58.女子会ってそんなもんじゃないの?
ナオが説明してくれた。
「他の兵器とは桁違いの威力がある爆弾のことよ。
一発で都市を消し飛ばすとか、島を沈めるとか」
「それだけじゃなしに、爆発したらその辺り一帯に放射線が充満して生物が全部死んじゃうの。
数万年くらい、そこに誰も住めなくなる」
リンがまくし立てた。
「だから世界的に反対運動が起きてるんだけど」
「戦争には有効だから。
大国はみんな持ってる。
ていうか持っている国が大国を名乗ったりして」
「いや、北○鮮とか○キスタンとかは違うでしょ」
「日本だってその気になったら1年で作れるって聞いたけど」
「まあ材料は山ほど有るしね」
途中から高度? な議論になってしまってレイナは置いて行かれた。
議論に加わってないのはレイナの他はレスリーだけなのでこそっと聞いてみた。
「核兵器ってそんなに凄いの?」
「はい。
今地球にある核爆弾だけで人類が数十回絶滅するそうです」
何それ。
無駄ではないのか。
最初の一回で絶滅したら、後は無用だ。
「私もあまり詳しくはないのですが、ネットで検索したらすぐに判ると思いますよ」
レスリーが逃げた。
それはそうか。
話し始めたら終わりそうにもないからね。
「ちょっと待って。
ここでする議論じゃないような気がする」
ナオが理性的に止めた。
「それはそうか」
「殺伐としすぎているしね」
「女子会ってそんなもんじゃないの?」
「とりあえず止め!
別の事をしよう」
「それならこういうのはどうでしょう」
レスリーがどこからか持ち出して来たのは大きな平べったい箱だった。
「おお、人生ゲーム」
「懐かしいな」
「これ、大昔からあるよね。
それこそ私らが生まれる前から」
「バージョンアップし続けているらしいよ」
早速テーブルの上に盤が広げられる。
「これを知らない人っている?」
サリが聞くのでレイナがおずおずと手を上げた。
外国人のレスリーすら知っているらしい。
「ありゃ」
「まあ、すぐに覚えるから」
ということで始まった人生ゲームはとても面白かった。
ルーレットという回転サイコロを回して出た数だけ駒を進め、停まった所に書いてある指示に従う。
レイナはなぜかあっという間にお金を儲けて結婚して子供が何人も出来て、みんなからお祝いのお金を貰った。
「レイナ調子良すぎない?」
「一回もコケてないよね」
「私なんか貧乏で独身のままなのに(泣)」
いや、聖力なんか使ってないから。
結局、レイナは一度も躓くことなくゴールしてぶっちぎりで優勝した。
リンは最後に大博打を打って失敗して貧乏農場に行った。
ナオは堅実にコツコツとお金を貯め、何度か不運に翻弄されながら何とか小金持ちで終えた。
サリは独身のまま無一文でゴール。
そしてレスリーは可も無く不可も無い人生だった。
「何かリアル過ぎない?
この結果」
「言えてる。
本当にこうなりそう」
「私は駄目だ。
どんなに頑張っても貧乏農場だ」
リンが泣き、ナオがまあまあと宥めているのをレイナは覚めた表情で観ていた。
しょせん、ゲームよね。




