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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第一章 聖女、異世界に立つ
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4.人間の身体は何で出来ていると思う?

 神官見習いだった男はレイナを連れてその建物に入ったかと思うと地味な制服を着た男にあれこれ指図した。

 そういえばこの神官見習い、何て名前だったか。

「俺?

 ああ、そうか。

 あー、えっと明智だ。

 明智晋(あけちしん)

 シンが名前でアケチが家名」

「シン」

「そう呼んで貰っていい。

 俺も君をレイナと呼ぶけどいいかな?」

 たかが神官見習いが聖女を呼び捨てにする……とはいえ、もはやシンは神官見習いでなさそうだし、レイナも永遠に聖女にはなれそうにもない。

 そもそもこの訳が判らない場所で頼りに出来るのはシンだけだ。

「いいわ」

「良かった。

 この後に至って上から目線だったら放り出そうかと思っていた」

 冗談を言わないでと言おうとして止める。

 男の目がマジだった。

 改めてこの男に生権与奪を握られていることを思い知った。

 この訳の判らない世界では他に頼る者がない。

 しかも聖力が消耗し続けていて、あとどれくらい持つのか判らないのだ。

 しばらく待っていろと言われてからかなり経ってから男が戻ってきた。

 なぜか台車を押している。

「さあ行こうか」

「どこに?」

「僕の家」

 何をする気なのだろう。

 台車には色々な大きさと種類の袋が無造作に積まれている。

「これは?」

「説明は後」

 それっきり無言のままアパートに戻り、台車から袋を運び込む。

 最後に台車も靴脱ぎ場に入れてドアを閉めた。

 ちなみに作業はすべてシンがやった。

 レイナも聖力を使えば物体を動かすことも可能だが止められた。

 聖力はなるべく温存しろということだった。

 見捨てられるわけではないようだ。

 急いで片付けた部屋の中央に袋を積み重ねる。

 それからシンは本を手にしながら話し出した。

「ところでレイナ。

 人体の構造についてはどれくらい知ってる?」

 いきなり何を言い出すのか。

「質問の意味がよく判らないんだけど」

「ああ、聞き方が悪かった。

 なら逆から行こう。

 人間の身体は何で出来ていると思う?」

「何って……骨とか筋肉とか血液とか?」

「うん、それはそうなんだけどね。

 ぶっちゃけて言うと、人間の身体を構成しているのはそこら辺にいくらでもある物質だ。

 ええと、この本に寄れば『酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、カルシウム1.5%、リン1%、その他の元素が0.9%、それ以外が0.6%だそうだ」

「何を言われているのか判らない」

 シンは疲れた笑顔を見せた。

「そうだよなあ。

 聖女教育に化学があるとも思えないし。

 だからそういうことは忘れてイメージで行こう。

 レイナ、聖書教育で(いにしえ)の聖人や聖女の話は習ったよね?」

「そうね」

 結構面白かった覚えがある。

 道徳や「聖女の義務」とかに関係なく、むしろ大冒険活劇だったし。

「その中で聖イムリスの話があったと思うけど」

「ああ、あれね」

 聖イムリスは男性で、とても聖人とは思えないような活躍を見せた人物である。

 何せ弱き人々を守るために魔物やドラゴンと戦ったというのだ。

 もちろん遙かな過去の出来事で、実際に起きたことなのかどうかは不明だ。

 それでも聖教会の権威付けと喧伝になるのでよく知られている。

 当然、聖女や神官教育にも取り入れられているわけで。

「あの中でイムリスがドラゴンの火炎(ブレス)に焼かれた話が出てくるだろう」

「不意を打たれて身体の半分を燃やされてしまったのよね」

「そう。

 その時、イムリスは何をしたんだっけ?」

「ええと……聖力で自分の身体を復元して」

 そこで気がついた。

「まさか、それをやれっていうの?」

「そうだ。

 燃やされた身体を治せるんだったら全部作り直すことも出来るだろ?」

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