53.それは言わない約束でしょ
授業終了後、全員でレスリーの家へ。
「ナオは?」
「地図送っといた。
直接行くって」
4人でタクシーに乗って着いた所は巨大なタワーマンションだった。
レイナとシンが住んでいるマンションより豪華そうだ。
ナオがエントランスのソファーで待っていた。
「お待たせ」
「来た所だから」
「ここ?」
「はい。
最上階ではないのですが」
確かにそんなところは王様くらいしか住めそうにない。
コンシェルジェがいて、レイナ以外は驚いていた。
やはり一般的ではないんだろうな。
「レイナはなんで平気なの?」
「私のマンションにもいるから」
うっかり言ったら引かれた。
そういえばみんな、レイナが住んでいる所を知らないんだった。
呼ばないで良かった。
「レイナってやっぱりお嬢様なのでは」
「それは言わない約束でしょ」
そんな約束したっけ?
レスリーが苦笑していた。
エレベーターで着いた場所は最上階でこそなかったものの、そこから数階下の階だった。
やはり豪華だ。
廊下ですら高級感が漂う。
アニメにもこんなシーンあったなとレイナが思っているうちにレスリーは普通の家の玄関のようになっているドアをカードキーで開いた。
「どうぞ」
お邪魔します、となぜかみんな口の中で言いながら続く。
幸い、ドアの奥はごく普通のマンションの廊下だった。
アニメだったらここでメイド服を着た使用人が迎えてくれるが、そんなことはなかった。
リビングに通されるとやはり巨大なソファーセットがあった。
リンが荷物を放り出して奥のガラス戸に駆け寄る。
「わあ!
凄い!」
夜景が見事だった。
レイナのマンションとは違う。
明らかに夜景がよく見えるように設計されている。
「なるほど」
ナオが頷いた。
「判った。
ここ、モデルルームでしょ?」
「やっぱり判りますか」
レスリーがキッチンで苦笑した。
「生活感がないし、この内装ってなんとなくだけど貴方の性格にそぐわない気がする」
「はい。
私の家はもっと下の階です。
普通の3LDKですよ」
いや、こんなタワマンの3LDKは普通とは言わないのでは、とレイナを含めた全員が思った。
「使って良いの?」
「許可は得ています。
うちの投資用マンションのひとつで」
レスリーの親の会社は世界中でこういった不動産を扱っているそうだ。
この部屋も見本で普段は顧客に見せたりお試しで泊まって貰ったりしているらしい。
「だから一応の生活用品は揃えてあります。
お布団というかマットレスや毛布はレンタルで」
「そんなにお金掛けていいの?
私たち、とてもこんなマンション買えるほどの富裕層じゃないし」
「いいんです。
縁は出来るだけ繋いでおけと両親に言われてますし」
リンやサリはそれで納得したようだったが、ナオは思案顔だった。
レイナも怪しさは感じてはいるものの、まだ警戒するほどではない。
そもそもここまでするレスリーの目的がよく判らない。
その目標が自分であることは何となく判ったが。
まあ、何があっても最後は聖力がものを言う。
ここは面倒くさいことは忘れて初めての経験を楽しむべきだ。
それから全員でとりあえずパジャマに着替えてパーティに突入した。
ちなみにセクシー系はナオですら着なかった。
全員、トレーナーとか地味なパジャマだ。
リビングのテーブルに持ち寄ったお菓子や軽食を並べ、レスリーが用意した飲み物を自由にとりながらお話しする。
みんな夜間中学の同級生か卒業生なのだが、意外なほど話が合わないというか、共通の話題がなかった。




