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黒魔石が黒魔石である理由とは。


これはまだ魔力草を始めて育生した後日にまで話が遡る。

お嬢さんから透明の錬成瓶を手に入れた私は、早速月の光を当てて、種やらロベルトが取ってきた魔力草の育生に使用していた。


でも気になったのは、群生出来ない魔力草をどうすれば群生できる様にするか。

その理由の推測として、魔力が不足するからと考えた私は、月の光を何度も浴びせてたら群生出来る魔力の水にならないかとそう思い至った。


でも元からある魔力の水より、月の光を浴びせた魔力の水の方が効果が有る気はしたが、2日月の光を当てた物と3日目のとなると、その差が良く分からなかったのだ。

成長の日数が変わるなら、効果は有ると思うが、3日連続で月の光を当てた水を毎日作るとなると、中々比較が難しい。

と言うより3日連続の水をどれだけ作ればいいやら分からんし、今の私には無理だと諦めた。

他にも育ててる魔力草があるし、錬成瓶を置くスペース問題やら運ぶ労力を考えるとな⋯。

しかも魔力草は1日月の光を当てれば、葉っぱがピンピンしてるのさ。

群生の距離を縮めて葉が萎れるがどうか見るのは、成長しないなら良いけど、植物は成長するのでそこを考えると他の効率が良いやり方を考えた方が良いと思ったのだ。

また労力を先読みして、面倒臭かっただけとも言う。


その時にお嬢さんが魔力が見える眼鏡をかけた姿を思い出した。

アレが有れば1日と2日と3日月の光を当てた魔力の水が、どう変化していくのかを見比べて易くなると考えた。

だから眼鏡が欲しいと思ったけど、眼鏡なんて面白いアイテムが、子供の興味を引くのは分かりきっている。

棚の上に毎回保管するのも私1人で出来ないのは面識臭い。

あと丁度タルクス叔父さんがピアを持って来てくれてた事もあり、私はお母さんに頼んで目玉を2つ手に入れた。


お母さんとカタリナがドン引きするのも構わずに、私はピアの瞳から2つの水晶体レンズをゲットする。

これが使えるかは正直に言えば分からなかった。

でも目に天然のレンズが有るのは知っていたし、お嬢さんがつけていた眼鏡の形が丸かったので、大型の魔物の目を使用してるのかな?と、何となく予想していたのだ。

勿論それは私の勘違いかも分からない。

でもピアの瞳は元々捨てるものなので、無駄になっても構わないと考えてたのだ。

一応ピアは1級の魔物なので魔石も持っているが、流石にそれはタルクス叔父さんの物なので、手に入れる事は出来なかった。

叔父さんが居る時に魔石を思い出してたら言えたが、その時は特に興味が無かったので考えて無かったのだ。


でも月の時はお嬢さんから貰ったお金で払えるから、1つで良いので魔石を貰いたいとは、後日商談した。


先ずはピアのレンズを片方透明の錬成瓶に入れて魔力の水を注ぎ、それを毎日月の光に浴びせて様子を観察する。

残りの片方は魔力の水を入れて遮光瓶に保管した。

そう月の光を1日浴びせたものと、3日、5日と浴びせた物でピアのレンズがどう変化するのかを見たかったのだ。

上手く行けば、魔力が見えるレンズが作れるかもと、まぁそんな遊び半分で実験を行い。


うん。結果で言えば成功した。

小さいし、元は透明なので瓶の水が多過ぎて探すのは大変だが、瓶の中に有るピアのレンズが、月の光を3日当てた所。

透明だったものが、薄い緑色に変化したのだ。

でも皿を使ってレンズを取り出すと、また透明に戻ってしまった。

不思議に思って小さなレンズを潰さない様に覗くと、レンズを通した光景の色が違う事に気付く。

瓶の中のピアのレンズが薄い緑色に見えたのは、中に入ってるお水に魔力が込められていたのをレンズ越しに見るのと同じ状態になっていたんだと推測した。


お嬢さんが持ってるのみたいに眼鏡にするには、もっと他にも工夫が必要何だろうけど、コレなら捨てても構わないので、瓶の中の水の魔力の量が知りたいなら、良いんじゃね?と。

自分の目に入れてコンタクトレンズみたいにも出来るけど、私には流石にその勇気は無かった。


天才じゃないから、私は自分の目が大事だったのだ。

魔法薬を使えば回復するかも知れないけど、そうやって繰り返したバカが居るのを知ってるしな。

私の言う、走るとコケるから走らない理論と同じなのだ。


とまあ比べようとおもって残してたもう一つのピアのレンズを、喜んで透明瓶に移し替えてそれから毎日毎日月の光を浴びせて行った。


それから王様に拉致られて謁見室で暴れたり、身内捜査で叔父さん達を派遣するこのになり、結局タルクス叔父さんに頼もうと思った魔石やピアのレンズを増やす事も出来なかったけれど。

お金が増えたお陰で、ロベルトにピアを丸ごと買い取って貰った。

ただし狩人から生きてるピアを買わせたのだ。

狩人なら罠を使えば生け捕りに出来るからね。


私が必要としてるのは血と魔石だったけれど、ほかの物があっても別に良かったので。

お父さんに透明錬成瓶をお嬢さんから買取して貰い、生け捕りにしたビアの血を透明な錬成瓶に入れて貰った。

これもかなりドン引きされたが、まあ私には実績があるのでビアを捌き慣れてるお父さんが解体を協力してくれた。


ピアの目だけは私が潰してレンズを取った。

これは流石のお父さんもドン引きしてたので、嫌がられる前に私も空気を読んだのだ。


血と魔石をセットにして、直ぐに失敗に気がつく。

血は固まるからだ。

だから固まらせない物が必要になるけれど、今すぐ手にはいるものじゃ無かったので、ピアの血に魔法の水を入れてシャカシャカシェイクした。

ゴミみたいな塊は残ったし、おどろおどろしい雰囲気はあるものの、透明感のある血入りの魔法の水が出来た。

そして、その中に魔石をポチャンと入れて蓋をしておく。

通用するか分からなかったけど、ビアのレンズが月の光で強化されたのなら、魔石も強化出来るのでは無いかと考えたからだ。

でも魔石は唯一そのままでも、日の光で劣化しない素材だとお嬢さんから聞いていた。

でも魔石がピアの身体の中に有る時は、魔石から魔力が出たり入ったりしてるんじゃないかと考えていた私は、月の光の力を魔石に込める為に、ピアの血を利用しようとおもったのである。

でも固まったり、透明感がないと血の表面しか月の光が当たらないので、魔力の水を入れて透明感を無理やりだしたのである。

血って元々水分だからいけると考えてた。

でも血のどの成分が魔石に働きかけるのかまでは分からない。

興奮した時にナンチャラホルモンが出て〜とかなったらお手上げになる。


でも天然鉱石に魔力が溜まるなら、ひょっとしたら可能性が有るのでは無いかと考えていた。

何故なら鉱石に魔力が溜まる大きな理由は魔力を含んだ雨水だからだ。

他にも要因は有るだろうが、私の理論だとそうなる。


あと毛皮も魔力の水にいれて透明の錬成瓶に漬け込んだ。

肉と骨と内臓が残ったけど、不要なもの以外は美味しい晩ごはんになった。


そして更に日が立ち毎日月の光を当ててたピアの魔石は、どんどん薄水色から少しづつ青みを増してきていたが、5日目の朝。

魔石にヒビが入って小さな欠片が散ってるのを発見することになった。


そらならと思って毛皮を錬成瓶から出したら、臭くてベットリしてて何か失敗な雰囲気が漂う汚物になってた。

ちゃんと処理しとかないと毛皮は駄目だったらしい。

でもまぁ失敗も勉強である。

むしろ上手く行く方が少ないのが普通で、今までは運が良かっただけなんだろう。


そして魔石だが、多分これは成功したと考えた。

血が分離してる時に、魔石の色が薄い青色から濃いく変化してるのを観察していたからだ。

でも蓋を開けてメッチャ生臭い臭いにオェ!となりながらも確認したら、ひび割れた魔石は白く濁っていた。


砕けたのは魔力が内容量をオーバーしたからと予想する。

つまり魔石は充電出来るやん!

て、事だな。

ただ1級だからか、他にも原因が有るかは分からないが、1級の場合4日までにしとかないと、魔石が壊れるのではと予想出来る。

もし魔石の外側に傷があって傷んでいたら、強度が下がってそこまで持たないかも知れない。

今回はピアの血を使って試したが、今度は1級の魔石を買ってきて塩を入れた魔法の水で試しても良いかもね。

血、臭かったし。

あと赤いのも邪魔だった。

浸透圧でいけるなら、省けるものは省きたい。

塩なら涙の味と近い塩分のものを作って試せば良い。

あと血を瓶に溜めたら下に赤いのが落ちるのも分かったから、次に生け捕りしたピアの血を集めたら、上澄みを使って試すのも有りだとか、色々と考えて⋯塩で成功した。

だって家に塩有るし、魔石買うだけならね。


一応成功したから、魔力草の研究が終わったら魔石をやっても良いかなと思うが、これはヘボ戦士が泣く奴かも知れん。

でも小さな魔石に魔力が高い方が需要があるなら、イケるかも知れんし⋯これは要相談だなとお嬢さんに報告しても良いけど、魔石が充電出来ることを知らなければ、下手すれば国家機密クラスかも知れないので、王様が来た時に言えばいいやと保留することにした。


そしてピアのレンズは今の所は日々少しづつ色が青くなるだけで、他は何も代わらない。

なので、素材によって性質が違うのは当然なので、1つ1つ調べて行かないといけないのが分かっただけ、今回はそれが収穫となった。

あと月の光は浴びればドンドン魔力を高める効果が有るようだ。今の所はピアで観察出来る範囲で、上限は迎えてない。

この実験は完了するまで時間がかかりそうだけど、人工魔石が作れる予感がしている。

魔力の水がエネルギーを溜める貯蔵庫で錬成瓶が魔石の外殻としたら、蓋に銀の棒でも刺せば人工魔石にならんかな?

魔力の水以外にいい素材は沢山有るだろうから、考え方とすれば乾電池じゃ無くてバッテリーである。


勿論これは紙に書いて残して有る。

好奇心に任せてあれやこれや色んなことして、更に勉強とかもしてたから、他にもお嬢さんに報告忘れてた事も何個か有るのだ。

魔石のことは意図的だけど、毛皮とピアの目は忘れてた。


と、言う話をして良いものだろうか。

マングースと龍が睨み合ってるのを見て、うーん⋯と悩んでる。

今ココ。


「とにかく前の部屋に戻ろう。お爺ちゃんが顔色変えて走って探しそうだし、話をするしないは皆に納得して貰ってからの方が良いよ、王様。」

「⋯⋯」

「お父様、戻りましょう。」


お嬢さんが勝った!と頬に書いて薄く微笑を浮かべながらも、シッカリと私の手を握ってるのを見下ろした魔王は、チッ!と、顔に書きながら静かに不機嫌になり。

アレコレ考えて結局は面倒になったらしく、私とお嬢さんに手を伸ばした。

視線を向けては無いけど、お嬢さんと繋がれた私の手に、魔王の気配がロックオンしてて未練がましい。


そして部屋に戻るとヴィラフォンテお爺ちゃんが、シャカシャカと出入り口のドアに早歩きしてた所だった。


「あの!」


取り敢えず一言かけると、今にもドアを押さんばかりだったお爺ちゃんがピタリと動きを止めるのと、他の全員から視線を向けられた気配がする。


「王様を説得した。

まだ何もお話はしてな⋯」

『おおお!!!!』


勢いよく振り返ったヴィラフォンテお爺ちゃんからは、唾と一緒に絶叫に近い叫びを放つのと、スルンと静かに立ち上がった宰相っぽい上品なお爺ちゃんは、感心した様な吐息の漏れみたいな静かな声と、頭を抱えた先王様から半泣きになってる感激が滲んだ声が同時に響いた。


それに王子2人が小さくビクンと跳ねたし、汗だくのお師匠さんは床に崩れ落ちそうな雰囲気で、背筋が少しだけ丸くなった。

カルマンさんとギルバートさんは苦笑いしてる。

私に慣れすぎだお前等。


「魔石に魔力を貯める方法と人工魔石の作り方を見つけたんだけど、まだ見つけただけでそんなに煮詰めてないから⋯」

『はああああぁぁぁ?!』

「うん。分かったから聞いて?

研究はまだなんぼでもやる余地は残ってるんだよ。


実用化出来るかもまだ理論が出来ただけだから、それが何処まで通用するかは分からない。

だけど下手すると1級魔石の値段にも関わるし、それが安くなるなら若手の戦士たちの生活に関わるでしょ?


あとは兵器に代用出来るなら戦争してる所がヤバくなる。

だから王様に相談したかったし、国が秘密にする知識になるんなら、お姉さんはともかく、まだ王子様になったばかりの息子さん達や、子爵様の親族の村長には荷が重い情報かと思って言い難かったんだけど、何かもうグダグダしてて面倒になった。

どうせ全員巻き込まれる気もしたし良いよね。」

『うぬっっ?!!!』

『あー⋯』


村長が両手で顔を覆って俯いてしまい、王子2人が何か知らんけど何?何かヤバいヤツ?みたいな途方に暮れたみたいな顔になり。

カルマンさんとギルバートさんもウンウンと頷いてた。

お嬢さんは大きく口を開けてポカンとしてて、ヴィラフォンテお爺ちゃんは絶叫した後で動物みたいに唸ってる。

宰相さん?はあんまり雰囲気変わらずに静かにしてるけど、長い眉毛がかかった目が何か知らんけどギラついてる。

先王様は片手だったのが両手で頭を抱え込んだ。

魔王だけがとでも良い笑顔になってる。

もうニコニコしてるから、逆に怪しさしか感じない。


「やり方は?」

「また人の研究取ろうとするぅ~。」

「ぬ⋯」

「まぁ良いよ。そんなに好きなテーマの研究じゃないし。

ただ面白かったからもう少しやろうかと思って、方法をいくつか考えてたんだよ。

でも王様って忙しいじゃん。

そんな研究してる暇なくない?

教えて良いのかなぁ⋯て、皆忙しいからおんなじか。

お姉さん、情報渡しても良い?」

「は?あ、いえ待って!

お祖父様!

ヴィラフォンテ卿!」

『ぬうぅん!』

「世がした方が早い。

予測や危険性の把握は急務だ。」

「今私が試した事で分かってるのが、1級の未使用の魔石に4日処置すれば薄青色の魔石が青くなったよ。5日目で砕けたからそれが限界みたい。

別の方法で試したのは成功したけど、他にも効率が良い方法が有るかも分かんない。


んで人工魔石の方は今もまだ実験を続けてる。開始してもう一月近く経ってるけど、最初は透明な魔法の水がピアの目を処理した『レンズ』で見たら濃い青色になってる。

少しづつ変化してるのか、そこで止まったのかはまだ経過を見てる所かな。


ピアの『レンズ』で調べるのが限界なのか、それともそれ以上魔法の水だけじゃそれ魔力を溜められないかはまだ分かってない。私のした研究は以上かな。」

「ピアのレンズって何なのー?!」


報告が終わったらお嬢さんが速攻で叫んだ。


「前にお姉さんがお目々につけるので魔力を見せてくれたでしょ?だからアレを真似してピアの目のなかにあった丸い物で作ったんだよ。呼び方が分からないからそれを『レンズ』って名前をつけたの。」

「ちょっと待って〜〜?!

ピアってあのピアよね?

ああぁ⋯ピアで魔力測定眼鏡が作れるかどうかはともかく、それはそれで驚きだけれども!

そうじゃ無くって!

何で作れるの?!

ねぇ何で?!

私ひとっっ言も貴方に作り方なんて教えて無いわよっっ!」

「うーん⋯たまたま?」

「た、たまたまって⋯⋯たまたまって⋯⋯うぅ。

えぇ〜なんでぇぇ〜〜???

ああぁぁーーーーもう!

これっだからっっ天才ってヤツは!

ホントに!

ホントにっっ!!」

ドサ⋯

『ヴィラフォンテ卿?!』


両手で頭を掴んでたお師匠さんが、ピア⋯ピア、え?ピアで?何でピア?!魔力測定眼鏡?!嘘だろう?!⋯と、ブツブツ言ってたのにお爺ちゃんが倒れた音に驚きの声を挙げるのと、息子さん以外の人達の声が同時に上がった。


ぶら下げられた所から魔王に抱き上げられてた私だったが、お嬢さんは私の手を離さなかった。

でも目が血走っていたので、興奮させない様に小首を傾げて静かに応えてたら、いつもの様に地団駄を踏み始めた。

私の気遣い台無し。


魔王がその拍子に少しづつお嬢さんから身体を離して、私から手を離させようと地道な工作を始めてた。

まだそこまでじゃ無いけど、お嬢さんが気付いたら腕抜けるからやめて?

大岡越前守呼ぶよ?

とか思ってたら爺さんが倒れた。


流石に驚いたけど、誰も駆け寄らないのに笑った。

だってお爺ちゃんは頭を抱えて、奇声挙げながらゴロゴロと絨毯の上を転がってるからだ。

そりゃ誰も近寄らない。

まるで駄々を捏ねてる子供みたいだ。


でも魔石や人工魔石では皆一応驚いてたけど、此処までじゃ無かった。

皆が驚いたのは私がピアで作った簡易測定器だ。

未知より身近にあった素材を使った方が衝撃が多かったらしい。


「クッッ⋯フハハハハハ!」


とうとうお嬢さんから私の手は離れてしまった。

お爺ちゃんのゴロゴロに気を取られ過ぎたからだ。

姑息な魔王は、でもそれで逃げる訳でもなく。

私をクルリと回転させて両脇に両手を差し込むと、魔王が自分の身体ごとクルクルと周り始めた。


「ハハハハハハーー!!!」


こいつ!

スカした顔で冷静に見せかけて実は正気じゃ無かったんだ!

と、クルクルとした強い遠心力を感じてきゃーーー!ウヒャウヒャ⋯と反射的に笑いながら真実を見抜いたが、身体がお子様なので笑いが堪えられなかった。


ハハハ!と笑いながら私を頭上に掲げてクルクル回る魔王、手が離れて心置きなく両手で頭を掴み、ゲシゲシと床を蹴って叫んでるお嬢さん。

床を右へ左へとゴロゴロしながらああぁぁと叫びながら顔を両手で抑えてるお爺ちゃん。

床に両ひざをついて崩れ落ち、両手を床についた四つんばいで「ピアはない!」と床に叫んでるお師匠さん。


そろって錬成師関係者が荒ぶったせいで、その他か「あー⋯」って顔になってる。

宰相のお爺さんだけがホホホと上品に笑ってた。

うん、カオスだ。

アハハハ〜め〜が〜ま〜わ〜る〜ヤバ⋯、クルクルってたのすぃ!


その時だ。

遠心力が強くて私の身体がポーンと魔王の手から離れてしまった。

おい!貴様!

魔王のあんまりな失態に流石にビビって我に返ったが、背中を大きな手が当たった。

ピンチに反応してくれたカルマンさんが右へ大きく手を広げて私を受け止めようとしてくれたからだ。

でも彼の手に当たったが、掴むまでは行かなくて、手で弾いてしまった。

そして狙った訳では無いと思うが、両手で頭を抱えてた先王様が、壊れた錬成師達に唖然として顔を挙げたお陰で空いた両腕の空間にスポンと飛び込んでしまった。

少しふくよかなお腹とシッカリとした胸元に顔面からダイブした私を、先王様はギョッとしながらも慌ててキャッチしてくれたのだ。


「ブフッ⋯ハハハハハハ!」

「ち⋯ちょお父様?!

もう!⋯リリアナ?!

お祖父様!大丈夫ですの?!」


一瞬ヤバ!と、我に返ってた魔王が奇跡の連携プレーを目撃した結果、床に両足から崩折れて地面を叩きながら爆笑し始めた。

発狂していたお嬢さんも、流石に父親の暴挙に度肝を抜かれたお陰で正気に戻り、私を何とかキャッチした先王様の所に駆け寄って来る。


「はぁ~いてて、大丈夫だ。

黒魔石よ、大事はないか?」

「はわぁ~目が⋯目がまわ⋯」


弾かれた背中や打撲した顔面も痛かったけど、取り敢えず目が回ってそれ所じゃ無い。

おのれ魔王め!

お嬢さんが念のためにか回復魔法を使ってくれたらしく、身体がポカポカした後でスゥーと色んな所の痛みが消えて行く。

お嬢さんてガチ聖女か?

姫なのに錬成師見習いだし、それに聖女とか設定盛りすぎだろ?!

思わず驚きすぎてどーでも良い事に気がついたが、無責任野郎な魔王よりもお嬢さんの方へと心天秤がガクン!と確かに動く。

何の天秤かは知らんが、好感度とやらが有ればお嬢さんにピロリンしてる感じだ。

おのれ魔王。

顔と首の痛みは忘れんぞ。


まだ床をバンバンしてる魔王を視界の端っこに捉えて、忌々しく思う。

どうせ魔王は子供をあやした事が無かったんだろう。

回ると遠心力がかかるのを知らなかったのかも知れない。


腕とかをちゃんと掴んでたなら耐えられたかも知れないけど、両手で脇を持ったつもりだったんだろうが、回る事で腕が遠心力に負けて開いてしまったと予測する。

だから私がスッポ抜けたのだ。

大人がやったらダメな失敗である。


ちなみに高い高いし過ぎて、子供を天井に叩き付けちゃうダメな失敗バージョンもあるよ。

男性は力が強いので、子守をする時は気をつけよう!

子供が笑って喜ぶから、良かれと思ってやったら大怪我する失敗である。


ちなみに私も顔と首がかなり痛かったけど、先王様も胸とお腹がかなり痛かったらしく、お嬢さんが必死の形相で回復魔法してた。

先王様の胸とお腹がレモン色に光ってたよ。

先王様は60代確実に過ぎてそうだからな。

子供の頭って意外と硬いから、肋骨を骨折してたかも知れない。


「ち⋯父上、申し訳ありませんでした!」


カルマンさんがすまない!と、顔に張り付けて圧力満々と放ちながらも床に膝をついて申し訳無さそうに謝ってる。


「いやいや大事無い。

子供が無事で良かった。

これアルフィン!

笑っとらんと黒魔石に謝罪せよ。

王とは言えここは私的な場だ。今なら出来るであろう!」

「ハハハハハハ!!!」

「アルフィン⋯」

「ありがとう先王様。

王様は今信じられない事が続いたから、笑いが止まらなくなっちゃったんだよ。

落ち着いたらちゃんと反省すると思うし、しなかったら私がちゃんと『シバク』から大丈夫だよ。」

「わたしが⋯しばく?」


真面目に叱った息子から、顔を見られて笑われた先王様が困った様に眉を八の字に下げた。

なのでフォローしたが『しばく』の意味が伝わらず、首を傾げられてしまう。

だが私は完全にスルーする。

これは説明しない方がいいヤツだからだ。


「うん!あとね、見せようと思ってちゃんと持ってきてるよ!」


先王様はちゃんと子守をしたお父さんらしい。

もしかすると引退してから子守してたのかも知れないが、私を膝に乗せたままシッカリと背中を支えてくれてた。


「⋯これは?」

「同じ1級の魔石だよ。

青みが強い方が私が強化した魔石なの。

魔力が切れた魔石にはまだ試して無いけど、上手く行けば貯められるかもだし、ひょっとしたら駄目かもだから。そこはまだちょっと分からないかな。」

『おぉ⋯これが⋯』


首から下げてた紐を引いて魔法の鞄を開けると、2種類の魔石を取り出す。

一応ギルバートさんとカルマンさんは警戒の気配は出してたから、元とは言え王様の膝の上ではやったら駄目な行為だったらしい。

すまんな。


でも警戒は気配だけで要は一応レベルだし、何なら早く膝から降りろ!ってなるのが普通なのにそこは放置されてた。

ユルユル過ぎてウケる。


そして薄い水色の魔石と、それより青味が強くなった青色の魔石に、お爺ちゃんが四つん這いになって這い寄って来る。

何なら四つん這いからネアンデルタール人になりかけてるお師匠さんも、離れた所から首を伸ばして見下ろして来た。

魔王も笑ってる場合じゃないと気付いたらしく、猫みたいに四つん這いでソロソロと優雅に寄って来る。

息子の長男は首を伸ばして私の斜め後ろから覗き込んでるし、次男は長男が座ってるソファーに手をついてつま先立ちになってまで覗き込んでた。

宰相さんは床から立ち上がれない錬成師達に囲まれて、少し迷惑そうには見えるけど。

静かにほほ⋯と笑いながら先王様の横から覗き込んでた。


「す⋯スゴい。こんなにハッキリしてるだなんて⋯」


思わず手を出した先王様の掌に乗せた水色の魔石と青色の魔石を見比べて、床の絨毯にペタリと座り込んだお嬢さんが呆然と呟く。


私が握れば指先が他の指につかないぐらいには大きな1級の魔石も、先王様の手に2つ並んで乗せられるぐらいの大きさしかない。


「⋯2級は超えてるな。」

「うむ⋯じゃが3級よりは明るいぞ。」


魔王が静かに呟けば、お爺ちゃんが敬語を忘れて素で反応してた。

それで良いのか重鎮。


「今回は砕きたく無かったから早めに切り上げたんだよ。

私はこれより上の魔石は黒魔石ぐらいしかしっかり見て無かったから、見極めがまだ未熟なんだと思う。

でも砕けたら白くなるから、これぐらいの方が良いのかは分からないし、2級や3級がどうなるかは、やってみないと⋯とは思うけど。

夜が長くて昼が短い地方なら、これはとても作るのが有利になると思ったの。」

「⋯なるほど。だからルドルフか⋯」

『うぅむ⋯』


おー、どうやらルドルフ大帝国と北部地方にあるらしいな。

予想通りか。

まぁそんなもんだよね。


「私が知ってる大きな国で戦争してるのがルドルフ大帝国なだけで、他にも北部地方に国が有ればそこが全て魔石強化には便利だけど、南部地方でも出来るから、そこまでの優位性は無いとは思うの。魔石はね。」

「⋯人工魔石?」

「うん。そっちは明らかに北部地方が有利かも知れないんだよ。

でもまだそこまで実験出来て無いの。冬を待ってたから。」

「氷か⋯」

『氷?!』


「錬成瓶でも良いんだよ。

でもさ畑みたいに広い範囲に雪でも木枠でも良いけど、枠の中に魔法で水を大量に入れて、そこの上を透明な氷で蓋をすれば⋯まあ雪が降ったら困るから、熱が通る銅の網みたいなのを作って雪が積もらない様にしなくちゃとか工夫はいるけど、朝になる前に布でもかけて日差しを避けて夜にはシッカリと月の光を浴びられる様にしたら、その氷に魔力がドンドン溜まっていくの。

現地に行けば問題は言うほど簡単じゃないかもだけど、それはそこで対策すればいいよね?


私は魔法の水でしか研究して無いからそれで表現してるけど、魔法の水よりも魔力の高い液体を入れたら大きな氷が作れるでしょう?

私は今までの実験で水のままだと魔力が飛んで薄くなる法則を見つけてるんだよ。

なら氷ならどうかなって考えたの。


もし氷にしたら魔力が逃げないなら、それは簡易の錬成瓶になるよね?

入れ物に入れて蓋をしたら、氷が解けたら魔力が沢山入ってる水が入れ物に溜まるの。


だからその氷を魔法の鞄に入れて運べば⋯あとは使いたい所で氷を出せば解けるまでそれは錬成瓶だから。

簡単に言えば細かく砕いて錬成瓶に氷を入れて、蓋してそこに銀の棒を立てたらそれはもう人工の魔石かなって。

氷が解ける必要はあるけどさ。」

『⋯⋯』

「これは研究して行かないとハッキリは分からないよ?

でも氷に月の光をあて続けて、上限無く魔力が増えるなら、10年物の氷はどれぐらい魔力が含まれるのかな?

雪が解ける時期だけ魔法の鞄に避難させて、氷が解けない様にしないといけないけど、一月もすれば夏が終わる地方なら⋯ってね。」

「あぁ⋯予想もつかぬ。

だが危険性が高いのは分かる。」

「その技術が有れば王都で栽培不可能だった植物すら栽培出来るやも知れませぬな⋯」

「はぁ~もう、貴方なんてものを見つけちゃうのかしら〜」

『⋯⋯⋯』


錬成師関係者達は説明しなくても私が伝えたい事は伝わった様だけど、先王様や宰相さんや王子2人に騎士2人はまだ良く分かって無い顔をしている。

ので、説明を続けよう!


「まだ完成して無い技術だけど、平民でも魔力の水がだせるウェスタリアなら、施設の費用と働く人の賃金だけで人工の魔石が作れてしまう。

そしてそれが黒魔石よりも多くの魔力を持つものなら、今まで無理だった空を飛ぶ魔道具を開発したり、転移門?を安く使える様にしたり、逆に行けなかった遠くまでいける様にする事も出来る。

嫌な話だと、沢山の人を殺す恐ろしい魔道具も安く作れちゃう。

人を沢山殺す恐ろしい技術でも有るし、沢山の人を幸せにする技術でも有るのが、魔石の魔力を増やす技術と人工魔石を作る技術なんだよ。」

「すげぇ⋯」


次男が思わず呟いてパッと両手で口を塞いだ。

でも宰相さんも先王様も同じ感想を抱いたようで、私を支えてる大きな手が小刻みに震え始める。

でも絶対に落とすまいと。

直ぐに魔石をお嬢さんに渡すと、両手で私を引き寄せて抱く。


「それに森に入らなくても魔石が簡単に作れるなら、魔石の値段が下がって戦士の生活が苦しくなるかも知れないし。

でも魔石の魔力を増やす技術もあるから、今の魔石の値段のままでも高い魔道具が安く作れるようになるから、値段は変えずに済むかも知れない。


そしたら平民でも便利な魔道具が買えるようになる。

魔石の魔力を増やすのは平民でも出来るから、錬成師達が苦労しなくて済む。

魔道具の値段が下がれば損をするかと思うかも知れないけど、安く魔道具が作れるならそれだけ作れば作るだけ売れる市場が広がるから、まぁ忙しくはなるけど逆に儲かるかも知れないね。


今まで錬成師や魔道具師になれなかった人達でも良いけど、学校を増やして平民を学校で勉強させて錬成師や魔道具師を増やせば、働き過ぎてる魔道具師や錬成師師達を救えるかも知れない。


ウェブンにしろマージンにしろ初級回復薬にしても、足りないのに必要な物って沢山有るんだもん。

知識の少ない私ですら、直ぐに気がつくぐらい。

錬成師達が抱えてる仕事が多過ぎると思うの。


錬成師の仕組みを変えて、今の錬成師を特級錬成師にしちゃえば、錬成師見習いは錬成師になれるでしょ?

錬成師見習いになれなかった人が錬成師見習いになれば、今の錬成師見習いがしなくて済む様な雑用が出来る様になるんじゃないかな?


そしたら足らなくて金貨2枚になった魔法生物のウェブンが金貨1枚で買える様になる。

法律の整備や作るものの制限は必要だと思うけど、錬成師達の仕事が多いなら、投げられる仕事は投げて良い仕組みを作っても良いんじゃ無いかな?

魔石の値段が下がって魔法薬や魔道具が値下がりすると、きっと今の仕組みじゃ追い付かなくなるかなって思うんだけど⋯どうかな?」

「それは⋯」

「うぅむ⋯」

「錬成師の使う魔法が危険なら、魔法を使わないで済む、知識だけ持ってる人を育生しても良いでしょ?

店番なんてそんな人で充分だよ。

それで店の品を作る錬成師と師弟関係を組ませれば、勉強次第で少しづつ錬成師の知識を深める事が出来るし、店で錬成師に習って技術も覚えられるかも知れないし。

学院には試験だけ受けに行かせるとか。

学院でしか出来ない必要な実習だけ受けさせれば、現場で働きながら学べて先に進む事も出来ると思うの。


貴族を平民と触れ合わせる仕組みがそうしてるんだと思うけど、結局は店に籠ってる人が多いんじゃ無いかな?

それなら逆に平民を錬成師会に引き入れて、平民と触れ合う機会を貴族に持たせた方がよっぽど話が早くない?

難しい話が理解出来ない平民だと、貴族が頑張っても難しい所が多いと思うし、学校で身分の差別に注意する必要はあるけれど、入学出来る知識の有る人達なら、平民と貴族の橋渡しをしてくれると思うの。

今の私の仕事ってソレでしょう?」

『⋯⋯⋯』


全員が難しい表情になってる。

必要性は分かるけど、現状では無理そうだ。


「ま、それも全ては先の事かな。

まだ今は平民がバカ過ぎて話にならないもんね?」

「フッ⋯それより急務の問題はソレだな。」

「うむ。事が大きすぎる。

これは国の基盤が揺れる代物だな⋯。」


魔王が王様の顔になって呟けば、先王様も大きく頷く。


「しかし魅力に過ぎますぞ。

正に黒魔石と呼ばれるに相応しき偉大なる発見かと⋯」

「卿の申す通り、これは必ず報いねばならぬ極上の偉業よ。

しかしいずれは公表するにしても、黒魔石が申す様な事態に対応出来る国の仕組みが必要になる。」

「実験は⋯陛下がなさるのですか?」

「可能なのはセバス。

ソナタと世と、卿とサラディーンと黒魔石か。

秘匿性と移動だけで言えば世が行う方が良いとは思うが⋯、恐らくこれは相当根が深そうだ。世だけでは恐らく手が回らなぬ。」

「世代を超える実験が必要と成りますかと⋯」

「うむ。卿の申す通り黒魔石を越える人工魔石が果たしてどれ程の歳月で作れるか⋯またはどれ程魔力が超えるかは手をつけて見なければ何とも不明でしょうが⋯陛下の御台で終わらぬ可能性がありますな。」


魔王、師匠さん、お爺ちゃんと口々に話が続き、全員の目が少年みたいに興奮でギラギラとしてる。


「⋯王妃か。あ、いや何!

何でも無いぞ!

違うのだ。

ようやくアルフィンが平民を王妃にと望んだ理由が今附に落ちただけなのだ。

賛同している訳では決して無いぞ。

むしろ黒魔石が不憫であろう。」

「父上⋯」


先王様の否定が必死過ぎて魔王が苛ついてる。ウケる。


「爵位など如何様にも出来ますぞ?黒魔石殿はまだ随分とお若い。

親元より無理に引き離さずとも、教育は叶いましょう。

必要な時分に上后殿下のご協力があれば、家臣達に顔見せも容易く御座いますれば。」


うげ?!宰相さんが変にノッて来てる。私の明るい家族計画が早くも危機を迎えてらっしゃる。


「⋯ダーフィー何を望んでいる?」

「私めは何も。

ただ陛下をお支え申し上げるには、黒魔石殿以外には難しいと存じ上げますれば、余生の短い私共と先王様様に万が一が有れば、陛下は煩わしく思われましょう。

ただの平民では理解をせぬ愚か者が多い事が、陛下の勘気を誘う事を憂慮しております。

陛下は構わずとも、お優しい黒魔石殿は悲しく思われましょう。

なれば陛下のお眼鏡に叶わずとも、成人の後継は居ります故。

黒魔石殿が望まれるのでしたら、正妃様や第2夫人様の2人の王子のどちらかの妃になり王太子になろう道も御座いましょう。

さすれば陛下は御代をお譲りになられて、思う存分魔道錬成師として先王様の様に時代を支えられる道も有るかと思われますと、老婆心ながらお伝えしとうございましてな⋯」

「えーと⋯つまり上后様について王妃教育を受けて、王妃様かテレシア様の息子の嫁になって王様のあとを継げば、王様は錬成師として遊べるよ。

その方がいいんじゃ無い?

私の希望次第だけどね?

でも王妃にならないなら、王様が引退したら面倒見てあげてね?

王様に平民が意見して、黒魔石が叱られたからムカつくでしょ?

アンタはよくても罰したら黒魔石が悲しいでしょう?

僕たちが死んだら大変だよ?って言われてる?

王様、完全に引退コース勧められてるのが超ウケる。」

「煩い。」

「王様の日頃の行いが知れる、優しい配慮だと思うよ。

確かに王妃様になるのはちょっと王子様に申し訳ないし、私もしんどいから難しいかな


だって私2歳だよ?

成人まで13年有るし、その頃王子は30歳前後ぐらいでしょ?

そこから王太子になるのに男子作ってってのも王子様が可哀想だけど、そこから更に男子が生まれるまでもう一人の王子様も結婚出来ないとなったら悲惨だよ。


でも宰相様に言われる通り、今私が私らしく王様と居られるのは、宰相様やお爺ちゃんや先王様が優しいから。

他の人達がそれを許せないと思われたら難しい事も分かるの。

傲慢な王様になられたら困るしね。

王様も私と遠慮なく付き合いたいなら、王様引退して自由になって外から息子さん達を支えてあげたらどう?って事でしょう?

王様が不満なのは引退したら国を導く責任者になれないから、息子に責任を取らせる事になるし、まぁ好き勝手出来ないから、苛つくことも有る。

あの王子達じゃ頼んない。

やり手貴族とやりあえる器じゃ無いから。

だから王様は引退しない。

自由になりたいけど、国も大事だから。

でも王様邪魔扱いされて笑えるって言ったら拗ねた王様から煩いって言われた。

笑える。


そんなコノヤロ!て、顔されても困るよ。私正直者だもん。

でも王妃になりたいかどうかなら、なっても良いような面倒なような⋯て所かな。

今の状態じゃよっぽどその王子様が私に惚れ込むか、私も惚れるかじゃ無きゃ心が痛くて無理。

でも王家を支えるには妻の立場になるのが楽なのも分かる。

どうしたって私は平民の器で収まらない。

無用な争いを避けるならってのもわかる。

今は平民としての感覚が強いから受け入れられない。

だから上后様に指導を受けろと言われてるのも分かる。

分かるんだけどなぁ〜。

ワガママなのすっごい自覚してるんだけど、お父さんとお母さん見てたらあんな夫婦になりたいんだよねぇ。

他にお嫁さんいても良いからさ。

だからもし王妃にならないと駄目なら、新しく男の子作って欲しいけど、私って同年代からしたらもの凄く嫌なタイプの女の子なんだよ。


だから提案!王妃のポストあけて第2夫人から奥さん作ってよ。私も顔出してなるべく仲良くするしね。

後継者は私が王子と相談して決めさせて貰うけど、奥さんは国母にはなれる。

もちろん第2夫人が産んだ王子でもバカは弾くし、バカには育てさせない。

私が責任持って良い王子に育てるね。

んで王妃はやるけど、恋愛感情無ければ仮面夫婦で宜しく!

友達でも良いよ。

王子が引退したら私も引退するし、そしたらちゃんと恋愛出来る彼氏みつけるよ!

あと王妃は私だから、2人の王子には好きな子を見つけさせてあげてね。

早く男子が産まれた方が王太子だけど、残りの王子にも支えて貰っても良いから、残るか出るかは相談で良いかな。

どう?」

『⋯⋯⋯』


唖然とされた。

良い提案だと思うんじゃが?


宰相さんなんかワシ⋯失敗しちゃった。みたいな感じでしょんぼりしてる。

そんなにインパクトある事言ったかな?

だって平民を王妃に望むって、そう言う事でしょう?


「誤解が無いように言うけど、王様がちゃんと仕事出来る様にお手伝いするのが王妃の仕事だってちゃんと分かってるよ?

でも平民の私が王妃になるって事はその実力が有ると認められたからだよね?

なら王子も頼れる王妃じゃないと困るだろうけど、流石に2歳じゃ子供産めないし。

オッサンになるまでお嫁さんが作れない王子がヤッパリ可哀想なんだよ。

まだ血筋とかの認識が強い時代だから、王様は正当な血統が求められるから、今いる王子達の王妃に望まれてると思ったんだけど違った?」

「あぁ⋯驚いたわ。

貴女がウェスタリアの覇権を握るのかと思って驚いてしまったのよ。」

「私の仕事は仮の夫だけど王様の外敵排除と王様の政策をお手伝いする事になるから、覇権を握るかどうかは王様になる王子様次第だよ。

ちゃんと説明して理解して貰ってから行動するから、私の独断で勝手には動かないけど、私の提案で動く物事は有るかも知れないかな。

でもそれが出来るからの王妃だから、仕方が無いと思うんだけど⋯」

「ん?んんん???」

「ふむ。全ての提案が通る可能性が高いな。お前に勝てるなら、そもそもお前を王妃につけずとも世が後継者にしている。」

『あー⋯』


お嬢さんが代表みたく質問して来たけど、魔王が珍しく解説に回ったら皆が一瞬で納得して遠い目をしてる。

喋る文字数が少ないのに、納得させられるんだから王様はヤッパリ優秀なんだよ。

いつもそうしてれば私が担がれる事無いと思うんだけどなぁ。

頼られすぎて予防線張ってるから、宰相のお爺ちゃんに不安がられて引退迫られてんの分かってんのかな。


「まぁ私を王妃にするかどうかはそっちの都合が良いようにして良いよ。でも次世代の後継者は第2夫人以降の人になると思って欲しいかな。

私は私が望まなければ、次世代の子供は産まないし。

その約束が無ければ王妃にはならないよ。


あと私の夫になる王様が引退する時は、きちんと自由にさせて貰うね。お手伝いぐらいはするつもりだけど、それは今の王様がすれば良いと思うの。

どうせ生きてるから。


それじゃ私、ちょっと責任取ってルドルフ大帝国を滅ぼして来るから、王様手伝ってくれる?」

『はあ?!』

「責任?」

「新しい発見には良いことと悪いことがあるのは何となく分かってたけど、具体的な被害を思うとね。

正直に言えばルドルフ大帝国は私が何もしなくても勝手に滅びる国なんだよ。

分裂してるのがその証拠なの。

でもそれに気がついてないから、何とかしようとして間違った行動してるから遅かれ早かれ国が無くなる可能性が高いんだよ。

でも私の発見で被害が大きくなったら、ルドルフ大帝国の周りの国の人達の迷惑になるから、ちょっと早めに滅ぶか新しく生まれ変わるかを選ばせようと思うの。

私がするのは真実を突きつけて今滅びに向かってる事を知らせて上げるだけなんだよ。

私の言葉で自分達の反省が出来て、皆が協力出来たら小さくなってもルドルフは残れるとは思う。

でも反省しなかったら来月末には滅びてると思う。

そしたら新しい発見が流れて行っても直ぐに周りの国が被害を受けないかなと考えたの。

それにもし王妃になるなら国を滅ぼせる女の子だから王妃に選ばれたって箔もつくしね。」

「ねえ、もう貴女が何を言ってるのか私の頭が理解するのを拒んでるのだけれど、ひと言だけ言わせて下さるかしら?」

「うん、お姉さんなぁに?」

「どうやって滅ぼすかもスゴク気になるけれど、そんな物騒な女の子が王妃になられたら、平民でなくても周りが猛反対すると思うのだけれど⋯」

「その時に魔石の事を発表すれば皆納得して受け容れるよ。

早めにルドルフ大帝国を滅ぼしとかないと、長い目で見たらウェスタリアに迷惑をかけられるんだもん。仕方がないよね?

こう言うのが王妃の仕事だと思うよ?」

「ねぇ⋯はぁ⋯貴女の恐ろしさがようやく分かったわ。

妄想にしか聴こえないのに、現実になりそうでどうして良いから分からないの。」

「錬成師としての視線でしか見て無かったせいね?

でも私はこうだから世界の黒魔石なのよ?

王様と似てる存在の私に、国が滅ぼす力がないとどうして思ったの?

ウェスタリアで産まれた世界の黒魔石ってこう言うことなのよ。

王妃として仕事をすればこうなるのは当たり前でしょう?

だからワザワザ平民なのに王妃に望まれるのよ?」

『⋯⋯』


そうだけど!

そうだけど何か思ってたより規模が違う!

て、顔を皆んなから一斉に受けた。

解せん。


あと言わなかったけど、ピアを捕獲して日中は日の当たらない場所に入れておいて、夜にれば月の光を浴びれる様に檻に入れたピアを屋外に出す。

食べ物は魔力草や魔力の水を与えておけば、5日もしたら質の良い魔石が手にはいると考えてる。


ただ気の迷いでしか無いけれど、可哀想だと思ったからそれは実行して無い。

大人になって感覚が鈍くなれば、そうなる事も有るかも知れないが、少なくても今行う必要性を感じ無かった。

これが家族が貧困に窮してれば、また事情が違ったとは思うし、王妃になれば産業として指示するかもだがね。

でもこれはピアだから出来る事なのよ。

ウェブンでも出来そうだけど、魔力が高くなればそれだけ人の脅威になるのは当たり前。

狩人の姪としては安全性を取る方がリリアナである価値だと私は考えている。

だからあえて伝えなかったと言うのも有る。


そして私は10級を目指している。

王妃の話があった時に、反応を見れば拒否をするより私を国のなかに囲い込む脅威を教えれば引くと途中で作戦を変更した。


王妃としてとついでに口実に使ったものの、ルドルフ大帝国を滅ぼすのは、私がダイナマイトを発明した科学者の話をウッカリ忘れていたから、その責任を思い、少しだけ心を慰めたいだけの自己満足でしかない。


詳しくは調べて無いが、お嬢さんと出会った時に心から驚いたのはその善良性だった。

でもルドルフ大帝国の話を聞いて、やはり私の驚きは間違って無かったと確信してホッとした。

でもお嬢さんみたいな姫が育つ理由を知れば、それもそうかと納得も出来る。

だからウェスタリアは巨体になっても割れる事なく平和に生活出来ているのだろう。

そして割れた方のルドルフは、私の馴染みのある強盗が貴族の皮を被った政治をしてる国では無いかなと予想している。

まぁこれから多少魔王に聞いて、一応確認するつもりだ。


言っておくが私は神様では無い。

正しく人間で弱い存在なので、してきた事の報いはいずれ、受ける事も有るだろう。


攻撃は最大の防御である、とはご存知だろうか。

必死に守りを固めて策を練って失敗した今となれば、隠れて閉じこもる事も難しくなった。

リリアナとして自由に表に出られる未来は来ないのかも知れない。

でも私のせいで迷惑する人々が増えると言うのなら、動くべきだと覚悟を決めた。

何故なら私は家族の騎士になると決めたからだ。

上手く行かないかも知れないだなんて甘えた事は言ってられない。

上手くやるしかない。

それが例えどれだけ難しくてもだ。

いずれ私の発見した物を使い、人間達は戦い方を変えてしまうだろう。

騎士は剣を捨てて、爆弾や銃を握る様になるの知れない。

魔法師が空を飛ぶ機械のパイロットになるのかも知れない。


それは私が居なくても、いずれ起こる進化かも知れないが、その引き金を引いた自覚は有る。

なら端と端だからと安穏とはしていられないのも必然だろう。

何故なら私は世界が狭くなる事を知ってる存在だからだ。


敵が巨大になるなら、先に潰すのが筋だと考えるのは、私だけでは無いはずだ。

願わくば滅びて国が消える前に、ウェスタリアが選んだ共存の道に気付いて欲しいとは思う。




忍べなかった黒魔石 ニンニン

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