11
あー、こう言うのってあるよね。
「それでは質疑応答に入ります。ご質問がある方は挙手を願います。」
拍手が収まった後、ホッとして私も気を抜いていたのだけれど。
「黒魔石。聞こえているか。
私の疑問に応えよ。」
ご指名を食らった。
皆気を抜いてたのでピクリと小さく心臓が跳ねた。
合図を送ってジギタス叔父さんに代わってもらう。
「おう、どーした。」
「お前ではなく本物の黒魔石だ。変声道具ぐらい用意してあるだろう。」
うえぇ⋯と私の顔がゆがむ。
どうする?って顔してるジギタス叔父さんに、何でか聞いてと、すかさず紙に書いて見せる。
「理由はなんだよ。」
「やはり準備しているのか。
なら話が早い。
声を偽ればコレまでの知恵も無駄にはなるまい。
予め用意していたぐらいだ。
我の要求に応えよ。」
私は出ると紙に書いて、お嬢さんが用意してくれていた魔導具を起動させる。
どうも魔力の振動で声質に変化をもらたすらしく、首につけられる様になっている。
設定はタルクス叔父さんぐらいの渋めの成人男性にした。
犯罪に使われると思えば、お嬢さんはどうやらお父さんから渡されたのかもと私は諦めた。
「なんだ?」
「本物の黒魔石である証明をせよ。」
「しょーめーねぇ〜。
ならこう言うのはどうだ?
『友達』ってヤツは。」
「⋯⋯なんだそのトモダチと言うのは。」
「俺が見つけた人間関係の1つの形だな。」
「ほお?また世界の秘密でも見つけたのか?」
「そうかも知れねぇし、そんな大層なもんでもねぇよ。」
「意味を伝えよ。」
「アンタならもう分かってんだろ?ワザワザ説明する手間はいるかぁ?」
「他の者が分からんだろ。」
「そうかよ。だったらアンタが説明してやんなよ。答えなら知ってんだろ?」
「不敬だぞ!!!」
「無礼者!」「立場を弁えよ!増長するで無いわ!」
一気に向こうが殺気だったので、此方からは青ざめた面々からやめとけー!と言った雰囲気の圧が私に掛かった。
だが無理だ。
私は片手を挙げて父達に合図する。
決めては無かったけど、強引に止められるのは抑制出来た。
これは戦争。
私は騎士。
つまり引けない戦いにる。
私は可愛い顔をキリリと引き締めて大きく息を吸い込んだ。
「フハハハ!
もう勘弁してくれよ。
立場を弁えてっからちゃーんとこうして相手になってやってんだろ?
ろくに教育なんざして無い平民相手に何を期待してんだ?
全く⋯良いか?よく聞けよ。
これから大事な話をしてやるよ。」
「静まれ。邪魔をするでない。」
「しかし陛下!」
「そぉそぉ大人しくすっこんでろよ。アンタが思うほど、そこに居る王様は安くは無いと思うぜ?」
「な、なに?!」
「偉そうな爺さんが言ってた、どーでも良い天才とやらじゃ無くてさ。
そこにいる王様ってのは、あんたらが思ってるよりずーーーっっと辛い仕事してんだよ。
たまには息抜きぐらいさせてやんなよ。
可哀想だろう?
そんな家に産まれたせいで、好きな事も自由に⋯やってそうなのが凄い所だと思うが。
まぁやりたくもない家業を継いで、精一杯バカの面倒見てんだよ。
たまにはいーじゃん。
羽目を外したくなっても。
俺は世界を揺るがす大天才らしいからなぁ⋯面白いもん見つけてワクワクしてるだけだろ?
な?『同類』」
「フ⋯ククク⋯。
愉快な事を言う。
何故そう思った。」
「わからいでか。
そんなん見てりゃ直ぐに分かんだよ。
まぁ直接アンタを見たことはねぇんだが。
最初に俺が見つけた理論を聞いて、腹抱えて笑ってたのはアンタだけだろ。
そこに居る全員が受け入れるのを拒否ってんのによ?
そんなもん『同類』以外はいねぇんじゃねぇの?」
「ふぅん?」
「何だよ俺ばっか喋らせやがって。まぁ良いや。俺等みたいなもんは、探せば幾らでもゴロゴロ居るんだと俺は思うぜ?
でも潰されてんだよ。
だがアンタは潰されなかった。それだけアンタは全力で戦ったんだろ?色んなもんとさ。
そんでもって運も良かった。
孤高でいても良い場所に産まれたからこそ、ソレが赦される環境だったわけだ。」
「まぁそうだな。」
「でも溜まるもんは有るよな。孤高でいるっつーのはシンドイもんさ。
努力だって死ぬほどやってんのに、天才って1言で片付けられちまうし。
やりたくもねぇ礼儀作法やら責任やら『メンツ』やら周りから押し付けられて、ぶん投げたくても許して貰えねぇ。
頑張って周りに余計な口を出させねぇ為にやって来た事なのに、周りは勝手に期待してドンドンと壁が高くなって行きやがる。
周りのヤツラは無責任に祭り上げた神輿を見上げて、上手く行ったと楽しそうにしてんのに、自分はそこには絶対に混ざれねぇ。
寂しいけど、そんな顔も許されねえとなりゃ、ウンザリもするだろうよ。
でもまぁそれなりに楽しんで来てるだろうけど、久しぶりに自分と同じ視点で物が見れて、尚且つ自分を超えるヤツが居るかと思って、ワクワクしながら遊びに来たら。
初手から偉そうな爺さんにぶち壊されるし。
思うように文句も言えねぇわ、周りは空気読んでくれねぇわで、もうコッチは聞いてるだけで可哀想になっちまったよ。」
「それで?何が言いたい。」
「遊び相手が欲しかったんだろ?ワイワイ遠慮なくバカみたいに笑いあえるそんなトモダチが。
けど俺も錬成師見習いさんとそうなりたかったが、まぁ周りのヤツラは許さねぇよな。
だって大事な神輿に反抗期になられても困るしよ。」
「ぶ⋯!反抗期とはなんだ。」
「意味分かってんならイチイチ聞いてんじゃねぇよ。
だってさ、イラってこねぇの?孤高でいろって言う割に、勝手な理想を押し付けられて形にハメられてんの。
真面目にやればやるほどそれが当たり前になるから、首輪つけられてんのと同じじゃん?」
「良いのかそんな事をこの公式の場で告げて。世にも庇える限界はあるぞ?」
「周りが頭から湯気出してんのが見え見えだから、心配してくれてんの?
ならどーぞご勝手にやってみりゃ良いじゃん。
俺の見つけたもんなんて、所詮はその程度のもんなんだろ?
けどなぁ〜。こうやって潰されていくもんだから、アンタは何時までも一人ぼっちだ。
俺の見つけたトモダチってもんは、性別も年齢も階級も国境もぜーんぶ取っ払って、マッサラな状態で信じあって笑いあえる人間の関係性なんだよ。
でもそういうのって、片方ばかりが思ってても成り立たねぇのさ。
トモダチになりたいと思った所で、向こうが同じ視線で無けりゃ目も合わないのは仕方がねぇよな。
でもさ。本物のトモダチってのは勝手に惹かれ合うもんさ。
周りから散々言われた所で、どーしよーもねぇもんだと俺は思ってんだよ。
でもだからって相手の立場を利用するようなバカとなんか、絶対に付き合いたくねぇし。
コッチも目も合わない奴なんて興味はねぇよ。
んで俺はこうやって自分を貫いた挙句、勝手に潰れて行くわけだ。
せっかく面白いの見つけたとでも思ってんなら、期待に応えられずにゴメンな。
俺が言いたいのはそれだけさ。」
「⋯そうか。だが残念だ。
ウェスタリアの宝は潰されるのか。」
「仕方がねぇよ。だって産まれて来てからずーっと植えつけられてきた価値観なんざ、そう簡単にはひっくり返せやしないもんだ。じゃねぇと貴族なんざ危なくて仕方ねぇだろ?
階級植え付けて上下関係を徹底的にシツケとかなきゃ、テッペン目指したいヤツが王様を狩りに来ちまうんだ。
ソイツらがロクでも無けりゃ、困るのは弱い立場の人間。
つまり平民さ。
アンタが踏んばって辛い想いして頑張ってんのも、周りが必死に持ち上げてんのもそう言うこったろ?」
「フ⋯何も教育を受けてない平民が帝王学を語るのか。」
「所詮は人間の考えるもんなんざ、知れてんのよ。
俺は俺が見る視点でしか物は語れねぇよ。だから俺が間違ってんならさっきみたいに周りは全員正義面して吠えてんだろうが。
黙って大人しく聞いてる所を見りゃ⋯て、見えてねぇけど。
あながち間違っては無かった訳だ。
それを得意気に語りたいわけじゃねぇが、ちょっとだけ気になる事が有るんだよ。
聞いてくれる?」
「フフ⋯勝手にペラペラ語っておったくせに今頃になって何だ気色の悪い。」
「ひっどーーい!
ちょーっと遠慮したら失礼しちゃうわ!プンプン。
まぁ良いや。
ウチの年食ってる黒魔石が、メッチャ美味い飯作るんだよ。
アレも天才だと思うが、農家の出身でさ。
普通農家って5歳になったら、男女構わずナイフ渡されて、扱う訓練してくんだよ。
でもその天才料理人は腕が良いもんで商人に婿入りしちまってさ。しかも奥さんに骨まで惚れ込んでるもんだから、奥さんに似た娘が可愛くて仕方が無かったんだ。
娘も父達が大好きなもんだから、近寄りたくて調理場をチョロチョロ覗きにくんだよ。
でも調理場って刃物や竈門みたいな火を扱ってるだろ?
小さな愛娘には危なくて、でも黒魔石は口下手なもんだから怒鳴って叱りつけちまったんだ。
そりゃ娘はビックリさ。
何時も優しい父達が魔物になった気分だろうぜ。
だから調理場に顔出しに行かなくなっちまって刃物なんざロクに触らない。
それなのに平民は家庭に入ったら、家族の為に飯を作ってやるんだわ。黒魔石は自分の腕に自信があった。
だからチョイと適齢期が近くなった娘を仕込んでやろうかと、騎士みてぇにビシバシ鍛えちまったんだよ。刃物もろくに触った事もねぇ箱入娘に天才料理人は自分の技術を仕込むつもりでさ。出来るわけねーじゃん?
弟子は農家出てるから下地がちゃんとあんだよ。
でも娘はそれがねぇから、父親と調理場に立つのが辛くなるよな。
そして天才の黒魔石はそれに気が付かねぇ。出来て当然と思うぐらいナイフの扱いを鍛えてるから。
だから娘はクッソマズい飯を作る事になる。
だって料理すんのが嫌だから。
だからさ、何かやらかしてね?
何か天才はこれだからー!って、散々怒鳴りつけられたんだけど。
嫌われては無いけど、近寄れないみたいにアンタもならなきゃいいね。って事でお1つ如何でしょうか。 」
「クッ⋯フハハハハハハ!
ハハハ!!!
何だそれは!」
「え?そんなん下手こいたお仕置きに決まってんじゃん。
俺からの愛を込めたプレゼントだよ。うふ。」
「やめろ。変な語り方をするのでは無い。怖気が走る。」
「なーるほどぉ。ほぉん?
遠くを見るのは無理ってこったな。」
「フハハハハハハ!!!」
「王様って笑うの好きね。
私はそう言うの明るくて良いと思うよ。」
「おいおいどうした。
素が出ておるぞ。」
「出してんだよ!決まってんだろ。周り見てみろっつーの!」
「ぶふっっっっギャハハハハハハ⋯ヒィー!」
「笑って貰えて嬉しいです。
だから皆、俺様の事いぢめないでね?」
「ハァハァ⋯何だ貴様、ククク最高の道化師にもなれそうだぞ!」
「やーだってさー。
平民だしぃ。
貴族ってヤバいじゃ〜ん。
この先一生ヘコヘコするか、死んでトンズラしなきゃと思えば、遊びたくならない?」
「全く良い度胸をしている。ククク⋯」
「えーやだぁ。
あたし、か弱いんだけどなぁ〜。
つーかさー。もー俺がつい下手こいて錬成師見習いにウッカリベラベラ話しちまったからさ。
責任取って頑張ろうと思ったら、もうね婆ちゃんまで騎士みたくなっちまってさ。
あんまりにも申し訳無くてお胸がチクチクしちまうのさ。
でも死にたくねぇし、死なせたくねーから、もう頭から湯気がでるぐらい頑張ってるんだよ。
でもそれまでは俺が変なの隠してたからさ、やっぱり全力ってのは楽しいよね。
周りに人がいてもどーしたって見えるものが違うんだよ。
だから仕方無くそこにいるけど、話もロクに合わないし。
だから錬成師見習いさんと会えてスッゴク楽しかったんだよ。めちゃくちゃ努力して勉強沢山してるから、色んな事教えて貰えるし。
もー有頂天になってついポロリと⋯ね。でも直ぐにヤバいって気が付いたけど、泣かれちゃうとさぁ。だって俺には家族がいるし、そっちのが大事だ。
でも錬成師見習いさんの誇りとかすっげぇカッコいいし。
つい絆されて今じゃ家族が全員騎士って。こんだけ大事に愛されてんのよ?
だったら俺もちゃんと我慢しなきゃだけど、恩返しがてらに思ったんだよ。
錬成師見習いさんて、えーと⋯くんしょう?みたいな扱いな所あるから、皆、錬成師になるのに必死じゃん。多分店の奥の机の上で唸ってる人って多くねぇか?
魔力過多症の時の本物の錬成師さんなんて、ちゃんと現場に出て、実物見ながら研究してるでしょ。
それ聞いてるとさ。
店から出て周りの人と話して触れ合って、その辺に転がってる問題を解決しようと思えば、ゴロゴロゴロゴロ研究材料って転がってると思うんだけど、何で皆そうならないの?
それは貴族だからだよね。
そりゃお金持ってる貴族じゃ無いとなれない職業だけど、功績を認められる時ってどんな時が多いかと言えば、皆が困ってる時のヤツ解決したらと思うんだけど、俺って間違ってるのかなぁ?」
「いや、間違ってないさ。
ただやれるかどうかは別問題だな⋯人にはそれぞれ価値が違う。こればかりは仕方が無いのだ。」
「その辺頭柔らかくしてくれりゃ良いのに。そしたら俺なんかが出る幕なんて無くなってると思うんだけどなぁ〜」
「フフ⋯だから恩返しか。
誰に向かっての恩返しやら。」
「そんなの錬成師見習いさんに決まってんじゃん!
あの人マジすごいんだぞ!
だっさぁ、平民相手に頭下げてんのもビックリしたけど、施しはいらーん!みたいにカッコいいし、ウチの黒魔石達を説得する時に、お金の価値が分からないって言ったら全部の貨幣を集めて来ちゃったんだよ。
もうぽかーーん!だよ。
お陰で勉強になって楽しかったけど、コレどーしたの?って聞いたら、借りたって。
貸す方もスゴクね?!
しかも⋯やば。
また調子に乗りすぎてポロリする所だった。」
「何だ。言ってみろ。」
「ヤダよ。これやってる意味無いし。まぁもう王様には通用しないんだろうけどさ。
うん。もう会うこと無いだろうからお礼言うとく。
最後に話せて楽しかったよ。」
「何故そうなる。」
「だって王様に失礼な事したのワザとだし。叱られるに決まってるじゃん。こうやって王様を悪い道につれてくから、きっと二度と会わせて貰えないと思うよ。
それが普通でしょ?」
「フフ⋯フハハハハハハ!
実に愉快だな!」
「良かったね。
忙しいのにワザワザ出張って来た甲斐あったかな?
私が知らないだけで、多分沢山助けてくれたと思うから、お礼が言えて良かったよ。
じゃあね!」
お父さん達が顔を青ざめさせながら硬直して私を見てる。
お母さんもビックリした顔のまんま固まってた。
なので紙にギルタス叔父さんのフリしてた、って書こうとしたら。
「ギルバート」
「は!」
「そこにいるな。」
ギルバートさんが反射的に返事を返して、ヤバ!て、顔になった瞬間。
『ヒイィィィ?!』
「キャア?!」
息を飲む様なコッチの男性達の悲鳴と、お母さんの甲高い悲鳴が響く。
突然現れた、背中まである薄い金色の髪の毛をフワリと揺らして、180cmぐらいある細身の美形な男性が、少しだけ曲げた膝を伸ばしてすくっと立った。
それに驚いたジギタス叔父さんが反射的に立ち上がり、ガタンと大きな音がすると。
『陛下?!』
通信機から偉そうなお爺さんや騎士さん達の悲鳴地味た焦りの叫びが飛び込んできた。
「ようこそ、王様。
我が城へ。」
私を見下ろして固まってる20代にしか見えない、碧眼の美しい男性を見上げて不敵に笑った。
なるべく太々(ふてぶて)しく見える様に、短い腕を組んで、頑張って足を組もうとしたけど短すぎて断念。
なので椅子に座ってる状態で、なるべく胸をそらしつつ腕だけ組んで見上げたけど、背筋が辛かったので直ぐに止めた。
「オマエが黒魔石だと⋯?」
「くふ。ぷは!アハハハハハハ!!!」
不敵な笑みを浮かべて格好良く現れたのに、直ぐに無表情になって固まってたのが面白くて、太腿の横にあるスペースに両手をついて、足をバタバタさせながら私は爆笑する。
だってドッキリ大成功!って、マジで言ってやりたかったんだよ。
だってまだ私の口からは渋い男性の笑い声が出てるんだもん。
「なーんだよ、間抜けヅラしやがって。驚かすつもりがしてやられて腑抜けちまったか?
つーかすっげぇなオマエ!
だって向こうに居たんだろ?
確か王都ってとこだよな?
そんな所から一瞬でコッチ来れんのかよ。
王様が、じゃ無くてアンタがスゲェって事だよな?」
そこは本当に驚いたので、ペンをテーブルに置いてパチパチと拍手して、音が成人男性のもんじゃないから直ぐに止めて、テーブルを叩く。
もうヤダー!
内心グダグタ。
だっていきなり来るんだもん。
コッチは気を抜こうとしたタイミングでよ?
何とか取り繕えただけでも、私を褒めて欲しい。
「そりゃ偉そうな爺さんも自慢するわ。つーか向こうが大騒ぎになってるぞ?」
「陛下!何をなさっておいでか!直ぐにお戻りを!!!」
「陛下!」「陛下!」
「ったくうるっせぇなぁ。
へーかへーか、連呼してんじゃねぇぞボケが。
ただの平民が、こんな距離飛んで来る奴にやられるわけねーだろが!
どんだけ王様舐め腐ってやがんだよ、オマエらそれでも国の重鎮か?
頭回せ回せ!
国で1番勉強して考える力を鍛えてる奴らが、この程度で泡食って慌ててんじゃねぇぞゴラ!」
んー、ジギタス叔父さんに代わって貰いたいけど、身構えてる割にアワアワしてるから無理かなぁ?
王様の視線がムッチャ鋭いから、もう周りの人達が威圧されてビビリ捲ってる。
私にはそんな余裕なんか無いよ。
頭回せ回せで身体をグネグネしながら、コメカミのあたりを指先でクルクルしてるんだもん。
「ぶは!」
そしたら王様が突然吐血した感じで、盛大に吹き出して小刻みに震え始めてる。
「おーおー、王様が吹いてんぞ。笑われてんのはオメェ等だかんな?」
「陛下に何かあったらタダでは済まさんぞ!」
「何かあったらって、何があんだよ。無理言うなって。」
「ブハハハハハハハハ!!!」
壊れたみたいに大声で笑って崩れ落ちた国王様に、ギルバートさん含めて『あー⋯』って顔になった。
お母さんは眉毛を八の字にして、困ったわぁの顔になってる。
「陛下!大丈夫なのですか?」
「陛下」「陛下」「陛下!」
「ホラホラ過保護なオッサン達がオロオロしてんぞ?
可哀想だから、向こうにもどってあげろよな。」
「ヒィー!ハハハハハハハハ!!!」
『陛下?!』
床に崩折れた国王様がバンバンと床を叩いてるもんだから、向こうはもう大パニックだ。
コレ絶対に狙ってやってるに違い無い。
「王様って性格悪いのなぁ。爺さんで遊んでポックリされたらどーすんだよ。
騎士だって頭の血管切れちまいそうだぞ?」
「ヒィ、ヒィ!ブハハハハハハハハ!やめろ!やめてくれ!」
「なー、そう言うの迷惑なんだけど。」
「ギルバート!ギルバートは居るのか?!応答しろ!!!」
「陛下はご無事か?!」
「何かあったらタダではすまさんぞ!!!」
「へグッ⋯」
『ギルバート?!』
笑ったら駄目な時って笑いたくなるよね。
何か答えようとして失敗したギルバートさんが、口元を握って肩を震わせながら背中を丸めてる。
「あー、もう。ギルバートさんが再起不能になっちまったじゃねぇか。
もー、これどーしてくれんだよ。面々くせぇなあ!」
「き⋯貴様!ギルバートもか!」「許さん!」「許さんぞ!」「陛下にだけは手を出すなよ!貴様なんぞ死んだ方が良いと思うぐらい後悔させてやるぞ!!!」
「あーもう、怖い怖い。
あのさぁ〜。どーでも良いけど、その変で落ち着いとこうぜ?
後悔すんのはそっちだからさぁ〜」
「ヒグ!」
「ちょっ、サラディーン様?!」
あー⋯、向こうでも耐えられなくて爆死してる人がいる。
皆真剣だから耐えてたんだろうけどなぁ〜。
「なぁ、王様。
どーすんのコレ。
俺死んだ方が良いって思うぐらい後悔させられちまうそうだぜ?!」
「ヒグ!や⋯やめ⋯ヒィヒィ!死ぬ!死んでしまう!!!」
「ちょっと笑いすぎじゃね?」
『陛下ああぁぁぁーー!』
四つん這いになってギュッと目を閉じてるのに涙がにじんでるから、相当お腹が苦しいんだとは思う。
しかも血を吐く勢いでお爺さんや叔父さんの野太い声が聞こえて来るから、ギルバートさんもヤバいと分かってても笑いが込み上げてて、軽く引き付けを起こしてるみたいだ。
「もーはよ帰れや。そんな間抜けな死に様なんざ晒したくねぇだろぉ?」
「お⋯おま⋯ま!ふひ!」
「もう酸欠起こして息吸えてねぇーじゃんかよぉ。」
「頼む!どうか陛下には手を出すな!」
「俺なら幾らでも変わる!
どうか陛下を殺さないでくれ!!」
「もうその変でやめろよ。
コレ絶対に後ですっげぇ叱られるヤツだぞ王様。」
「ヒィヒィ!も⋯フヒィ!」
「お⋯お許し下さい⋯これは酷い⋯ククク⋯」
「ギルバート!何があった!
意識があるなら報告せよ!」
「王様もギルバートさんも床をバンバン叩いて笑い転げてんだよ。あんまりにもアンタ達が必死なのがマヌケだからさぁ!
そろそろ落ちついた方が良いって。
2人ともあんたらのせいで、笑いすぎて泣いてるんだぜ?」
『はぁ?!』
「ハハハーっハハハハハ!」
「お許しを!
ど、お許しをっっ!
も、たえられなっ⋯アハハハハハハ!!!」
『⋯⋯⋯⋯』
「すまんが黒魔石の言う事は本当だ。なのでどうか落ち着いてやって欲しい。」
「もぉね〜、2人とも息が苦しそうなのぉ。皆が心配してるのに、悪い王様だわぁ~。」
状況を見かねた父が青ざめたまま疲れた顔で仲介するのを、母も頬に片手を当て半分笑いながらノッて来る。
「あー、黒魔石。王様は良い人だよ。でもちょっとお爺さんたちで遊ぼうと思って自分がしんどくなっちゃったお茶目な人なんだよ。」
声の魔導具を操作して地声に戻すと、お母さんに便乗して暴露してやる。
「あとギルバートさんは叱らないであげてね?
ちゃんと真面目に仕事してたのに、飛び込んできて王様が悪戯するから、巻き込まれちゃったんだよ。」
『アハハハハハハハ!!!』
「サラディーン様?!」
『陛下?!』
カルマンさんの声は聞こえて来ないから、どうやら彼は逃れたみたい。
でも魔導具の向こうでもお嬢さんが狂ったみたいに笑ってるし、コッチはコッチで2人とも息も絶え絶えになっちゃってもう。
後で叱られるだろうけど、私知らないよ?
王様自爆
ギルバート巻き添え
サラディーン追爆




