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桃伝  作者: だんぷてぃ
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第2章:鋼鉄の番犬

第2章:鋼鉄の番犬

モモタロウが老婆をさらった鬼の手がかりを求め、崩れた都市の廃墟を進んでいたときだった。風に乗って不気味な機械音が響く。鉄とコンクリートの瓦礫の間に、赤い光がちらついた。

「…侵入者、発見」

低く響く機械音の直後、黒ずんだ装甲を纏った四足歩行のロボットが廃墟の影から姿を現した。かつて都市を守るために造られた警備ロボット。しかし、その装甲は傷だらけで、一部は剥き出し、片腕は機能していない。

「ここは立ち入り禁止区域…警備システム、作動。」

ロボットの単眼が赤く光ると同時に、モモタロウの足元にエネルギー弾が撃ち込まれた。彼はすぐさま身を翻し、瓦礫の陰に隠れる。

「待て! 俺は敵じゃない!」

だが、ロボットは応えず、機械的な動きで標的を狙い続ける。

「警備対象……。侵入者、排除。」

モモタロウは歯を食いしばり、飛び出した。次弾が放たれる瞬間、彼は驚異的な速度で接近し、鋼鉄の拳をロボットの胸部に叩き込んだ。

ロボットの体が後方へ弾かれコンクリートの壁に叩きつけられた。衝撃で崩れたコンクリートの隙間から奥の部屋が見えた。工具や作業台などが置かれた整備室だった。そこに鈍く光る銀色の筒が置かれている。

モモタロウは一瞬目を細める。

(……見覚えがあるな)

戦闘中、ロボットの胸部装甲の傷の間から、同じような筒がちらりと見えていた。 モモタロウはそれがこのロボットのエネルギーパックだと気づいた。

「……戦闘、継続。」

ロボットは片膝をついて立ち上がる。

モモタロウは拳を構えながら、ロボットの状態を観察する。その動きは鈍く、関節が軋んでいる。長年の戦闘と劣化によるものだろう。それでも、この番犬は命じられた役割を全うしようとしていた。

「お前……そんな身体でまだ戦うつもりか?」

ロボットは答えない。ただ、機械の瞳を赤く光らせながら、再び攻撃態勢を取った。

モモタロウは一瞬ためらったが、次の瞬間には飛びかかっていた。戦闘が続く中、彼はロボットの関節を狙い、攻撃の勢いを削いでいく。

やがて、ロボットの動きが鈍くなった。エネルギーの消耗が限界に達していた。

「……機能、低下……」

ロボットは膝をつき、体を震わせた。

モモタロウは奥の部屋から銀色の筒を持ってきてロボットの前に置いた。

「お前のエネルギーパックか。まだ戦いたいなら使え。」

ロボットはしばらく動かなかったが、やがて慎重にアームを伸ばしエネルギーパックを自身の補給口に装填した。次の瞬間、赤い目の光がわずかに明るくなり、動作がスムーズになった。

「……敵、なのか?」

モモタロウは首を振った。

「違う。俺は鬼を探している。お前の守っていた街を滅ぼしたヤツらだ。」

ロボットは沈黙したまま、考えているようだった。

「……名前、あるか?」

モモタロウの問いに、ロボットは僅かに顔を上げた。

「識別コード……IN-009。旧型警備ロボット。」

「……長ぇな。お前、今日から『イヌ』だ。」

「……イヌ?」

「俺と一緒に来い。まだお前の使命は終わっちゃいない。」

しばしの沈黙の後、ロボットは立ち上がり、ギシリと軋む音を立てながらモモタロウの隣に並んだ。

「了解……新たな任務、開始。」

「その前にイヌの修理だな」

モモタロウは整備室でこれまでの事を話しながらお互いの体を修理した。

こうして、廃墟の番犬は、新たな主と共に鬼を討つ旅に出ることになった。


この度は、私の小説を読んでくださり、本当にありがとうございました。

物語を最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。

感想などもいただけたら、さらに励みになります。

これからも精進してまいりますので、また読んでいただけたら幸いです。

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