50.こんなのよく判らない
「聖力を使わないでこんなことが出来るなんて」
「言っておくけど聖力はこんなつまらないことには使わないように。
特に画面の数字を変えたりするのは厳禁ね」
「それは判っている」
テレビのニュースを観ていると、そういう事が犯罪になることが判る。
もちろんレイナがやれば簡単に成功する上にまずバレないだろうけど、社会に張り巡らされたシステムは相互に繋がっていて、一部を無理に変えると全体に矛盾が出てすぐに公になるそうだ。
そして犯罪を犯すと警察とやらがやってくる。
「困る」
「だから自重して。
幸い、お金があれば大抵の事は片付くから」
数日後には荷物が届き始めた。
ミルガンテのレイナの部屋に備え付けられていたような家具を買おうとしたけど、シンが言うには今の日本で天蓋付きベッドとか巨大な鏡台なんかは流行らないそうだ。
机にしても黒檀製とかじゃなくて普通のPC机で良いと言われた。
「画面が大きい方がいいから」
リビングには巨大なテレビを設置した。
4Kや8Kとか判らないので適当に注文する。
ケーブルテレビはマンションのオプションなので、有料放送も契約。
ここまで来るとレイナは目が回ってしまってついていけないので、全部シンがやってくれた。
「PCもデスクトップを買おう。
レイナがゲーマーになっても平気な奴」
ゲーミングチェアとかも買わされた。
「こんなのよく判らない」
「実地で覚えていけばいいって。
お金の事は心配しないで」
でも課金はほどほどにね、と謎な注意を受けたけど、何光年も離れた話にしか聞こえない。
「ということで、何かあったらいつでも訪ねて来ていいから」
シンがあっさり去ると、レイナは一人取り残された。
リビングと呼ばれている部屋にはアニメに出てくるような巨大なソファーセット。
壁際には巨大なテレビ。
カーテンを開けると外はもう夜だった。
シンの部屋ほどではないが、結構高い階にある部屋なので夜景がなかなか綺麗だ。
ということは外からでも見られるわけで、慌ててカーテンを閉める。
そういうアニメなかったっけ?
まあいいか。
それからレイナはキッチンに行って巨大な冷蔵庫からお夕食のプレートを取り出した。
電子レンジで温めると、それだけで出来上がりだ。
便利すぎて怖い。
温水の蛇口を捻るとお湯が出てくるのでインスタントスープを作る。
料理にも挑戦してみたいけど、色々面倒そうなので先送りにしてある。
カップ麺ばかりでは栄養が偏るから、とシンに言われて冷凍プレートに走ったのだけれど、何でもお弁当を宅配してくれるシステムがあるらしいので今度試してみようか。
それで思い出した。
今度、リンたちと遊びに行くことになっていた。
それ、私の家でも良くない?
早速、夜間中学でリンと会って提案してみたら即答された。
「いいよ!
是非是非!」
「他の人達の意見も聞かないと」
「大丈夫。
絶対に賛成してくれるから」
その通りだった。
レスリーはすぐに賛成したし、他の二人もネットで連絡すると飛びついて来た。
休み時間に全員のスマホを繋いで音声会議を行う。
「どうせならパジャマパーティーしない?」
リンが過激な事を言い出した。
何でも女子会といって、女性だけでみんな寝間着になってホテルとかで宴会を開くのだそうだ。
寝間着なのは騒いだ後、全員で一緒に寝るからだという。
「このメンバーなら気心も知れているし、大丈夫でしょ」
「いきなりそこまで行く?」
「ていうかレイナの家ってそんなことして大丈夫なの?
5人もいるんだよ?」
聞かれて考えてみたが、確かに全員がベッドで寝るのは難しいような。
それ以前に今のレイナの部屋には必要最低限の生活用品しかない。
それは何とかなるにしても寝具は絶対に必要だ。




