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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第一章 聖女、異世界に立つ
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7.身体って魂の具現化なのよね

「確か、身体って魂の具現化なのよね」

「そうだね。

 僕が神官教育で習ったところでは人間の身体は(イデア)の現し身だということだった。

 君の身体は君の魂に内臓されている設計図通りに作られたわけか」

 つまりレイナはこの姿以外にはなれない。

「そういえばシン、あなたはどうなの?

 ミルガンテの神官見習いの貴方の魂がこんな変な場所の人間の身体と適合するってなぜ?」

「それは、僕が僕だからさ」

 レイナには30代に見える男が少年の口調で言った。

「この身体は僕だ。

 というよりは32歳の僕というべきか」

「なんで?

 貴方ってまだ十代でしょう」

 ミルガンテの神官見習いだった少年はレイナと同年代だったはずだ。

「うーん。

 色々事情はあるんだけど、さすがに腹が減ってきた。

 何か食べない?」

 言われて初めて空腹を感じるレイナ。

 実際には大した問題ではない。

 聖力を使えば食事などしなくても平気だ。

 ただ、やはり人間の身体を維持するためにはある程度食物を摂取した方がいい。

「いいわ」

「よし。

 何か作ってもいいけど、僕も久しぶりすぎて料理出来るかどうか判らないから何か買ってくる。

 待っている間はテレビでも見てて」

 シンはそう言って出かけてしまった。

 その前にテレビとリモコンについて簡単に教えてくれたけどよく判らなかった。

 でもチャンネルを切り替えるボタンと音量スイッチが判ればいいと言われた。

 無責任な。

 一人になったレイナはとりあえず聖女の衣装を脱いだ。

 少し汗ばむくらい暖かかったので。

 幸いにして下は簡素なワンピースだ。

 下着だったら脱げないところだった。

 テレビとやらは面白かった。

 薄い板の表面に次々と映像が映し出される。

 何か見覚えがあると思ったらミルガンテの大聖殿にある大聖鏡だ。

 あの大聖鏡は聖力によって絶えず色々な風景が映し出されている。

 聖女教育で教わった所では、映し出される景色はどこでもないらしい。

 学者が研究したところによれば、どうやらミルガンテとは異なる世界の風景ではないかということだった。

 なぜそういった結論になるのかというと、聖教の始祖である名前のない救世主が異なる世界からやってきたという伝承があるからだ。

 聖力自体もその方がもたらした。

 大聖鏡は異なる世界への通路とされているが、物質は通り抜けることが出来ない。

 これまでにも何度も試みられたが、どんな生物も無生物も通過出来た試しがない。

 人間や動物は大聖鏡に触れれば例外なく即死する。

 外傷もなくただ亡くなるので、おそらく魂だけが通ったと思われる。

 その説は正しかったようだ。

 レイナとシンは、まさしく魂だけになってこの世界に来てしまったことになる。

 問題はシンがそれを意図してやったことで、レイナは巻き込まれたわけだが、そもそもなぜ神官見習いでしかないシンがそんなことをしたのか。

 というよりはなぜこの世界の人間と適合出来たのか。

 判らない事ばかりだが、それは後で説明してくれるはずなので、レイナはテレビに集中することにした。

 言葉は判らないが映像を見ていれば何となくこの世界のことが見えてくる。

 色々な映像があった。

 男や女が話し続けているだけの画面もあったし、複数の男女が色々動き回っている映像もあった。

 信じられないような巨大なゴーレムが戦っていたり、派手な爆発や攻撃が飛び交っている殺伐としたものもある。

 一体、ここはどういう世界なのか。

 あんな巨大な化物が街を壊しているのに、どうして誰も気にしていないのか。

 ミルガンテなら大聖殿の聖力使いが根刮ぎ集められて投入されてもおかしくない。

 (いにしえ)の魔王ってああいうものだったのでは。

 この異世界、ミルガンテよりよほど危険じゃないの?

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