90.アニメ観まくっているから
「今のレイナの外見なら16歳だと言えばみんな信じるよ。
もともと日本人は外国人の歳が判らないしね」
「そうなの」
「レイナは地球で言う白人種に見えるから。
12歳くらいで大人にしか見えない人もいるし」
なら大丈夫か。
「そもそもレイナの戸籍では今年16歳になっているからね。
心配ない」
「確かに」
その他の条件もクリヤしているようで受験自体には問題なさそうだった。
「担任の先生に言って高認用の授業というか指導をして貰ったら?」
シンが言うので夜間中学で頼んだら了解してくれた。
「それでは重点を絞って勉強しましょう。
参考書も出ているから」
「はい」
経験者のナオやサリに相談する。
すぐに良さそうな参考書を紹介してくれた。
「こういうのは毎年出るから新しく買った方が良い。
試験科目や出題傾向が変わる事があるからな」
「必ずしも全問正解しなくても合格するから」
非常に参考になった。
リンが「私には聞いてくれない(泣)」とむくれていた。
「だってリンはまだ合格していない」
「受かった科目はあるよ!
公民とか地理とか」
「自力で出来そう」
「フン!
日本語は難しいよ?
公民なんか普段は使わない用語出まくりだし」
「そうなの」
確かにアニメには出てきそうにない。
地理や歴史は暗記するしかないから長期戦になりそう。
「とりあえず今回は英語と数学に絞ってみる。
あと物理とか」
「好きにすれば良いさ。
教科書に載っている問題しか出ないから」
「それ、高校の教科書でしょ。
むしろ受験参考書を徹底的にやった方が受かる確率が高いと思う」
サリとナオが経験者らしいアドバイスをくれる。
でも二人とも頭がいいというか、特にナオなんか教科書を一度読めば大体理解出来ると言っていたし。
「レイナも地頭はいいと思うな。
もう日本語はネイティヴ並でしょ」
「アニメ観まくっているから」
「それだけでそこまでいくってのが凄い」
色々と考えたあげく、レイナはとりあえず高認用の受験参考書を全科目大人買いした。
これからは自宅でも勉強することにする。
ラノベや漫画を読む時間を削れば可能だ。
「まあ、ほどほどにね」
相変わらずシンは無責任というか放任というか干渉してこない。
どうでもいいと思っているのが見え見えだ。
シンの料理が美味しいので週に2回くらいはお邪魔している。
そういえば。
夕食をご馳走になりながら聞いてみた。
「例の英国の人からの連絡ってないの?」
「ないなあ。
議論が紛糾しているのかも。
レスリーさんは何も言ってないの?」
「ない。
完全にヲタク生活を楽しんでいる」
一応夜間中学には真面目に通っているが、授業中にスマホで動画観ていたりゲームやったりしている。
丹下先生も大っぴらにやらない限りは黙認みたい。
「何か裏取引がありそうだね」
「クラスの大半は似たようなものだし」
最初に登校したきりまったく出てこなくなった人も結構いるし、途中から来たりすぐに帰ったりの人も多い。
同級生たちはお互いの事には無関心だ。
「大人だな」
「というよりはみんな自分の事で精一杯で人の事になんか構っていられないんじゃないかな」
そういう意味では密接に連んでいるレイナたちの方が珍しい。
「話を戻すけど、タイロンさんから連絡が来たらどうするの?」
「向こう次第だね。
僕としては現状でも特に問題はないからなあ。
レイナも自由にやってくれていいし。
というより」
シンは真剣にレイナを見て言った。
「レイナが自由にやれるように動くよ。
間違っても組織に拘束されたりしないように」




