59.幸運の遺伝子持ち?
それからトランプが持ち出され神経衰弱、ババ抜き、七並べを経て大貧民に至る。
レスリーが「もっと面白くしましょうか」と言って2つ目のトランプを持ち出してきたことから大爆笑な展開になった。
「4が6枚」
「ふっ。
7が6枚」
「無理だよ!」
レイナはこれまでのゲームは複雑過ぎてどん底だったので張り切った。
なぜか山のように同じ数字のカードが集まる。
「8が7枚」
「何それ?
あり得ない」
「確率的には可能よ。
強運過ぎるけど」
「ああ、もう!」
何度やってもレイナが一人でぶっちぎりで上がる。
聖力を使っているつもりはないのだが、無意識で漏れ出しているのかもしれない。
「駄目だ。
レイナには勝てない」
「幸運の遺伝子持ち?」
「何だよそれ」
「昔のSFに出てくるんだけど、遺伝子配列によって幸運を招き寄せることが出来る人がいて」
「そんなのあるか!」
大貧民は中止になった。
「ごめんなさい」
「いや、レイナのせいじゃないから」
「でもレイナって、ギャンブルとかメチャクチャ強いんじゃない?」
「言えてる。
カジノ荒らしが出来るかも」
「そういう人って隠しカメラでチェックされて、儲けすぎるといつの間にか行方不明になるらしいよ」
「マフィアか」
「いや、今のラスベガスは健全と聞いたぞ?」
レイナには判らない話が飛び交っているが、本人は何とか誤魔化せないかと必死で考えていた。
やっぱり私、無意識に聖力使っているのではないだろうか。
トランプに手を触れているし、都合の良いように現実を改変しているのかも。
「そういえばもうこんな時間か」
ナオが自分のスマホを見て言った。
「ありゃ」
「午前様じゃない」
「楽しくて気づかなかった」
「みんな元気よね」
そういえばそうだ。
ナオ以外は昼の住人なので、普通だっらとっくに寝ている時刻だ。
「それじゃあ、ここまでにする?」
「そうだな。
気がついたら急に眠くなってきた」
「女子会の定番は布団に入ってからの恋バナなんだけど……無理そう」
「寝よう寝よう」
というわけで布団が運び込まれ、みんなで雑魚寝になった。
レイナにはこれも初めての経験だ。
興奮して眠れないかも、と思った次の瞬間には誰かに揺すられていた。
目を開くとサリがいた。
「レイナ起きろ」
「……あれ?」
「メチャクチャぐっすり寝てたぞ。
枕とか関係ないな」
慌てて起き上がったら広いリビングにレイナの布団だけがぽつんと敷かれている。
「みんなは?」
「とっくに起きたよ。
ほれ、シャワー浴びてこい」
赤面しつつバスルームに行って戻って来たら、リビングには朝食の用意が出来ていた。
「やっと来た」
「早く早く。
腹が減って」
「ごめんなさい」
何という失態。
それにしてもみんなが起きて布団を畳んだり運んだりしている間、平気でグースカ寝ていたとは。
危険察知が働かなかった?
反省。
ちなみにもし何かのはずみに攻撃されたと思ったらレイナは自動的に聖力で反撃したはずだ。
相手を殺していたかもしれない。
ぞっとしながら食卓につく。
「「「「いただきます」」」」




