれだけ負担になるか分からないのがなぁ〜⋯」
「まだイケるだろ。」
「そう?うーん⋯じゃあ今夜お爺ちゃんに魔力の水を出して貰おうかな。」
そうなのだ。
ウェブンの卵が20倍ほど大きいせいで、鍋の大きさもかなり深くなり、魔力の水の量が当然増えた。
今バッカスは魔力不足になりやすい状態なので、今少しづつ錬成瓶に溜めてる所なのだ。
つまり時間外クッソかかる。
なので助っ人として誰にするかを迷ってたんだよね。
そして混ぜて良いのかも分からないと言う。
どっちみち諦めないといけない卵だし、なんなら夫婦で卵は育てる物だとしたら、種類の違う魔力でもワンちゃんいけない?
混ざるのが問題ならそれも難しいけれど⋯。
そう魔力の水を混ぜるのはNGだと、私の勘が告げている。
親鳥が雄雌代わって交代て飼育する可能性がウェブンにもあったとして、鍋の魔力の水は同一にしなければ赤の他人の波長になる恐れが考えられるからだ。
まぁ波長があったとしてだけど、識別するのに顔だけでなく魔力も認識していた場合、その可能性はどうしても切り捨てられない。
今回試して失敗すれば、あーヤッパリとなるけど。
失敗する事が朧げにでも分かっててやろうと思えるか?
て事になる。
ピヨ子の教訓が意味を成さなくなのだ。
顔を見せてすり込みしても魔力の関係で識別して貰えなかった場合、雛の餓死に繋がってしまう。
なら魔力の識別が関係するかしないかは、調べて見なければ分からないが、失敗を前提にするのはね⋯と言う意味です。
それとワンちゃん、今バッカスが苦労してる事に、意味を与えてあげたいのよ。
人工保育器?卵孵機?を全てお爺ちゃんの魔力の水を使い、更に2人同時に顔を見せてやれば、2人が親だと認識するかもしれないと考えた。
そしてバッカスが専門で温めてる卵が孵る時も同じようにお爺ちゃんと2人で顔見せして、バッカスしか選ばなかったら魔力の関係性が証明出来るのでは?と推測している。
「つまり親父とバッカスにそれを説明しに行くと。」
「あい。」
「こっちに戻る前に言ってくれよ。」
「今思い出したの。
帰ってきたら向こうに行くつもりだったのを忘れてたの。
二度手間でごめんなさい。
あ、でもそろそろバック兄ちゃんが魔力切れしてるかも。
お茶持って行かなくちゃ。」
「それは向こうで作らせれば良いだろ。向こうにも魔力草は置いてるんだから。」
「あい。」
確かに月の光1日目は私の魔法の鞄に入ってた。
馬車から降りて先に向かってたら、ウロウロすることは無かったね。
「まぁ泣かせたのは俺か。」
「⋯⋯。」
ホントそれな!
魔王がルドルフの上でチュドーンした時より遥かに怖かったからな!
⋯でも言えません。
その原因は私なので。
心の中だけで愚痴ってます。
なので頭をグリグリと肩に押し付けて抗議してたら、背中をポンポンしながら笑ってるお父さんと一緒に、鳥小屋に向かった。
イメージとしては、天使なモズグス(実父)
悪魔なアルフィン(国王)かな?
裏話としてこの世界の靴屋が客の足形を取る時は、正式に注文を受けた時のみ行います。じゃ無いと木を掘って作る足形の労力が無駄になる事が有るからです。
つまりモズグスは職人に気に入られてサービスして貰った事になります。
それはモズグスがコミュケーションの達人設定だからです。まぁ、カモにされやすい欠点も有りますよ。
靴屋に魔法の鞄持ちなのを見抜かれてる迂闊君なので。
逆に国王は天才な上に、育生環境上孤高の存在とされているので、友達が1人もいませんでした。
寂しいボッチ野郎設定です。
その代わり金、権力、美貌を全て持ってる強者です。




