15
俺のターン!
白い壁。白い柱には金色の刺繍の様な綺羅びやかな模様。
白っぽい床には濃い青色の絨毯。
綺羅びやかに着飾った高貴な女性達や、豪華な衣装を着た男性達は、私が見上げた視線の先で驚愕、興奮、失意、好奇心で空間が揺れている。
その中にいる王様は、肘置きに肘をついて頬を乗せた優雅な姿勢で微笑んでいた。
「だから王様は私を頼ったんだよなぁ。
自分じゃ魔力過多症はどうにも出来なかったのに、ポッと出の俺があっという間に解決しちまったから。
ウェスタリアをまた歩かせる事が出来るかも知れねぇと思ったし、どうにもならない人間達をどうにか出来る夢を見ちまった訳だ。
全く俺からすりゃぁ良い迷惑だぜ。
こちとらまだ産まれて2年しか経ってない子供だっつーの。
国が滅びるとか、死人が出るなんざ物騒な先のウェスタリアを、可愛いい俺様のお目目に見せてんじゃねぇよ。
せっかくスクスク真っ直ぐ育ってんのに、こんなの見せられたら曲がっちまうだろ〜。
テメェが苦労したからって、俺にまで要らねぇ苦労を押し付けてくんなよなぁ〜。
でもアンタが俺に期待してんのは何なのか分かってきたよ。
そりゃ俺向きの仕事だよな。
親や家族から愛情をタップリ貰って、丸々としてる俺にしか見えないもんがある。
でも俺は更にアンタの上を行ってやる。
俺が欲しくても人間が手を出せない極上の黒魔石だってのを、思い知らせてやんよ。
なぁ!ふんぞり返った王様よぉ。」
白っぽい杖の先を向けると、王様は実に楽しそうな視線を私に向け、嘲笑うかの様な挑発的な笑みを浮かべた。
何せ私は見た目は子供、頭脳は大人の冗談みたいな存在だ。
ウェスタリア産の天才と違って、ただ長く生きてただけの凡人だが。
感覚的に生きてる気難しい高級な花より、地道に地に足をつけて歩いてる雑草の方が強い事なんざ、昔から飽きるぐらい言われてる事よ。
王様は会話の流れで予想して私の日本語の意味を悟っちゃいるが、何度か試して確認すると日本語を理解してる様には見えなかった。
それは私の孤独を意味するもんだけど、今回の事に関して言えば真の天才に勝てる唯一の勝ち筋がそれなんだよ。
そして私が勝つことを向こうも望んでる出来レースに、勝てない方が可笑しいよね。
まぁ私みたいに隠してるだけかも知らないけどね。
「さてどうして王様が無理をしてでも、家族や家臣が必要ないと切り捨てる覚悟をしちまったのか。
その理由を王様の父親から確認して行こうか。
元王様。なぁ⋯何でアンタは今の王様から、要らない存在にされてんだ?
アンタなら分かるんだろう?
ちょっと教えてくれねぇか。」
「⋯⋯」
青ざめた顔を強張らせる元王様から私は情報を集める。
「心当たりはあるが言えねぇか
、認めたくないか。まぁ男ってのはプライドが高い生き物だからな。
しゃーねぇ。元王様の後ろにいる孫2人!お前等元王様と元王妃の椅子を2人でくっつけろ。
豪華な服着てたってそんだけ軽そうな身体してる婆さんなら、椅子ごと持ち上げて運べるだろ。」
『なっ?!』
「何故私がその様なことを⋯」
「⋯⋯」
「オイオイ。婆さんが乗ってる椅子1つ動かせねぇぐらい弱っちぃのかよ。
そんなんじゃ王様が国を変えたら、こん中で1番最初に切り捨てられちまうぞ。」
『なっ?!』
「王様が目指す新しいウェスタリアに、今のてめぇらは要らねえ。これだけ話を聞いても王様が見えてるもんが理解出来ないグズは、新しいウェスタリアを治める王太子の器じゃないからだ。
王様が国を動かしたら、あんたらの爺さんが治めてたもんと違って、能力のあるもんじゃないと国が治められねぇんだよ。
王様の邪魔しなけりゃ命までは取られねぇかもだが、王宮から蹴り出されちまうぞ。
なぁ、これだけ言ってもまだ理解が出来ない無能じゃねぇだろ!
俺様の体力と時間を無駄に使わせんな!
サッサと動かせゴミクズ野郎共が!!!」
バンバンと杖の先を連続で床につけたら、2人の金髪王子が泡を食って行動を起こす。
え?!なに?!と不安定に椅子ごと浮く身体に、流石の元王妃もギョッとして肘置きにしがみつく。
元王様もそれには凹んでられずにギョッとして、元王妃の横でオロオロしてた。
2人の細身な金髪王子は、最初元王妃の横に来て椅子を持ち上げようと考えて、自分が間に挟まると椅子がくっつかない事に片方が気付き、元王妃の前後に別れてよっせよっせと椅子を動かす。
視線だけの会話でやってる所を見れば、2人の仲は悪くない様だ。
だが元王妃が乗った椅子は意外と重そうで、運んだ後はハー、重かった!と言わんばかりの良い笑顔を見せてる。
それが清々しいと言わんばかりなのを見て、私は小さく目を見張った。
どうやら2人共王太子になりたく無かったのかも知れない。
賢い王子達は先の見えない毎日にウンザリしてたんだろうなと察した。
だってドーピングした王様が若いからだ。
少し考えたら分かるよね。
俺達要らねぇんじゃね?て。
しかも天才の後を継ぐために、周りから寄せられるプレッシャーも相当だっただろう。
自分達じゃ王太子なんて無理だと思ってるのに、婆ちゃんが巣立ちを許してくれないのだ。
仕方が無いから片方が継いだら、残りが協力して頑張ろうぜ〜1人じゃ無理だって!みたいな会話だってしてそう。
外国人の年齢がどうかは良く分からないけど、お嬢さんの弟なら高校生か大学生になりたてぐらいかも知れない。
こっちの環境からしたら、立派な青年男性だ。
2人の表情を観察して、金髪王子を分析する。
これは大きい情報だった。
お嬢さんが何故あぁなのか。
その理由を掴めた気がする。
「おい元王妃!
呆けてる場合じゃねぇぞ。
こっから横の旦那を暴いて真実を突きつけるんだ。
年食った男なら生半可な苦痛じゃねぇ。
支えろ。
ソイツはこの家族の心の柱だ。
コイツが居たからこそ、王様は本物の王様になりながらも、真ん中の深い部分に人間の王様がギリギリ生き残ってたんだよ。
だから折れられたら絶対に困るんだ!
アンタの旦那は自分の生き様や価値観を息子に見せる事で、周りから植え付けられた、僕たちの考える最高の王様を抑えられる、人間の優しい王様を育ててたんだ。
だがそんな元王様だって生身の人間なんだよ。
教会で働いてる物好きとは違う、欲や感情の有る人間て生き物なんだ。
今ここに居る化け物みてぇな本物の王様が、切り捨てる理由になる事をしてたって何も可怪しくねぇ。
そうだな元王様。
アンタは何故自分が切り捨てられると思ってんだ。
妻が横で支えてんだぞ。
俯いてないでサッサと吐けやこのウスノロ!
そんなだからアンタは平凡なんだよ。
先が見えてねぇから、大事な決断1つ取るにも周りの顔色を伺うしか出来ねぇんだ。
王様になった息子が理解が出来ねぇよな。
心の底から焦るよな?
アンタは周りとの関係を大事にしてこの国を治めてたのに、アンタの息子はそれをやろうとしねぇんだ。
アンタの目には内戦が起こって荒れるウェスタリアでも見えてたか?
家臣と同じ視点でしか物が見えない、平凡な王様だったからだ
。
だからアンタは良かれと思って、今の王様が言う事なすこと を批判してなだめたり、家臣と協力して王様の邪魔をし続けて来たんだろ?
どうだ、平凡な元王様。
俺の言うこたぁ、間違ってないか?」
「う⋯うぅっっ⋯」
「答えられねぇのが答えだ。
じゃあ先が見えない平凡なアンタにも分かる様に俺が教えてやるよ。」
顔を両手で覆って俯く、金髪が銀髪になった細身の老人の背中を、年老いた妻が手を当てて温もりを与えている。
そして鋭い視線を私の持ってる杖に向けて唇をきつく引き結んだ。
なのに無表情なのが、まぁ元王妃の気位の高さを物語ってるよね。
そんな老人達の後ろに戻った王子2人が、ワクワクとした視線をこっちに向けていて、何だかとても微笑ましい。
「先に言わせて貰えば、王様が本当にどんな世の中にするか、その方法までもが全部俺に見えてるわけじゃ無い。
神様じゃねぇんだ。
そんな事出来る訳が無い。
だろう?
だが俺がチョロっと生きて来たこの2年の農家の娘としての月日と、この部屋に入った時のお前等の顔やら態度やら感情なんかを見て観察、集めた情報を細かく理由を考えて分かった事も有る。
だが全てを1から説明してたら、国の話なんか興味の無いお姉さん達やら騎士達が飽きちまう。
だから短くして元王様が何を悩んでるのかを説明して行くぞ。
この平凡で優しい元王様は、家臣だろうが平民の集まる教会だろうが。
他人の立場を大事にして、人と人との関係を荒立てない事を何よりも大切にしながら国を守って来たんだ。
争いが起これば、それが原因で国が弱くなると考えたからだし、実際そう言う事も有る。
何故ならこの人は弱くて、周りを強引に押さえつけられる力が無かったからだ。
おうおう、そこのオッサン達!
元王様が大好きなのは分かるが、顔を真っ赤にして腹を立てんな。
俺は真実をつきつけてるだけで、元王様をけなしてる訳じゃねぇからよ。
まぁ聞け。」
グワーッと高まる怒りの気配を察して、向こうが何かを言おうと口を開く前に、杖の先を向けて牽制しておく。
「言っておくけど王様の中では平凡なだけで、悪いって意味じゃ無いからな?
平凡以下になる王様だって、それこそゴロゴロいると思うぞ?
平凡でいるって言うのは、それなりに優秀じゃ無いと無理なんだよ。
そもそも無能な者なら王様になれてねぇだろう?
ん、ようやく落ち着いて来たな。
じゃあ続けようか。
んで元王様の国の治め方って言うのは、戦争のない穏やかな国なら通用するやり方なんだ。
ただしそれはあくまでも今の状態を悪くさせないだけで、進ませる事は出来ない。
それでも長年悪くさせないだけでも、大変な事だと俺は考えてる。
でも今の王様違うんだよ。
この王様はアンタ達が思ってるよりも遥かに強くて頭が良い金持ちなんだ。
だから国中の貴族全員がこの王様を殺そうと頑張っても殺せねぇ。
何故かって言うと、王様は人間だから一度に立ち向かえる人数はどうしても限られちゃうし、ピョンピョン飛んで逃げられるせいで、捕まえる事も出来ねぇ。
そうだろ?」
『あっっ!!!』
「大勢の参加者を集めて城に攻めて来た所で、王様が飛んで参加者の1人の家に行く。
そして身内なりなんなりを見せしめに誰か殺して、攻めて来たバカを家に帰る様に言えと伝言を残す。
てのを何回かしらたら、あら不思議。
1つ2つと参加者が帰って行けば、裏切り者ー!って顔を真っ赤にして吠えても、他のヤツラだって自分の家族や家を壊されたくないから、渋々家に戻る羽目になる。
それでも帰らないヤツラは家族共々皆殺しだ。
コイツの部屋には黒魔石がゴロゴロ転がってんだぞ!
少なくてもコイツは8級以上の魔物を1人で倒せるヤツなんだ。
騎士が束でかかって来ようが、戦いにすらならねぇ戦力の差が有るんだよ。
はーい内戦終わり!
残ったのは腹の底で恨みを持っても、反論出来ねぇ貴族の集まりだ。
またこの王様の凄い所が、王都に居ても遠くの人の会話とかの情報を集められちゃうんだよ。
だから影でヒソヒソ悪巧みしようとしても、朝起きたら枕元にきーいーたぞー!消されたくなかったらやめとけー、みたいなお手紙を残されたらもう終わりだ。
裏でコソコソする事も出来ねぇのさ。
そこー、コレ本当だからな?
王様は娘が金借りに来た時にそれやって俺の事を探ってたんだよ。
うん、ヤッベェよな。
わかってくれて嬉しいよ。」
『ザワザワザワザワ!!!』
「な⋯なんと⋯」
ざわめきの中で凹んでた元王様が目と口を開いて愕然とした表情を私がもつ杖に向けてくる。
「つまり真実王様は周りの顔色を伺う必要は無いわけだ。
でもたった1人で国を動かすのは面倒臭せぇ。
だから王様は俺やらそこに蹲ってる弟や娘やら、自分を邪魔しない子供達や家臣を使って国を回す事も出来るんだ。
何ならそこの王子2人も使えば良い。
ほら王子を消す理由も消えちまったな。
この時点で協力的じゃ無い家臣は全部今の立場を失うし、逆に王様が作る国を支えようと思ってるもんは残る事になる。
王様が何を思ってんのかは分からなくても、王様が指示する通りに動けばいいから、頭があんまり良くなくても素直に従ってる分には問題無いわけだ。
そして真実それが、本来の貴族ってやつの役割なんだよ。
今ある貴族ってのは、元々はその地元の小さな王様だった筈だ。
だからウェスタリアじゃ無くて、自分の都合が良いように考えて行動するし、それを下につけるには王様になる人達は、それを納得させられるだけの勉強やら礼儀作法やら厳しい価値を求められちゃうんだよ。
んでそれって王様が治める新しい国に必要かと言われたら、あんまり必要ねぇ訳だ。
最低でも言う事聞いてるだけで良いから、邪魔して来るなら消すぐらいの価値しか無い。
そして王様は頭が良いから、言う事を聞かない力のある貴族を1つ1つ潰して行けば良い訳だ。
教会は動けねぇよ。
王様が虐めるのは平民に偉そうにするのが当然と思ってる様な、古臭い傲慢な貴族だからだな。
平民に対して見下すような、いけ好かない奴らが消えたら、教会だってヤンヤヤンヤの大喜びで王様を褒めちゃうよな?
そろそろ見えて来たかな?
王様が考えてる新しいウェスタリアの形が。
でもだからこそ、今ここに居る人達全員が、何とか王様に自分達の利用価値を示して生き残らないといけないんだ。
そうじゃ無きゃ好き勝手するもんで、理解出来ない可哀想な貴族がゴロゴロ産まれて来ちゃうだろ?
傲慢な王様から、アンタ達が頑張って傲慢な古い貴族達の説得して、素直で新しい貴族に変えてまわらないと悲しい事になっちまう。
あー、そんな困った王様をせっせせっせと、よく作り上げたもんだよ。
でも自業自得だから、仕方がないよな!
帝王学ってのは内容は知らないけど、家臣が生きやすいように国の為に生きる、欲で好き勝手しない王様を作る教育でも有るんだろう?
だから人間なら必要になる考え方とは別に、国の為になる冷たい行いも実行出来る精神的な強さとか教えてるんじゃないの?
だから王様の中で正反対の価値観が喧嘩しちまうんだよ。
そんなもんを教えた所で出来ないのが普通なのに、コイツはそれを自分の物にしちまえるぐらい優秀だったんだ。
なら国の為に行動するのも、国に要らないものを切り捨てる考え方になるのも全部が、そんな教育が原因だろ?
ここには教えた人達がいるだろうから、教えた事の何が悪かったのか。
それはこれから新しい王子が産まれた時に必要になるもんだから、見直しておいてくれよな。
それで今までのウェスタリアは、それぞれ自分勝手な貴族達を、貴族の中で1番優秀な王様が纏めてた国だったのさ。
それをこの本物の王様は平民や貴族の事情全て関係なく、住んでる人達全員を幸福にする事を目的とした新しい価値観を育てて、そんな人達と一緒にウェスタリアと言う新しい国を作るぞってなってるんだよ。」
『何を⋯???』『そんなっ⋯』『バカな⋯』『なんと⋯』『ザワザワザワザワ⋯』
全員の悪かった顔色がコロコロ変わって行く中で、受け入れられずに理解を拒む者、頭を横に振り失意に沈む者、涙を浮かべて王様を睨む者⋯、大多数の人間が事の大きさを把握して、王様の危険性への理解を深めて行くが。
でも本当に頭の良い人達は逆に感激してたり、新しい風を感じて高揚したり、冷静に見定めたりと各々が静かに成り行きを守っている。
それは自分の過ちを知りながらも、自信を取り戻した元王様だったり、先が見えた事とコレまでの話の流れから悪くない状況に進むと王様を信じられる者や現状に鬱憤を抱えてた所で明るい未来にワクワクしてる王子2人に、ギルバートさんやお姉さん達の様な、時代の流れに乗れる柔軟な頭脳や価値観のある人達が、取り乱してる人達を面白そうに静かに眺めてる。
「チョロっと話を聞いただけなんだけど、この国の元となった北の厳しい地方に発祥の地があると教えて貰ったんだよ。
そんな生きてるだけでも厳しい場所なら、皆が協力しなくちゃ生きて行けないから、貴族や平民の関係もここよりずっと心の距離が近いんじゃないのかな?
だからここの王族の人達の中に、平民に涙を流して頼む度量の広い姫様がいるんじゃねぇの?
息子が平民と結婚したと聞いただけで、倒れそうになってる外から来た元王妃を見てりゃ、死んだか分からねぇ息子の存在を見た途端に、思わず駆け寄りたくて腰を上げちまった根っからの王族の元王様のあったかさや、懐の広さの違いがよく分かるんだよ。
今の王様が冷酷で傲慢な王様に飲み込まれ無かった理由は、この王家に代々伝わってる古い価値観のお陰かも知れないぜ?
何せ他人所か家族全員が仲良く無ければ、生きていけなかった環境だ。
そんな価値観を持ってる奴が、家族同士でバチバチして自分勝手に走る女共が回してる家庭じゃ、生活すんのも苦しかったろうよ。
だから元王妃も王妃も2番目の奥さんも、全員が仲良くしなくちゃ王様がブチ切れて追い出しちまうぞ。
最初は喧嘩しても良いけど、上辺だけ仲良くなんて半端なことしてても直ぐにバレちゃうからな。
心の底から反省して自分を見つめ直さなくちゃ、気がついたら病気で死んだ人になってるぞ。
あんたら全員が揃って王様から要らないって思われてるんだからな?
可愛かった王妃を潰した毒母も、せっかく王家の為に嫁いで来てくれた2番目の奥さんをイビる腐った王妃や毒母の元王妃も、そんな奴らに怒って攻撃してくる2番目の奥さんも、それぞれ言いたい事が有るとは思うけど、他人の為に生きられない自分勝手な人になった瞬間に、ソイツはもう可哀想な人じゃなくて悪い罪人なんだよ。」
『なっ⋯⋯』
「事実しか言ってねぇからな。
納得行かないんなら王様の顔を見てみろよ。
なんなら聞いて見ても良いぜ。
なぁ王様。」
「フフフ⋯ハハハハ!
全く黒魔石はよく見ておるわ。」
「なんてこと⋯」「そんな⋯」「ヒドイわ!私は⋯私は⋯」
上の方がワチャワチャし始めたけど、王様はスンと澄ました顔をしてるせいで、女性3人が悔しそうにしたり悲しそうになったりとそれぞれが凹んで行く。
だから私はそっちは放って置いて話を戻す為にドン!と杖を床をついて、皆の注意を呼び戻した。
「あっちは一先ず置いといて、話はそれたけど俺はこの傲慢な王様は、始まりの王様の先祖返りみてぇなもんじゃねぇかと考えてんだが。
皆はどう思う?
平和な時代の王様と、時代を切り開いて国を大きくした王様の違いが、目の前にいる2人の王様の違いを見てると、なんか分かってきた様な気がして来ねぇか?
下手な説明で悪ぃけどよ。」
『ザワ⋯⋯』「あ⋯」「なるほど⋯」「そう言う⋯」「確かに⋯」『ザワザワザワザワ⋯』
「⋯ふむ。少し発言しても宜しいかな?黒魔石殿。」
それぞれが小声で呟いて考え込む中で、1人の老人が声を挙げた。
その人の体格は細身で恐らく元王様と同世代の男性。これまで取り乱す事も少なく冷静に淡々と成り行きを静かに見守っていた気品のある老人。凛としたブレの無い張りの有る声と柔らかい口調。
恐らく大臣的な立場の人?
宰相って役職が有るなら、元国王様と二人三脚で国を回して来た賢人では無いかとすかさず分析する。
「はい。何でしょう。」
「貴殿のお陰でようやく陛下が言わんとする事は見えてきたが、果たして暴力的に抑える以外の手段で上手く行くとお思いか。」
「うん。方法ならあるよ。」
「ほぉ。ではどの様になさるおつもりか。」
「そおだねぇ〜」
私は疲れて来たので階段の1番下によっこいせと座り、膝の上に杖を乗せてから語り始めた。
「パッと追いつくのは教育。
先に言っておくけど、別に私が考える事が全てじゃ無いし、そもそも私にはまだこの国の知識や常識が足りて無い。
それを前提にして、軽く提案するだけだから、それを使うか別の方法を考えるのはそっちでして欲しい。
それでも良いかな?」
「無論。展望だけでも垣間見ること叶うのであれば、陛下への助力もしやすかろうと思います故に。」
「今パッと思いつくのは国に新しい仕組みを作る事。
これまで王族や貴族の各家庭で行われている勉強の内容を調べて、それがこれからの新しい時代に相応しいか、逆にこれは遺した方が好ましいかを分ける。
これは錬成師見習いじゃ無くても出来る仕事だから、入学はしたけど錬成師見習いに無れなかった人を雇ってやらせても良い。
なんなら騎士じゃ無くても出来る仕事として、騎士見習いになれなかった人を新しく騎士の下につけてもいい。
お金は仕組みが安定するまでは、国王様が自分が稼いだお金で払う。
錬成師見習いになれなかった人達でも、入学は出来たんだから、情報を集める事は出来るからね。
そして集めた内容の仕訳を、良いか悪いか元国王様の価値観にそう事を元に仕分けて行く。
そこには錬成師を入れて教育が人間にあたえる影響を研究させてもいい。
年少の貴族全ての男女を集めて、新しく作った教材を使って教育するのと同時に、教会での勉強を終えて、その中でも成績が優秀だった平民を集めた学校を作る。
平民はお金が無いからタダでね。
なんなら寮でも作ってご飯を食べさせてあげてもいい。
そしてその人達にこの国の歴史とか貴族が使う文字とかを教えるのは、国から教育されて平民と貴族の壁の価値観を切り捨てる事が出来た、錬成師見習いや騎士見習いになれなかった人達。
両方でも良いよね。
錬成師見習いになれなかった人は勉強を、騎士見習いになれなかった人は武術や身体の動かし方を教えるのはどうだろう。
最初は上手くいかなくても、こうして行けば、少しづつ平民の考える力を上げて行ける。
仕事は錬成師見習いや騎士見習いになれなかった人と同じ、別の村や街へ派遣される。
御城で雇っても良いし、学校に行けない他の貴族の家に家庭教師になっても良いけど、最初の頃は難しいかな?
そして故郷の村で学校を自分の家に作って、教会じゃなくてそっちで教えても良いし、教会に行って自分がまざって教えても良い。
まぁ最初の頃だけは教会に混ざって教育のやり方を学んだ方が良いかもね。
そして経験を積んだ錬成師見習いになれなかった人の中でも優秀な人が、国立魔法学院で先生になる。
新しく国の組織に入れる、錬成師見習いになれなかった人やその『科目』えーと、科を勉強する為に学校に来た人を、教える科を作るの。
そうして人を増やせば教会から教育を少しづつ切り離して、教会を弱体化させる事も出来る。
でも対立してる訳じゃ無いから、神様の話をしてもらう様に教会の人を呼んで講師をして貰っても良い。
そんな仕組みを教会が受け入れやすいように、例えば私が発見した魔力草の栽培方法を教えてウェスタリアの村や街に広めて貰うと言った恩を売っておいても良い。
金になるネタを貰った教会は喜んで受けてくれるだろうし、貧しい村や街で魔力草が栽培出来るなら農民や貧民にお金を持たせる事が出来る。
そしたら農民や貧民がお金を使うので、商人がお金を持てるようになる。
元から大きい商人は貧しい戦士を雇って、旅商人って形で外国に派遣する事も出来るし、外国に店を出して店員にすことも出来る。
ウェスタリアなら農民でも魔力の水は出せるけど、外国では出来ない人もいるから狩りが出来ない戦士でも、小さな魔法師扱いされるなら稼げるよね。
そんな所では魔力草も貴重だろうから、魔力草の値段をウェスタリアよりも高くして売ることも出来る。
こうして商人は外国からもお金を稼げる。
そしてこれまで良い王様、良い貴族と言った顔のみえなかった話に、私の逸話を簡単につけて行けば、例えば貴族になった平民の悩みを聞いて、王様がこの仕組みを考えてくれたとか。
今日私は貴族になるのだから、端から貴族が考えた貧しい人達をすくう方法として、魔力草の栽培方法を教える時に伝えて貰う事で、平民達に貴族の良い話を植え付ける事も出来る。
そのウチ錬成師見習いになれなかった人達が勉強してから来るから、そこで国の教育を始めても受け入れられやすくならないかな?
それと同時に期限は適当で良いけど、今後貴族の選別を行う発表をする。
何年後までに価値の証明が残せなかった貴族は、侯爵とか男爵だっけ?他の種類はしらなくてゴメン。
えーと、爵位の種類関係なく貴族とは認めないとかね。
残す理由としては学校に行った人のなかで、魔法師や錬成師見習いになった人の数が多い家とか、騎士見習いになった人が多い家とか、お金を稼いで税を決められた量より沢山治めたりとか、あ、増やした分は民から集めた税じゃ無くて、貴族が自分で商売して集めたお金ね。
あとは平民と貴族が仲良くしてる土地の貴族とか。
具体的な理由を上げて行けば、能力の無い貴族達は必死に平民と仲良くなろうと頑張るかなぁって。
だから貴族の数は減らなくて良いし、減っても良いんだよ。
そのうち勉強した平民が、自力で魔法学院にこれる力を身に着ければ、入学費を全面的にやめて、成績が優秀な人だけが入れるようにしていくの。
その頃には平民が、とか貴族がとか言ってらんないよね。
下手したら平民と仲良くしてますよ!って証明するのに頭の良い平民を雇う貴族も増えると思うの。
どうかなぁ?」
『⋯⋯⋯⋯』
「な⋯なんという広大な視線の持ち主か⋯」
上品なお爺ちゃんはそれだけを呟いて、チワワみたいにプルプルと震え始めた。
他にも同じようになってる人も居れば、愕然としてる人も居るし、なんなら話が途中から理解出来なかったか聞き逃して頭から流れてしまい、キョロキョロ周りを見てる人もいる。
まぁ長かったし、早口だったかもしれん。
すまん、許せ。
だが喋りすぎて私も口も喉も疲れた。
お水をくだしゃい⋯。
書いてて思った。
実現しないだろうは百も承知で、万が一アニメ化したら、リリアナやる声優さんから「何でこんなセリフの長い作品作ったんっすか!」て、私が殺されそう。




