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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第四章 聖女、友達が出来る
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幕間8

 戸田伸吾は半ば口を開けて固まっていた。

 外から見たら完全なアホ面だが誰も指摘しない。

 一緒に居る仲間達はみんな同じ顔をしている。

 なぜかというと、遊びに来ている健康ランドのプールサイドに突如として凄いものが出現したからだ。

 最初は何かの撮影だと思った。

 映画ではなくグラビア雑誌かアイドルのPV。

 どうみても5人組のユニットだ。

 だが当然いるはずの撮影隊やカメラマンの姿がない。

 こういう場合は助監督辺りが人払いすると聞いていたのだが、そういう人もいない。

 ただ美女と美少女の集団がプールで戯れているだけだった。

 隣でやはり口を開けている小山田がぼそっと言った。

「あれ、どこのグループだ?」

「判らん。

 少なくともデビューはしていないと思う」

 ドルヲタの水木が美女たちを凝視したまま言う。

「あり得ねぇだろ。

 無防備過ぎない?」

「言えてる」

 柔道部の山本は直立したまま固まっていた。

「推せる」

「いや、早いだろ。

 アイドルかどうかも判らんし」

「むしろグラビアモデルじゃね?

 それにしてはメンバー構成がバラバラだけど」

 比較的冷静な口調で言うのは清水だ。

 プールの中だというのにメガネキャラを維持している。

 みんな高校の同級生(クラスメイト)だが、男だけで健康ランドなんかに来ているのは全員非モテだからである。

 プールであわよくば女の子とお友達にという(よこしま)な動機もあるが、そんなアニメみたいな状況にはなるまいと悟ってもいる。

 むしろビキニの美少女がいたら遠くからそっと鑑賞させていただこうとか、そういう細やかな野心を持って遊びに来たのだが。

 まさかモロにグラビアアイドル級、いやそれ以上の美女や美少女の集団に遭遇しようとは。

 しばらく固まっていた彼等だが、そのうちにおかしな事に気がついた。

 このプールやプールサイドにはそこそこ人がいる。

 大学生らしい連中や、明らかにナンパ目的のイケメンコンビなどもいるのだが、なぜか誰も声をかけないようなのだ。

 時々、なけなしの勇気をふるったらしいイケメンが接近しようとしては引き返している。

 いや、あれは撃退か?

「何か凄くない?」

 小山田がおどおどと言った。

「確かに」

「何だろうこれ?」

 伸吾も自分が感じている得体の知れない圧力に気がついていた。

 あそこに近づいてはならない。

 危険だ。

 そんな確信が沸き上がってくる。

「判った。

 俺たちは客席にいるんだ」

 突然、ドルヲタの水木が叫んだ。

「どういうこと?」

「舞台でアイドルが唄って踊ってる時の観客だよ。

 舞台と客席の間には柵があって近づけないようになってるだろ?」

「つまり心理的な柵があると」

「ああ、確かにそんな感じかも」

「やっぱあの娘らってアイドルユニットか」

 違うな、と伸吾は思った。

 自分が感じている圧力はそんな精神的なものじゃなくて、むしろ本能というか無意識の警戒心だ。

 何か危険なものがいるからこれ以上近づくな、という。

 それでいて目が放せない。

 どうしても引き寄せられてしまう。

 伸吾たちが身動き取れずに固まっているうちに美女グループが分離した。

 外国人の美少女2人がプールから上がってプールサイドベッドに寝そべる。

 圧力が遠ざかった。

 目を閉じてもはっきり判るほど、その感覚は外国人美少女たちの方を意識している。

 残された日本人らしい3人の美女たちにイケメン達が声を掛けているのが見えた。

 あっさり撃退されていたが。

「やっぱグラビアアイドルじゃね?」

「デビュー前なんだろうな」

「地下とか?」

「いや、あれだけ粒ぞろいだったら地下でも情報が流れる。

 ていうかあのレベルでわざわざ地下とかあり得ないっしょ」

 仲間達が議論を始めていたが、伸吾は無言のままひたすら外国人美少女たちを凝視していた。

 アイドルにせよそうじゃないにせよ、あれほどの存在はいずれ絶対に表舞台に出てくるはずだ。

 その時のために覚えておく、いやむしろあれだ。

 某劇場アニメの主題歌の歌詞にあった。

 その姿をこの胸に焼き付けよう。

 思い出さなくても大丈夫なように。

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