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プロローグ

 薄暗い部屋である。

 部屋はそこそこ広く、置かれてある調度品もどれもそれなりに良いものだ。

 それらはきちんと整えられているが、うっすらと埃が積もっている所もあり、あまり使った形跡はない。

 そして部屋の中央にある華美な椅子には男が座っていた。

 力無く垂れた腕。栗色の髪に縁取られたその顔は整ってはいたが、表情が無い。

 うつろな茶色の瞳は何を見るでもなくただ空を見つめていた。

 ガチャ。

 音がしてドアが開いた。


「リーデンス……」

 少女の声だ。

 少女はゆっくりと男に近づいた。


 細身の少女である。

 黒髪は短く、一見少年のようにも見える。

 少女は愛しそうに男を抱き寄せた。

「リーデンス、あたしの名前を呼んで……」

 抱き寄せた手に力がこもる。

「お願い……」

「ナツキ」

 男は抑揚のない声で答えた。

「リーデンス、あたしやっぱりおかしいよね。あなたには心なんてないのに、空っぽなのに」

 少女は唇を重ねる。なんども。

「愛してる」

 少女の目に涙がにじむ。

「人間だったらなんて言わないよ。――せめてあなたに心があったら」

 

 男の瞳はただ空を見つめている。

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